「あの会社、外国人実習生に頼って現場を回していたのに」
―― そんな取引先が、ある日突然、事業を止めることがあります。
2026年10月、東京商工リサーチが公表した調査によると、
外国人技能実習制度で実習生を受け入れていた企業のうち、法令違反や不正などで実習実施の認定取消処分を受けた企業は、2017年11月の現行制度施行以降で累計754社にのぼります。2026年度も8月までに50社が公表され、前年度と同水準のペースで推移しています。
今回は、倒産とは違う形で事業が止まる“静かな停止”のリスクと、売掛金への影響を解説します。
認定取消企業660社の分析 ― 製造業と建設業で7割
社名が公表された754社のうち、個人事業主などを除く660社について見ていくと、業種の偏りが表れます。
産業別では、製造業が255社(構成比38.6%)で最多、次いで建設業が214社(同32.4%)と続き、上位2産業だけで全体の7割(71.0%)を占めています。以下、サービス業他82社、卸売業45社、農・林・漁・鉱業31社と、労働集約型や人手不足が深刻な業種に集中しています。
業種を細かく見ると、とび工事業51社、土木工事業38社、衣服裁縫修理業35社が上位を占めました。この調査は今回が初の試みで、「外国人労働者に依存して現場を回している会社ほど、認定取消のリスクが高い」という全体像が初めて数字で可視化されました。
認定が取り消されると、何が起きるのか
認定取消処分の影響は、通常の取引トラブルとは比べものになりません。
処分を受けると、受け入れていた外国人技能実習生は他の受入先へ転籍が必要になります。
さらに、取消日から5年間は新たな外国人技能実習生を受け入れることができません。
つまり、人材の供給が突然止まるだけでなく、5年間という長期にわたって現場を支える労働力を確保できなくなるのです。しかも社名が公表されるため、信用失墜も同時に起こります。技能実習生の労働力頼みの企業にとっては、「社名公表による信用失墜とともに死活問題となる」と言えるでしょう。

売上5億円未満が半数超 ― でも「大きな会社」も無関係ではない
規模別の分析は、このリスクが一部の零細企業の問題ではないことを示します。
売上高が判明した552社のうち、最多は1〜5億円未満の185社(33.5%)、次いで10〜50億円未満と1億円未満が各115社(20.8%)で、売上5億円未満が300社(54.3%)と半数を超えました。
一方で、売上100億円以上も38社(6.8%)あり、過去には三菱自動車工業も認定取消処分を受けています。
「うちの取引先は十分な規模があるから大丈夫」
―― その判断は、この分野では通用しません。
すでに24社が休廃業・解散 ― そして2027年4月、制度が変わる
見逃せないのは、認定取消企業660社のうち24社がすでに休廃業・解散の状態にある点です。
認定取消との因果関係は不明とされていますが、技能実習生の受け入れができなくなったことや、信用低下で事業継続を断念した可能性は否定できません。
さらに、技能実習制度は2027年4月以降「育成就労制度」へと改正され、人材確保の機能がより明確になります。
制度の目的が変わり、ルールも厳格化するなか、外国人材への依存度が高い取引先は、今後さらに大きな変化に直面します。国内の技能実習生は2025年末で約45万人にのぼり、多くの現場を支えているだけに、影響は広範囲に及ぶでしょう。
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【出典】
東京商工リサーチ TSRデータインサイト
小林 邦洋
株式会社ラクーンフィナンシャル 審査部 部長
リース会社や保証会社の与信管理セクションにて、長年にわたり信用リスクの調査・分析に従事。現在はラクーンフィナンシャルの審査部部長として、膨大な企業データの分析と審査スキームの構築を指揮する「審査のプロ」。
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