ウッドショックやアイアンショックに続き、いま日本のモノづくりを大きく揺るがしているのが「ナフサショック」(粗製ガソリンの供給不足・価格高騰)です。
ナフサといえば「プラスチックの原料」というイメージが強いかもしれませんが、実は製紙業界や印刷業界にとって、文字通り「生命線」であることをご存知でしょうか。
現在、製紙業界の水面下では、かつてないほどの悲鳴と懸念が渦巻いています。本記事では、ナフサ不足が製紙・印刷業界にもたらす具体的な影響と、それに伴って急増する「未入金リスク」について解説します。
1. 「紙は木からできる」の落とし穴。製紙業界が上げる3つの悲鳴
「ペーパーレス化」が進む現代においても、チラシやパンフレット、 書籍、パッケージなど、私たちのビジネスや生活に「紙」は欠かせません。しかし、その製造現場は今、限界を迎えています。
「紙は木(パルプ)からできているのだから、ナフサショックとは関係ないのでは?」――そう思われる方も多いかもしれません。しかし、これこそが大きな落とし穴です。
実は、今回のナフサショックにおいて、製紙業界・印刷業界が最も恐れているのが「コート紙・マット紙の生産ライン停止」という最悪のシナリオなのです。木からできているはずの紙が、なぜナフサ不足でゼロになってしまうのでしょうか?
DMやカタログ、チラシで最もよく使われる、あのツルツル・サラサラとした質感の紙は「コート紙」や「マット紙」と呼ばれます。 これらの紙は、パルプの表面に特殊な化学樹脂をコーティングすることで作られていますが、このコーティング剤を紙にピタッと定着させるための接着剤は、ナフサが原料です。
つまり、「ナフサが足りない=接着剤が作れない=コート紙の製造自体がストップする」というドミノ倒しが起き始めています。木があっても、ナフサがなければ私たちが普段使っている印刷用紙は作れないのです。
現在、業界の水面下では以下のような致命的な事態がすでに進行しています。
- 「6月在庫切れ」の噂が現実味に
業界内では「6月にはコーティング用樹脂の在庫が底をつく」という話が出ています。すでに製紙メーカーによる「出荷制限」や「既存顧客へ優先配分」が始まっており、新規の注文は実質的に受け付けられない状態になりつつあります。
- 「上質紙しか残らない」という選択肢の狭まり
コーティングを施さない「上質紙」(コピー用紙のような質感の紙)はナフサの影響を比較的受けにくいため、生産は維持される見込みです。しかし、コート紙が全滅すればすべての発注が上質紙に殺到し、こちらも深刻な争奪戦になるのは目に見えています。
- デザインや販促効果への大打撃
コート紙から上質紙への変更を余儀なくされた場合、インキの沈み込みによって写真や発色が暗くなり、これまで通りの販促効果・見栄えを維持できなくなるという二次被害も懸念されています。
2. 印刷インキや梱包資材、物流費のトリプル高騰
価格が高騰し、手に入らなくなっているのは「紙」そのものだけではありません。
印刷に不可欠な「インキ」、圧着ハガキに使う「接着糊」(ニス)、DMを包む「PPフィルム」(透明封筒)もナフサを原料とする石油化学製品です。これらに加え、燃料費高騰による物流コストの上乗せが重なり、製造・流通コストが異常なほど跳ね上がっています。
主要製紙メーカーが相次いで15%以上の値上げを発表していますが、コスト上昇のスピードには追いついていません。限界に近い価格転嫁とサプライチェーンの混乱により、ビジネスの維持そのものが危ぶまれています。

3. 下流へ波及するドミノ倒し。激増する「未入金・連鎖倒産リスク」
製紙業界の危機は、決して他人事ではありません。そのまま「印刷会社」「デザイン会社」「広告代理店」「DM発送代行業者」、そしてそれらを利用する「一般企業」へとドミノ倒しのように波及します。
ここでBtoBビジネスにおいて最も警戒すべきなのが、「取引先の資金繰り悪化に伴う未入金リスク」です。
懸念①:印刷会社・加工会社の「突然の倒産」
原材料を仕入れられなければ、印刷会社は仕事を請け負うことができません。売上が立たなくても、仕入れた分の高騰した紙代・インキ代の支払いは容赦なくやってきます。特に経営体力の弱い中小の印刷・加工会社では、資金繰りが一気にショートし、事実上の倒産に追い込まれるケースが懸念されています。
懸念②:納期遅延による「支払い拒否」や「相殺」のトラブル
「紙が届かない」「インキが足りない」といった理由で、クライアントが予定していたキャンペーンや販促活動にDM・チラシの納品が間に合わなかった場合、「機会損失を被った」「納期遅れだから支払わない」といった深刻な取引トラブルに発展し、売掛金が回収できなくなるリスクが高まります。
懸念③:発注元(クライアント)の業績悪化による焦げ付き
ナフサショックは住宅業界や自動車業界、日用品業界など、あらゆるセクターを直撃しています。仕入れや販促費が高騰したことで、発注元企業自体の業績が急悪化し、「納品は完了しているのに、売掛金が入金されない」という事態がドミノ式に増えることが予想されます。
4. 取引先の「もしも」に備える。今こそ保証サービスの検討を
「長年付き合いのある会社だから大丈夫」「大手のクライアントだから安心」――そう言っていられる時代は終わりました。ナフサショックのような構造的なサプライチェーンの危機においては、1社の倒産が引き金となり、優良企業であっても一瞬で連鎖倒産へ巻き込まれるリスクがあります。
取引先の経営状況が悪化してからでは、打てる手は限られてしまいます。だからこそ、「前もってリスクをヘッジしておくこと」が、自社の社員と経営を守る最大の防衛策となります。
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