「売上もある。取引も続いている。支払いも今のところ遅れていない」
―― それでも、その会社が安全とは限りません。
2026年4月、東京商工リサーチが公表した分析によると、2024年度のゾンビ企業率はBIS基準で15.20%に達しました。BIS基準とは、簡単にいえば「企業の稼ぐ力で利払いをまかなえているか」を見る考え方です。国内企業数に当てはめると、推定55.9万社にのぼります。
さらに、債務超過も加味した基準でも悪化が目立っており、表面上は通常どおり営業していても、実際には資金繰りに強い不安を抱える企業が少なくないことが浮かび上がっています。
今回は、この“見た目では分からない危うさ”を抱えたゾンビ企業の実態と、経営者が今すぐ知っておくべき備え方を解説します。
推定55.9万社 ― 水面下で苦しむ企業は想像以上に多い
ゾンビ企業とは、一般に、利益やキャッシュで利払い負担を十分にまかなえない状態が続いている企業を指します。東京商工リサーチは、国際決済銀行(BIS)の定義をもとに分析を行っており、2024年度は前年度より0.63ポイント悪化しました。
しかも、より厳しく見た基準では状況はさらに深刻です。営業キャッシュフロー基準では過去10年で最悪、BIS基準に債務超過を加味した場合も6.47%まで悪化しました。つまり今は、「一部の危ない会社の話」ではなく、多くの企業がじわじわと限界に近づいている局面だといえます。
金利が上がると、“苦しい会社ほどさらに苦しくなる”
こうした企業が増えている背景には、金利環境の変化があります。
東京商工リサーチは、金利のある世界に戻るなかで、金融機関が取引先の信用力に応じて貸出金利を見直していると指摘しています。実際、債務超過企業の推定調達金利の上昇幅は、資産超過企業の4倍以上大きかったとされています。つまり、もともと厳しい立場にある企業ほど、金利上昇の影響を強く受けやすいのです。
これは取引先を見る側にとって厄介な問題です。売上が急減しているわけでもなく、突然赤字転落しているわけでもない。それでも、返済負担の増加だけで資金繰りが耐えきれなくなるケースがあるからです。

決算書だけでは見抜けない ― だから怖い
ゾンビ企業リスクの本当の怖さは、外から見えにくいことです。
売上は維持している。受注もある。支払い遅延もまだ起きていない。こうした取引先でも、実際には本業で生み出すキャッシュより利払い負担の方が重く、延命的な形で事業を続けている場合があります。
長年付き合いがある取引先ほど、「今まで問題なかったから大丈夫」と思い込みやすいものです。
しかし、資金繰りはある日を境に一気に崩れます。昨日まで普通にやり取りしていた会社が、急に返済や支払いを止めざるを得なくなる。
―― ゾンビ企業リスクとは、そうした“静かな限界”が表面化する瞬間の怖さでもあるのです。
取引先の限界は、そのまま自社の未回収リスクになる
もし取引先が限界を迎えれば、真っ先に影響を受けるのが売掛金です。
すでに納品済み、請求済みであっても、相手に支払余力がなければ回収は一気に難しくなります。しかも、自社にとっては「1社の未回収」で済まないこともあります。売掛金が入らなければ、自社の仕入れや人件費、次の支払いにも影響が及び、資金繰りの連鎖を招く可能性があります。
取引先を信じることと、万が一に備えることは別の話です。
見抜きにくいリスクである以上、最後は仕組みで守るしかありません。
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取引関係に配慮しながら、見えにくいリスクへ備えることが可能です。
見た目が安定している会社でも、安心しきれない時代です。
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