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債権回収

「支払督促」とは?少額訴訟とは違う?必要な費用や流れを解説

「支払督促」という手続きについてご存じでしょうか。企業間取引などで発生しやすい未回収となった債権に対し、裁判所を通じて債務者に支払いを命じることができる手続きです。債権を回収する方法の一つとして使われています。

通常の民事訴訟と比べると手続きが簡単とされていますが、実際の手続きの流れやデメリットをよく理解しておかないと、無駄な手間やコストがかかってしまうことになります。

そこで今回は、支払督促に必要な費用や流れ、メリット・デメリットをご紹介します。

 

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支払督促とは?

支払督促とは、個人間で貸したお金を返してもらえない場合や、企業間で掛け取引をした際の代金が未払いになっている場合など、金銭の未払いトラブルが発生した際に簡易裁判所を通じて支払いを督促できる略式の手続きです。

あくまで申立先は相手方(債務者)の住所地を管轄する簡易裁判所となりますが、書類のみで手続きができ、かつ債務者の言い分を考慮せず債権者側の申し立てのみに基づいて簡易裁判所の書記官から支払いが命じられます。

「少額訴訟」との違い

同じように債務者から金銭の支払いがない場合に利用できる訴訟制度に「少額訴訟」があります。ただし、少額訴訟で請求できる債権は60万円以下となっているため、それ以上の金額を請求する場合は利用できません。

また少額訴訟の場合は裁判所への出廷が必要ですが、基本的に1回目の口頭弁論が行われたその日に判決が言い渡されます。

少額訴訟を含む「民事訴訟」の他にも話し合いによる解決を図る「民事調停」といった手続きもあるので、未払いの金額や手間を考えたうえでどの手続きを選ぶべきなのかを判断するといいでしょう。

▼「少額訴訟」について詳しく知りたい方はこちら
債権回収に使える、「少額訴訟」のやり方とは?費用やデメリットも解説

支払督促のメリット

次に、支払督促のメリットについて説明します。

民事訴訟よりも手続きが簡単

少額訴訟の説明で少し触れましたが、民事訴訟の場合は裁判所に出向く必要があります。しかし支払督促の場合は書類審査のみで行われる手続きなので、裁判所に行かなくても申し立てをできるのが大きなメリットです。

強制執行の手続きができる可能性がある

支払督促を相手方に送付してから2週間以内に支払いも異議申し立てもない場合、債権者は仮執行宣言の申し立てをすることができます。仮執行宣言とは判決が言い渡される前であっても仮に強制執行ができる宣言のことです。

仮執行宣言付支払督促正本を債務者が受領してさらに2週間以内に異議の申し立てがなければ相手方の財産に対して強制執行を行うことができます

強制執行をすることで相手方に支払いの意思がなくても、強制的に債権を回収できることになります。

通常の訴訟よりも費用がかからない

通常の訴訟と比べると、裁判所に納付する手数料が安く済むのもメリットの一つです。手数料は訴額によって異なりますが、だいたい訴訟の半額程度が目安です。訴額が大きくなればなるほど抑えられる費用に差が出てきます。

▼参照
裁判所ウェブサイト「手数料早見表」(PDF)

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支払督促のデメリット

ここまでのメリットを見ると手続きが簡単で費用も安い、最終的には強制執行ができるので有効な回収手段のように見えますが、気を付けなければいけないのがその分デメリットも多いということです。

異議の申し立てをされると通常訴訟に移行する

支払督促に対して相手方の債務者が異議申し立てをした場合、支払督促は無効となります。そして通常の訴訟に移行してしまいます。

異議の申し立てはその理由に関わらず、比較的簡単にできます。単純にお金がなく支払いができないという理由でも異議の申し立ては可能なのです。手続きの方法も書面で異議がある旨を裁判所に提出するだけなので、債権に関して双方の意見が食い違っている場合などはまず異議を申し立てられるでしょう。

そして通常の訴訟に移行してしまうと、相手方の住所地を管轄する裁判所での裁判となります。住所地が遠方であれば、裁判所に出向く費用などを債権者が負担することになるので余計なコストがかさむことになります。また場合によっては、最初から民事訴訟にしておけば判決が出るまでの時間が短くて済んだというケースもあります。

相手方から異議申し立てされる可能性が高い場合は、支払督促以外の手続きを検討すべきです。

相手方が行方不明だと手続きできない

支払督促を利用する条件として、簡易裁判所の書記官が発付した支払督促を相手方に直接送達できる必要があります。つまり、相手方が行方不明になってしまった場合は利用できません。

通常の訴訟であれば相手が行方不明であることを証明する資料を裁判所に提出し、裁判所の掲示板に訴訟を2週間提示することで訴状が相手に届いたことにできる「公示送達」という手続きを使って訴訟を起こすことができます。

しかし支払督促ではこの「公示送達」手続きを利用することができないため、相手方の所在がはっきりしている必要があります。

債権者が財産の調査をする必要がある

支払督促の申し立て、仮執行宣言の申し立てに対して、相手方から異議の申し立てがなければ強制執行の申し立てができます。ここで重要なのは、強制執行の対象となる財産が特定されている必要があるということです。

相手方の財産が分からない場合は、債権者自身が財産の調査を行わなければなりません。ここで相手方の財産を見つけることができなければ、強制執行はできない、つまり債権を回収できなくなってしまいます。

債務者の財産情報を取得する方法として「財産開示手続」という手続きがあります。2020年4月に改正されるまでは無視されてもペナルティがないなど実務上無意味とされ、さらに支払督促では利用できませんでした。しかし改正によって支払督促でも利用できるようになり、さらに罰則も強化されることで実効性があるものになりました。

それでも財産開示手続は財産を調査した結果、財産を特定できなかった場合に利用できる手続きです。手続きのためには申立書とともに調査結果報告書を裁判所に提出する必要があるうえに、費用も発生するので債権者には手間とコストがかかってしまいます。

支払督促の流れ

次に、支払督促の流れについて解説します。

(1)支払督促の申し立て

申立人である債権者は、必要な書類をそろえたうえで相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てを行います。

【支払督促に必要な書類】
・支払督促申立書
・当事者目録/請求の趣旨及び原因の写し(コピー)
・収入印紙
・120円分の郵便切手を貼った無地の封筒
・1,125円分の郵便切手を貼った無地の封筒
・郵便はがき
・資格証明書(債権者や債務者が法人の場合)
・管理組合の規約&議事録の写し(マンション等の管理組合の場合)
・委任状(弁護士に依頼する場合)
・手形(小切手)の写し(手形(小切手)訴訟の場合)

参照:https://www.courts.go.jp/tokyo-s/saiban/l3/Vcms3_00000344.html

申し立てに必要な書類の提出方法は、

・窓口
・郵送
・オンライン

が選べます。督促手続オンラインシステムを利用すれば、書類の提出だけでなくインターネットバンキング等を利用した手数料の納付や、手続きの進行状況の確認もオンライン上でできます。

(2)仮執行宣言の申し立て

簡易裁判所書記官による申立書の審査が行われ請求の理由が認められれば、相手方に支払督促が送達されます。相手方が支払督促を受領後2週間以内に支払いも異議申し立てもしてこなければ、「仮執行宣言の申し立て」が可能になります。

仮執行宣言の申し立ては、相手の財産を差し押さえるため(強制執行)に必要な手続きとなります。相手方が2週間以内に異議の申し立てをしなかった場合、その翌日から30日以内に仮執行宣言の申し立てをしなければ、発付された支払督促は効力を失うことになるので注意が必要です。

また相手方が支払督促に対して異議申し立てを行った場合は支払督促は無効となり、通常の民事訴訟の手続きに移行します。

(3)強制執行の申し立て

仮執行宣言の申し立てに不備がなければ、裁判所から相手方に「仮執行宣言付支払督促」が送達されます。仮執行宣言付支払督促を受領してから2週間以内に異議申し立てがあれば民事訴訟の手続きに移行しますが、なければ強制執行の申し立てが可能になります。

支払督促が最善策かどうかの判断は難しい

メリットで説明した通り、支払督促は通常の民事訴訟と比較すると手続きは簡単ですがそれでもある程度の手間が発生します。そして異議の申し立てをされた場合のデメリットも考えると、債権を回収する方法として支払督促が最善策であるかどうかの判断をするのは素人には非常に難しいといえます。

最初から弁護士に依頼するのも回収の成功率を高める方法の一つですが、依頼する分のコストがかさむため請求額によってはハードルが高いものです。

売掛金に保証をかけることで回収を確実にする「URIHO(ウリホ)」

さらに弁護士に依頼するにしろ、自分で手続きをするにしろ、支払督促によって強制執行できたとしても相手方に財産がなければ債権を回収することはできません。

そうしたリスクを回避する方法として、売掛金に保証をかけることができるサービス「URIHO(ウリホ)」を利用するのも有効です。URIHOで保証をかけておけば、取引先の倒産などによる未払いが発生した場合に、URIHOが代金を代わりに支払ってくれます。

 

初回の1カ月は無料となっていますので、この機会に試してみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回は「支払督促」について紹介してきました。企業間取引では掛けが一般的なので、未払いはいつ発生してもおかしくありません。支払督促の手続きをすることで回収につながる確率は上がるかもしれませんが、手続きにかかる手間やコストを含めたデメリットを考えると必ずしも最適な方法とは限りません。

そもそも未回収を発生させないための方法として、URIHOを始めとした売掛保証サービスの導入も検討してみてはいかがでしょうか。

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