計画倒産とは、経営者が意図的に倒産し、支払いや借金の返済を回避する行為です。
この記事では、計画倒産の違法性や通常の倒産との違いについて分かりやすく説明します。さらに、倒産の可能性が高い会社を見極めるための財務諸表のチェックポイントにも焦点を当てます。
計画倒産とは・計画倒産は違法か
計画倒産は、倒産することが確定しているにもかかわらず、仕事を受けてお金を支払うタイミングであえて倒産する、または金融機関から融資を受けるなど、経営者が自らの利益だけを追求し、従業員や取引先に多大な迷惑を与える行為です。
このような行為は、違法性が問われ、訴訟に発展することもあります。
具体的な事例として、2023年にはユニゾホールディングスという会社が経営破綻しました。この際、経営陣は巨額の負債を抱えていながらも、退任後に退職慰労金として1億円以上を受け取っていました。それだけでなく、退任後の1年間にわたって顧問報酬として8億円が支払われていました。これに対し、報酬の返還を求める訴訟が裁判所の監督委員に主導される形で起こっています。この事例は、計画倒産によって関係者が不当な利益を得ようとする行為が行われた一例です。
計画倒産は債権者にとってあまりに不透明な点が多く、それゆえ違法性を問われ訴訟へと発展してしまう可能性は否めません。
参考
日経ビジネス [独自]経営破綻ユニゾ、9億円の報酬返還求め元経営陣を提訴
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計画倒産と通常の倒産の違い
通常の倒産は、会社が経済的に破綻して、債務の支払いが困難になった状態を指します。経営者が自らの資産防衛を目的として行う計画倒産とは異なり、債務者が自らの財産を売り払って債務の弁済に充てることを前提とします。
倒産処理の手続きには、裁判所が関与して行う公的手続きと、裁判所が関与しない私的手続きの2種類があります。法的手続きでは、裁判所主導のもと、すべての債権者が平等に弁済される権利を持ちます。これに対し、私的手続きでは債権者と債務者が交渉して手続きを進めます。どちらの手続き方法にも、会社の債権をめざす「再建型」と、会社の財産を清算し消滅させる「清算型」があります。
計画倒産と計画的な倒産は違う
「計画倒産」と「計画的な倒産」は表現として似ていますが、実際は全く異なるものです。
計画的な倒産は、債権者や従業員などの利害関係者が被る不利益を最小限に抑えることを目的として倒産する行為です。
近年は、後継者不在のため、事業継続が難しく会社を畳まざるを得ないといった状況も増加しています。帝国データバンクの調査によれば、60歳代の代表者の後継者不在率は37.7%、70歳代も約30%で後継者が不在となっています。
このような状況下で、後継者倒産は今後も増加する傾向が高く、高齢の経営者が健在のうちに事業を畳もうとする計画的な倒産が増加するかもしれません。
倒産をする会社の特徴
倒産は、大抵の場合は突然起こります。取引先や従業員にとって、突然の倒産は寝耳に水の出来事であり、取れる対策も限られてしまいます。
しかし、経営危機そのものは突然に起こるものではありません。実際には、倒産の前兆となるシグナルが発生します。例えば以下のようなものです。
- 経営陣に悪い噂が広まっている(例:リスクの高い投機に手を出し、本業をおろそかにする)
- 役員の交代が頻繁に起こっている(派閥争いやトラブルがある可能性)
- 経営者との連絡が取れなくなり、訪ねても不在が多い
- 従業員の懲戒処分や懲戒解雇が公にされる
- 従業員の退職が相次いでいる
- 在庫が急激に増えている
- 現金での支払いが手形での支払いに変更された
取引先の状態を確認するには、直接会社を訪れて現地を見ることが重要です。業界の動向や取引状況を常に把握しておくことも大切です。
さらに、取引先の登記簿謄本や財務諸表などの公開資料を確認することで、危険な情報を察知できます。特に財務諸表には、会社の経営状況が具体的な数値として表れます。売上や負債、キャッシュフローの状況から、倒産の兆候を確認しましょう。
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貸借対照表で見る倒産の情報
貸借対照表は、会社の資産と負債、純資産の状況を示す財務諸表です。貸借対照表から倒産の兆候を見つけるには、以下のポイントに注目します。
- 現預金の額
現預金が極端に減少している場合、手元のキャッシュフローが悪化している可能性があります。現預金額が売上1.5ヵ月分より下回っていれば運転資金に余裕がない状態であり要注意です。 - 負債の額
長期借入金や短期借入金が増えている場合、返済能力に問題がある可能性があります。
短期的にどの程度の返済能力があるかを示す指標に「流動比率」があります。具体的な計算方法は、会社の流動資産(現金、預金、売掛金など)を短期債務(短期借入金、支払予定の買掛金など)で割ることで求められます。
一般的に、流動比率が1を下回った場合、会社が短期的な債務を返済するために必要な現金や現金同等物の資産が、短期債務に対して不十分であることを示します。短期的な支払い義務を果たすのに困難を抱えている状況にあるかもしれません。
- 純資産の額
倒産の兆候として最も一般的な特徴は、会社の負債が資産を上回っていることです。つまり、会社の純資産がマイナスになっているか、ほぼゼロに近い状態です。このような状況では、会社は債務の返済や財務的な義務を果たすことが困難になります。
キャッシュフロー計算書でみる倒産の情報
キャッシュフロー計算書は、会社の現金の収入と支出を示す財務諸表です。経営継続にはキャッシュが最も重要と言っても過言ではありません。なぜなら、たとえ帳簿上で黒字でも、手元にキャッシュが無ければ会社はすぐに倒産してしまうからです。
キャッシュフローで倒産の兆候を見つけるには、以下のポイントに着目します。
- 営業キャッシュフローの悪化
営業活動による現金の収入が減少している場合、会社の業績が低下している可能性があります。 - 投資キャッシュフローの増加
新規設備や施設への大規模な投資が行われている場合、資金不足や経営計画の失敗の兆候となることがあります。 - 財務キャッシュフローの減少
株主への配当や借入金の返済額が増えている場合、資金繰りに問題がある可能性があります。
損益計算書でみる倒産情報
損益計算書は、会社の収益と費用、利益の状況を示す財務諸表です。倒産の兆候を見つけるには、以下のポイントに注目します。
- 売上高の減少
会社の主要な収益源である売上高が減少している場合、業績の悪化が考えられます。 - 経常利益の低下
営業活動による利益が減少している場合、会社の収益力が低下していることを示します。 - 最終利益の赤字化
最終的な利益が赤字になっている場合、会社の経営状態が深刻な問題を抱えている可能性があります。
財務諸表は、取引先との事業関係を検討する際に重要な情報源となります。しかし倒産寸前の会社は、架空の売上を計上するなど粉飾を行うこともあります。例えば、来期の売上高を当期分に含めることで売上高を大きく見せる、子会社に架空の請求書を発行して売上計上するなどです。
倒産の兆候がある会社の財務諸表を確認する際には、常に財務情報が不正に操作されていないかを注意深く分析しましょう。
売掛保証とは
売掛保証とは、取引先が経営悪化や財政難で支払いができなくなってしまった際に、自社の未回収の売掛金を保証してもらえるサービスです。会社更生法が適用された場合には売掛金の回収が難しくなります。そのようなリスクに備えるために売掛保証サービスに申し込んでおくとリスク回避ができます。
売掛保証のメリットは、売掛金の未回収リスクを減らせるだけではなく、与信管理もあわせて行えることにあります。売掛保証会社が契約前に取引先(売掛先)の与信審査を行うためです。しかも、取引先に知られることなく契約を進められるのも、売掛保証サービスを利用しやすいポイントです。
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まとめ
取引先の倒産は予期せぬ出来事です。特に経営者が利益を得る意図的な計画倒産の場合、債権者にとっては債権回収の難しさが大幅に増します。債権者は事が起こってから慌てるのではなく、常日頃から取引先を観察しておく必要があります。
倒産の兆候は、倒産前からあらわれています。例えば、経営者の悪い噂や役員の交代、従業員の退職やモラルの低下などです。これら倒産のシグナルを察知するために、取引先に実際に出向くことが重要です。
また、貸借対照表やキャッシュフロー計算書、損益計算書などの財務諸表を分析することで、会社の財務状態を確認できます。具体的な兆候は、負債超過や資本不足、利益の低下などで表れます。
倒産の兆候を見逃さず、財務諸表を適切に分析することは、事業を展開する上で重要なスキルです。取引先の財務状況を把握し、リスク管理を行うことで、ビジネスの安定性を確保しましょう。
売掛金保証サービス「URIHO(ウリホ)」は、取引先の倒産や未入金時に取引代金を代わりにお支払いするサービスです。事前に取引先に保証をかけておくことで、与信管理をしなくても安心して取引を行うことができます。また、督促業務に時間や労力を割く必要がなくなり、営業活動に集中することが可能です。
また、URIHOはすべての手続きがWeb上で完結し、スピーディに利用開始することが可能です。売掛金の回収にご不安がある場合は一度導入をご検討ください。