売掛金の未回収などが発生したときの対応策のひとつとして、支払督促があります。
支払督促は債権者が申立てることにより、簡易裁判所の書記官が債務者に支払督促を送達するものですが、受け取った債務者は、異議申立てをする権利があります。
この記事では、支払督促を受け取った債務者が異議申立てをした場合の流れについて、次のことを中心に解説します。
- 支払督促とはそもそもなにか
- 支払督促の異議申立てとはなにか
- 支払督促の異議申立てがあった場合の流れ
支払督促は申立てをすればすべて解決というものではありません。異議申立てが行われることも踏まえて、事前に流れを確認しておきましょう。
支払督促とは?
支払督促とは、裁判所の書記官が相手方に金銭の支払いを命じる制度です。
掛け売りの代金が入金されないなど、未回収の債権が発生した際、債権者が簡易裁判所に申立てをすることにより、支払督促が発付され債務者へと送付されます。
支払督促は訴訟や調停とは異なり、双方の主張をきいたうえで発付されるのではなく、申立人である債権者が申立てた内容だけを審査して発付されます。
支払督促の異議申立てとは?
支払督促を受け取った債務者は、督促の内容をみて不服があれば異議申立てを行うことができます。
異議申立てがあった場合、裁判所から申立人に対して、異議申立てがあった旨が通知されます。
支払督促の異議申立てがあった場合どのような流れになるのか
支払督促の申立てをした後は、次のような流れで進んでいきます。
- 支払督促の申立て
- 支払督促の発付と送達
- 仮執行宣言申立て
- 仮執行制限の発付と送達
- 強制執行の申立て
- 相手方が異議申立てをしたら訴訟へ
この中で相手方が異議申立てをするタイミングは2回、「2.支払督促の発付と送達」が行われたときと、「4.仮執行制限の発付と送達」が行われたときです。
債務者は支払督促を受け取ってから2週間以内であれば、異議を申し立てることができます。
支払督促を受領してから2週間以内に異議申立てがなく支払いもなければ、申立人は仮執行宣言申立てをすることができ、仮執行宣言付支払督促が債務者に送達されます。
この仮執行宣言付支払督促を受け取ってからも、2週間以内に債務者は異議申立てができます。
いずれのタイミングでも異議申立てがなく支払いも行われなければ、差押等の強制執行の申立てへと進みます。
しかし、異議申立てがあった場合は通常訴訟へ移行する流れとなります。
異議申立ての後、通常訴訟への移行
支払督促を受け取った債務者が異議申立てをした場合、自動的に通常訴訟へと移行されます。
支払督促は裁判所に出向かなくとも、郵送やオンラインの書面のやり取りだけで手続きができます。申立てには証拠を提出する必要はなく、相手方の意見を聞くこともありません。
相手方も異議申立てには理由や条件は必要なく、支払督促を受理してから2週間という期限のうちに申立てればよいものです。異議申立てに必要な「異議申立書」は、支払督促が送られる際に同封されています。
支払督促の申立ては時間や費用が少なくて済むのがメリットですが、異議を申し立てるほうも特別困難なことは生じません。言ってしまえば、簡単に異議申立てができるということになります。
異議申立てが行われると通常訴訟に移行するため、債権者も裁判所に出向いたり証拠を揃えたりする必要が生じます。
また、この通常訴訟になった場合の裁判は、相手方、つまり債務者の住所を管轄する裁判所で開かれます。場合によっては、債権者にとって遠方になってしまうこともあるでしょう。
ならば、はじめから債権者の住所に近い裁判所で訴訟を起こしたほうがよかったとなるかも知れません。
このように、支払督促は比較的容易に手続きができる手段ですが、異議申立てをされた場合には、予想外に多大な費用と時間を要することになり、債権者にとっても負担が大きくなることが考えられます。
支払督促の利用を検討する際には、異議申立てをされたときのことまで考え合わせたうえで、利用するか否かを決定することが大事です。
支払督促で解決できることが見込める相手であれば、時間も費用も少なくて済む支払督促は有効な手段です。
しかし、異議申立てをされる可能性が高い相手の場合は、別の方法はないかもよく検討する必要があるでしょう。
強制執行とは
強制執行とは、お金を払ってくれない相手に対して、財産の差し押さえができる手続きです。
支払督促を利用した場合、相手方が異議申立てをしなければ、仮執行宣言申立て~強制執行の申立ての流れで進みます。
仮執行宣言付支払督促が送達された後で相手方が異議を申し立てる場合は、強制執行停止の申立ても行われるのが一般的です。
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まとめ
債務者に対して支払督促手続を行った際、相手方が異議申立てをする場合があります。
異議申立てが行われると自動的に通常訴訟へと移行しますが、書面だけで手続きができる支払督促と違って、裁判所に出向いて証拠を揃えるなどの労力を要します。
通常訴訟の裁判は、相手方の住所を管轄する裁判所で開かれますので、移動に多くの交通費がかかるなど予想外に費用がかかることもあります。
支払督促で解決できることが見込める相手には、手続きしやすい支払督促は便利な手段です。
しかし、異議申立てをされることが考えられる相手には、支払督促を利用するのが最良かをよく検討することが必要でしょう。
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