仮払金は、実際の費用が発生する前に支払いを行うための勘定科目で、主に消耗品の購入や交通費、交際費などの予想される費用に対して使用されます。このシステムは従業員が大きな費用負担を回避できるメリットがある一方で、仕訳作業の増加というデメリットもあります。
この記事では仮払金とはなにか、どのような場合に使われるかについて解説し、仮払金勘定を使った仕訳例や類似勘定との違いについて紹介いたします。
仮払金とは?
仮払金とは、費用が実際に発生する前の段階で支払いを行う場合に使用する勘定科目です。例えば、消耗品の購入や交通費、交際費などの名目で費用が発生する見込みがある場合、その支払いに充てる現金をあらかじめ従業員に渡しておくケースを仮払金として処理します。その後、消耗品の購入や交通費が実際に発生した場合、仮払金として処理した金額を消耗品費や旅費交通費などの正しい勘定科目に振り替える仕訳を行うのが一連の流れです。
仮払金のメリットとして、従業員が大きな費用負担をせずに済む点があげられます。
高額備品を購入する場合や大きな移動費が発生する場合、接待で高額の支払いが見込まれる場合など、従業員が一時的に支払うと大きな負担となるケースでは、従業員にとって費用面での不安が生じがちです。仮払金を使用すれば、従業員は費用の心配なく業務に取り組むことができます。
一方で、仮払金のデメリットとしては、仮払金を使用しない場合と比べて仕訳作業が増え、経理業務の負荷が増加する点があります。
費用が発生した際にそれを計上する作業は、仮払いを行うか否かに関わらず必要です。仮払いを行った場合、仮払い計上作業が追加で発生し、また月末や決算期に仮払金勘定が他の勘定科目に振り替えられているかを確認する必要があるため、作業量が増加します。
基本的に、仮払金勘定は一時的に使用する科目であり、貸借対照表に載ることは少ないです。決算時に仮払金勘定が残っていると、現金管理が適切でないという印象を与える可能性があります。理想的には、決算期までに仮払金勘定は適切な科目に振り替えられています。
ただし、仮払金が貸借対照表の「その他の流動資産」の5%を超えない場合、仮払金として単独で表記する必要はなく、その他の流動資産として一括表示しても良いことになっています。
仮払金の仕訳例
仮払金勘定を使用する際の仕訳は、仮払いを行うときと仮払金の清算を行うときの2回発生します。清算を行った際に仮払金勘定の借方と貸方が一致することが正常な状態です。
仮払いを行う場合、以下のような仕訳を計上します。
仮払金で消耗品を購入し、残金を現金で清算する場合は、次の仕訳で清算処理を行います。
この仕訳により、仮払金勘定は借方と貸方で30,000円となり、貸借が一致します。貸借の一致が確認できれば、仮払金に関する仕訳作業は完了です。
もし消耗品の購入代金が32,000円だった場合、仮払金の金額を超えるため追加で現金支出が発生します。
このケースでは、清算処理の仕訳は以下のようになります。
仮払金の仕訳を行う際の注意点として、消費税の取り扱いがあります。仮払金勘定を立てる段階では用途が未定のため、消費税の計上は行いません。
仮払いされた現金が実際に使用され、用途が確定した段階で、仮払金勘定から実際の科目への振り替えが行われ、その際には消費税も計上されます。
例えば、消耗品の購入では10%、飲食物の手土産購入では軽減税率8%など、科目が確定した段階で適切な消費税率の設定が必要になります。
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仮払金と前払金の違い
仮払金と前払金は、いずれも実際に費用が発生する前に支払いを行う際に使用される勘定科目ですが、その支払いの用途が確定しているかどうかで区別されます。
仮払金は交通費や交際費など、使用目的がある程度予測されるものの、まだ具体的な費用として確定していない状態で使用されます。一方、前払金はその用途が明確に確定している状態で支払いが行われる場合に使用されます。
たとえば、仕入れに関する費用の一部を商品の受け取り前に支払った場合、その支払いは仕入れ費用として用途が確定しているため、前払金として処理されます。
仮払金は、通常、用途が不明確な状態であり、期間をまたぐことはありません。決算までに仮払金勘定に計上された現金は、正しい勘定科目に振り替えることが望ましいです。一方で前払金は、用途が確定しており、単に支払いのタイミングが早いだけで、期間をまたぐことがあります。前払金を計上した場合、商品の受け取りやサービスの享受など、その費用が実際に使用されるタイミングで、前払金勘定から適切な勘定科目に振り替える仕訳が行われます。
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仮払金と立替金との違い
仮払金と立替金は、どちらも一時的な支払いに関する勘定科目ですが、本来誰が支払うべき金額であるかという点で両者は異なります。
仮払金は会社が自身の費用として支払う場合に使用されます。一方、立替金は従業員や取引先など、会社以外の主体が本来支払うべき費用を会社が一時的に立て替えて支払った場合に適用されます。
たとえば、従業員が私的に利用した会社支給のタクシー券や、取引先が負担すべき配送料を会社が代わりに支払った場合などが立替金の具体例です。仮払金は最終的に本来の費用科目に振り替えられて清算されますが、立替金は本来その費用を負担すべき人から回収する際に相殺されます。
立替金も仮払金と同様に一時的な勘定科目で、立て替えが解消された際には本来の勘定科目に振り替える必要があります。立替金は発生時に金額が確定しているため、仮払金に比べて仕訳作業が煩雑ではありません。立替金が発生した際には、本来の勘定科目を借方に、立替金を貸方にして仕訳を行い、その後の清算時に逆仕訳を行って完了します。
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まとめ
仮払金とは、費用の発生を見込んであらかじめ現金を払いだしておく際に使われる勘定科目です。たとえば消耗品の購入や出張時の交通利用、取引先との接待など支払いの発生が見込まれる場合に使われます。担当従業員へ現金を渡しておくことで、従業員が一時的にせよ大きな費用負担がないことが大きなメリットです。デメリットとして、記帳業務が増えることがあげられます。現金を払いだした際に仮払金勘定をたて、実際の支払いが行われた際に仮払金勘定を実際の支払いに合わせた勘定科目に振り替える、という形で二本立ての仕訳作業となるため、経理部門の負担が増える可能性があります。
仮払金と類似した勘定科目として、前払金や立替金などがあります。前払金は何かしらの費用を前払いしておく場合や手付金を支払う場合など、何のための支払いかが決定している場合に使われる勘定科目です。立替金は従業員や取引先など会社以外が本来負担すべき費用を会社が代わりに支払った場合に、従業員や取引先などからその金額を回収するまでの間一時的に計上する勘定科目です。前払金も立替金も仮払金とは用途が異なる勘定科目であり、違いを理解して正しい勘定科目で計上を行うことが必要です。
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