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債権回収

回収不能に至るまでのプロセスとは売掛金の未払いへの対応方法を紹介

回収不能

 ビジネス上、取引代金の支払いは掛払いが一般的です。商品やサービスを売上げ、その代金を、支払期限が過ぎても取引先から回収できないことを「回収不能」といいます。


 この記事では、回収不能について詳しく説明し、貸倒損失の計上、また回収不能を防ぐ対策についても解説します。

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回収不能とはどのような状態?

回収不能とは?

取引先に提供した商品やサービスの代金については、ほとんどの場合は1ヵ月ごとに区切って複数の取引の合計額を算定し、請求書を発行して代金の回収を行います。このとき、請求済みで、かつ回収前の掛代金を売掛金といいます。商品やサービスの売買から生じる債権は売掛金、その他の取引から生じる債権は未収金といいます。


売掛金をはじめとする金銭債権は、予定していた期限までに回収できれば良いのですが、期限を過ぎても回収できないものが未回収売掛金として認識されることになります。

 未回収売掛金は、ただちに「回収不能」と判断されるわけではなく、回収不能と判断するまでプロセスを踏む必要があります。

回収不能の判断基準とその判断をするためのプロセス

 未回収の売掛金が発生した場合の対応の手順と、回収不能であると判断・確定するためのプロセスは次のような流れで行います。

催促

まず、回収できない原因が、請求書の送付忘れや請求内容の誤りなど、単純ミスである場合には自社側ですぐに対応しましょう。


 そのうえで、回収できない原因が相手側にある場合には、電話やメール、書面にて再度請求しましょう。このとき、記録に残しておくことも大切です。


 取引先の担当者が支払いを忘れていた、といった単純ミスである場合はこの時点で解決します。また、こちらが提供した商品やサービスに不満をもっているなど、感情的な理由である場合にも再交渉のきっかけになるでしょう。


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内容証明などによる督促状

催促しても反応がない場合には、内容証明郵便を利用して督促状を送付します。


内容証明は、郵便物の内容文書について証明するサービスです。「いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって郵便局が証明する制度」であると説明されます。


内容証明の書き方については、文字数や行数などが詳細に決められています。要件を満たした督促状を作成し、送付しましょう。


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訪問など

取引相手に応じて、連絡をとり、訪問して交渉することも一案でしょう。ただし、深刻なトラブルに発展する可能性もありますので、あくまでも取引相手に応じた対応が無難です。

法的手段

それでも取引先の支払いが望めない場合には、法的手段を検討することになります。法的手段を採る場合には、債権回収を専門にしている弁護士に依頼する方が賢明でしょう。


まず、訴訟以外の方法としては、公正証書の作成、即決和解、民事調停、支払督促があります。公正証書、即決和解、民事調停は取引先の協力が必要になります。


公正証書は、公証人に文書を作成・証明してもらい、債務不履行時には強制執行を可能にしてくれるものです。取引先が作成に応じてくれる場合に限ります。


即決和解は、当事者間で合意の見込みがある場合に利用できます。作成された和解調書にもとづき、支払われない場合は強制執行まで行えます。


民事調停は、第三者(調停委員や裁判官)に間に入ってもらって話し合いをします。二者間ではまとまらなかった交渉が進む可能性があります。調停が成立すれば、両者は作成された調書にもとづいた対応を行うことになりますが、支払われない場合は強制執行まで行えます。


支払督促は、簡易裁判所に、取引先に対して支払いを命じるように申し立てることです。

相手が異議を申し立てると訴訟になりますが、異議申し立てがなければ強制執行を可能にしてくれるものです。


これらの手段以外には、訴訟を検討することになります。勝訴しても回収できなければ意味がありませんので、訴訟の際には財産の仮差し押さえの手続きも重要です。


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売掛金が支払われない時に考えられる理由

顧客の経営状況や財務健全性・信用問題

取引先の経営状況が悪く、代金を支払えない状態であることが考えられます。財務諸表上、仮に黒字であったとしても運転資金が枯渇しているなど、資金ショートしていることは多々あります。倒産寸前であるなど、経営状況や財務健全性に問題を抱えている可能性が高いでしょう。


 また、取引先の技術力や営業力といった能力、人的ソースの状況、経営者の性格などから勘案して、そもそも信用に足らない相手であるということもあります。


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契約内容の不明確さや交渉の難航


なぜ取引先が支払わないのか、契約内容を確認してみましょう。締日、支払日、支払手段などを見直し、双方にとって合理的かどうかを検討します。また、商品やサービスの内容について取引先が不満を抱えていないか、などを確認することも重要です。


日頃から取引先とは連絡をとりやすい関係を築いておくことが大切です。交渉のハードルを下げておきましょう。

回収不能はどのように計上すれば良い?

売掛金を回収できない場合、会計上、貸倒損失として損失に計上することになります。損失として計上することで、法人税の負担を軽くすることができるのです。ただし、貸倒損失を計上するには税法で決められた要件を満たしている必要があります。


 要件が定められている理由は、自由に損失計上ができてしまうと、恣意的な利益操作を可能にし、租税回避に利用されてしまうためです。
 税法上、損失計上ができるのは以下3つのケースです。


  • 法律上の貸倒
    金銭債権が法律上切り捨てられた場合
  • 事実上の貸倒
    状況から回収できないことが明らかな場合
  • 形式上の貸倒
    取引停止後1年以上経過した場合など

 原則的に、回収の可能性が残っている場合には、貸倒損失を計上することは許されていません。回収不能であることが明らかである場合に、その事業年度において損失計上が認められます。その事業年度でなければ計上できませんので、早くても遅くてもいけません。


 回収不能と判断するために慎重なプロセスを踏むことで、税法上の要件を満たすことにもつながります。


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参考

No.5320 貸倒損失として処理できる場合|国税庁 (nta.go.jp)

回収不能になる前にできる対策

信用調査の活用とリスク評価

 回収不能は、自社の状況によるものではなく、取引先の状況により起こるものです。掛払いという「信用取引」が前提である以上、取引先の信用調査の実施と、取引先ごとの分析や評価を行うことが必要です。これらは与信管理と呼ばれ、事業を継続するための重要なリスク対策といえます。
 


信用調査は、内部調査、直接調査、外部調査、依頼調査の4つの方法に大きく分けられます。


  1. 内部調査
    取引相手の情報について、自社内にある過去の取引履歴や資料、営業担当者
    からの情報を調べます。
  2. 直接調査
    取引先の担当者などからヒアリングするなど、直接連絡をとって調べます。
  3. 外部調査
    取引先以外から情報を集めて調べます。官公庁などで登記簿を閲覧することなどが外部調査に該当します。
  4. 依頼調査
    企業の調査を専門的に行っている調査会社に依頼する方法です。専門のノウハウを持っているため、自社では入手できない情報を得ることができます。

 

取引先の信用度を調査したら、自社内での評価基準を設定し、取引先ごとに分析・評価を行います。評価基準は、複数の評価項目で、点数やランクなどを付けてルール化しておくとスムーズです。
この評価において、信用度の低い取引先には、取引の限度額を低めに設定すれば損失のリスクを低く抑えることができます。支払期限や支払手段について制限を設けることも有効です。問題のある取引先とは取引を停止するなど、判断基準により明確に行えるようになります。反対に、信用度の高い取引先とは積極的に取引を行えばよいと判断できます。
与信管理を行うことで回収不能リスクに備えつつ、積極的なビジネスを展開させていくことができるでしょう。

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分割支払いや支払条件の再交渉

取引先の状況に応じて、一括払いができないのであれば分割払いに対応するなど、支払い条件の再交渉を行いましょう。


 締日や支払期日の延長、現金払いなのかその他の支払手段の変更、値引きを行うかなど詳細に検討します。自社にとっての損失が最小になるようにしなければいけません。


 条件を変更する際は、契約書を作成し、相互に署名・押印するなど形式を整えておくことも重要です。口約束は避け、証拠を残しておきましょう。

売掛保証の利用

売掛金の未回収に備える保証サービスを利用する方法もあります。取引先の倒産や法的整理に至った場合、資金ショートや夜逃げに至った場合に、売掛金額を保証してくれるサービスを検討しましょう。利用料金の負担はありますが、回収不能リスクによる影響を考えれば検討の余地はあります。


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まとめ

ビジネス上、取引代金の支払いは掛払いが一般的です。商品やサービスを売上げ、その代金を、支払期限が過ぎても取引先から回収できないことを「回収不能」といいます。未回収の売掛金がただちに「回収不能」であるわけではなく、手順を踏み、あらゆる手段を講じても回収できず、客観的に回収不能であると判断された場合に貸倒損失として計上されます。


あらゆる手段とは、催促、内容証明などの督促状、可能な状況であれば訪問、それでも回収できない場合は法的手段に移行します。法的手段には訴訟だけでなく、公正証書や支払督促、即決和解、民事調停という手段もあります。それでも効果がない場合には訴訟に移行することになります。法的手段を採る場合には弁護士に依頼することが賢明です。


回収不能になる前に、防ぐ手立てを講じましょう。与信管理を日頃から行い、取引先とは密に連絡を取って、相手の状況が悪い場合には支払条件を再交渉するなど臨機応変に対応することがポイントです。また、売掛保証サービスを利用することも検討しましょう。


回収不能リスクを最小限に抑えるよう、備えておくことが重要です。


売掛金保証サービス「URIHO(ウリホ)」は、取引先の倒産や未入金時に取引代金を代わりにお支払いするサービスです。事前に取引先に保証をかけておくことで、与信管理をしなくても安心して取引を行うことができます。また、督促業務に時間や労力を割く必要がなくなり、営業活動に集中することが可能です。


また、URIHOはすべての手続きがWeb上で完結し、スピーディに利用開始することが可能です。売掛金の回収にご不安がある場合は一度導入をご検討ください。

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