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売上債権回転期間とは?計算式や分析手法、数値の改善方法も解説

売掛債権回転期間

企業が安定した経営を続けるためには、「資金繰り」をどれだけ正確に把握できるかが重要です。


そのため、売掛金や受取手形などの売上債権をどれくらいの期間で回収できているかを表す指標である「売上債権回転期間」の分析は欠かせません。


売上債権回転期間を確認すれば、販売後に代金が現金化されるまでの期間を数値で把握できます。期間が短ければ回収が早く、資金繰りが安定していると判断できる一方、長い場合は回収の遅れや貸倒れの懸念があることが分かります。


売上債権回転期間を定期的に分析することで、経営の健全性を把握し、資金効率を高める戦略を立てられます。


この記事では、売上債権回転期間の意味や計算方法、業界平均との比較による分析手法、そして数値を改善するための具体的な方法を分かりやすく解説します。資金繰りに課題を感じている企業や、与信管理を強化したい経営者の方は、ぜひ参考にしてください。

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売上債権回転期間とは

売上債権回転期間とは、企業が所有する売上債権を回収するのにどのくらいの期間がかかっているかを計る尺度です。


売上債権回転期間が短ければ、資金が早く回収できるということなので、会社の資金繰りは安定しやすくなります。反対に、長ければ資金の回収が遅れていることになります。


この指標は、企業の経営効率や財務体質を評価する上で非常に重要です。特に運転資金を外部借入に頼っている企業にとっては、売上債権回転期間の長期化が資金繰り悪化のサインとなることもあります。


中小企業では財務の管理が難しいことがありますが、資金繰りを安定させるためには、この指標の追跡が重要です。


なお、「売上債権」とは、企業が取引先に商品やサービスを提供した後、後日代金を受け取る権利のことです。


具体的には、以下のような項目が含まれます。


  • 売掛金:掛取引によって発生した未回収の販売代金
  • 受取手形:取引先が支払いを約束した手形による債権
  • 電子記録債権(でんさい):電子的に記録された支払約束に基づく債権

企業は日常的に複数の取引先と掛取引を行っているので、売上債権の残高は毎日変動します。したがって、どのくらいのスピードで回収できているかを定期的に確認することが重要です。


関連記事:売掛債権とはなにか 売掛債権の種類と時効について解説 | URIHO BLOG

売上債権回転期間を計算する目的

売上債権回転期間を求める目的は、単に「数字を出すこと」ではありません。本来の狙いは、資金の流れを把握し、経営のどの部分に改善の余地があるかを明確にすることにあります。


特に、売上債権期間は、企業の経営活動を支える「キャッシュフロー管理」「在庫管理」「経営戦略立案」に深く関係しており、財務の安定性を判断する上で欠かせません。


ここでは、それぞれの目的を詳しく見ていきましょう。


キャッシュフロー管理


売上債権回転期間は、キャッシュフロー(資金の流れ)を把握するための基本的な指標です。


企業が商品やサービスを販売しても、すぐに現金が入ってくるわけではありません。取引先が代金を支払うまでの期間が長ければ長いほど、手元の現金は不足しやすくなり、仕入・人件費・家賃といった支払いに影響が出ます。


例えば、回転期間が30日であれば資金の循環は安定していますが、90日になると資金の滞留が発生し、資金繰りが厳しくなります。


このため、売上債権回転期間を定期的に確認することで、「どの取引先の入金が遅れているか」「どの時期に資金不足が起こりやすいか」を早期に発見できます。


また、回転期間を短縮できれば、入金が早まり、キャッシュフロー全体が改善します。外部からの借入に頼らず運転資金を確保できるため、経営の安定性を高める効果もあります。


売上債権回転期間は資金繰りの健康状態を示すバロメーターともいえます。


関連記事:資金繰りの解説 重視すべきポイントとキャッシュフローとの違いについて | URIHO BLOG


在庫管理との連動


売上債権回転期間は、在庫の管理とも密接に関連しています。


在庫が過剰になると、販売までの時間が延び、その分だけ代金の回収も遅れます。結果として、売上債権回転期間が長期化し、キャッシュフローが悪化することがあります。


例えば、需要を見誤って在庫を抱えすぎた場合、販売機会を逃し、売掛金の発生そのものが遅れます。一方で、在庫を適正にコントロールできていれば、販売から回収までのサイクルが短くなり、資金が効率的に循環します。


つまり、在庫の回転スピードと売上債権回転期間は連動しており、どちらか一方が滞るともう一方にも悪影響を及ぼすということです。


経理部門と営業・物流部門が連携して在庫回転率を改善すれば、売上債権の回収も早まり、資金繰り全体が安定します。


したがって、売上債権回転期間の管理は、単なる財務指標にとどまらず、現場のオペレーション効率にもつながる重要な視点となるのです。


経営戦略への立案


売上債権回転期間は、企業の経営戦略を立てる際の重要な判断材料にもなります。なぜなら、この期間の長短が、企業がどれだけのスピードで資金を再投資できるかを左右するからです。


回転期間が短ければ、早期に現金を回収できるため、新しい設備投資や事業拡大にすぐに資金を充てられます。


例えば、商品を販売してから1カ月で入金がある企業は、1年のうちに12回も資金を循環させられます。一方で、3カ月後に入金される企業は、資金を年に4回しか動かせません。


つまり、同じ売上高でも、資金が手元に戻るスピードによって再投資の回数やタイミングに大きな差が出ます。資金の動きが速い企業ほど、設備投資・人材採用・新規事業などに積極的に資金を充てやすく、成長のスピードも速くなります。


このように、売上債権回転期間は単なる資金管理の指標にとどまらず、企業の成長戦略や経営判断にも直結する重要な要素といえます。

売掛金回転期間との違い

売上債権回転期間とよく似た用語に「売掛金回転期間」があります。どちらも資金の回収スピードを示す指標ですが、対象となる範囲が異なります。


売掛金回転期間は「売掛金の回収までにかかる日数」を指し、主に商品やサービスの販売に伴う債権に限定されます。これに対して、売上債権回転期間はより広い概念であり、売掛金だけでなく受取手形や電子記録債権などを含めた総合的な回収期間を表します。


つまり、売掛金回転期間は、売上債権回転期間の一部にあたる指標です。


売掛金回転期間と売上債権回転期間は、目的に応じて使い分けます。


小売業や飲食業のように「現金取引が中心で、手形や電子債権をあまり使わない業種」では、売掛金回転期間を確認するだけでも十分に資金管理を行えます。一方、製造業や卸売業など、企業間取引が中心の業種では、売掛金だけでは実態を把握しきれません。


例えば、販売代金の一部を受取手形で受け取っている場合、売掛金回転期間だけを見ると実際よりも早く回収できているように見えることがあります。しかし、手形の満期日が3カ月先であれば、現金化されるのはその時点です。


このようなケースでは、受取手形や電子記録債権を含めた「売上債権回転期間」で評価することで、資金の実際の滞留状況を正確に把握できます。

売上債権回転率との違い

売上債権回転期間とよく似た指標に「売上債権回転率」があります。どちらも企業の資金回収の速さを示すために使われますが、意味する内容が異なります。


回転期間は「何日(または何カ月)で回収しているか」という時間の長さを表す指標であるのに対し、回転率は「1年間に何回資金が循環したか」という回数を表す点が大きな違いです。


回転率は「回数」で表されるため、企業間の比較に適しています。例えば、A社の回転率が8回、B社が4回であれば、A社のほうが資金回収を倍速で行っていると判断できます。


一方、回転期間は「日数」で示されるため、資金繰りのスケジュール管理に役立ちます。「平均で60日後に入金がある」と分かれば、支払期日や借入返済日との調整がしやすくなるため、実務的な管理に向いています。


売上債権回転率と売上債権回転期間は、資金の流れを測る「表裏一体の指標」です。回転率が高いほど、また回転期間が短いほど、企業の資金回収はスムーズであると判断できます。


分析の目的によって使い分けることが大切です。経営の全体像を把握したいときは「回転率」、日々の資金繰りを管理したいときは「回転期間」を確認するとよいでしょう。

売上債権回転期間の計算式

売上債権回転期間の基本的な計算式は、以下のとおりです。


「売上債権回転期間= 売上債権 ÷ 売上高」


ただし、この式だけでは年間の比率を示すにとどまり、「実際に何日、あるいは何カ月で現金が入ってくるのか」という感覚まではつかみにくいでしょう。


そこで、資金繰りをより具体的に把握するために、以下のように「日数」または「月数」で表す方法がよく使われます。


売上債権回転日数の計算式


売上債権回転日数は、平均して何日で売上債権を現金として回収しているかを示す指標です。


算出式は、以下のとおりです。


売上債権回転日数= 売上債権 ÷ (売上高 ÷ 365日)


まず1日の平均売上高を求め、その売上をすべて回収するまでに要する日数を計算します。


具体例を見てみましょう。


例えば、売上債権:6,000万円、年間売上高:3億6,500万円(=1日あたりの売上高 約100万円)の会社だとすると、


売上債権回転日数は「6,000万円 ÷ (3億6,500万円 ÷ 365日)= 約60日」となります。


つまり、この企業は平均して「売上発生から約60日後」に現金を回収していることになります。


この60日という数値が短ければ、資金の流れはスムーズで、経営の安定性が高いといえます。反対に、90日や120日といった長期になる場合は、請求書の発行や処理が遅れている可能性が考えられます。


売上債権回転月数の計算式


売上債権回転月数は、平均して何カ月で売上債権を回収しているかを示す指標です。


算出式は、以下のとおりです。


売上債権回転月数= 売上債権 ÷ (売上高 ÷ 12カ月)


例えば、年間売上高が3億6,000万円、売上債権が6,000万円の会社だとすると、売上債権回転月数では、


6,000万円 ÷ (3億6,000万円 ÷ 12カ月)= 2カ月となります。


つまり、この企業は平均して「平均して2カ月で売上債権を回収している」ことが分かります。


この数値が1.5カ月、または1カ月に近づくほど、資金の回収スピードが速いといえます。一方で、3カ月や4カ月に延びている場合は、取引先の経営状況に注意が必要です。

売上債権回転期間の目安(業種別)

売上債権回転期間の平均値は、業種によって大きく異なります。取引の性質や商習慣、支払いサイト(入金までの日数)の長さが業種ごとに異なることが理由です。


例えば、BtoB取引が中心で取引金額が高額な業種では、請求から入金までに数カ月かかるケースも多く、売上債権回転期間が長くなる傾向があります。一方で、消費者を対象とした現金商売が中心の業種では、販売と同時に現金を受け取るため、回転期間は短期にとどまります。


以下は、令和6年中小企業実態基本調査(令和5年度決算実績)をもとに算出した主要業種別の売上債権回転期間の平均値です。


業種売上債権(百万円)売上高(百万円)売上債権回転期間(月)売上債権回転期間(日)
建設業9,412,64880,778,0831.4042.5
製造業22,335,952 130,597,1502.0562.4
情報通信業2,335,48115,598,3461.8054.7
運輸業・郵便業3,517,27529,865,5051.4143.0
卸売業26,567,848174,044,1911.8355.7
小売業5,970,37281,912,1820.8726.6
不動産業・物品賃貸業2,154,30131,544,2260.8224.9
学術研究・専門・技術サービス業1,759,84212,815,1311.6550.1
宿泊業・飲食サービス業530,26311,850,4040.5416.3
生活関連サービス業・娯楽業853,02321,574,3140.4714.4

参考:中小企業実態基本調査 / 令和6年確報(令和5年度決算実績) / 確報


このように、売上債権回転期間は業種によって「10~60日程度」と幅があります。平均よりも数値が高い場合は、請求処理の遅れや回収体制の不備など、なんらかの問題が潜んでいる可能性があります。


原因を明確にし、請求の早期化や入金管理体制の強化などを進めることで、資金繰りの悪化や貸倒れのリスクを防げるでしょう。


ここからは、主要10業種を取り上げ、それぞれの平均期間と資金回収の特徴、注意点を詳しく解説します。


建設業


建設業では、売上債権回転期間は約41日(1.37カ月)です。


建設業は、請負契約をもとに長期の工期を経て成果物を納品するため、代金の請求が完了後になるケースが多いのが特徴です。


そのため、入金までの期間が長く、請求サイクルの遅れや未収金の発生が経営を圧迫する場合があります。


資金繰りを安定させるためには、工事ごとの進捗に応じた出来高請求を導入するなど、分割回収の仕組みを整えることが有効です。


製造業


製造業では、売上債権回転期間が約61日(2.03カ月)と、全業種の中でもやや長めです。


製造業は、部品や資材の仕入れから製品完成までのリードタイムが長く、納品後も取引先企業の締め日や支払いサイトの関係で入金まで時間がかかります。


特に大企業向けの取引では、支払いサイトが60~90日に設定されていることも多く、売掛金が多額になりやすい点が特徴です。


製造業では、在庫回転期間や仕入債務回転期間と合わせて確認することで、資金繰りの全体像をより正確に把握できます。


情報通信業


情報通信業では、売上債権回転期間は約54日(1.8カ月)です。


情報通信業は、ソフトウェア開発やシステム保守など、月末締め翌月末払いといった契約が多く、請求から入金まで1~2カ月を要します。


特に、受託開発やライセンス契約などでは、検収完了後に請求が発生するため、納品時期によって資金回収が遅れることもあります。


回転期間を短縮するためには、契約段階で「検収前の一部請求」など柔軟な支払い条件を交渉することが有効です。


運輸業・郵便業


運輸業・郵便業では、売上債権回転期間が約42日(1.41カ月)と比較的短めです。


この業種は、取引件数が多く、定期契約や月次請求が一般的で毎月安定した入金が見込まれる点が特徴です。


ただし、荷主との契約条件により支払いサイトが長く設定されている場合、資金回収が遅れることもあります。特に燃料費などの支出が先行するため、回転期間が延びると運転資金への影響が大きくなります。


入金サイクルを短縮するには、電子請求書の導入や定期請求の自動化が効果的です。


卸売業


卸売業では、売上債権回転期間は約55日(1.82カ月)です。


卸売業はメーカーと小売業の中間に位置し、販売量が多い反面、取引先ごとに支払い条件が異なるため、資金回収の管理が複雑です。


回転期間が長期化しやすい業種のため、請求漏れや回収遅延を防ぐために、債権管理システムの導入や電子請求書の活用が欠かせません。


また、与信限度を超えた取引が続くと資金の滞留リスクが高まるため、取引先ごとの与信枠を設けておくことも重要です。


小売業


小売業では、売上債権回転期間が約23日(0.78カ月)と非常に短いです。


顧客が個人消費者であるため、現金回収が基本で、販売と同時に入金が発生するケースがほとんどです。


ただし、近年はクレジットカード払いやキャッシュレス決済の増加により、決済代行業者を経由する分だけ入金が数日遅れる傾向もあります。


キャッシュレス比率が高まるほど、実際の入金日を把握し、資金繰り表に反映する精度が求められます。


不動産・物品賃貸業


不動産業やリース・レンタル業などの物品賃貸業では、売上債権回転期間が約24日(0.79カ月)と短めです。


月単位や年単位の賃貸契約が中心ですが、賃料は先払いで回収する形が多いため、資金の回収リスクは低い傾向があります。


ただし、入居者や契約先の支払い遅延が発生すると、売上債権が急増するケースもあるため、契約更新時の支払い実績チェックが重要です。


学術研究・専門・技術サービス業


学術研究・専門・技術サービス業では、売上債権回転期間は約42日(1.39カ月)です。


この業種では、コンサルティングや設計業務など、プロジェクト単位で請求時期が異なりやすいのが特徴です。


請求書発行のタイミングを標準化し、期日管理を徹底することで資金繰りの安定を図れます。


宿泊業・飲食サービス業


宿泊業・飲食サービス業では、売上債権回転期間は約12日(0.42カ月)と、非常に短い水準です。


これらの業種は現金収入が中心であり、売上債権自体がほとんど発生しません。


ただし、法人契約や予約サイト経由の売上については入金までのラグが発生するため、取引経路ごとに入金管理を行うことが大切です。


生活関連サービス業・娯楽業


生活関連サービス業・娯楽業の平均回転期間も約13日(0.45カ月)と、非常に短い水準です。


理美容業、冠婚葬祭業、レジャー施設など、消費者との直接取引が中心で、現金または即時決済による入金がほとんどです。そのため、売上債権の金額自体が小さく、回転期間も短期にとどまります。


ただし、法人契約やイベント業務などでは請求ベースの入金が発生するため、定期的に債権残高を確認し、未収管理を徹底することが望まれます。

売上債権回転期間の比較分析方法


売上債権回転期間を算出しただけでは、「数値が適切かどうか」「改善が必要なのか」を判断できません。重要なのは、算出した数値をどの基準と照らし合わせて分析するかという点です。


売上債権回転期間は、単体で見るよりも業界平均・同業他社・自社の過去データ・仕入債務回転期間などと比較することで、資金繰りの状況や経営上の課題をより正確に把握できます。


以下、それぞれの比較対象を通じて、売上債権回転期間をどのように分析すべきか解説します。

業界平均との比較

最初にすべきは、自社の数値が業界全体の平均と比べてどの位置にあるかを確認することです。なぜなら、売上債権回転期間の「適正水準」は業界ごとにまったく違うからです。


例えば、製造業や建設業のようなBtoB取引が中心の業種では、請求から入金までに数カ月かかるのが一般的です。一方で、小売業や飲食業のように現金商売中心の業種では、販売と同時に代金を回収するため、回転期間は短くなります。


ただし、売上債権回転期間が平均より長いからといって、ただちに資金繰りに問題があるとは限りません。主要取引先との契約条件で支払いサイトが長く設定されている場合や、納品から検収までに時間がかかる取引形態であれば、ある程度の長期化は自然です。


重要なのは、「なぜ長期化しているのか」を把握し、改善できる余地があるかどうか判断することです。


もし原因が請求処理の遅れや請求漏れなどの社内要因であれば、改善によって短縮が可能です。

同業他社との比較

次に確認したいのが、同じ業界・同じ規模の企業との比較です。


業界平均は幅広い企業を含むため、個別企業の実情を正確に反映していない場合があります。例えば、業界全体では平均60日でも、規模の小さい企業や特定地域の取引慣行によって、実際には40日程度が主流というケースもあります。


そのため、同業他社のデータと比較することで、自社の立ち位置をより明確に把握できます。


例えば、自社の売上債権回転期間が60日、同業他社A社が30日だった場合、同じ業種であっても資金回収のスピードに倍の差があります。


つまり、自社の資金繰りは競合より1カ月分遅れている計算です。この差は、単に回転日数の違いにとどまらず、資金効率の差=経営スピードの差を意味します。


資金の回収が遅いと、次の仕入や投資への再投資が遅れ、競合に後れを取るリスクがあります。

自社の過去分析値との比較

業界平均や他社との比較に加えて、自社の過去との比較も欠かせません。


売上債権回転期間は、業績や取引条件、営業方針の変化によって毎年異なります。したがって、単年のデータだけでは経営の実態を正確に評価できません。


5年、できれば10年分のデータを並べて、数値の推移を確認することで「資金回収の傾向」が見えてきます。


例えば以下のような表を作成すると、「年々少しずつ長期化している」「特定の年だけ異常値がある」といった傾向が見えてきます。


年度売上高(万円)売上債権残高(万円)回転期間(日)
2020年35,0005,00052
2021年38,0005,70055
2022年40,0006,00054
2023年42,0006,90060
2024年41,5007,20063

もし3年前から急に回転期間が長くなっている場合、その時期に「取引先の変更」「販売形態の転換」「売掛金の集中」が起きていないか確認することで、原因を突き止めやすくなります。


また、経年で改善している場合は、請求体制の整備や与信管理の強化などが功を奏している可能性があります。


時系列で変化を追うことは、今後の経営戦略を立てる上で欠かせません。

仕入債務回転期間との比較

売上債権回転期間をより正確に評価するには、仕入債務回転期間とのバランスも確認する必要があります。


仕入債務回転期間とは、仕入先から商品やサービスを購入してから支払うまでの平均期間を表す指標です。


売上債権回転期間が仕入債務回転期間より長い場合、「仕入先への支払いが先、顧客からの入金が後」というギャップが発生します。この状態が続くと、慢性的なキャッシュ不足に陥るおそれがあります。


一方で、仕入債務回転期間のほうが長ければ、支払いより回収が先行しているため、一定の余裕を持った資金繰りが可能です。


両者を比較することで、支払い条件の交渉や請求タイミングの調整など、具体的な改善策を導き出せます。

総合的観点での比較

売上債権回転期間を評価する際は、これまで見た4つの観点を総合的に見た上で、「なぜ数値が長期化しているのか」「一時的な現象なのか」を明確にすることが大切です。


原因が特定できたら、次に取るべき対策を検討しましょう。


請求の早期化、回収条件の見直し、信用調査の導入など、改善策を整理して実行に移すことで、回転期間の短縮とキャッシュフローの安定が実現できます。

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売上債権期間が長期化するリスク

売上債権期間が長期化すると、企業はいくつかのリスクに直面します。


ここでは、主なリスクを4つ紹介します。

売上債権管理コストの増加

売上債権期間が長くなるほど、債権の管理に必要な手間とコストが増加します。


請求書の発行や入金確認、入金遅延時の連絡・督促などの対応が複雑化し、経理部門の負担が大きくなります。特に、複数の取引先に対して未回収の債権が発生している場合は、管理業務だけで多くの時間を取られてしまいます。


例えば、売上債権の回収が2カ月から4カ月に延びた場合、入金予定を確認し、支払いの遅れに対して定期的なフォローを行う必要が生じます。結果として経理担当者の工数が増え、本来注力すべき経営分析や予算管理に時間を割けなくなるおそれがあります。


また、債権管理を支援するシステムを導入している場合は、データ更新や運用に関するコストも増加します。こうした間接的コストの増大は、企業の利益率を押し下げる要因となります。

貸倒れリスクの増加

貸倒れとは、取引先が支払い不能となり、売掛金や受取手形を回収できなくなる状態を指します。取引先の倒産や経営悪化などにより、約束された代金が入金されないまま失われてしまうケースです。


売上債権の回収が遅れると、貸倒れリスクが高まります。売掛金や受取手形は回収までに一定の期間があるため、その間に取引先の経営状況が悪化する可能性があるからです。


例えば、ある中小企業が主要取引先に対して1,000万円の売掛金を保有していたとします。取引先の業績が急速に悪化し、支払いが滞ったまま最終的に倒産してしまった場合、この1,000万円は「貸倒損失」として処理され、会社の純利益を大きく圧迫します。


特に、支払期限を過ぎても入金がない取引先や、連絡の対応が遅れる取引先には、注意が必要です。


支払いの遅延は、資金繰りの悪化など経営上の問題を抱えているサインであることが多いので、早めに兆候を把握しておくことが大切です。


関連記事:貸倒損失とは 未回収の売掛金との違いと対策を解説 | URIHO BLOG

経営状態の悪化

売上債権回転期間の数値の悪化は、経営状況に直接的な影響を与えます。


売上債権が回収されない間は、企業は商品やサービスを提供したにもかかわらず、現金を受け取れない状態が続きます。その結果、手元資金が不足し、支払いや投資を行うために借入金に依存せざるを得なくなるケースもあります。


借入金が増えると、利息負担が発生し、利益を圧迫します。さらに、資金繰りがひっ迫すると新規投資や成長戦略に充てる余力も減少します。


このように、売上債権の回収長期化は、企業のキャッシュフローを悪化させ、経営全体に悪影響を及ぼします。

黒字倒産リスクの増加

売上債権の回収が遅れると、帳簿上は黒字でも実際には資金が足りずに倒産する「黒字倒産」のリスクが高まります。


黒字倒産とは、売上や利益が出ていても、現金が手元にないために支払義務を果たせず、資金ショートを起こしてしまう現象です。特に中小企業や製造業のように仕入や人件費などの先払いコストが大きい業種では、売掛金の回収遅延が即座に資金不足につながります。


例えば、決算上は利益が出ている企業でも、主要取引先からの入金が数カ月遅れれば、資金繰りが破綻して従業員の給与や仕入代金を支払えなくなるおそれが生じます。このように、帳簿上の利益と実際のキャッシュフローが一致しない場合、経営は急速に不安定化します。


黒字倒産を防ぐためには、売上債権の回収期間を短縮し、現金化を早める努力が必要です。また、支払いサイトと回収サイトのバランスを見直し、「支払よりも回収を早くする」体制づくりが重要です。


もし回収遅延が避けられない場合は、売掛保証サービスを利用し、回収不能リスクに備えるのも有効です。


関連記事:売掛保証とはなにか ファクタリングとの違いと実際の利用事例をご紹介 | URIHO BLOG

売上債権回転期間を改善する方法


売掛金は、商品やサービスの提供から代金の入金までに時間差があるため、企業の資金繰りに直接影響します。


期日どおりに回収できれば問題ありませんが、支払いが滞ると、資金不足や経営悪化につながるおそれがあります。


そのため、回収不能リスクを防ぐための対策を日常的に講じることが欠かせません。


ここでは、売掛金の未回収を防ぎ、資金繰りを安定させるための有効な5つの対策を紹介します。

売上債権管理体制の見直し

まず基本となるのが、社内の売上債権管理体制の見直しです。


売掛金の回収が遅れる要因の多くは、社内での情報共有不足や管理ルールの不備にあります。


特に、営業部門と経理部門の連携が弱い場合、請求処理や入金確認の遅れが発生しやすく、結果として資金の流れが不透明になります。


以下のような方法を実践してみてください。


現状把握とルールの明確化


まずは、現在の売上債権管理の流れを整理し、どの段階で遅れやミスが生じているかを洗い出します。


請求書の発行日・支払期日・入金確認日を一覧化し、担当者ごとに管理責任を明確にすることが第一歩です。


システム化による「見える化」


取引件数が多い企業の場合、エクセル管理には限界があります。


請求・入金・消込・督促を一元管理できるクラウドシステムを導入することで、入金状況をリアルタイムに確認でき、未回収の債権を即座に把握できます。


また、入金遅延が続く取引先を自動的にリスト化できる仕組みを導入すれば、早期対応が可能になります。

与信管理を徹底する

売上債権回転期間の長期化を防ぐには、「与信管理」が欠かせません。


与信管理とは、取引先が支払いをきちんと履行できるかを見極めるための信用調査です。


信用状態を継続的に確認しておくことで、貸倒れや回収遅延などのリスクを未然に防げます。


与信管理の基本的な流れは、次の3段階です。


1. 取引先の情報収集


まずは、取引先の会社概要や代表者、所在地、設立年、業種などの基本情報を把握します。可能であれば、会社のパンフレットや公式サイトから経営方針・取引実績なども確認しましょう。


情報を幅広く集めるほど、信用判断の精度が高まります。新聞記事や業界団体の資料、信用調査会社のレポートなども参考になります。


2. 取引先の信用力の評価


次に、収集した情報をもとに取引先の信用力を評価します。


評価の際は、財務諸表などの客観的データに基づく「定量分析」と、経営姿勢や取引態度などの印象面を踏まえた「定性分析」の両方を行うことが重要です。


売上高や利益率、負債比率などの数値面に加え、経営者の信頼性や取引履歴の安定性といった観点も併せて確認しましょう。


3. 与信限度額の設定


取引先の信用力を踏まえ、どの程度の取引まで許容できるかを示す「与信限度額」を設定します。


この上限金額は、取引先の信用度、支払い条件(支払いサイトや回収方法など)、自社の資金状況やリスク許容度といった複数の要素を考慮して決めるのが基本です。


ただし、与信は一度設定すれば終わりではありません。取引先の経営状態は常に変化しており、好調だった企業が急に資金繰りを悪化させることもあります。少なくとも年1回、決算期ごとに信用状況を見直し、必要に応じて限度額を修正することが大切です。


また、支払い遅延が続く場合や、経営者交代、業績悪化などの兆候が見られた場合には、早急に与信枠を再検討する必要があります。


与信管理は経理部門だけで完結するものではなく、営業部門や経営層との連携も不可欠です。営業担当が得た現場の情報(取引先の支払い遅延や資金難の噂など)は迅速に共有し、取引条件の見直しにつなげる体制を整えることで、リスクを最小限に抑えられます。


関連記事:【初心者必見】与信判断のポイントと与信管理の方法を解説 | URIHO BLOG

売上債権の回収期間の短縮

売掛金の回収を早めることも、リスク軽減の大きなポイントです。


取引先の支払いサイクルを見直し、以下のような請求から入金までの期間を短くする工夫を取り入れましょう。


請求書発行の迅速化


商品やサービスの提供後、できるだけ早く請求書を発行します。


発行の遅れは、そのまま入金の遅れにつながります。電子請求書システムを導入すれば、印刷・郵送の手間を省き、発行スピードを大幅に短縮できます。


支払期限の明確化


請求書には、必ず「支払期限」と「遅延時の対応」を明記します。


期日を過ぎた場合に遅延利息を発生させる旨を契約書に記載しておけば、取引先の支払い意識を高める効果があります。


分割請求の活用


長期案件では、完了後の一括請求ではなく、進捗に応じた分割請求を行う方法も有効です。


例えば、契約時30%、中間納品時40%、最終納品時30%のように分割すれば、資金繰りを安定させやすくなります。


回収担当者の明確化


入金管理を担当する人を固定化し、入金予定・未入金・遅延状況をひと目で確認できる仕組みを整えます。


専任担当者を置くことで、支払い遅延時の初動が早くなり、未回収の防止につながります。

銀行からの資金借入

取引先との契約条件や業界慣習によって、回収期間を短縮できない場合もあります。そのようなときは、銀行借入で一時的に資金を補う方法も検討しましょう。


銀行借入は、低金利でまとまった資金を確保できるのが大きな利点です。短期的な運転資金の確保に適しており、売掛金の入金を待つ間の支払いを滞りなく行えます。


メリット


  • 低金利で安定した資金調達が可能
  • 既存融資枠があればスムーズに利用できる
  • 資金使途を明確にすれば信用維持が可能

デメリット


  • 審査に時間がかかる
  • 借入比率が上昇し、財務評価に影響
  • 返済管理が必要

資金が不足してから借入を申し込むと、審査期間中に支払いが滞るおそれがあります。したがって、余裕のある時期にあらかじめ融資枠を確保しておくのが理想です。


金融機関との信頼関係を築き、定期的に業績報告を行うことで、緊急時の借入もスムーズになるでしょう。

ファクタリングの活用

ファクタリングとは、保有している売掛金を専門のファクタリング会社に売却し、その代金を早期に受け取る仕組みです。


入金までの待機期間を短縮できるため、資金繰りの安定化や運転資金の確保に役立ちます。


ファクタリングには、大きく分けて「買取型」と「保証型」の2種類があります。


買取型ファクタリングは、売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらう方法です。


代金をすぐに受け取れるのが最大の利点で、急な支払いや仕入費用の確保にも対応できます。ただし、手数料(数%~十数%)が発生する点には注意が必要です。


取引形態には、取引先を介さずに契約する「二社間ファクタリング」と、取引先にも通知して実施する「三社間ファクタリング」があります。


二社間ファクタリングはスピーディに資金化できる反面、リスクが高いため手数料がやや高めです。三社間ファクタリングは手数料を抑えやすいですが、ファクタリングの事実が取引先に知られてしまうという注意点があります。


保証型ファクタリングは、売掛金に保険をかける方法です。売掛先が倒産などで支払えなくなった場合、保証会社が代わりに支払います。売掛先が倒産や経営悪化によって代金を支払えなくなった場合、保証会社がその分を肩代わりします。


保証型ファクタリングは、資金調達というよりも「貸倒れリスクの回避」を目的としており、安定した取引を継続したい企業に適しています。


関連記事:ファクタリングとはなにか ファクタリングの種類と保証ファクタリングの解説| URIHO BLOG

まとめ

売上債権回転期間は、企業の資金繰りや経営の健全性を数値で確認できる重要な指標です。


短ければ現金化が早く、資金を効率的に循環させられますが、期間が長くなると貸倒れや黒字倒産といったリスクが高まります。


安定した経営を維持するには、売掛金の回収を確実に進める仕組みづくりが欠かせません。


社内の債権管理体制を整える、取引先の信用状態を継続的に確認する与信管理を徹底する、などの方法が有効です。


ただし、取引件数が多い企業や人員が限られている場合、与信調査や督促業務に多くの時間を割くのは現実的に難しいケースもあります。


こうした課題を解決する方法が、売掛金保証サービス「URIHO(ウリホ)」です。


URIHOは、取引先の倒産や未入金時に取引代金を代わりにお支払いするサービスです。事前に取引先に保証をかけておくことで、与信管理をしなくても安心して取引を行うことができます。また、督促業務に時間や労力を割く必要がなくなり、営業活動に集中することが可能です。


また、URIHOはすべての手続きがWeb上で完結し、スピーディに利用開始することが可能です。売掛金の回収にご不安がある場合は一度導入をご検討ください。


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