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債権回収会社(サービサー)とは?弁護士との違い・費用・依頼の流れを解説

取引先から入金が無い?!債権回収の方法や費用について解説。

30年以上も前に大ヒットした漫画「ナニワ金融道」は、法律の世界を知る「参考書」として今でも愛読する経営者も多いようです。怪しいイメージが残る「債権回収業者」ですが、実際にはどのような仕組みで運営されているのか、意外と知られていません。


この記事では、債権回収会社の仕組みや弁護士との違い、依頼時の費用相場、業務の流れ、そして2020年の民事執行法改正による変化などを解説します。

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債権回収会社(サービサー)とは?

債権回収会社とは、法務大臣の許可を得た、民間の債権管理回収専門業者です。金融機関から委託を受け、または債権を譲り受けて、「特定金銭債権」の管理・回収を担っています。


国内での債権回収の仕事は、弁護士法によって弁護士または弁護士法人以外が手がけることは禁じられていました。しかし、1999年に施行された「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」により、民間会社も債権回収の業務に参入できるようになりました。


バブル崩壊後に大量に発生した不良債権の処理を促すために設けられた法律で、暴力団などの反社会的勢力の参入を排除する仕組みと、許可業者に対する規制・監督を通じて、回収過程の適正を保つ許可制が採用されています。

法律で認められた業者しかできない

債権回収業者は、法務大臣が認めた業者しかなることができません。


法務省のホームページによると、以下の条件を満たす必要があると定めています。


・最低資本金が5億円

・暴力団員等の関与がない

・常務に従事する取締役の1名以上に弁護士が含まれている


取締役となる弁護士の適格性は、法務大臣が日本弁護士連合会に意見を聴取して判断します。暴力団員等の排除については、法務大臣が警察庁長官に意見聴取する仕組みが設けられています。

金融機関との関係

債権回収会社は、銀行や保証会社などの金融機関が抱える債権を回収する役割を担っています。


多くの債権回収会社は、銀行や消費者金融、投資ファンド、不動産会社などの子会社として設立されています。そのため、依頼先も親会社やそのグループ企業に限定されるケースが多い傾向があります。

大手の債権回収会社一覧

法務省のホームページには、法務大臣から許可された債権回収会社の一覧が掲載されています。2026年4月1日時点で74社が許可を受けて営業しています。


主な大手債権回収会社は、以下のとおりです。


・日本債権回収株式会社

・アビリオ債権回収株式会社

・ニッテレ債権回収株式会社

・SMBC債権回収株式会社

・オリックス債権回収株式会社

・ジャックス債権回収サービス株式会社

・あおぞら債権回収株式会社

・エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社

・セゾン債権回収株式会社

・中央債権回収株式会社

・オリンポス債権回収株式会社

・九州債権回収株式会社

・アイ・アール債権回収株式会社

・アウロラ債権回収株式会社

・株式会社住宅債権管理回収機構

・株式会社エムアールアイ債権回収

・ジャパントラスト債権回収株式会社

・パルティール債権回収株式会社

※法務大臣による許可順(一部抜粋)


許可業者の最新の一覧は、法務省のホームページで確認できます。債権回収会社と類似の名称をかたった詐欺業者による架空請求も報告されているため、依頼前に法務省の一覧で許可の有無を確認しましょう。

債権回収会社と弁護士の違い


債権回収業務はもともと、弁護士にしか認められていませんでしたが、サービサー法の施行により、債権回収会社も一定の範囲で回収業務を担えるようになりました。


両者の主な違いを、以下の表にまとめました。


比較項目弁護士債権回収会社
扱える債権すべての債権特定金銭債権のみ
個人からの依頼対応可能原則として対応不可
訴訟における立場すべての裁判所で代理人として対応可能簡易裁判所で扱う訴額140万円以下の案件は自社で対応できるが、それ以外の裁判手続きは弁護士に追行させる必要がある

弁護士はすべての債権を扱えるのに対し、債権回収会社は「特定金銭債権」(金融機関の貸付債権やリース・クレジット債権など)に限定されます。また、債権回収会社は特定の事業者を除き、個人が保有する債権を取り扱えません。


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債権回収会社の費用・手数料の目安

債権回収を外部に依頼する場合、費用の仕組みは依頼先によって大きく異なります。債権回収会社は「債権の買い取り」が基本で、弁護士は「着手金+成功報酬」の体系が一般的です。ここでは、それぞれの費用構造を整理し、判断のポイントを紹介します。

債権回収会社に依頼した場合の費用

債権回収会社(サービサー)に依頼する方法は、主に「債権譲渡(買い取り)」と「回収の委託」の2つに分かれます。


債権譲渡の場合、サービサーが債権を買い取るため、依頼する側に手数料は原則として発生しません。ただし、買取価格は債権の額面より低くなります。不良債権の買取相場は案件ごとに異なりますが、簿価の数%~10%程度が目安とされています。


回収の委託を受ける形では、成功報酬型を採用するケースもあります。この場合は回収額の一定割合が手数料として差し引かれます。

弁護士に依頼した場合の費用

弁護士に債権回収を依頼した場合は、「相談料+着手金+成功報酬+実費」の構成が一般的です。費用の目安を以下にまとめます。


費用の種類相場の目安
相談料1時間あたり5,000円~1万円(初回無料の事務所もある)
着手金10万~30万円程度(債権額や回収方法によって変動)
成功報酬回収額の10~20%程度
実費内容証明郵便代・印紙代・交通費など

内容証明の送付のみであれば3万~5万円程度で済むケースもありますが、訴訟や強制執行に進むと費用は加算されます。少額の債権では、回収額よりも弁護士費用が上回る「費用倒れ」になるリスクがある点にも注意しましょう。

費用を比較する際のポイント

依頼先を決める際は、費用の安さだけでなく、以下の観点を総合的に比較して選ぶのがおすすめです。


比較の観点確認すべき内容
回収の見込み額回収できそうな金額と費用を比べて、手元に残る金額を試算する
債権の種類回収対象が特定金銭債権であれば、債権回収会社も依頼先の候補になる
自社の人員・時間自社での対応にかかる手間を考慮し、外部委託のメリットと比較する
回収の確度費用が安くても回収できなければ意味がない。方法ごとの回収率も検討する

債権回収会社の業務の流れ


債権回収業者の業務の流れは、以下のとおりです。


1.電話や郵便を使った連絡

2.内容証明郵便の送付

3.裁判所に支払督促を申し立てる

4.強制執行を行い相手の財産を差し押さえる

電話や郵便を使った連絡

まず債務者に対して電話で支払いの催促を実施します。電話番号が不明な場合や、料金未納で電話がつながらない場合は、請求書を郵送して連絡を取ります。

内容証明郵便の送付

電話や郵便で連絡が取れなかった場合は、内容証明郵便を送ります。内容証明郵便とは、いつ・どのような内容の書面を・誰から誰宛てに送ったかを日本郵便が証明するものです。裁判の証拠としても利用できます。


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裁判所に支払督促を申し立てる

内容証明郵便を送っても支払いに応じない場合、裁判所に支払督促を申し立てます。支払督促とは、金銭の支払いを求める債権について、迅速に債務名義を取得するための特別な裁判手続きです。数ある裁判手続きの中でも、もっとも早く債務名義を得られる手段として活用されています。

強制執行により相手の財産を差し押さえる

裁判で「債務名義」を取得し、執行文などの書類がそろえば、裁判所に強制執行の申立てをします。強制執行とは、債務者の財産から強制的に支払いを受けるための手続きです。


例えば、債務者が価値のある不動産を保有していれば、強制競売の申立てをするのが一般的です。


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2020年の民事執行法改正で変わった財産調査


債権回収では、債務者がどこにどのような財産を持っているかを把握する作業が重要な課題です。2020年4月施行の改正民事執行法では、債務者の財産情報を得るための制度が強化されました。


ここでは、改正のポイントを2つ解説します。

財産開示手続の罰則強化

財産開示手続とは、裁判所が債務者を呼び出し、保有する財産について報告させる手続きです。


改正前は、呼び出しに応じなくても「30万円以下の過料」という軽い制裁にとどまっていたため、実効性に課題がありました。実際、申立件数の約40%が債務者の不出頭で終了していたとされています。また、財産開示手続を申し立てるために確定判決や調停調書などが必要でした。つまり、裁判で勝訴するか調停を成立させなければ、この手続きは使えませんでした。


こうした課題を受けて、改正法では2つの見直しが実施されました。


1つ目は罰則の強化で、不出頭や虚偽報告に対する制裁が「6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金」という刑事罰に引き上げられています。過料は行政上の制裁にすぎませんが、懲役・罰金は前科がつく刑事罰であり、債務者への抑止力が格段に高まりました。


2つ目は申立て要件の緩和です。改正後は、公正証書や仮執行宣言付支払督促も財産開示手続申立ての根拠書類として認められたため、判決の確定を待たずに申立てができるようになりました。

第三者からの情報取得手続の新設

改正民事執行法では、債務者本人ではなく第三者から財産情報を取得する制度も新設されました。裁判所を通じて、以下の機関に対して照会が可能です。


照会先取得できる情報
銀行・証券会社預貯金口座・有価証券の情報
市区町村・日本年金機構給与(勤務先)の情報
登記所不動産の情報

給与(勤務先)情報の取得は、養育費等の特定の債権に限られており、一般的な商取引の債権回収では利用できません。


なお、照会の種類によって手続きの条件や債務者に知られるタイミングが異なります。


預貯金・有価証券については、財産開示手続を事前に実施していなくても申立てが可能です。債務者への通知は情報提供の約1カ月後に届くため、その間に差し押さえの手続きを進められます。


不動産・給与については、3年以内に財産開示手続を実施済みであることが申立ての要件です。また、裁判所の決定が債務者に送達されるため、債務者に事前に知られる点も押さえておきましょう。

債権回収会社に依頼したほうがよいケース

債権回収会社に依頼したほうがよいケースとして、主に以下の2つが挙げられます。


・自社での回収の見込みがない

・自社に債権回収のノウハウがない

自社での回収の見込みがない場合

取引先の支払い能力が認められない場合や、取引先が意図的に支払いを拒んでいる場合は、債権回収会社への依頼を検討しましょう。電話や郵便で催促を繰り返すだけでは解決が難しいケースでも、回収のプロに任せれば時間と手間を減らしながら、未回収分を取り戻せる可能性が高まります。

自社に債権回収のノウハウがない場合

債権回収の経験がない場合、無駄な調査や手続きが重なり、想定以上に費用がかさむおそれがあります。費用を抑えようとして回収に失敗してしまっては本末転倒です。


特に企業に対する債権回収は金額が大きくなるケースが多く、回収の失敗が連鎖倒産のリスクにつながるおそれもあります。ノウハウがない場合は、債権回収のプロに依頼するのが得策です。

債権回収会社に依頼するメリット・デメリット


法務大臣の許可を得た債権回収会社は、債権回収の専門家です。依頼するメリットとデメリットを整理しました。

<メリット>

1. 回収にかかる業務負担がなくなる

自社で債権を回収するには法律の知識が必要になります。手紙一通とっても書式や記載内容が決まっており、調べながら対応していると時効が成立してしまうおそれもあります。プロに任せれば、迅速で的確な対応が期待できます。


2. 債務者が破産しても損失を避けられる

債権をサービサーに譲渡済みであれば、その後に債務者が破産した場合でも、譲渡した側に未回収分の損失は発生しません。


3. 顧客とのトラブルを回避できる

顧客への債権回収は慎重に進めなければならず、精神的な負担も大きくなります。回収のプロに任せれば、取引先と直接かかわる場面を減らせるため、トラブルの予防につながります。

<デメリット>

1. 対応可能な債権が限定される

債権回収会社が取り扱えるのは「特定金銭債権」に限られます。特定金銭債権とは、金融機関の貸付債権やリース・クレジット債権、ファクタリング業者の金銭債権、倒産手続中の者が保有する金銭債権などです。一般的な売掛金は対象外となるケースがあります。


2. 債権額面より安値での売却になる

債権を債権回収会社に譲渡する場合、買取価格は債権の額面より低く設定されます。満額の回収は期待できません。


3. 違法な悪徳業者も存在する

法務大臣の許可を受けた業者以外にも、違法に営業する悪質な業者が存在します。法外な手数料を要求されるケースもあるため、法務省のホームページで許可業者の一覧を必ず確認しましょう。


4. 手数料が発生する

回収の委託を受ける方式では、回収額に応じた手数料が差し引かれます。回収できた金額がそのまま手元に入るわけではない点に注意が必要です。

売掛保証を活用すれば回収業者への依頼を避けられる

未入金になった取引代金は、自社で回収するにしても、社外に委託するにしても、全額を取り戻せる保証はありません。支払猶予を求められれば、入金がさらに遅れてしまいます。


こうしたリスクをあらかじめ抑えられるのが、売掛保証サービスです。売掛保証サービスとは、取引先が売掛金を支払えなくなった場合に、保証会社が代わりに代金を支払う仕組みを指します。倒産や支払い遅延が起きても売掛金を受け取れるため、差し押さえや訴訟にかかる費用・時間を丸ごと省けます。


関連記事

売掛保証とはなにか メリットやデメリット、実際の利用事例をご紹介

URIHOなら未回収リスクをあらかじめ解消できる


「URIHO(ウリホ)」は、取引代金の未入金時に代わりにお支払いする売掛保証サービスです。月額定額制のため、取引先ごとに個別の審査料はかかりません。


URIHOを導入すれば、取引先の倒産や支払い遅延が発生した場合でもURIHOが代金を立て替えて支払います。未回収リスクの解消に加え、与信管理業務の効率化や売上拡大の後押しにもつながるでしょう。


すべての手続きがWebで完結するため、スピーディに保証を利用できます。初回の保証開始日から30日間は無料で利用可能です。未回収の不安を解消し、本業に集中したい方は、ぜひURIHOの利用を検討してみてください。

まとめ

債権回収会社(サービサー)は、法務大臣の許可を受けた債権回収のプロです。弁護士との違い、費用の仕組み、業務の流れを理解した上で、自社で対応するか外部に依頼するかを判断しましょう。


2020年の民事執行法改正により、財産開示手続の罰則が強化され、第三者からの情報取得手続も新設されました。回収手段は広がっていますが、債権回収には依然として時間や労力がかかります。


未回収リスクをあらかじめ抑えたい場合は、売掛保証サービス「URIHO(ウリホ)」の活用もご検討ください。取引先の倒産や支払い遅延に備えながら、安定した経営基盤を整えられるでしょう。

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売掛金の差し押さえとは?回収の手順や注意点を解説 取引先が売掛金を支払ってくれないとき、まずは電話やメール、内容証明郵便で催促するのが一般的です。それでも回収できない場合は、裁判所の力を借りて相手の財産を確保する「差し押さえ」に移りましょう。 この記事では、差し押さえの基本的な仕組みから、手続きを進めるための具体的な手順、そして実施前に知っておきたい注意点まで解説します。 差し押さえとは 差し押さえとは、代金を支払わない相手の財産を裁判所が確保し、勝手に処分できないようにする法的手続きです。確保した財産は最終的に換価され、未払いの売掛金に充てられます。 ここでは、差し押さえの要件、対象となる財産の種類、メリットを順に説明します。 差し押さえには「債務名義」が必要 差し押さえを実施するには、「債務名義」と呼ばれる公的な文書を取得しなければなりません。 債務名義とは、相手にお金を支払う義務があると裁判所や公証人が認めた文書を指します。主な債務名義の種類は、以下のとおりです。 債務名義の種類 概要 確定判決 裁判で勝訴し、上訴期間が過ぎて確定した判決 仮執行宣言付判決 確定前でも強制執行が認められた判決 和解調書 裁判上の和解が成立したときに作成される調書 調停調書 民事調停が成立したときに作成される調書 執行認諾文言付公正証書 公証役場で作成された、強制執行に応じる旨が記載された公正証書 仮執行宣言付支払督促 簡易裁判所の書記官が発する支払督促に仮執行宣言が付されたもの もっとも代表的な債務名義は確定判決ですが、判決を得るには裁判を起こして勝訴しなければならず、時間も手間もかかります。そのため、裁判を経ずに債務名義を取得する方法も把握しておきましょう。 例えば、取引を始める段階で執行認諾文言付公正証書を交わしておけば、相手が支払いに応じないとき、訴訟なしで差し押さえの申し立てが可能です。また、簡易裁判所を通じた支払督促を利用すれば、通常の裁判よりも短い期間で債務名義を取得できます。 関連記事:「支払督促」とは?少額訴訟とは違う?必要な費用や流れを解説 差し押さえできる財産の種類 差し押さえの対象となる財産は、大きく「債権」「不動産」「動産」の3種類に分かれます。 種類 具体例 債権 売掛金、銀行預金、給与 不動産 土地、建物 動産 現金、商品、機械設備、車両 売掛金の回収では、「債権」の差し押さえがもっともよく利用されます。売掛金や銀行預金などの金銭債権であれば、第三債務者(相手の取引先や銀行)から直接取り立てられるため、競売のような換価手続が不要です。ただし、相手がどのような債権を持っているかを事前に把握するのは簡単ではありません。 「不動産」は価値が高く隠しにくいため、差し押さえの対象としては有力です。競売にかければ一括で大きな金額を回収できる可能性があります。差し押さえた物件が賃貸として運用されていれば、売却せずに賃料収入を売掛金に充てる方法も選べます。一方で、競売には数十万~数百万円の予納金が必要な上、売却完了まで半年~1年以上かかるケースもあります。 「動産」は現金や貴金属であれば資金化しやすく、予納金も不動産ほどかかりません。しかし、商品や機械設備は価値が不安定で、買い手が見つからず売却できないリスクがあります。 なお、すべての財産を差し押さえられるわけではありません。生活に必要な衣類や家具、仕事に必要な道具、66万円までの現金などの「差押禁止財産」は、差し押さえ対象外です。給与については、原則として手取り額の4分の3が差し押さえ禁止とされています(手取り額が44万円を超える場合は、一律33万円が差し押さえ禁止額となります)。 差し押さえのメリット 差し押さえのメリットは、売掛金を回収できる可能性が高まる点です。裁判所が相手の財産を確保するため、財産を隠されたり勝手に売却されたりする心配がなくなります。 もう一つのメリットは、相手に強い心理的な圧力をかけられる点です。特に売掛金(債権)の差し押さえでは、相手の取引先(第三債務者)にも裁判所から通知が届きます。差し押さえの事実が取引先に知られると、信用問題に発展しかねないため、相手は早期に支払いに応じる場合があります。 相手の取引先が大企業であれば、圧力はさらに強まります。大企業の契約書には「取引相手が差し押さえを受けた場合、契約を解除できる」と定められているケースが多く、相手は主要な取引先を失いかねません。 取引先を失うおそれがあるため、差し押さえは売掛金の支払いを促す強い要因となります。 差し押さえの手順 差し押さえは、法律で定められた手順に沿って進める必要があります。 ここでは、仮差し押さえから強制執行までの流れを6つのステップに分けて紹介します。 ステップ1:相手の財産を特定する 裁判所が対象者の財産を自動的に探してくれるわけではないので、差し押さえを始める前に、相手がどのような財産を持っているか債権者が自力で調査しなければなりません。 売掛金を差し押さえたい場合は、相手がどの企業と取引しているのかを把握する必要があります。取引先の名称だけでなく、取引内容、売掛金の金額、支払期日まで分かっていると、差し押さえが無駄に終わるリスクを減らせます。 情報をもっとも集めやすいのは、長年にわたって取引を続けてきた債権者自身です。相手の事業内容や取引先の動向は、日頃のやり取りの中で自然に見えてくるものです。弁護士に調査を依頼する方法もありますが、普段の取引で得た情報と組み合わせると、より正確に財産を特定できるでしょう。 ステップ2:仮差し押さえを申し立てる 財産が特定できたら、裁判所へ仮差し押さえの申し立てを行います。 仮差し押さえは、訴訟の結果が出る前に相手の財産を一時的に凍結し、処分や隠匿を防ぐための手続きです。申し立て先は、相手や取引先の住所地、もしくは差し押さえの対象がある場所を管轄する裁判所です。 申し立て時には、売掛金の存在を裏づける契約書、請求書、取引履歴、陳述書を一緒に提出します。 仮差し押さえの申し立てには債務名義が不要で、裁判官が「確からしい」と判断できる程度の資料があれば認められます。早ければ申し立てから1~2週間で実施できるため、相手が財産を処分する前に手を打てる点がメリットです。 ステップ3:裁判所で審理を受ける 申し立て後は、裁判所で審理が始まります。例えば東京地裁の場合、申し立てから3日以内に裁判官との面談が設定されるのが通例です。 仮差し押さえの審理は、通常の裁判のように公開の法廷で両者が向き合う形式ではなく、債権者側だけが裁判官と非公開でやり取りする仕組みとなっています。相手に仮差し押さえを申し立てた事実を知られると、財産を隠されるおそれがあるからです。 審理の場では、裁判官から仮差し押さえの必要性について質問を受けたり、提出書類の訂正や補足を求められたりします。書類に不備があると裁判官から補正を求められ、その分だけ手続きに時間がかかります。申し立て前に、資料をしっかりと整理しておきましょう。 ステップ4:担保金を納付し、仮差し押さえを実施する 裁判所が仮差し押さえを認めると、債権者に担保金の供託を命じます。担保金の目安は、請求金額の10~30%程度です。例えば500万円の売掛金であれば、50万~150万円程度が目安になります。 仮差し押さえは、まだ裁判で結論が出ていない段階で相手の財産を凍結する措置です。後の裁判で「相手に支払い義務がなかった」と判断された場合、財産を凍結された相手は不当な損害を受けたことになります。担保金の納付は、そのような場合の賠償に備えるために必要とされます。 担保金の供託が完了すると、裁判所は仮差し押さえの決定を出します。売掛金を仮差し押さえした場合、まず第三債務者(相手の取引先)に「支払いを止めるように」という通知が届きます。 相手への通知は少し遅れて届く仕組みなので、先に売掛金が回収されてしまう事態を防げます。 ステップ5:債務名義を取得する 仮差し押さえだけでは、まだ売掛金を直接回収できません。仮差し押さえはあくまで「相手の財産を一時的に凍結する」措置であり、お金を受け取る権利を得たわけではないからです。 相手が仮差し押さえを受けて自主的に支払いに応じてくれれば解決しますが、そうでない場合は訴訟や支払督促、民事調停などの手続きを利用して債務名義を取得する必要があります。 注意したいのは、訴訟を起こさず放置していると、相手から仮差し押さえの取り消しを求められる可能性がある点です。相手は「起訴命令の申立て」によって、一定期間内に訴訟を起こすよう裁判所に請求できるからです。 仮差し押さえの完了後は、速やかに訴状や証拠書類の作成に取りかかり、訴訟の提起まで進めておきましょう。 ステップ6:強制執行を申し立てる 債務名義を取得したら、裁判所に強制執行を申し立てます。申し立てには、債務名義の正本、執行文、送達証明書などが必要です。執行文とは、債務名義に基づいて強制執行を許可する旨が記された文書で、裁判所の書記官や公証人に作成を依頼する必要があります。 強制執行が認められると、裁判所が相手の財産を差し押さえ、売却や取り立てによって換金し、未払いの売掛金に充てます。売掛金(債権)を差し押さえた場合は、第三債務者から直接取り立てる形になります。 仮差し押さえした財産についても引き続き強制執行に移行できるため、確実に回収を進められるでしょう。 差し押さえの注意点 差し押さえは強力な回収手段ですが、万能ではありません。費用や時間の負担が大きいため、手続きを始める前に知っておきたい注意点があります。 以下の4つのポイントを把握しておくと、手続きの見通しを立てやすくなるでしょう。 財産の特定が難しい 差し押さえでもっともハードルが高いのは、相手の財産を自力で特定しなければならない点です。相手の銀行口座がどこにあるのか、どの企業と取引しているのかは、外部からは簡単に把握できません。 2020年の民事執行法改正により「財産開示手続」が強化されるとともに、「第三者からの情報取得手続」が新設され、以前よりは調べやすくなりました。「第三者からの情報取得手続」では、銀行や証券会社、市区町村や年金事務所に対して、裁判所を通じて情報の開示を求められます。 しかし、手続きには時間がかかる上、必ずしも十分な情報を得られるとは限りません。日頃から取引先の経営状況や取引関係をしっかりと観察しておきましょう。 手間と時間がかかる 仮差し押さえの申し立てから強制執行が完了するまでには、相当な時間が必要です。仮差し押さえは早ければ1~2週間で実施できますが、その後の訴訟は判決まで数カ月~1年以上かかるケースもあります。 書類の準備や裁判所とのやり取りも多く、本業に割ける時間が減りがちです。弁護士に依頼する場合は着手金や報酬金も発生するため、回収したい金額と費用のバランスを事前に見積もっておきましょう。 少額の売掛金に対して多大な時間と費用をかけると、かえって損失が膨らむ場合もあります。 相手の財産状況によっては回収できない 差し押さえの手続きを最後まで進めても、相手に財産がなければ売掛金は回収できません。また、相手に対し裁判所から「破産手続開始決定」が出された場合には、個別の差し押さえの効力そのものが失われます。 破産手続きが始まると、裁判所が「破産管財人」を選任します。破産管財人とは、破産した相手に代わって財産の管理や処分を担当する人物で、通常は弁護士が就任します。 破産管財人が選任されると、相手の財産はすべて「破産財団」に組み込まれます。破産財団とは、破産した相手が持つ財産をひとまとめにしたもので、すべての債権者へ公平に分配するために管理されます。破産財団に組み込まれた財産には個別の差し押さえが及ばなくなるため、原則としてすでに差し押さえていた財産であっても回収できません。 また、ほかの債権者がすでに同じ財産を差し押さえている場合は、回収額が債権者の間で分配されるため、全額を取り戻すのは難しくなります。 相手の経営状態が悪化してから動き出すのでは遅い場合もあるため、異変を感じたら早めの対応を心がけましょう。 まとまった金額の担保金を用意する必要がある 仮差し押さえを利用する場合、請求金額の10~30%に相当する担保金を法務局に供託しなければなりません。 例えば1,000万円の売掛金であれば、100万~300万円の資金が必要です。 担保金の割合は一律ではなく、売掛金の証拠がどれだけそろっているか、相手が被る不利益の大きさなどを裁判所が総合的に判断して決定します。売掛金の存在を裏づける契約書や請求書がしっかりそろっている場合は10~15%程度に抑えられる傾向がありますが、証拠が不十分だと30%近くを求められる場合もあります。 訴訟が長引けば、その間は担保金が手元に戻りません。資金繰りに余裕がないときは、担保金の負担だけで経営を圧迫するおそれがあります。 仮差し押さえに踏み切るかどうかは、回収したい売掛金の金額と手元資金のバランスを見ながら、慎重に判断しましょう。 売掛金の未回収リスクを抑えるには? 差し押さえは手間も時間もかかる上、相手の財産状況次第では回収が困難になる場合があります。そもそも差し押さえが必要になる状況をつくらないことが理想です。最初から未回収を防ぐ仕組みを取り入れておけば、裁判にかかる費用や労力を丸ごと省けます。 未回収リスクを抑える方法として、「売掛保証サービス」の活用があります。売掛保証サービスとは、事前に保証会社と契約を結び、対象となる取引先の与信審査を通過しておくことで、取引先が売掛金を支払えなくなった場合に、保証会社が代わりに代金を支払ってくれる仕組みです。 取引先の倒産や支払い遅延が起きても売掛金を確実に受け取れるため、差し押さえのように長い時間と高い費用をかけて回収に動く必要がありません。本業に集中できるのが大きな利点です。 また、保証会社が取引先の信用力を審査してくれるため、新しい取引先との取引を始める際の判断材料としても役立ちます。与信管理の負担を軽減できるので、特に限られた人員で経営している中小企業にとっては心強い味方になるでしょう。 関連記事:売掛保証とはなにか メリットやデメリット、実際の利用事例をご紹介 まとめ 差し押さえは、売掛金を回収するための最終手段です。「債務名義」を取得し、裁判所に強制執行を申し立てれば、相手の財産から未払い分を回収できます。仮差し押さえを先に実施しておけば、訴訟中に財産を隠されるリスクも抑えられます。 一方で、財産の特定が難しい、手続きに時間がかかる、担保金が必要になるといった負担も伴います。相手が破産してしまえば回収の見込みが立たなくなる点も見逃せません。差し押さえに踏み切る前に、回収したい金額と手続きにかかる費用・時間を比較し、本当に採算が合うかを見極めましょう。 売掛金の未回収リスクをあらかじめ抑えたいなら、売掛保証サービスの活用がおすすめです。「URIHO(ウリホ)」は、月額の定額料金で利用できる売掛保証サービスです。取引先の支払いが遅れた場合や、倒産によって売掛金が回収できなくなった場合に、URIHOが代わりに代金を支払います。 未回収の不安を解消し、安定した経営を続けたい方は、ぜひURIHOの利用をご検討ください。 売掛金の差し押さえとは?回収の…