URIHO BLOG.
  1. TOP
  2. URIHO BLOG
  3. 会社の倒産予兆を察知するには 財務諸表で見るべき項目とは
リスク管理

会社の倒産予兆を察知するには 財務諸表で見るべき項目とは

会社の倒産予兆

会社の資金繰りが悪化し経営が成り立たなくなると、やがて会社は倒産状態となります。取引先が倒産すると売掛金が回収できず、自社の資金繰りに影響を及ぼす可能性があるため、取引先の状況は常にチェックしておきたいものです。


本記事では、会社の財務諸表や各種データから倒産の予兆をつかむポイントを解説します。予兆がみられた場合に倒産を見越して動くことで共倒れのリスクを低減できるため、ポイントをおさえおきましょう。

債権管理DXカンファレンス

倒産とは?

倒産とは、企業が経済的な困難により、事業を継続することができなくなった状態を指します。具体的には、経営が成り立たなくなる、売掛金や手形などの支払いが不可能になるなどの状況が含まれます。このような倒産状態にある企業は、裁判所に対して破産手続き、民事再生手続き、会社更生手続きなどの開始を申し立てることが一般的です。これらの法的手続きを通じて、倒産が正式に認定されることもあります。


倒産にいたる企業には、主に二つの対応パターンがあります。一つは会社の清算を行い、事業を終了させること。もう一つは、会社の再建を目指し、事業を存続させるための措置を講じることです。これらは、裁判所の監督のもとで行われる公的整理の方法です。しかし、裁判所を介さずに倒産処理を行う私的整理も存在します。私的整理では、債権者との間で直接交渉を行い、債務の再編成や資産の売却などを通じて、企業の財政状態の改善を図ります。


関連記事
会社の破産とは倒産との違いや会社破産までの流れを解説 | URIHO BLOG

連鎖倒産とは? 連鎖倒産の起こる原因と回避方法の解説 | URIHO BLOG

財務諸表とは?

財務諸表とは、企業の財務状況、経営成績、キャッシュフローなどを示す公式の報告書です。これらは、企業が一定期間の経済活動の結果を外部の利害関係者に伝えるために使用されます。主に以下の3つの基本的な財務諸表があります。

貸借対照表(バランスシート):

貸借対照表は、企業の特定時点での財産(資産)、負債、および株主資本(自己資本)の状態を示す報告書です。この報告書は、企業の財務状態を一目で把握するためのもので、資産、負債、および株主資本の三つの主要な部分から構成されます。資産は企業が所有するリソースで、流動資産と固定資産に大別され、現金や在庫、不動産、機械設備などを含みます。負債は企業が他者に対して持つ債務で、短期借入金や長期借入金などがあります。株主資本は、資産から負債を差し引いた企業の純資産で、出資金や利益剰余金などが含まれます。

損益計算書(P/L)

損益計算書は、一定期間にわたる企業の収益と費用を反映し、その結果として生じた利益または損失を示します。この報告書は、企業の経営成績を評価するためのもので、収益から費用を差し引いた結果が利益または損失として示されます。収益は商品やサービスの販売から得られる金額であり、費用は収益を得るために発生したコストです。営業利益や純利益など、さまざまな利益指標がこの過程で計算されます。

キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書は、企業の一定期間内の現金および現金同等物の流入と流出を追跡します。この報告書は、企業の現金収支と資金の動きを理解するために用いられ、営業活動、投資活動、財務活動の三つのカテゴリに分けて現金の流れを示します。営業活動からのキャッシュフローは、企業の主な事業活動による現金の流入と流出を反映し、投資活動からのキャッシュフローは、設備投資や投資有価証券の売買など、企業の将来の収益性を高めるための活動に関連する現金の動きを示します。財務活動からのキャッシュフローは、借入金の返済、新たな借入、株式の発行や配当の支払いなど、企業の資金調達と株主への還元に関わる現金の流れを表します。

URIHOが保証するから安心

倒産の兆しはどこから読み取れる?財務諸表からみる倒産のサイン

前日まで何も兆候がみられなかったのに、当日になっていきなり倒産するという例はごくわずかです。多くの場合、倒産した会社の財務諸表をみると事前に倒産のサインが出ています。

貸借対照表で見る倒産の情報

貸借対照表で倒産の兆しがないかどうかを確認する際、重要なポイントは「債務超過状態になっていないか」という点です。債務超過状態とは、貸借対照表上で資産よりも負債が大きくなっている状態を指し、これが発生すると企業の信用が低下し、融資の獲得が困難になる可能性があります。資金調達が難しくなると、支払いに困難をきたし、結果として倒産に至ることがあるでしょう。


ただし、貸借対照表上で負債が資産を上回っていなくても、土地や有価証券などが実際の価値よりも高い評価で計上されている場合、実質的には債務超過状態にある可能性があります。そのため、貸借対照表の数字だけでなく、資産の評価方法にも注意を払い、詳細なチェックが必要です。


関連記事
債務超過と貸借対照表(バランスシート)の解説 赤字との違いもあわせて紹介 | URIHO BLOG

貸借対照表における売掛金の扱いとは 仕訳の方法もあわせて解説 | URIHO BLOG

キャッシュフロー計算書でみる倒産の情報

キャッシュフロー計算書はお金の流れを表す帳票であり、キャッシュフロー計算書での倒産の予兆は3帳票の中でも最も倒産に近いといえます。


キャッシュフローは、創業時や大きな事業刷新のタイミング以外はプラスであるのが正常な状態です。営業活動によるキャッシュフローのマイナスが続いている場合、事業がうまくいっておらずやがて資金繰りが悪化する可能性が考えられます。また営業活動によるキャッシュフローが芳しくない場合に財務活動によるキャッシュフローがゼロまたはマイナスとなっている場合、資金が必要な状態にも関わらず融資を受けることができない可能性があります。融資がおりないということは財務状況がよくない可能性があり、やはり近いうちに資金繰りが悪化する懸念を考えましょう。


これらのパターンに当てはまるからといって必ず倒産するわけではありませんし、逆にこれらのパターンにあてはまらない場合でも資金繰りが悪化することはあります。キャッシュフローがマイナスとなっている理由が明確に説明できない活動については、何かしら問題があるのではと考えるようにするのがよいでしょう。


関連記事
資金繰りの解説 重視すべきポイントとキャッシュフローとの違いについて | URIHO BLOG

キャッシュフロー計算書における直接法と間接法とは 違いもあわせて解説 | URIHO BLOG

損益計算書でみる倒産情報

損益計算書で見るべき項目としては、営業利益、経常利益、当期純利益などがあります。営業利益はその企業が本業で稼いだ利益額を表す項目、経常利益は本業で稼いだ利益に加えて財務による損益が反映された項目、当期純利益はその企業のその年の最終的な損益を表す項目です。これらの項目のうちどれかひとつでもマイナスがあれば、それが単年の現象であるかどうかを確認しましょう。次年度もつづくようであれば要注意のサインです。また可能であれば過去の損益計算書も確認し、マイナスが続いていないかどうかを確認できるとなお良いでしょう。


関連記事
会社経営状況の調べ方:重要指標と役立つ情報源を紹介 | URIHO BLOG

財務諸表以外でわかる倒産情報

貸借対照表、キャッシュフロー計算書、損益計算書の財務諸表以外からも、倒産の可能性を表すデータが存在します。

支払い期限の遅延が発生

売掛金の支払いや手形の決済など支払い期限があるものに対して遅延が発生している場合、それは倒産のサインと考えられます。遅延が単発の発生であること、遅延理由が明確で倒産と関係ないことが確認できれば問題ありませんが、遅延が複数回続いたり遅延の理由が不明瞭であったりする場合は資金繰り悪化の可能性が大きいです。また手形は不渡りが続けば倒産を招きます。


関連記事
支払いサイトとは 支払いサイトの種類とキャッシュフローについてもあわせて解説 | URIHO BLOG

遅延損害金の解説 支払遅延に対する法的対策とは | URIHO BLOG

経費削減や人員整理の実施

企業が経費削減や人員整理を行っている場合、一見すると効率的な経営のための健全な措置と考えられがちですが、大規模かつ急激に行われる場合、深刻な財務的問題が背後にある可能性が高いでしょう。特に、経費削減の措置が研究開発費や従業員研修費の削減を含む場合、長期的な企業の競争力を損なう恐れがあります。また、人員整理が行われる際には、それに伴う退職金の支払いや失業保険への影響も企業のキャッシュフローに影響を及ぼすことがあり、これらの措置が企業の将来の成長や安定に疑問符を投げかけることになります。

業務量の減少や大口取引の喪失

企業の収入源にとって重要な大口取引が失われた場合、ただちに財務状況に反映されます。業務量の減少や大口顧客の喪失は、売上高の直接的な減少につながりこのような変化に対応できない企業は、新たな収入源を開拓するための戦略的な転換を迫られることになるでしょう。また、こうした収入の減少は企業の信用状態にも影響を与え、資金調達の困難さを増すことが考えられます。

経営陣や経理の社員が退職

社内で何らかの問題が発生した場合、それが経営陣の退任や経理社員の退職として表に出ることがあります。退任や退職も明確な理由があり、資金繰りと関係ないことが確認できれば問題ありませんが、理由が不明瞭だったり触れることがタブーであるかのような雰囲気を醸し出していたりする場合、社内の状況が芳しくなく経営自体が傾く可能性が懸念されます。

同業他社からうわさが流れる

同業他社からの良くないうわさも、経営陣や経理社員の退職と同様に倒産の可能性を疑うポイントです。うわさだけを鵜呑みにするのはよくありませんが、火のないところに煙はたたぬともいわれるとおり、うわさが流れるからには何かしらの問題があることが多いです。

倒産する危険がある会社と取引しないための対策方法

前項であげている、財務諸表以外でわかる倒産のサインについては、自力で信用調査するほかに調査会社を利用する方法があります。自力で調査しようとすると時間も手間もかかるうえ、機密情報で開示してもらえない内容もありますが、調査会社を利用することで手間や時間をかけずに情報を得ることが可能です。


調査を外部へ依頼する場合、調査を専門とする業者を選ぶのもひとつの方法ですが、例えばファクタリングや売掛保証など与信審査をステップのひとつに持つサービスへの申し込みをするという方法もあります。ファクタリングとは売掛債権を買い取るサービス、売掛保証は売掛金が回収不能となった場合に一定の条件下で補填を行ってくれるサービスです。ファクタリングや売掛保証では取引先の財務状況や支払能力などをもとに与信審査を行います。与信審査の結果ファクタリングや売掛保証を受けられない、あるいは手数料が相場より高く設定される場合には倒産の懸念があるため取引を控えるべきでしょう。


関連記事

調査会社とは 調査会社の費用と信用調査について解説 | URIHO BLOG

新規取引先と取引をするうえでのチェックポイントと考えられるリスクとは信用調査の大切さの解説 | URIHO BLOG

売掛保証とは?

売掛保証とは、あらかじめ保証金を支払うことで売掛金の回収不能を回避できるサービスです。売掛保証を行う保証会社へ保証金を払う必要がありその金額分のコストは発生しますが、それ以上のリスクを負うことなく一定の条件下で売掛金の入金を保証してもらうことができます。


保証会社によりますが、基本的に売掛金の補填を受けることができるのは倒産や民事再生手続きに至った場合です。一部の保証会社では倒産までいかなくても、入金遅延が発生した段階で補填するサービス内容となっています。いずれにしても、倒産となれば売掛金の補填が受けられる場合がほとんどです。前項までにあげたような倒産のサインがみられる取引先、あるいは取引金額が大きく倒産した場合の自社への影響が大きいような場合には、売掛保証サービスの利用を検討するのが良いでしょう。


関連記事

売掛保証とはなにか ファクタリングとの違いと実際の利用事例をご紹介 | URIHO BLOG

売掛金の回収と回収が滞った場合の対応方法について解説 | URIHO BLOG

赤字経営でなぜ潰れない?なぜ倒産しないのかと赤字の種類を解説 | URIHO BLOG

まとめ

会社が倒産状態、すなわち経営が立ち行かない状態になる前には、どこかしらに予兆が表れるものです。例えば貸借対照表、キャッシュフロー計算書、損益計算書のうちどこかにその兆候が表れることがあります。また財務諸表以外のところでサインが出る場合もあります。いずれの場合でも絶対的なサインがあるわけではなく、以前と比べての変化の中でその兆候を読み取ることが必要です。倒産の予兆を見逃さないために取引先情報のチェックを定期的に行ったり、売掛保証サービスを利用したりして、倒産の予兆を読み取りリスクを低減する対策を普段から行っておくとよいでしょう。


売掛金保証サービス「URIHO(ウリホ)」は、取引先の倒産や未入金時に取引代金を代わりにお支払いするサービスです。事前に取引先に保証をかけておくことで、与信管理をしなくても安心して取引を行うことができます。また、督促業務に時間や労力を割く必要がなくなり、営業活動に集中することが可能です。


また、URIHOはすべての手続きがWeb上で完結し、スピーディに利用開始することが可能です。売掛金の回収にご不安がある場合は一度導入をご検討ください。

URIHOが保証するから安心

関連記事

人気記事

売掛金への担保設定で「貸倒れ」リスクを管理しよう 売掛金への担保設定で「貸倒れ」…
取引先から入金が無い?!債権回収の方法や費用について解説。 債権回収業者(サービサー)とは…
工事代金未払いは契約書なしでも回収できる?知っておくべきこと9選 工事代金未払いは契約書なしでも…
【初心者必見】債権回収における内容証明の効果(テンプレート付き) 内容証明の使い方と効果|債権回…

人気記事

【初心者必見】債権回収における内容証明の効果(テンプレート付き) 内容証明の使い方と効果|債権回…
売掛金への担保設定で「貸倒れ」リスクを管理しよう 売掛金への担保設定で「貸倒れ」…
取引先から入金が無い?!債権回収の方法や費用について解説。 債権回収業者(サービサー)とは…
工事代金未払いは契約書なしでも回収できる?知っておくべきこと9選 工事代金未払いは契約書なしでも…

新着記事

【検証】厳しい与信は「利益」を…
売掛金を使った資金調達の方法は? 売掛金を使った資金調達の方法は…
売掛金の差し押さえとは?回収の手順や注意点を解説 取引先が売掛金を支払ってくれないとき、まずは電話やメール、内容証明郵便で催促するのが一般的です。それでも回収できない場合は、裁判所の力を借りて相手の財産を確保する「差し押さえ」に移りましょう。 この記事では、差し押さえの基本的な仕組みから、手続きを進めるための具体的な手順、そして実施前に知っておきたい注意点まで解説します。 差し押さえとは 差し押さえとは、代金を支払わない相手の財産を裁判所が確保し、勝手に処分できないようにする法的手続きです。確保した財産は最終的に換価され、未払いの売掛金に充てられます。 ここでは、差し押さえの要件、対象となる財産の種類、メリットを順に説明します。 差し押さえには「債務名義」が必要 差し押さえを実施するには、「債務名義」と呼ばれる公的な文書を取得しなければなりません。 債務名義とは、相手にお金を支払う義務があると裁判所や公証人が認めた文書を指します。主な債務名義の種類は、以下のとおりです。 債務名義の種類 概要 確定判決 裁判で勝訴し、上訴期間が過ぎて確定した判決 仮執行宣言付判決 確定前でも強制執行が認められた判決 和解調書 裁判上の和解が成立したときに作成される調書 調停調書 民事調停が成立したときに作成される調書 執行認諾文言付公正証書 公証役場で作成された、強制執行に応じる旨が記載された公正証書 仮執行宣言付支払督促 簡易裁判所の書記官が発する支払督促に仮執行宣言が付されたもの もっとも代表的な債務名義は確定判決ですが、判決を得るには裁判を起こして勝訴しなければならず、時間も手間もかかります。そのため、裁判を経ずに債務名義を取得する方法も把握しておきましょう。 例えば、取引を始める段階で執行認諾文言付公正証書を交わしておけば、相手が支払いに応じないとき、訴訟なしで差し押さえの申し立てが可能です。また、簡易裁判所を通じた支払督促を利用すれば、通常の裁判よりも短い期間で債務名義を取得できます。 関連記事:「支払督促」とは?少額訴訟とは違う?必要な費用や流れを解説 差し押さえできる財産の種類 差し押さえの対象となる財産は、大きく「債権」「不動産」「動産」の3種類に分かれます。 種類 具体例 債権 売掛金、銀行預金、給与 不動産 土地、建物 動産 現金、商品、機械設備、車両 売掛金の回収では、「債権」の差し押さえがもっともよく利用されます。売掛金や銀行預金などの金銭債権であれば、第三債務者(相手の取引先や銀行)から直接取り立てられるため、競売のような換価手続が不要です。ただし、相手がどのような債権を持っているかを事前に把握するのは簡単ではありません。 「不動産」は価値が高く隠しにくいため、差し押さえの対象としては有力です。競売にかければ一括で大きな金額を回収できる可能性があります。差し押さえた物件が賃貸として運用されていれば、売却せずに賃料収入を売掛金に充てる方法も選べます。一方で、競売には数十万~数百万円の予納金が必要な上、売却完了まで半年~1年以上かかるケースもあります。 「動産」は現金や貴金属であれば資金化しやすく、予納金も不動産ほどかかりません。しかし、商品や機械設備は価値が不安定で、買い手が見つからず売却できないリスクがあります。 なお、すべての財産を差し押さえられるわけではありません。生活に必要な衣類や家具、仕事に必要な道具、66万円までの現金などの「差押禁止財産」は、差し押さえ対象外です。給与については、原則として手取り額の4分の3が差し押さえ禁止とされています(手取り額が44万円を超える場合は、一律33万円が差し押さえ禁止額となります)。 差し押さえのメリット 差し押さえのメリットは、売掛金を回収できる可能性が高まる点です。裁判所が相手の財産を確保するため、財産を隠されたり勝手に売却されたりする心配がなくなります。 もう一つのメリットは、相手に強い心理的な圧力をかけられる点です。特に売掛金(債権)の差し押さえでは、相手の取引先(第三債務者)にも裁判所から通知が届きます。差し押さえの事実が取引先に知られると、信用問題に発展しかねないため、相手は早期に支払いに応じる場合があります。 相手の取引先が大企業であれば、圧力はさらに強まります。大企業の契約書には「取引相手が差し押さえを受けた場合、契約を解除できる」と定められているケースが多く、相手は主要な取引先を失いかねません。 取引先を失うおそれがあるため、差し押さえは売掛金の支払いを促す強い要因となります。 差し押さえの手順 差し押さえは、法律で定められた手順に沿って進める必要があります。 ここでは、仮差し押さえから強制執行までの流れを6つのステップに分けて紹介します。 ステップ1:相手の財産を特定する 裁判所が対象者の財産を自動的に探してくれるわけではないので、差し押さえを始める前に、相手がどのような財産を持っているか債権者が自力で調査しなければなりません。 売掛金を差し押さえたい場合は、相手がどの企業と取引しているのかを把握する必要があります。取引先の名称だけでなく、取引内容、売掛金の金額、支払期日まで分かっていると、差し押さえが無駄に終わるリスクを減らせます。 情報をもっとも集めやすいのは、長年にわたって取引を続けてきた債権者自身です。相手の事業内容や取引先の動向は、日頃のやり取りの中で自然に見えてくるものです。弁護士に調査を依頼する方法もありますが、普段の取引で得た情報と組み合わせると、より正確に財産を特定できるでしょう。 ステップ2:仮差し押さえを申し立てる 財産が特定できたら、裁判所へ仮差し押さえの申し立てを行います。 仮差し押さえは、訴訟の結果が出る前に相手の財産を一時的に凍結し、処分や隠匿を防ぐための手続きです。申し立て先は、相手や取引先の住所地、もしくは差し押さえの対象がある場所を管轄する裁判所です。 申し立て時には、売掛金の存在を裏づける契約書、請求書、取引履歴、陳述書を一緒に提出します。 仮差し押さえの申し立てには債務名義が不要で、裁判官が「確からしい」と判断できる程度の資料があれば認められます。早ければ申し立てから1~2週間で実施できるため、相手が財産を処分する前に手を打てる点がメリットです。 ステップ3:裁判所で審理を受ける 申し立て後は、裁判所で審理が始まります。例えば東京地裁の場合、申し立てから3日以内に裁判官との面談が設定されるのが通例です。 仮差し押さえの審理は、通常の裁判のように公開の法廷で両者が向き合う形式ではなく、債権者側だけが裁判官と非公開でやり取りする仕組みとなっています。相手に仮差し押さえを申し立てた事実を知られると、財産を隠されるおそれがあるからです。 審理の場では、裁判官から仮差し押さえの必要性について質問を受けたり、提出書類の訂正や補足を求められたりします。書類に不備があると裁判官から補正を求められ、その分だけ手続きに時間がかかります。申し立て前に、資料をしっかりと整理しておきましょう。 ステップ4:担保金を納付し、仮差し押さえを実施する 裁判所が仮差し押さえを認めると、債権者に担保金の供託を命じます。担保金の目安は、請求金額の10~30%程度です。例えば500万円の売掛金であれば、50万~150万円程度が目安になります。 仮差し押さえは、まだ裁判で結論が出ていない段階で相手の財産を凍結する措置です。後の裁判で「相手に支払い義務がなかった」と判断された場合、財産を凍結された相手は不当な損害を受けたことになります。担保金の納付は、そのような場合の賠償に備えるために必要とされます。 担保金の供託が完了すると、裁判所は仮差し押さえの決定を出します。売掛金を仮差し押さえした場合、まず第三債務者(相手の取引先)に「支払いを止めるように」という通知が届きます。 相手への通知は少し遅れて届く仕組みなので、先に売掛金が回収されてしまう事態を防げます。 ステップ5:債務名義を取得する 仮差し押さえだけでは、まだ売掛金を直接回収できません。仮差し押さえはあくまで「相手の財産を一時的に凍結する」措置であり、お金を受け取る権利を得たわけではないからです。 相手が仮差し押さえを受けて自主的に支払いに応じてくれれば解決しますが、そうでない場合は訴訟や支払督促、民事調停などの手続きを利用して債務名義を取得する必要があります。 注意したいのは、訴訟を起こさず放置していると、相手から仮差し押さえの取り消しを求められる可能性がある点です。相手は「起訴命令の申立て」によって、一定期間内に訴訟を起こすよう裁判所に請求できるからです。 仮差し押さえの完了後は、速やかに訴状や証拠書類の作成に取りかかり、訴訟の提起まで進めておきましょう。 ステップ6:強制執行を申し立てる 債務名義を取得したら、裁判所に強制執行を申し立てます。申し立てには、債務名義の正本、執行文、送達証明書などが必要です。執行文とは、債務名義に基づいて強制執行を許可する旨が記された文書で、裁判所の書記官や公証人に作成を依頼する必要があります。 強制執行が認められると、裁判所が相手の財産を差し押さえ、売却や取り立てによって換金し、未払いの売掛金に充てます。売掛金(債権)を差し押さえた場合は、第三債務者から直接取り立てる形になります。 仮差し押さえした財産についても引き続き強制執行に移行できるため、確実に回収を進められるでしょう。 差し押さえの注意点 差し押さえは強力な回収手段ですが、万能ではありません。費用や時間の負担が大きいため、手続きを始める前に知っておきたい注意点があります。 以下の4つのポイントを把握しておくと、手続きの見通しを立てやすくなるでしょう。 財産の特定が難しい 差し押さえでもっともハードルが高いのは、相手の財産を自力で特定しなければならない点です。相手の銀行口座がどこにあるのか、どの企業と取引しているのかは、外部からは簡単に把握できません。 2020年の民事執行法改正により「財産開示手続」が強化されるとともに、「第三者からの情報取得手続」が新設され、以前よりは調べやすくなりました。「第三者からの情報取得手続」では、銀行や証券会社、市区町村や年金事務所に対して、裁判所を通じて情報の開示を求められます。 しかし、手続きには時間がかかる上、必ずしも十分な情報を得られるとは限りません。日頃から取引先の経営状況や取引関係をしっかりと観察しておきましょう。 手間と時間がかかる 仮差し押さえの申し立てから強制執行が完了するまでには、相当な時間が必要です。仮差し押さえは早ければ1~2週間で実施できますが、その後の訴訟は判決まで数カ月~1年以上かかるケースもあります。 書類の準備や裁判所とのやり取りも多く、本業に割ける時間が減りがちです。弁護士に依頼する場合は着手金や報酬金も発生するため、回収したい金額と費用のバランスを事前に見積もっておきましょう。 少額の売掛金に対して多大な時間と費用をかけると、かえって損失が膨らむ場合もあります。 相手の財産状況によっては回収できない 差し押さえの手続きを最後まで進めても、相手に財産がなければ売掛金は回収できません。また、相手に対し裁判所から「破産手続開始決定」が出された場合には、個別の差し押さえの効力そのものが失われます。 破産手続きが始まると、裁判所が「破産管財人」を選任します。破産管財人とは、破産した相手に代わって財産の管理や処分を担当する人物で、通常は弁護士が就任します。 破産管財人が選任されると、相手の財産はすべて「破産財団」に組み込まれます。破産財団とは、破産した相手が持つ財産をひとまとめにしたもので、すべての債権者へ公平に分配するために管理されます。破産財団に組み込まれた財産には個別の差し押さえが及ばなくなるため、原則としてすでに差し押さえていた財産であっても回収できません。 また、ほかの債権者がすでに同じ財産を差し押さえている場合は、回収額が債権者の間で分配されるため、全額を取り戻すのは難しくなります。 相手の経営状態が悪化してから動き出すのでは遅い場合もあるため、異変を感じたら早めの対応を心がけましょう。 まとまった金額の担保金を用意する必要がある 仮差し押さえを利用する場合、請求金額の10~30%に相当する担保金を法務局に供託しなければなりません。 例えば1,000万円の売掛金であれば、100万~300万円の資金が必要です。 担保金の割合は一律ではなく、売掛金の証拠がどれだけそろっているか、相手が被る不利益の大きさなどを裁判所が総合的に判断して決定します。売掛金の存在を裏づける契約書や請求書がしっかりそろっている場合は10~15%程度に抑えられる傾向がありますが、証拠が不十分だと30%近くを求められる場合もあります。 訴訟が長引けば、その間は担保金が手元に戻りません。資金繰りに余裕がないときは、担保金の負担だけで経営を圧迫するおそれがあります。 仮差し押さえに踏み切るかどうかは、回収したい売掛金の金額と手元資金のバランスを見ながら、慎重に判断しましょう。 売掛金の未回収リスクを抑えるには? 差し押さえは手間も時間もかかる上、相手の財産状況次第では回収が困難になる場合があります。そもそも差し押さえが必要になる状況をつくらないことが理想です。最初から未回収を防ぐ仕組みを取り入れておけば、裁判にかかる費用や労力を丸ごと省けます。 未回収リスクを抑える方法として、「売掛保証サービス」の活用があります。売掛保証サービスとは、事前に保証会社と契約を結び、対象となる取引先の与信審査を通過しておくことで、取引先が売掛金を支払えなくなった場合に、保証会社が代わりに代金を支払ってくれる仕組みです。 取引先の倒産や支払い遅延が起きても売掛金を確実に受け取れるため、差し押さえのように長い時間と高い費用をかけて回収に動く必要がありません。本業に集中できるのが大きな利点です。 また、保証会社が取引先の信用力を審査してくれるため、新しい取引先との取引を始める際の判断材料としても役立ちます。与信管理の負担を軽減できるので、特に限られた人員で経営している中小企業にとっては心強い味方になるでしょう。 関連記事:売掛保証とはなにか メリットやデメリット、実際の利用事例をご紹介 まとめ 差し押さえは、売掛金を回収するための最終手段です。「債務名義」を取得し、裁判所に強制執行を申し立てれば、相手の財産から未払い分を回収できます。仮差し押さえを先に実施しておけば、訴訟中に財産を隠されるリスクも抑えられます。 一方で、財産の特定が難しい、手続きに時間がかかる、担保金が必要になるといった負担も伴います。相手が破産してしまえば回収の見込みが立たなくなる点も見逃せません。差し押さえに踏み切る前に、回収したい金額と手続きにかかる費用・時間を比較し、本当に採算が合うかを見極めましょう。 売掛金の未回収リスクをあらかじめ抑えたいなら、売掛保証サービスの活用がおすすめです。「URIHO(ウリホ)」は、月額の定額料金で利用できる売掛保証サービスです。取引先の支払いが遅れた場合や、倒産によって売掛金が回収できなくなった場合に、URIHOが代わりに代金を支払います。 未回収の不安を解消し、安定した経営を続けたい方は、ぜひURIHOの利用をご検討ください。 売掛金の差し押さえとは?回収の…

関連記事

中小企業倒産防止共済とはなにか 制度の概要と売掛保証との違いについて解説 中小企業倒産防止共済とはなにか…
代物弁済とは?抵当権との違いもあわせて解説 代物弁済とは?抵当権との違いも…
信用調査 信用調査とは 信用調査の4つの…
資料ダウンロード(無料) アカウント登録(無料)