「売上債権回転期間」とは、売上債権がどれくらいの期間で回収されるかを示す指標で、売上債権の平均額を売上高で割ることで計算されます。専門的な用語のために少し難しそうに感じるかもしれませんが、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表から得られるデータを使って、実際には容易に計算することができます。シンプルであるために軽視されがちな「売上債権回転期間」ですが、その動きを追うことで、自社の資金繰り状況の評価に重要な役割を果たすことができるでしょう。
この記事では、売上債権回転期間にまつわる内容を解説します。売上債権回転期間の意味や計算方法、売上債権回転期間の分析からわかること、また売上債権回転期間の業界平均についても紹介いたします。
売上債権回転期間とは
売上債権回転期間とは、企業が所有する売上債権を回収するのにどのくらいの期間がかかっているかを計る尺度です。売上債権の額を売上高で割ることによって算出し、売上債権回転期間が短いと資金繰りが健全的、かつ効率的であると判断できるでしょう。
売上債権には、売掛金や受取手形、電子債権などが含まれます。必要に応じて、これらの各項目の回転期間を別々に計算することも可能です。
上場企業は、公開している財務諸表からこの売上債権回転期間を簡単に計算できます。しかし、非上場の企業では、必要なデータがすぐには揃わない場合もあるでしょう。
特に中小企業では、財務の管理が難しいことがありますが、資金繰りを安定させるためには、この指標の追跡が非常に重要です。
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売上債権回転率とは
売上債権回転率は、売上債権回転期間の分子と分母を入れ替えたものです。売上債権回転期間とは逆に、大きければ大きいほど売上債権の回収までの期間が短いことをあらわします。
なお、売上債権回転率と同様の計算方法で総資本回転率、棚卸資産回転率、有形固定資産回転率なども算出が可能です。
総資本回転率は自社の負債や純資産を、棚卸資産回転率は自社の棚卸資産を、有形固定資産回転率は自社の有形固定資産を売上高で回収する回転率をあらわします。
製造業や小売業であれば棚卸資産回転率を、自社ビルや自社工場などを所有している場合は有形固定資産回転率をといったように、業種や企業の状態に合わせて適切な指標を使い分けていくと良いでしょう。
売上債権回転期間の計算方法
売上債権回転期間は以下の式で計算します。
「売上債権回転期間 = 売上債権 ÷ 売上高」
ただし、これは年度での計算でより具体的な資金繰りを把握するには月数や日数での計算が有用です。
売上債権回転日数の計算
売上債権回転日数は、何日で売上債権を回収できるかを示します。
「売上債権回転日数 = 売上債権 ÷ (売上高 ÷ 365日)」
特定の業種、例えば宿泊業では、チェックアウト時に精算することが多いため、売上債権回転日数は短くなる傾向があります。
売上債権回転月数の計算
売上債権回転月数は、何ヶ月で売上債権を回収できるかを示します。
「売上債権回転月数 = 売上債権 ÷ (売上高 ÷ 12ヵ月)」
売上債権期間の目安
売上債権期間は、業種やビジネスモデルによって異なるものの、一般的には30日から90日の範囲とされています。この売上債権期間が短いということは、売掛金などの売上債権の発生から回収までの期間が短いことを示しており、資金繰り状況が良好と判断できます。しかし、過度に短い期間は顧客にとって支払い条件が厳しく感じられるため、業界の標準や競合他社の条件を参考にしながら、自社の経営戦略に合わせた適切な売上債権期間の設定が重要となります。
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売上債権回転期間を改善する方法
顧客の信用調査を強化
売上債権回転期間を改善するためには、まず顧客の信用調査を強化することが重要です。取引先の信用度を事前に評価し、信用の高い顧客と取引することで、未回収リスクを減少させることができます。信用情報機関を利用することで、リスク管理を徹底し、信頼できる顧客と取引を行うことが可能となります。
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請求プロセスの効率化
請求プロセスの効率化も、売上債権回転期間の短縮に有効です。取引が完了したらすぐに請求書を発行し、迅速に送付することで、支払いまでのリードタイムを短縮します。また会計ソフトや決裁サービスを導入し、請求から回収までのプロセスを効率化し、人為的なミスを減らすこと売上債権回転期間を大幅に改善することも重要になります。
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売上債権期間が長期化することのリスク
売上債権期間が長期化すると、企業はいくつかのリスクに直面します。主なリスクとしては、以下のようなものがあげられます。
貸倒れリスクの増加
回収期間が長引くほど、最終的に売掛金が貸し倒れになる可能性が高まります。これは、顧客の経済状況が変わり、支払い不能に陥るリスクが増大するためです。顧客が直面する経済的困難は、予期せぬ出来事や市場環境の変化によって引き起こされることが多く、これにより企業は回収可能な資金を失うことになります。
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経営状態の悪化
資金繰りの悪化は、企業の経営状態に直接影響します。資金繰りが悪化すると、投資機会の損失や、最悪の場合は経営危機にいたることもあります。資金繰りの悪化は、企業の成長機会を制限し、経済的な不安定さを招くことになります。企業が効果的に資金を管理し、必要な投資を行う能力が低下すると、競争力の低下につながる可能性があります。
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黒字倒産の危険性
利益をあげているにもかかわらず、現金が不足して経営が成り立たなくなる黒字倒産のリスクがあります。これは、売上があってもその回収が遅れることで現金が手元に入ってこない状況を指します。黒字倒産は、表面上は健全に見える企業でも発生する可能性があり、特に現金流の管理が不十分な場合には、致命的な結果を招くことがあります。
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まとめ
売上債権回転期間は、企業が売上債権を回収するまでの期間を示す重要な指標であり、売掛金、受取手形などを含みます。短い回転期間は資金繰りの健全さを示し、同業種の平均値や自社の過去データとの比較により、経営状態の診断が可能です。月数や日数での具体的な計算も可能で、業種に応じた分析が行えます。売上債権回転期間が長くなっている場合は、支払いサイトの長期化や取引先の支払い遅延など、資金繰り悪化のサインである可能性があります。これを早期に把握し、適切な対策を講じることで、企業の健全な経営を支えることができるでしょう。
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