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未成工事支出金とは 仕掛品もあわせて解説

未成工事支出金とは 仕掛品もあわせて解説

建設業界では、一般的な経理処理と異なる勘定科目を使用して会計処理が行われます。建設業では工場原価の管理が難しいため、ざっくりとした計算をしがちです。

この記事では、一般的な会計では出てこない未成工事支出金という勘定科目について解説いたします。未成工事支出金とはどのような勘定科目か、未成工事支出金の仕訳方法、類似した言葉の

未成工事受け入れ金とはどのようなものか、など知っておきたいポイントを説明します。

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未成工事支出金とは?

未成工事支出金は、建設業界特有の会計基準において、工事の売上が計上される前に、工事にかかる支出を処理するために使用される勘定科目です。建設業界では、工事期間が長期にわたるケースが多く、会計期間を越えて工事が継続されることが珍しくありません。会計期間を越える工事では、決算時に正確な財務状況を報告することが困難です。そのため、完了していない工事にかかる支出を、「未成工事支出金」として仮に計上するのです。


具体的には、工事に関連する費用が発生しているにもかかわらず、それが売り上げとしてはまだ計上されていない状態です。このため、経費のみが計上され、売上と経費の間に不一致が生じ、紙上の業績が正確に反映されない状態になります。事前に一般経費として見積もった金額を計上する方法もありますが、工事完成時には見積もり経費と実際の経費の間に大きな差異が出る可能性があります。


これにより、未成工事支出金という独立した勘定科目が必要となります。未成工事支出金は、会社全体の経費と混同せず、損益計算にも影響を与えないための措置です。


未成工事支出金は、工事が進行中かつ未完了である際に、その工事に関連する費用が発生した場合に用いられます。


工事にかかる費用は、工事完了まで未成工事支出金として仮に計上され、工事の完了後、実際の費用として確定されます。

未成工事支出金の仕訳例

材料費として70,000円支払った場合(工事未完成時)


取引借方金額貸方金額
材料費支払い未成工事支出金70,000円現金70,000円

工事中の材料費として7万円支払った際には、現金から支払いが発生するため、借方に未成工事支出金を、貸方に現金を記入します。

工事完成後の仕訳


取引借方金額貸方金額
経費計上材料費70,000円未成工事支出金70,000円

工事が完成した後、実際にかかった経費として材料費を計上します。この時点で未成工事支出金の勘定を材料費に振り替えます。

外注費として90,000円の請求書が届いた場合(工事未完成時)


取引借方金額貸方金額
外注費請求未成工事支出金90,000円工事未払金90,000円

外注費として9万円の請求書が届いた場合、外注費が未成工事支出金として仮計上されます。未払いの外注費に対しては工事未払金を使用します。

工事完成後の仕訳


取引借方金額貸方金額
経費計上外注費90,000円未成工事支出金90,000円

工事が完了したら、未成工事支出金に計上されていた外注費を実際の経費として計上します。これにより、未成工事支出金の勘定が外注費に振り替えられます。

上記の例に、各仕訳の摘要に「○○工事」という形で具体的な工事名を記載すると複数の工事が同時に進行している場合でも、それぞれの工事にかかる費用を正確に把握することが可能になります。

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仕掛品とは?

仕掛品とは、製造過程が始まったもののまだ完成していない製品を指します。仕掛品は、原材料が何らかの加工を施され、製造プロセスに入った段階で用いられます。仕掛品は未完成品であるため、売上げとしては計上されていませんが、製造開始にともない、原材料費、人件費、加工費などのコストが発生しています。経理上、これらの費用は仕掛品としての資産に計上されます。


仕掛品は一般的な会計で使用される勘定科目であり、業種によって呼称は異なるものの、本質的には同じ概念です。


  • 建設業では「未成工事支出金」
  • 造船業では「半成工事」
  • ソフトウェア業界では「ソフトウェア仮勘定」
  • 不動産業では「開発事業等支出金」

と称されます。


仕掛品と似た概念に「半製品」がありますが、これは製造途中であっても、ある程度完成形に近く、販売可能な状態や保管可能な状態の製品を指します。つまり、半製品は自体が製品として市場に出せる段階のものであり、例としては以下があげられます。


  • ジュース製造工場でボトルに詰められているが、販売のためにはラベルが必要な状態
  • 化粧品工場でパウダーファンデーションが金皿に入れられているが、販売用にはコンパクトケースに入れる必要がある状態
  • 缶詰の内容物が密封されており、販売のためにはラベルや箱詰めが必要な状態

これらの例では、製品が実質的に使用可能であっても、販売のための最終的な準備が必要な段階です。仕掛品とは異なり、半製品は使用可能な状態を指すため、両者を区別することが重要です。会計上、仕掛品と半製品はともに棚卸資産に計上されますが、それぞれが示す製品の状態は異なります。

未成工事受入金とは?

未成工事受入金は、建設業固有の勘定科目で、工事が完了しておらず、引き渡しも完了していない状態で、発注者から工事代金の一部を受領した際に用います。これは一般的な会計での前受金に相当しますが、建設業界では未成工事受入金と称されます。


未成工事受入金の使用条件は、以下の通りです。

  1. 工事中(未完成)に、手付金や中間金として請求代金の一部を受け取った場合。
  2. 決算期を挟んで工事が完成し、工事進行中に決算期を迎えた場合。

未成工事受入金に関連する消費税の取り扱いについては、一般会計の前受金と同様で、前金や中間金を受け取った段階で消費税を計算する必要はありません。売上のタイミングで課税されるため、工事完成後に売上が計上された時点で、仮受消費税として処理します。

まとめ

建設業で使用される会計用語未成工事支出金や未成工事受入金について解説しました。未成工事支出金は、一般会計では仕掛品として、未成工事受入金は前受金として処理される項目です。それぞれの項目の扱いは一般会計と似ています。注意が必要なのは、決算月を跨いで金銭のやりとり(収入・支出)が発生した場合です。工事完成前は仮勘定として計上し、工事完成後は経費や売上として振り替える必要があります。同時にいくつかの工事が進行している場合が多いため、どの工事の金銭を処理しているのか、が分かるように摘要欄などを使用しましょう。


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