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債権回収

遅延損害金の解説 支払遅延に対する法的対策とは

遅延損害金

遅延損害金は、支払遅延によって発生する賠償金です。この記事では、遅延損害金についての要点をはじめ、法定利率と約定利率の違いや、遅延損害金発生時の請求利率についてと取引先から遅延損害金を回収するためのプロセスや、支払遅延への保証としての売掛保証について解説します。

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遅延損害金とは?

遅延損害金は、金銭債務の支払期限が遅れた債務者に対して課される賠償金です。

「遅延利息」や「延滞利息」とも呼ばれますが、債務の性質は利息ではなく、あくまで賠償金になります。

遅延損害金の法的扱い

遅延損害金の法的扱いは、民法419条に定められています。

民法419条のポイントは3つです。

遅延損害金とは「金銭債務」において発生する

金銭債務とは、お金に関する債務です。たとえば、商取引で商品と引き換えに発生する代金支払義務は金銭債務です。

  1. 例:A建設がB商事にマンションを販売し、支払期日を6月30日とした。

上記の例の場合、B商事はA建設に対してマンション代金の支払いという金銭債務を持ちます。B商事が6月30日の支払期日に金銭債務を支払えなかった場合、7月1日以降、遅延損害金が発生します。

一方、A建設がB商事に対して持つ債務はマンションの「引渡債務」なので、民法419条は適用されず、たとえマンションの引渡が遅れても遅延損害金は発生しません。B商事は引渡遅延によりかかってしまった宿泊代などの実費をA建設に請求することになります。

遅延損害金の請求には債権者側の損害証明が不要

金銭債務の損害賠償請求をする場合、債権者は損害の証明は必要ありません。

  1. 例:A自動車がB販売店に自動車を販売したが、支払期日を過ぎても支払がされていない

この場合、A自動車はB販売店に対して損害の証明をしなくても遅延損害金を請求することができます。

反対に、B販売店はA自動車から引き渡された自動車になんらかの損害がありA自動車に賠償請求する場合は、損害の証明が必要です。

債務者側に不可抗力があっても遅延損害金は免責されない

金銭債務の債務者は、不可抗力があっても遅延損害金の支払いが免責されません。不可抗力とは、たとえば返済日に自然災害等が発生して返済が遅れることや、銀行のATMのシステム障害により支払いが遅れるといった債務者側に落ち度がない状態を指します。金銭債務の場合、債務者側に不可抗力があっても、遅延損害金の支払いを無かったことにはできません。


これに対し引渡債務の場合、通常不可抗力があると債務は免責されます。たとえば、自然災害等で販売戸建の引渡が遅れた場合、債務者側に落ち度はないため損害賠償金は発生しません。


参考
e-gov法令検索 民法419条

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法定利率と約定利率 遅延損害金で請求できる料率とは

遅延損害金の利率には、法定利率と約定利率の2つがあります。

民法419条には、法定利率と約定利率で約定利率の方が法定利率を超えた場合、約定利率が適用されると記載されています。

金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。

e-gov法令検索 民法419条1項

法定利率は民法で定められた利率で、3年ごとに改定されます。令和5年4月1日から令和8年3月31日までの法定利率は3%*です。

*出典
法務省 令和5年4月1日以降の法定利率について

約定利率は当事者の契約によって自由に定められる利率で、一般的には契約書等で合意されます。

どの利率を使用するか、例を用いて解説します。

  • 例:A建設がB商事にマンションを販売し、支払期日を令和5年2月28日とした。令和5年2月28日に支払いがされず、令和5年3月1日より遅延損害金が発生した。なお、約定利率は定めていない。

この場合、B商事はA建設に対し令和5年3月1日以降、元金に法定利率3%をかけた額を支払わなければなりません。なお法定利率は、履行遅滞が発生した令和5年3月1日現在の法定利率が適用されます。法定利率は3年ごとに変動するため、適用される利率は履行遅滞発生時点の法定利率になります。

  • 例:A建設がB商事にマンションを販売し、支払期日を令和5年2月28日とした。令和5年2月28日に支払いがされず、令和5年3月1日より遅延損害金が発生した。なお、契約書により履行遅滞における約定利率は4%と定めている。

この場合、定められた約定利率4%は履行遅滞発生時点の法定利率3%より高いため、適用される利率は約定利率の4%になります。

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取引先から遅延損害金を回収するまでのプロセス

取引先から遅延損害金を回収するまでのプロセスには、大きく2つあります。

  • 取引先と直接交渉する回収プロセス
  • 裁判所を使った回収プロセス

通常は、①から②へと移行します。

取引先と直接交渉する回収プロセス

取引先と直接交渉する回収は、内容証明郵便での督促を行う手法が一般的です。内容証明郵便を出すことで、郵便局に証明書類として記録が残り、文章が届くことで法律上の効力が発生します。


内容証明郵便の通知には、「●日以内に支払いをしなければ法的措置を取る」旨を記載します。会社の顧問弁護士による督促が効果的です。


取引先とは、以下の点を交渉しましょう。


  • 一括で支払うのか、分割で支払うのか
  • 債務残高確認書の提出依頼(裁判へ移行の際の証拠として)
  • 取引先の確定申告書の提出依頼(財産状況の確認として)
  • 取引先経営者(連帯保証人)の源泉徴収票の提出依頼(財産状況の確認として)

直接交渉は、あくまでも任意交渉となるため強制力はありません。交渉は決裂してしまう可能性もあるでしょう。


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裁判所を使った回収プロセス

直接交渉の結果、交渉が決裂した場合、裁判所を使った回収プロセスへと移行します。


  • 民事調停
    民事調停は、裁判所が選任した調停委員が間に入って話し合いを進める手法です。民事調停はあくまで第三者を交えた「話し合い」であり、白黒つかない可能性は否めません。
  • 支払督促
    裁判所から支払命令の形で取引先に文書を送る方法です。判決ほどの効力はないものの、支払督促を受けた側が異議を述べなければ、取引先の資産差押えなど強制執行ができる権利を得られます。

支払督促は、1回目に支払督促を送り、2回目に「仮執行宣言付支払督促」を送る流れです。取引先から異議申立があれば正式な裁判に移行し、異議がなければ強制執行へと移行します。


  • 訴訟
    訴訟による判決を得ることで、取引先が拒否しても強制執行を行える権限が発生します。

訴訟による回収プロセスは強制力が強いものの、デメリットがあります。判決が出るまでに最低でも半年から1年かかり、回収が長期化することです。その間に財産の隠ぺいや、不動産等の資産を売却されるかもしれません。


これに対する対策として「仮差押え」があります。仮差押えを行うと、判決が出る前であっても取引先の財産処分行為を禁止できます。仮差押えを行うには、債権額の10~30%を目安とした担保金が必要です。


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支払遅延への保証 売掛保証とは

支払遅延が発生している取引先は、経済的に困難に陥っている状況といえます。支払遅延を放置していると状況は悪化の一途をたどるでしょう。

そのため支払遅延が発生したら、できるだけ早急に回収を行う必要があります。しかし、経済的に困窮している取引先から回収することは容易ではありません。法的な回収プロセスであっても、金銭的な負担や時間の捻出といった多大な労力がかかります。


未回収リスクを低減するには、事前に対策を行うことが重要です。


たとえば、「売掛保証」は未回収のリスク回避として効果があります。売掛保証とは、取引先の倒産や、未入金が発生した場合に売掛保証会社が取引代金を支払ってくれるサービスです。


また、未回収による督促業務の削減や、取引先の与信判断をサポートしてくれるメリットがあります。


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まとめ

遅延損害金は、金銭債務において発生する賠償金で、債権者は損害を証明することなく請求が可能です。引渡債務と異なり、不可抗力があっても免責はされません。

遅延損害金の利率は、法定利率と約定利率のいずれかによって計算されます。約定利率が定められていない場合は法定利率を、約定利率が定められている場合は法定利率と比較し、高い方の利率が適用されます。


取引先からの回収プロセスには直接交渉と裁判所を使用する方法があります。直接交渉には強制力がなく、裁判所を使用する場合は時間と金銭といった労力がかかります。


未回収リスクには事前対策が重要です。その一つの手法として売掛保証があります。売掛保証会社が、会社が債務者に代わって未回収代金を支払ってくれるので、回収リスクを低減できます。


遅延損害金の知識は、支払遅延に対する法的対策として有効です。債権者は自身の権利を守るために、遅延損害金の要点を把握し、支払遅延に備えましょう。


売掛金保証サービス「URIHO(ウリホ)」は、取引先の倒産や未入金時に取引代金を代わりにお支払いするサービスです。事前に取引先に保証をかけておくことで、与信管理をしなくても安心して取引を行うことができます。また、督促業務に時間や労力を割く必要がなくなり、営業活動に集中することが可能です。


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