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取引先の未入金が発生したら?回収方法から予防策まで徹底解説

取引先の未入金に対する備えは、万全ですか?

日本の企業間取引では、先に商品やサービスを納品し、後日売掛金を回収する掛け取引が主流となっています。

 

この掛け取引で発生すると困ってしまうのが、期日通りに代金が支払われない、未入金です。

未入金となっている売掛金は当然全額回収しなくてはなりませんが、回収作業には大きな負担を伴います。

 

普段からしっかりと対策を講じて、未入金の発生自体を避けるに越したことはありません。

 

本記事では、未入金が発生した場合に取るべき対応から、売掛金の回収手順、未入金を防ぐ予防策まで、未入金リスクを減らすための方法について解説していきます。

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未入金とは?未収入金との違いは?

※「未入金」の意味や「未収入金」との違いについてご存じの方は、次章「未入金が起こるとこうなる(目次リンク入れてください)」からお読みください。

 

「未入金」とは、請求済みで支払期日を過ぎているのに支払われていない売掛金のことです。

 

原因としては、支払い忘れや請求書の紛失のような単純なミスから、経営状況の悪化により支払いが困難な場合、故意による支払い拒否までさまざまなものが考えられますが、どのような理由であれ、未入金が発生した売掛金は早急に回収しなければ自社の資金繰りに支障をきたすことになりかねません。

 

取引金額が大きい場合はもちろん、少額であっても未入金が積み重なれば、会社に与えるダメージは無視できないものとなります。

 

また、未入金と同じく回収できていないお金を指す言葉として「未収入金(未収金)」があります。

 

未収入金は、会社の本業で取り扱っている商品の売買やサービスの提供以外の取引で発生した未回収のお金のことで、会社の土地や有価証券などの売却金がこれにあたります。

 

債権の発生原因は違っていても、未入金も未収入金も、できるだけ早く回収したいお金である点は共通しています。

未入金が起こるとこうなる

では、未入金が発生する状況とは、どのようなものなのでしょうか。

また未入金が発生するとどうなってしまうのでしょうか。

 

ここでは、実際に未入金が発生した事例を2つ、ご紹介します。

未入金は、会社の規模や取引の内容に関わらず起こり得るトラブルです。

 

自社の状況と比べつつ、2つの事例を読んでみてください。

CASE01:ネットビジネスで売り上げは伸びたが…

A社:食品卸売業 / 年商3.4億

当社ではもともと対面取引を中心に行っていましたが、取引先を開拓するために数年前からネット上でのビジネス展開も始めました。

  

全国を対象にしたことで問い合わせや発注が増え、順調に売上を伸ばす一方で、困ってしまうことも増えてきました。

それが、売掛金の踏み倒しです。

 

便利なネット上での取引はメリットも多いですが、相手の顔が見えず、取引先の情報が不透明でつかみづらいというデメリットもあります。

ホームページなどで取引先の情報を確認するようにはしていますが、やはり相手の顔が見えないと信用の決め手に欠けます。

 

対面で取引をする場合は直接相手を見て判断をしていたので、未入金なんて起こったことはなかったのですが……。

また、遠くにある会社との取引が多くなったため、売掛金の回収にも手間がかかるようになりました。

時間をかけて会社まで行っても払ってもらえないばかりか、知らされていた住所にいなかったこともあります。

 

分割払いで取り決めをした会社も、きちんと支払われるのは最初の数回だけで、支払いが止まってしまうケースが多いです。

回収にかかる手間や費用との釣り合いが取れないので、最近では20万円以下くらいなら回収を諦めてしまっています。

 

CASE02:詐欺会社から…

B社:衣服卸売業 / 年商1.8億

弊社は詐欺被害に遭った経験があります。

 

とある交流会で気の合う経営者と知り合い、仕事をするようになったのですが、あるとき大きな取引の話を持ちかけられました。

 

弊社にとってはかなり規模の大きな内容だったため少し迷いましたが、話があった時点では相手先とは支払い遅延などもなく良好な関係にあると思っていたので、思い切って仕事を請けることに決めました。

 

 

仕事自体は問題なく完了したのですが、入金期日を迎えたときに、事件が発生しました。

支払われるはずの入金がなく、この日以降先方とは連絡がつかなくなり、

慌てて調査会社へ問い合わせましたが、いわゆる「取り込み詐欺」を働いている会社とのことでした。

 

いまだにその詐欺会社の行方は分からず、同業他社でも何件か同様の被害が発生していたようです。

代金が入金されなくても、仕入先への支払いはしなくてはいけないので、会社としての被害額はかなりのものでした。

 

また、それ以上に相手を人として信頼していただけに、心理的なダメージも大きかったです……。

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未入金の発生に気づいたら

もしも実際に未入金が発生したら、どのように行動するべきでしょうか。

未入金の発生は、支払い忘れや請求書の紛失など、故意ではない簡単なミスが原因であることも少なくありません。

 

請求書の発送忘れなどこちらの手違いや勘違いの可能性もありますから、まずは自社に原因のある未入金ではないことを確認してから、行動を開始しましょう。

 

ただし、相手の故意、あるいは故意ではなくても資金繰りの悪化により支払うに支払えない状態にあるような場合は、貸し倒れを防ぐために迅速に動く必要があります。

 

未入金の原因が何であるにせよ、早く回収できるに越したことはないので、早め早めの対応が肝心です。

取引先へ未払い金があることの連絡

支払期日に取引先からの入金がなく、自社に落ち度がないことを確認したら、まずは取引先と連絡を取り「未入金があること」を伝えます。

 

続いて「支払いが遅れている理由」と「支払いが可能な期日」を確認し、あらためて支払い方法や期日を決めましょう。

 

単純なミスであれば、この時点で解決できるケースがほとんどです。

相手が取引に対して不満を抱いていたり、資金繰りに不安があり支払いを渋っていたりする場合は、状況に応じた対応や交渉が必要となります。

 

もっとも手っ取り早い連絡方法は電話ですが、お互いに心理的な負担が少ないうえに催促をしたという証拠が残せるメールも有効です。

 

電話でもメールでも、今後の相手との関係性を考え、いきなり強い調子で催促をしたり、一方的に入金を指図したりすることは避け、丁寧な言葉遣いや柔らかい表現を心がけましょう。

商品の出荷・サービス提供の停止

相手に支払う意思が見られない、もしくは支払う意思はあっても資金がないなど、未入金があることを伝えても入金がない場合は、商品やサービスの提供を一時的に停止するのも有効な手段です。

 

取引先との関係悪化が懸念されますが、すでに未入金が発生している状態のまま、さらに売掛金を増やしてリスクを増大させることは好ましくありません。

 

自社が受ける損害をこれ以上大きくしないことが先決です。

取引先には、未入金となっている代金が支払われるまで、商品の出荷やサービスの提供を停止することを断固とした態度で伝えましょう。

未払いとなった契約書内容を確認

取引先への連絡や交渉と並行して、未入金が発生している売掛金の契約書を確認しましょう。

署名捺印のある契約書や発注書は、のちに法的手段を取る段階へ移行したときに、取引先が代金の支払いについて了承しているという有力な証拠となります。

 

また、契約書の中に「期限の利益喪失条項」「所有権移転時期」についての内容が盛り込まれているかも重要なチェックポイントです。

 

「期限の利益喪失条項」とは、取引先からの入金が遅れた場合に、まだ支払期日が来ていない代金についても支払いを請求できることを定める契約条項です。

 

期限の利益喪失条項が定められている場合、取引先が倒産しそうになったり、契約書に違反したりした場合など契約書に定められている内容に従い、ただちにその取引先に対して自社が持っている売掛金全額の支払いを求めることができます。

 

また、商品の所有権が移転するタイミングを定めた「所有権移転時期」を「代金を支払ったとき」としていた場合は、代金が未払いとなっている商品の所有権は自社にあるため、取引先との売買契約を解除し商品を引き揚げることでわずかでも損失を抑えることができます。

相殺できる債権の確認

取引先からの自主的な支払いが見込めない場合は、売掛金と相殺できる債権がないか調べましょう。

債権回収における「相殺」とは、自社と取引先に同じ種類の債権がある場合に、お互いの債権を打ち消し合って帳消しにすることです。

 

支払いが遅れている取引先に対して、請求するべき売掛金と、自社が支払うべき買掛金が同時に存在している場合に「相殺」を利用することで債権の回収が可能です。

 

相殺をするのに、契約書による事前の取り決めは必要ありません。

一方からの意思表示のみによって行うことができるので、相殺できる債権がある場合はできるだけ早く、お互いの債権を相殺するという意思表示をする「相殺通知書」を取引先に送付してください。

 

また相殺通知書を送付するときは、記録に残し、のちに争いになることを防ぐために内容証明郵便を利用しましょう。

 

相殺は、破産手続きにも優先する強力な手段ですが、契約書に「相殺禁止特約」が設けられている場合や、相殺できない種類の債権である場合は利用できません。

 

相殺を利用した回収を試みる際には、契約書をよく確認し、不安があれば専門家に相談するのもよいでしょう。

相殺通知書の書式例

 

相 殺 通 知 書

××株式会社

代表取締役 ×× ×× 殿

当社は、貴社に対し、令和◯年◯月◯日に貴社から購入した◯◯の売買代金債権(額面額△△万円)の債務を負担しておりますが、他方で、貴社が、令和◯年◯月◯日に、当社に対して発注し、同年◯月◯日に当社が貴社に引き渡した◯◯請負代金債権(額面額△△万円)を有しております。

 

貴社に対する上記債権につきましては、支払期限以降も支払いを受けておりませんので、本書面をもって、上記債権債務を対当額で相殺することを通知いたします。

 

令和◯年◯月◯日

○○県○○市○○-○○

株式会社○○○○

代表取締役 ○○ ○○  印

未払い金回収のための4ステップ

未入金があることを知らせても代金の支払いがない場合や、取引先と連絡が取れず交渉ができないような場合は、法的手段も見据えた売掛金の回収作業に着手します。 

 

取引先が倒産したり、債権の消滅時効が完成してしまったりした場合、売掛金を全額回収できる確率は限りなく低くなります。

 

未入金となっている売掛金を回収し、自社に深刻なダメージを与える貸し倒れを防ぐためには、素早く行動する必要があります。

 

売掛金回収について詳しくはこちら

ステップ1.内容証明の送付

取り決めた期日までに代金を支払う様子がない場合や、電話やメールに応じる気配がない場合、明らかに意図的に支払いを拒んでいると考えられるような場合には、内容証明郵便を利用して「未入金が続けば法的手段を取る」と強めに警告する意味合いを兼ねた「督促状」を送付します。

 

ただし、継続的な取引があるなど、できるだけ取引先との関係を悪化させたくない場合は、まずは督促状よりもニュアンスが柔らかな「催促状」から送りましょう。

 

催促状や督促状に法的な拘束力はありませんが、「いつ・どのような内容の文書を・誰から・誰宛に送ったか」を日本郵便が証明してくれる内容証明郵便で送ることで、相手にプレッシャーを与える効果が期待できるほか、後日法的な場に移行した際には催促を行った証拠として提出できます。

ステップ2.支払督促

内容証明郵便で催促状や督促状を送っても取引先が支払いに応じる様子がみられない場合は、法的手段を用いた回収へと移行します。

最初の手続きとして、まずは簡易裁判所に「支払督促」を申し立て、裁判所から取引先へ代金の支払いを命じる督促状を作成・発行してもらいましょう。

 

一定期間内に相手からの異議申し立てがなければ、続いて「仮執行宣言」を申し立て、「仮執行宣言付支払督促」を出してもらいます。

これが確定すれば、債務名義を取得して強制執行を行うことができるようになります。

支払督促は訴訟と違い短期間で手続きが完了するため、未入金回収の負担を軽くできるメリットがある反面、相手から異議があった場合は通常訴訟へと移行してしまうというデメリットもある方法です。

 

取引先が遠方の場合や相手との間に争いがある場合は、利用を慎重に検討する必要があります。

ステップ3.少額訴訟

請求金額が60万円以下の場合は、「少額訴訟」を利用できます。

通常の訴訟よりも手続きが簡単で、原則として1回の審理で判決まで終わるため回収にかかる費用や時間を大幅に抑えることができます。

勝訴すれば債務名義を取得して強制執行の申し立てができますが、和解による解決も期待できるので、取引先との関係性をあまり悪化させたくない場合にも有効です。

メリットが多く便利な制度ですが、相手が少額訴訟を望まない場合は通常訴訟に移行してしまうことや、判決に不服があっても控訴ができないなどのデメリットも存在します。

 

また1日で終わらせるために、期日までに必要な書類や証拠をすべて自社で用意しなければなりません。

少額訴訟は、相手との間に争いがない場合や、内容が複雑ではなく必要な書類がそろっている場合におすすめの手段です。

ステップ4.最終手段:弁護士に依頼

もはや当事者間での解決が不可能な状況に陥った場合や、通常訴訟や強制執行など複雑な手続きを必要とする法的手段を取らなければならない段階に至った場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談しましょう。

 

同じ内容証明郵便を送るにしても、弁護士の名前で送ることでより強いプレッシャーを与え、支払いに応じてもらえる場合もあります。

 

費用はかかるものの、依頼すれば煩雑な回収業務を丸ごと任せてしまうこともできるので、回収業務に追われて本業に影響が出る心配がなくなる点は大きなメリットです(司法書士は、司法書士法3条により、金額が140万円以下の案件のみ取り扱いが可能)。

  

ただし、相手が差し押さえられるだけの資産を持っていない場合は、訴訟で勝訴しても売掛金の回収ができないばかりか、成功報酬を支払う義務を負うことになります。

   

専門家による回収業務の代行は、確実に回収が見込めるだけの資産が相手にあることを確認できている場合に依頼しましょう。

未入金や売掛金の未回収リスクを防ぐには?

ここまで未入金が発生した場合の対応についてご紹介してきましたが、大きな負担がかかる回収業務を避けるためには、まず未入金を発生させないことが重要です。

  

ここでは、未入金の発生を未然に防ぐために実践したい3つの方法を解説します。

売掛金の適切な管理

売掛金は後日回収しなければならないお金ですから、厳密に管理し、きちんと請求しなくてはいけません。

売掛金には時効があり、請求しないまま支払期限から5年が過ぎると債権が消滅してしまうため、未入金に気付かず放置していると最終的には回収が不可能になってしまいます。

 

未入金を見逃さないためには、売掛金の残高を確認しやすくする「売掛年齢表」の活用や、「売上債権回転率」「売上債権回転期間」を算出し、売掛金の回収状況を把握することが大切です。

 

また、未入金の原因は、人的なミスによるものも少なくありません。

 

請求書の記入間違いや送付漏れなどのケアレスミスに対する防止策を講じるほか、ミスが発生したときに迅速に取引先への対応ができるよう、日頃から関連部署とのスムーズな連携体制を作っておきましょう。

与信管理の強化

互いの信用の上に成立する企業間の掛け取引では、取引先の経営状況や支払い能力を見極め、適切な取引額を設定する「与信審査」と「与信管理」も重要です。

   

取引先の経営状況を見誤り、相手の支払い能力に見合わない大きな掛け取引を行ってしまうと、未入金の発生を招き自社が損害を受ける可能性があります。

  

継続的に取引している会社でも、定期的に情報を収集し、経営状況や財務内容の変化に合わせて取引額を増減させることで、未入金の発生を防ぐことが可能です。

   

業績が好調な取引先に対しては取引限度額を増やし、経営が悪化している兆候がみられる取引先の取引額は減らす・現金取引に切り替えるなどして、適切な与信管理を徹底しましょう。

売掛保証サービスの利用

未入金トラブルに対する不安はあるけれど、売掛金管理や与信審査にそこまでコストをかけることができない・人的リソースが足りないといった場合には、売掛金の未回収リスクを保証してくれる「売掛保証サービス」を利用する方法もあります。

売掛保証サービス「URIHO」では、取引先の倒産や売掛金の入金遅延が発生したときに、取引先に代わって売掛金を支払ってくれるので、万が一未入金が発生しても自社がダメージを受けることはありません。

  

また、自社だけでは正確な与信審査が難しい遠方にある企業や新設企業、個人事業主も保証対象にできるため、新規の取引先との掛け取引も安心して行えます。

  

初期費用や保証金手数料が不要なうえに自社に合ったプランを選んで利用できる定額制のサービスなので、あまりコストをかけずに未入金トラブルに備えたい中小企業やベンチャー企業におすすめです。

未入金は「起こる前」に防ぐ:売掛保証サービスのススメ

企業の規模や取引金額の大小を問わず、信用取引を行う以上は、未入金が発生するリスクは避けられません。

しかし、厳密な売掛金管理と正確な与信管理を徹底すれば、未入金トラブルが発生する確率をゼロに近づけることは可能です。

  

さらに、それらの対策に加えて売掛保証サービスを導入しておけば、もし未入金が発生してしまったとしても、保証会社が売掛金を保証してくれるので自社が損害を被る心配はなくなります。

  

取引先の倒産や取り込み詐欺のような、自社ではどうしようもない未入金トラブルに対しても、備えがあると考えれば安心ですね。

  

未入金を防ぐためにできる限りの対策を取ったうえで、それでも起きてしまう未入金トラブルに対する最後のとりでとして、売掛保証サービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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売掛金の差し押さえとは?回収の手順や注意点を解説 取引先が売掛金を支払ってくれないとき、まずは電話やメール、内容証明郵便で催促するのが一般的です。それでも回収できない場合は、裁判所の力を借りて相手の財産を確保する「差し押さえ」に移りましょう。 この記事では、差し押さえの基本的な仕組みから、手続きを進めるための具体的な手順、そして実施前に知っておきたい注意点まで解説します。 差し押さえとは 差し押さえとは、代金を支払わない相手の財産を裁判所が確保し、勝手に処分できないようにする法的手続きです。確保した財産は最終的に換価され、未払いの売掛金に充てられます。 ここでは、差し押さえの要件、対象となる財産の種類、メリットを順に説明します。 差し押さえには「債務名義」が必要 差し押さえを実施するには、「債務名義」と呼ばれる公的な文書を取得しなければなりません。 債務名義とは、相手にお金を支払う義務があると裁判所や公証人が認めた文書を指します。主な債務名義の種類は、以下のとおりです。 債務名義の種類 概要 確定判決 裁判で勝訴し、上訴期間が過ぎて確定した判決 仮執行宣言付判決 確定前でも強制執行が認められた判決 和解調書 裁判上の和解が成立したときに作成される調書 調停調書 民事調停が成立したときに作成される調書 執行認諾文言付公正証書 公証役場で作成された、強制執行に応じる旨が記載された公正証書 仮執行宣言付支払督促 簡易裁判所の書記官が発する支払督促に仮執行宣言が付されたもの もっとも代表的な債務名義は確定判決ですが、判決を得るには裁判を起こして勝訴しなければならず、時間も手間もかかります。そのため、裁判を経ずに債務名義を取得する方法も把握しておきましょう。 例えば、取引を始める段階で執行認諾文言付公正証書を交わしておけば、相手が支払いに応じないとき、訴訟なしで差し押さえの申し立てが可能です。また、簡易裁判所を通じた支払督促を利用すれば、通常の裁判よりも短い期間で債務名義を取得できます。 関連記事:「支払督促」とは?少額訴訟とは違う?必要な費用や流れを解説 差し押さえできる財産の種類 差し押さえの対象となる財産は、大きく「債権」「不動産」「動産」の3種類に分かれます。 種類 具体例 債権 売掛金、銀行預金、給与 不動産 土地、建物 動産 現金、商品、機械設備、車両 売掛金の回収では、「債権」の差し押さえがもっともよく利用されます。売掛金や銀行預金などの金銭債権であれば、第三債務者(相手の取引先や銀行)から直接取り立てられるため、競売のような換価手続が不要です。ただし、相手がどのような債権を持っているかを事前に把握するのは簡単ではありません。 「不動産」は価値が高く隠しにくいため、差し押さえの対象としては有力です。競売にかければ一括で大きな金額を回収できる可能性があります。差し押さえた物件が賃貸として運用されていれば、売却せずに賃料収入を売掛金に充てる方法も選べます。一方で、競売には数十万~数百万円の予納金が必要な上、売却完了まで半年~1年以上かかるケースもあります。 「動産」は現金や貴金属であれば資金化しやすく、予納金も不動産ほどかかりません。しかし、商品や機械設備は価値が不安定で、買い手が見つからず売却できないリスクがあります。 なお、すべての財産を差し押さえられるわけではありません。生活に必要な衣類や家具、仕事に必要な道具、66万円までの現金などの「差押禁止財産」は、差し押さえ対象外です。給与については、原則として手取り額の4分の3が差し押さえ禁止とされています(手取り額が44万円を超える場合は、一律33万円が差し押さえ禁止額となります)。 差し押さえのメリット 差し押さえのメリットは、売掛金を回収できる可能性が高まる点です。裁判所が相手の財産を確保するため、財産を隠されたり勝手に売却されたりする心配がなくなります。 もう一つのメリットは、相手に強い心理的な圧力をかけられる点です。特に売掛金(債権)の差し押さえでは、相手の取引先(第三債務者)にも裁判所から通知が届きます。差し押さえの事実が取引先に知られると、信用問題に発展しかねないため、相手は早期に支払いに応じる場合があります。 相手の取引先が大企業であれば、圧力はさらに強まります。大企業の契約書には「取引相手が差し押さえを受けた場合、契約を解除できる」と定められているケースが多く、相手は主要な取引先を失いかねません。 取引先を失うおそれがあるため、差し押さえは売掛金の支払いを促す強い要因となります。 差し押さえの手順 差し押さえは、法律で定められた手順に沿って進める必要があります。 ここでは、仮差し押さえから強制執行までの流れを6つのステップに分けて紹介します。 ステップ1:相手の財産を特定する 裁判所が対象者の財産を自動的に探してくれるわけではないので、差し押さえを始める前に、相手がどのような財産を持っているか債権者が自力で調査しなければなりません。 売掛金を差し押さえたい場合は、相手がどの企業と取引しているのかを把握する必要があります。取引先の名称だけでなく、取引内容、売掛金の金額、支払期日まで分かっていると、差し押さえが無駄に終わるリスクを減らせます。 情報をもっとも集めやすいのは、長年にわたって取引を続けてきた債権者自身です。相手の事業内容や取引先の動向は、日頃のやり取りの中で自然に見えてくるものです。弁護士に調査を依頼する方法もありますが、普段の取引で得た情報と組み合わせると、より正確に財産を特定できるでしょう。 ステップ2:仮差し押さえを申し立てる 財産が特定できたら、裁判所へ仮差し押さえの申し立てを行います。 仮差し押さえは、訴訟の結果が出る前に相手の財産を一時的に凍結し、処分や隠匿を防ぐための手続きです。申し立て先は、相手や取引先の住所地、もしくは差し押さえの対象がある場所を管轄する裁判所です。 申し立て時には、売掛金の存在を裏づける契約書、請求書、取引履歴、陳述書を一緒に提出します。 仮差し押さえの申し立てには債務名義が不要で、裁判官が「確からしい」と判断できる程度の資料があれば認められます。早ければ申し立てから1~2週間で実施できるため、相手が財産を処分する前に手を打てる点がメリットです。 ステップ3:裁判所で審理を受ける 申し立て後は、裁判所で審理が始まります。例えば東京地裁の場合、申し立てから3日以内に裁判官との面談が設定されるのが通例です。 仮差し押さえの審理は、通常の裁判のように公開の法廷で両者が向き合う形式ではなく、債権者側だけが裁判官と非公開でやり取りする仕組みとなっています。相手に仮差し押さえを申し立てた事実を知られると、財産を隠されるおそれがあるからです。 審理の場では、裁判官から仮差し押さえの必要性について質問を受けたり、提出書類の訂正や補足を求められたりします。書類に不備があると裁判官から補正を求められ、その分だけ手続きに時間がかかります。申し立て前に、資料をしっかりと整理しておきましょう。 ステップ4:担保金を納付し、仮差し押さえを実施する 裁判所が仮差し押さえを認めると、債権者に担保金の供託を命じます。担保金の目安は、請求金額の10~30%程度です。例えば500万円の売掛金であれば、50万~150万円程度が目安になります。 仮差し押さえは、まだ裁判で結論が出ていない段階で相手の財産を凍結する措置です。後の裁判で「相手に支払い義務がなかった」と判断された場合、財産を凍結された相手は不当な損害を受けたことになります。担保金の納付は、そのような場合の賠償に備えるために必要とされます。 担保金の供託が完了すると、裁判所は仮差し押さえの決定を出します。売掛金を仮差し押さえした場合、まず第三債務者(相手の取引先)に「支払いを止めるように」という通知が届きます。 相手への通知は少し遅れて届く仕組みなので、先に売掛金が回収されてしまう事態を防げます。 ステップ5:債務名義を取得する 仮差し押さえだけでは、まだ売掛金を直接回収できません。仮差し押さえはあくまで「相手の財産を一時的に凍結する」措置であり、お金を受け取る権利を得たわけではないからです。 相手が仮差し押さえを受けて自主的に支払いに応じてくれれば解決しますが、そうでない場合は訴訟や支払督促、民事調停などの手続きを利用して債務名義を取得する必要があります。 注意したいのは、訴訟を起こさず放置していると、相手から仮差し押さえの取り消しを求められる可能性がある点です。相手は「起訴命令の申立て」によって、一定期間内に訴訟を起こすよう裁判所に請求できるからです。 仮差し押さえの完了後は、速やかに訴状や証拠書類の作成に取りかかり、訴訟の提起まで進めておきましょう。 ステップ6:強制執行を申し立てる 債務名義を取得したら、裁判所に強制執行を申し立てます。申し立てには、債務名義の正本、執行文、送達証明書などが必要です。執行文とは、債務名義に基づいて強制執行を許可する旨が記された文書で、裁判所の書記官や公証人に作成を依頼する必要があります。 強制執行が認められると、裁判所が相手の財産を差し押さえ、売却や取り立てによって換金し、未払いの売掛金に充てます。売掛金(債権)を差し押さえた場合は、第三債務者から直接取り立てる形になります。 仮差し押さえした財産についても引き続き強制執行に移行できるため、確実に回収を進められるでしょう。 差し押さえの注意点 差し押さえは強力な回収手段ですが、万能ではありません。費用や時間の負担が大きいため、手続きを始める前に知っておきたい注意点があります。 以下の4つのポイントを把握しておくと、手続きの見通しを立てやすくなるでしょう。 財産の特定が難しい 差し押さえでもっともハードルが高いのは、相手の財産を自力で特定しなければならない点です。相手の銀行口座がどこにあるのか、どの企業と取引しているのかは、外部からは簡単に把握できません。 2020年の民事執行法改正により「財産開示手続」が強化されるとともに、「第三者からの情報取得手続」が新設され、以前よりは調べやすくなりました。「第三者からの情報取得手続」では、銀行や証券会社、市区町村や年金事務所に対して、裁判所を通じて情報の開示を求められます。 しかし、手続きには時間がかかる上、必ずしも十分な情報を得られるとは限りません。日頃から取引先の経営状況や取引関係をしっかりと観察しておきましょう。 手間と時間がかかる 仮差し押さえの申し立てから強制執行が完了するまでには、相当な時間が必要です。仮差し押さえは早ければ1~2週間で実施できますが、その後の訴訟は判決まで数カ月~1年以上かかるケースもあります。 書類の準備や裁判所とのやり取りも多く、本業に割ける時間が減りがちです。弁護士に依頼する場合は着手金や報酬金も発生するため、回収したい金額と費用のバランスを事前に見積もっておきましょう。 少額の売掛金に対して多大な時間と費用をかけると、かえって損失が膨らむ場合もあります。 相手の財産状況によっては回収できない 差し押さえの手続きを最後まで進めても、相手に財産がなければ売掛金は回収できません。また、相手に対し裁判所から「破産手続開始決定」が出された場合には、個別の差し押さえの効力そのものが失われます。 破産手続きが始まると、裁判所が「破産管財人」を選任します。破産管財人とは、破産した相手に代わって財産の管理や処分を担当する人物で、通常は弁護士が就任します。 破産管財人が選任されると、相手の財産はすべて「破産財団」に組み込まれます。破産財団とは、破産した相手が持つ財産をひとまとめにしたもので、すべての債権者へ公平に分配するために管理されます。破産財団に組み込まれた財産には個別の差し押さえが及ばなくなるため、原則としてすでに差し押さえていた財産であっても回収できません。 また、ほかの債権者がすでに同じ財産を差し押さえている場合は、回収額が債権者の間で分配されるため、全額を取り戻すのは難しくなります。 相手の経営状態が悪化してから動き出すのでは遅い場合もあるため、異変を感じたら早めの対応を心がけましょう。 まとまった金額の担保金を用意する必要がある 仮差し押さえを利用する場合、請求金額の10~30%に相当する担保金を法務局に供託しなければなりません。 例えば1,000万円の売掛金であれば、100万~300万円の資金が必要です。 担保金の割合は一律ではなく、売掛金の証拠がどれだけそろっているか、相手が被る不利益の大きさなどを裁判所が総合的に判断して決定します。売掛金の存在を裏づける契約書や請求書がしっかりそろっている場合は10~15%程度に抑えられる傾向がありますが、証拠が不十分だと30%近くを求められる場合もあります。 訴訟が長引けば、その間は担保金が手元に戻りません。資金繰りに余裕がないときは、担保金の負担だけで経営を圧迫するおそれがあります。 仮差し押さえに踏み切るかどうかは、回収したい売掛金の金額と手元資金のバランスを見ながら、慎重に判断しましょう。 売掛金の未回収リスクを抑えるには? 差し押さえは手間も時間もかかる上、相手の財産状況次第では回収が困難になる場合があります。そもそも差し押さえが必要になる状況をつくらないことが理想です。最初から未回収を防ぐ仕組みを取り入れておけば、裁判にかかる費用や労力を丸ごと省けます。 未回収リスクを抑える方法として、「売掛保証サービス」の活用があります。売掛保証サービスとは、事前に保証会社と契約を結び、対象となる取引先の与信審査を通過しておくことで、取引先が売掛金を支払えなくなった場合に、保証会社が代わりに代金を支払ってくれる仕組みです。 取引先の倒産や支払い遅延が起きても売掛金を確実に受け取れるため、差し押さえのように長い時間と高い費用をかけて回収に動く必要がありません。本業に集中できるのが大きな利点です。 また、保証会社が取引先の信用力を審査してくれるため、新しい取引先との取引を始める際の判断材料としても役立ちます。与信管理の負担を軽減できるので、特に限られた人員で経営している中小企業にとっては心強い味方になるでしょう。 関連記事:売掛保証とはなにか メリットやデメリット、実際の利用事例をご紹介 まとめ 差し押さえは、売掛金を回収するための最終手段です。「債務名義」を取得し、裁判所に強制執行を申し立てれば、相手の財産から未払い分を回収できます。仮差し押さえを先に実施しておけば、訴訟中に財産を隠されるリスクも抑えられます。 一方で、財産の特定が難しい、手続きに時間がかかる、担保金が必要になるといった負担も伴います。相手が破産してしまえば回収の見込みが立たなくなる点も見逃せません。差し押さえに踏み切る前に、回収したい金額と手続きにかかる費用・時間を比較し、本当に採算が合うかを見極めましょう。 売掛金の未回収リスクをあらかじめ抑えたいなら、売掛保証サービスの活用がおすすめです。「URIHO(ウリホ)」は、月額の定額料金で利用できる売掛保証サービスです。取引先の支払いが遅れた場合や、倒産によって売掛金が回収できなくなった場合に、URIHOが代わりに代金を支払います。 未回収の不安を解消し、安定した経営を続けたい方は、ぜひURIHOの利用をご検討ください。 売掛金の差し押さえとは?回収の…
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