「期限の利益の喪失」とは?
契約書の金銭支払の条項で「○年○月○日までに債務を支払う」と取り決めるなど、売掛金などの債務は支払いを期限まで猶予されているケースがあります。これを「期限の利益」と呼びます。
債務者に期限の利益が存在する場合には、債権者としては支払期限が来るまで弁済を請求することはできません。
しかし、債務者が倒産するなど財務状況や信用状態が悪化した場合、支払われない危険があるにもかかわらず、支払期限が来るまで債権者は請求できないというのは、債権者にとって非常に酷なことです。
そのような事態を回避するために、債務者側の信用を低下させる一定の事由が起きた場合は「期限の利益」を主張できなくなる、という条項を契約書に入れることがよく見られます。
これを「期限の利益の喪失」条項と言います。
「期限の利益の喪失」条項の活用方法
契約条項にもとづいて期限の利益を喪失させた場合には、債権者は支払期限を待つことなくただちに債務全額の支払いを求めることができます。
加えて、債権者は訴訟などを起こすことも可能ですし、担保を持っている場合には担保を実行することもできます。
ただ、期限の利益の喪失には「当然喪失」と「請求喪失」の二種類があることに注意が必要です。
当然喪失というのは、所定の事由が生じた際に、請求などの行為を行うことなく期限の利益が喪失するものです。
一方で、請求喪失は所定の事由が生じたことに加え、債務者に対して請求することによって期限の利益を喪失させることができます。
「期限の利益の喪失」事由の具体例
「期限の利益の喪失」の事由として一般的に定められているものをご紹介します。
まず、当然喪失として定められていることが多いのは以下の場合です。
・債務者が倒産手続に入ること
・支払停止や支払不能
・手形の不渡りや手形交換所の取引停止処分
・事業に関する許認可の取消、営業廃止や解散
以上のように、当然喪失の場合は、事実が客観的に明白で信用回復が不可能またはきわめて困難であるという特徴があります。
次に請求喪失として定められていることが多いのは以下の場合です。
・債務支払の不履行や遅滞
・第三者からの差押・仮差押・仮処分
・担保の毀損・滅失
・契約違反
請求喪失の事由は信用回復の可能性が認められるものであるという点に注意しましょう。
期限の利益の喪失条項は一般的な条項ではありますが、少し複雑かつ細かな点まで注意が必要なので、もし不安な部分がある場合は専門家に相談することもおすすめです。