取引先が反社会的勢力とつながっていると、ほかの取引先から契約を切られたり、銀行の融資が止まったりするなど、企業は大きな損害を受ける可能性があります。そのため、反社チェックが欠かせません。
ただし、正しい反社チェックのやり方がわからないまま、手探りで進めている企業も多いでしょう。また、取引先が増えるほど作業量も膨らむため、すべての相手へ同じ手間をかけるのは現実的ではありません。
この記事では、反社チェックのやり方を、リスクの大きさ別に整理して解説します。あわせて、疑いが見つかったときの対処法と、社内体制の整備方法も紹介します。
反社チェックとは?必要な理由や対象になる取引先
「反社チェック」とは、契約や取引を始める前に、相手が反社会的勢力と関係していないか確認する作業を指します。コンプライアンスチェックと呼ばれる場合もあります。政府の犯罪対策閣僚会議は2007年、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を公表しました。指針では、暴力や威力、詐欺的な手法を使って経済的な利益を追求する集団や個人を、反社会的勢力と位置づけています。
まずは、反社チェックが求められる理由と、確認する相手の範囲、実施するタイミングを整理します。
反社チェックが求められる理由
反社チェックが求められる理由は、大きく3つあります。
1つ目は、法令上の要請です。2011年までに、全47都道府県で暴力団排除条例が制定されました。条例では、企業に反社会的勢力との取引を避ける努力義務を課しています。加えて、暴力団の活動を助ける金銭の提供も禁じています。禁止に違反すると、勧告や事業者名の公表を受ける場合もあります。暴力団は組織の実態を隠し、資金を集める手口を巧妙化させているため、企業側での確認が必要です。
2つ目は、取引による損害を避けるためです。反社会的勢力との関わりが表に出ると、以下のような事態が起こります。
・ほかの取引先から契約を切られる
・銀行から融資を止められる、口座を解約される
・上場の審査に通らない
・風評が広がり、取引先が離れる
3つ目は、反社からの不当な金銭要求を避けるためです。代表例は、場所代や用心棒代として支払いを迫る「みかじめ料」、株主総会の妨害をちらつかせて金銭を要求する「総会屋」です。「反社と取引している」と世間へ広めると脅され、要求をのまされる例もあります。
反社チェックは、こうしたリスクから会社を守るために有効です。
反社チェックの対象とタイミング
反社チェックの対象は、取引先企業だけに限りません。取引先の代表者や役員、主要な株主まで含めて確認しましょう。法人の背後にいる個人が反社とつながっている可能性があるためです。
また、自社の役員や従業員、採用予定者も対象です。従業員については、正社員だけでなくアルバイトやパートも対象に含めましょう。SNSを通じて個人と暴力団がつながり、事件に加担する例も報告されています。新たに株主を迎える場面でも確認が必要です。株主に反社関係者がいれば、自社まで反社と関わる会社とみなされます。
実施のタイミングは、新規の契約前が基本です。加えて、契約の更新時や、年に1回の定期的な見直しでも実施しましょう。以前は問題がなかった相手でも、役員や株主が入れ替わる場合があるためです。対象と時期をあらかじめ決めておくと、確認漏れを防げます。
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取引先のリスクを3段階に分ける基準
すべての取引先で反社チェックに同じ手間をかけると、負担だけが増えます。そこで、取引先ごとにリスクを低・中・高の3段階に分ける考え方があります。
リスクの判定に使うのは、主に5つの基準です。5つの基準と判定の目安を、表にまとめました。
| 基準 | 低リスクの例 | 高リスクの例 |
| 取引金額 | 少額・単発 | 高額・売上に占める割合が高い |
| 取引期間 | 単発の取引 | 継続的な取引 |
| 上場・未上場 | 上場企業 | 未上場企業 |
| 業種・業態 | 一般的な業種 | 許認可業種・現金商売 |
| 紹介経路 | 既存取引先からの紹介 | 飛び込み・紹介者が不明 |
基準に当てはまる数が多いほど、リスクは高いと判断します。例えば、0〜1個なら低リスク、2〜3個なら中リスク、4個以上なら高リスクといった目安を決めておきましょう。判定に迷う場合は、高いほうの段階に寄せて扱うと安全です。
ここでは、5つの基準をそれぞれ解説します。
取引金額
1つ目の基準は、取引金額です。
金額が大きいほど、問題が起きたときの損害も大きくなります。高額な取引や、自社の売上に占める割合が高い取引は、リスクを高く見積もりましょう。取引が止まったときに経営へ響く相手ほど、深い確認が必要になるためです。
反対に、単発で少額の取引であれば、リスクは低めと判断して差し支えありません。自社の年商や1件あたりの平均取引額を目安に、金額の区切りを決めておくと運用に迷いません。取引額が増えた場合は、段階の見直しも忘れないでください。判定の結果は一覧にまとめ、社内で共有しておくと運用が安定します。
取引期間の見込み
2つ目の基準は、取引期間の見込みです。
単発の取引か、継続する取引かで、関係の深さが変わります。継続取引では、相手とのつながりが長く続きます。後から問題が発覚したときの影響も、単発の取引より大きくなるでしょう。
基本契約を結んで長く付き合う相手は、リスクを一段高く見積もります。取引を始める段階で、継続の可能性まで見込んで判定するのがポイントです。単発のつもりで始めた取引が続く場合も、判定を更新しましょう。
上場・未上場
3つ目の基準は、上場企業か未上場企業かです。
上場企業は、証券取引所の審査で反社との関係を確認されています。社内のチェック体制も整っている場合が多く、リスクは低めと判断できます。一方、未上場企業は外部の審査を受けていないため、自社での確認が必要です。
ただし、上場企業でも役員の交代や買収で状況が変わる場合があります。上場を理由にチェックを省くのではなく、手間を軽くする材料として扱いましょう。親会社が上場していても、子会社は別に確認するのが原則です。
業種・業態
4つ目の基準は、業種と業態です。
許認可が必要な業種や、現金のやり取りが多い業態は、注意深く確認してください。例えば建設業や不動産業、風俗営業などは、過去に反社会的勢力の介入が問題になった業界です。業種だけで相手を疑うわけではありませんが、確認の深さを決める材料にはなります。自社の取引で多い業種を洗い出し、判定の目安を決めておきましょう。
初めて取引する業界では、業界特有のリスクも調べておくと安心です。
紹介経路
5つ目の基準は、紹介経路です。
長年の取引先からの紹介であれば、一定の信頼を置けます。一方、飛び込みの営業や、紹介者がはっきりしない相手は、リスクを高く見積もりましょう。条件のよすぎる話を持ち込まれた場合も注意が必要です。
誰からどんな経緯で話が来たのかを記録し、判定の材料に加えます。紹介者に話の経緯を確かめるだけでも、不自然な点に気づける場合があります。紹介だからと確認を省くのは危険です。紹介者もだまされている例があります。

リスク別|反社チェックの手順とやり方

リスクの判定基準が決まったら、次はリスク別の反社チェックの手順を決めましょう。
以下、リスクの段階別のチェック手法の具体例を表にまとめました。
| リスク | 公開情報の検索 | 調査会社への依頼 | 警察・暴追センターへの相談 |
| 低 | ○ | - | - |
| 中 | ○ | ○ | - |
| 高 | ○ | ○ | ○ |
表のように、リスクが上がるごとに複数の方法を組み合わせるのがおすすめです。例えば中リスクなら調査会社への依頼を追加し、高リスクならさらに公的な窓口へ相談する、といった使い分けです。仮に低リスクと判定した相手でも、検索で疑わしい情報が出た場合は、中・高の手順へ切り替えましょう。
ここでは、低・中・高それぞれのやり方を、検索キーワードの例や必要な資料まで含めて解説します。
低リスク:インターネット検索や新聞記事検索
低リスクの取引先でも、公開情報の検索は実施しましょう。
はじめに、商号・代表者名・役員名を一覧にまとめます。旧商号や移転前の住所がわかれば、あわせて書き加えておくと検索の精度が上がります。
検索するときは、名前と否定的な言葉を組み合わせるのがおすすめです。組み合わせの例を、表にまとめました。
| 確認する対象 | 検索キーワードの組み合わせ例 |
| 会社 | 会社名+暴力団/摘発/行政処分/詐欺 |
| 代表者・役員 | 氏名+逮捕/容疑/反社/不祥事 |
インターネット検索に加えて、新聞記事データベースの検索も組み合わせると、見落としを減らせます。過去の事件は、Webに残っていなくても新聞記事に残っている場合があるためです。確認する期間は、過去5〜10年が目安になります。新聞記事データベースには、日経テレコンやG-Searchといった有料サービスがあります。
なお、検索で怪しい情報が見つからなかったからといって、反社ではないと証明されたわけではありません。なるべく2つ以上の情報源を組み合わせて確認しましょう。
中リスク:調査会社・興信所へ依頼する
中リスクの取引先には、公開情報の検索に加えて、調査会社や興信所への依頼を検討してください。依頼時には、商号・所在地・代表者名・役員名を伝えましょう。過去の商号や移転前の住所がわかれば、あわせて伝えると調査の精度が上がるはずです。
費用相場は1件あたり数万円ですが、調査の深さによって変わります。報告書が届くまでの日数も確認しておきましょう。また、営業担当者から取引先の印象を聞き取るのも有効です。訪問時の様子や支払いの姿勢など、現場だけが知る情報が判断の材料になります。
調査会社を選ぶ際は、反社関連の調査実績があるかを確かめてください。
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高リスク:警察・暴力追放運動推進センターへ相談する
高リスクの取引先や、調査で疑わしい材料が集まった場合は、警察や暴力追放運動推進センター(暴追センター)へ相談します。
警察は、暴力団排除に取り組む事業者に対し、事案に応じて情報を提供しています。ただし、誰でも自由に照会できる窓口ではありません。疑いを持つに至った理由を説明できる状態で相談するのが前提です。
暴追センターは、各都道府県に置かれた公的な相談窓口です。弁護士や警察OBが相談に応じているため、対応に迷ったときの相談先として有効です。
また、相談時には、確認したい相手の氏名と生年月日を整理し、可能であれば住所がわかる資料を用意しましょう。暴力団排除の特約を定めた契約書があれば、あわせて持参してください。相談内容と回答は、日付とあわせて記録に残しておきましょう。
相手に反社の疑いがある場合の対処法

反社チェックの手順がわかったところで、次は疑わしい情報が出た場合の動き方を確認しましょう。
ここでは、相手に反社の疑いがある場合の対処法を3つ解説します。
上司や関係部署に相談する
疑わしい情報が出たら、上司や法務・総務といった関係部署へ報告しましょう。担当者だけで抱え込むと、判断を誤るおそれがあります。報告の際は、検索結果の画面や調査報告書を添えて、疑いの根拠を示しましょう。口頭だけの報告では、後から経緯を確かめられません。
また、登記情報や本人確認書類と照らし合わせて、ヒットした情報が取引先と同一人物かどうかの確認も必要です。記事には住所や年齢が載っていない場合も多く、同姓同名の無関係な人物だったという例もあるためです。裏付けを取ってから、次の判断へ進みましょう。確認が済むまでは、新規の発注や契約の更新を一時的に止める判断も必要です。
弁護士に相談する
社内で情報を整理したら、弁護士へ相談するのも有効です。
確認するのは、契約を解除できるかどうかの見通しです。契約書に暴力団排除条項があれば、催告なしで解除できる場合があります。条項がない契約では、解除の進め方に法律上の検討が必要です。
相手が反社だと示す根拠が弱いまま取引を切ると、逆に損害賠償を請求されるおそれがあります。訴訟に発展した場合の見通しや、証拠として何を残すべきかまで含めて、助言を受けておきましょう。相談の際は、チェックの記録や契約書を持参すると話が早く進みます。
取引を中止する
解除の見通しが立ったら、取引の中止へ進みます。既存の契約は、暴力団排除条項に基づいて解除するのが基本です。
解除の通知は、内容証明郵便で記録に残る形にしましょう。通知の日付と内容が残っていれば、後から争いになっても経緯を示せます。解除の後は、経緯と証拠を1つのファイルへまとめて保管してください。
新規の取引であれば、契約前に断るだけで済みます。断る際は「社内の審査基準により」といった伝え方に留め、反社の疑いを理由として明かさないのが安全です。中止の過程で脅しや不当な要求を受けた場合は、対応を打ち切り、すぐに警察へ相談してください。
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反社との関わりを防ぐための社内体制の整備方法
取引先ごとに反社チェックを実施するだけでなく、あらかじめ社内体制を整備しておくのも重要です。
ここでは、反社チェックを仕組みとして回すためのポイントを解説します。
反社に対する行動基準を明文化する
まず、反社会的勢力に対する会社の姿勢を文書で定めておきましょう。政府の指針でも、担当者任せにせず、経営トップを含めた組織全体で対応するよう求めています。
例えば「反社会的勢力とは取引しない」「不当な要求には応じない」という基本方針を、社内規程や倫理規程に明記する方法が挙げられます。
行動基準が文書になっていれば、担当者の対応は迷いなく進むはずです。取引を断る場面でも会社の方針として説明できるため、担当者個人が矢面に立たずに済みます。
なお、基本方針は社外へ公表する方法もあります。Webサイトに反社排除の方針を載せれば、取引先や株主への姿勢表明にもなるでしょう。
対応部署や責任者を設置する
反社対応を担当する部署と責任者を決めるのも大切です。窓口が決まっていないと、情報が担当者の手元で止まり、会社としての判断が遅れます。総務部や法務部を対応部署とし、責任者を1名置く形が一般的といえます。
責任者には、警察や暴追センターとの窓口役も担ってもらいます。あわせて、暴力団対策法に基づく不当要求防止責任者に選任し、講習を受けさせる方法もあります。講習では、不当な要求への対応方法を学べます。
窓口を決めたら、現場からの連絡経路も整えましょう。営業担当者が取引先の気になる情報をつかんだとき、すぐ対応部署へ届く形にしておいてください。
対応をマニュアル化する
対応の手順は、マニュアルとして文書にまとめてください。チェックの方法、判定の基準、疑いが出たときの報告先、取引を断るときの手順まで、一連の流れを書き残しましょう。マニュアルがあれば、担当者が替わっても同じ水準で運用できます。
不当な要求を受けた場面の対応例まで載せておくと、現場は落ち着いて動けます。作成後は年に1回見直し、法令の改正や社内の変化を反映してください。マニュアルは、対応部署だけでなく営業部門にも配布しましょう。全員が同じ手順を知っている状態が理想です。
契約書に暴力団排除条項を記載する
取引先と締結する契約書には、暴力団排除条項を入れておきましょう。暴力団排除条項とは、相手が反社会的勢力と判明した場合に、催告なしで契約を解除できる条項です。条項があれば、解除の場面で法的な根拠を示せます。
例えば東京都の暴力団排除条例では、書面で契約を結ぶ際に条項を定める努力義務が置かれています。条例は都道府県ごとに定められているため、自社の地域の条例も確認しましょう。
条項の記載例は、各都道府県の暴追センターがひな形を公開しています。リスクの段階にかかわらず、書面で結ぶ契約には一律で入れるのが基本です。既存の契約に条項がない場合は、更新のタイミングで追加を打診してください。
反社チェックを定期的に実施する
反社チェックは、契約前の1回で終わりにしないでください。取引を始めた後に、相手の役員や株主が入れ替わる場合があるため、既存の取引先でも年に1回を目安に見直しましょう。
すべてを毎年確認するのが難しければ、リスクの高い取引先から優先して見直す方法もあります。チェックの条件・実施日・結果は記録に残し、後から説明できる状態にしておいてください。見直しの結果も、初回と同じ形式で記録します。反社チェックツールには、登録した取引先を自動で再確認する機能を持つものもあります。
反社チェックだけでは防げないリスクに備える
社内体制を整えても、取引先のリスクがゼロになるわけではありません。反社チェックで確かめられるのは、相手が反社会的勢力と関わっているかどうかであり、支払い能力があるかどうかは別の問題です。取引を始めた後に経営が悪化し、代金が支払われない事態も起こるでしょう。
売掛金の未回収リスクまで含めて備えるなら、売掛保証サービスが役立ちます。売掛保証サービスとは、取引先が代金を支払えなくなった場合に、保証会社が代わりに代金相当額を保証する仕組みです。保証会社が取引先の信用力を審査するため、与信管理の手間も軽減できます。
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まとめ
反社チェックは、取引先が反社会的勢力と関わっていないかを確かめる手続きです。すべての取引先に同じ手間をかける必要はありません。5つの基準で取引先のリスクを3段階に分け、手法を使い分ければ、現場の負担を抑えられます。
疑いが見つかった場合は、担当者だけで判断せず、社内報告と弁護士への相談を経て対応を決めましょう。行動基準やマニュアルを社内で整えておけば、担当者が替わっても運用は続きます。
ただし、反社チェックを通過した相手でも、支払いが滞る事態は起こります。反社リスクと信用リスクは別の問題だからです。
取引先の信用リスクまで含めて備えるなら、売掛保証サービスの「URIHO(ウリホ)」が役立ちます。月額9,800円〜の定額で使え、取引先の倒産や支払い遅延が起きたとき、URIHOが代わりに保証金をお支払いします。承認率は95%と高く、取引先の審査を任せられるため、与信管理の手間も軽くなるでしょう。
初回の保証開始日から1カ月間は無料です。取引先の調査に追われる負担を軽くしたい方は、ぜひURIHOの利用を検討してみてください。
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