「税金や社会保険料の支払いが、少しずつ遅れている」
―― その取引先は、まだ普通に取引できているでしょうか。
東京商工リサーチが公表したデータによると、
2026年8月の「税金滞納(社会保険を含む)」倒産は26件発生し、4月から5カ月連続で前年同月を上回りました。
1-8月の累計は181件に達し、わずか8カ月で前年の年間件数(160件)を超えたのです。
今回は、税金滞納倒産が急増している背景と、
これが取引先の売掛金リスクにどうつながるのか、そして今できる備えを解説します。
8カ月で前年の年間件数を超えた ― 「静かな異変」の実態
税金滞納倒産の増え方は、他の倒産カテゴリと比べても異例です。
8月の1カ月だけで26件と、前年同月から70%以上増加。4月以降は毎月のように前年を上回り続けています。
累計181件は前年同期の58.7%増で、この時点ですでに昨年1年分を上回りました。
しかも、この数字は「大きな会社が潰れた」話ではありません。
負債1億円未満が116件と全体の64.0%を占め、資本金1千万円未満も105件(58.0%)と6割近くに達しています。つまり、小規模な取引先ほど、税金や社会保険料の支払いを後回しにして運転資金に回さざるを得なくなっているということです。
なぜ「税金の滞納」が倒産のサインになるのか
東京商工リサーチでは、物価や人件費、金利の上昇が企業の資金繰りを圧迫し、過剰債務を解消できず新たな資金調達も難しい企業が、納税を後回しにして運転資金に充てている状況が透けて見えると指摘しています。
ここが重要なポイントで、税金や社会保険料は、取引先への支払いよりも後回しにされやすい。
つまり「税金の滞納」は、資金繰りが限界に近づいている会社の“最初に表れるサイン”になり得ます。
そして倒産形態の97.7%が破産という事実が、その深刻さを物語っています。
破産は、事前の再生協議もなく会社が突然止まる形ですから、売掛金は回収不能に近づきます。
賃上げと社会保険料 ― 中小企業をじわじわ締め付ける二重の負担
背景には、賃上げとそれに伴う社会保険料の負担増があります。2026年10月からは地域別最低賃金の改定分が順次発効し、全国平均で前年比55円程度の引き上げが予定されています。
賃上げそのものは良いことですが、収益力が追い付かない企業にとっては、社会保険料を含めた人件費の上昇が資金繰りを直接圧迫します。だからこそ「納税より運転資金」という判断が生まれ、それが滞納という形で表面化する。最低賃金が上がる季節は、こうした企業の体力が試される季節でもあるのです。
税金滞納の取引先は、「昨日まで普通だった」
税金滞納倒産の厄介さは、外から見えにくいことです。支払い猶予を受けている、分割納付をしているといった事実は、取引先の決算書には現れません。昨日まで普通に受発注していた会社が、ある日突然破産する
―― その直前のサインが、税金や社会保険料の滞納だった、というケースは少なくありません。
さらに、納税滞納が取引照会を通じてレピュテーションリスクにつながる可能性もあります。
資金繰りの悪化は、自社の売掛金だけでなく、取引関係そのものを揺るがしかねないのです。
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税金の滞納は、倒れる前に発せられる最後のサインかもしれません。
まずは無料の取引先チェックから、自社の取引先にどれほどのリスクが潜んでいるか確認してみましょう。
【出典】
東京商工リサーチ TSRデータインサイト
小林 邦洋
株式会社ラクーンフィナンシャル 審査部 部長
リース会社や保証会社の与信管理セクションにて、長年にわたり信用リスクの調査・分析に従事。現在はラクーンフィナンシャルの審査部部長として、膨大な企業データの分析と審査スキームの構築を指揮する「審査のプロ」。
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