暴力団をはじめとする反社会的勢力は、誰でも知っている名の知れた組織ばかりではありません。ごく普通の組織にみえていても、実は反社の一端を担っていたり反社とのつながりがあったりすることがあります。反社とのつながりの有無を事前にチェックするのが、反社チェックです。
本記事では反社とはなにか、反社チェックとはなにかといったことから、反社チェックの具体的な方法までを解説します。
反社チェックとは?
反社チェックとは、取引先や顧客などが反社会的勢力(反社)と関わりを持っていないか、または反社に該当していないかを確認するプロセスです。「反社」とは、暴力団、詐欺集団などの違法活動を行う反社会的な組織や個人を指します。また反社チェックは「コンプライアンスチェック」とも呼ばれることもあり、企業活動を透明かつ健全に保つために行われます。
反社チェックを行うべき対象は多岐にわたります。最も一般的には、新規取引先や既存の取引先、顧客が対象となりますが、それに加えて、主要株主や大口の顧客、顧問弁護士、税理士といった企業のステークホルダーも含まれます。
さらに、外部から新たに迎え入れる役員や取締役に対しても、徹底的な反社チェックが求められます。役員は企業の意思決定に大きな影響を与えるため、彼らが反社会的勢力と関係を持っている場合、企業の信用や評判に甚大な損害を与えるリスクがあります。特に、役員が反社と関わっている場合、企業全体のイメージが悪化し、取引停止や法的制裁を受ける可能性が高まります。
Sansanが2022年に実施した調査「リスクチェック・反社チェックに関する実態調査」によれば、反社チェックを実施している企業はアンケート回答者の90%を超えており、多くの企業にて実施がなされています。その内容としては反社会的勢力とのつながりの有無のほか、マネーロンダリングやテロ資金供与など犯罪歴、制裁歴についてチェックを行っている企業もあります。
参考
Sansan、「リスクチェック・反社チェック実態調査」を実施〜| Sansan株式会社 (corp-sansan.com)
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反社会的勢力の定義
法務省の「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」によれば、反社会的勢力の定義は「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」です。
反社会的勢力の一番分かりやすい例は暴力団ですが、それ以外にもこの定義に該当する集団や個人は存在します。
法務省によれば「近年、暴力団は、組織実態を隠ぺいする動きを強めるとともに、活動形態においても、企業活動を装ったり、政治活動や社会運動を標ぼうしたりするなど、更なる不透明化を進展させており、また、証券取引や不動産取引等の経済活動を通じて、資金獲得活動を巧妙化させている。」とされており、一見普通の企業や団体に見えても取引を続ける中で急に暴力や詐欺などの行為をはたらくケースには警戒が必要です。
参考
法務省:企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について (moj.go.jp)
反社排除の5年条項とは
暴力団をはじめとする反社会的勢力の特徴のひとつに、組織から抜けようと思ってもなかなか関係を断ち切れない点があります。
反社排除の5年条項はこの点を考慮したもので、反社会的勢力から離脱した個人や組織であっても、離脱後5年を経過していない場合は反社会的勢力とみなすことができるという規定です。
反社会的勢力との接触による被害を防ぐため、各都道府県において暴力団排除条例という条例が制定、施行されています。
反社排除の5年条項はこの暴力団排除条例に含まれる条項です。建設業法や宅地建物取引業法、労働者派遣法などの法律に規定されているほか、企業間で交わされる契約書や取引約款などの多くにも暴力団排除条例が含まれています。
反社チェックをやるタイミング
反社チェックを行うべきタイミングは、企業が新たに取引関係を開始する前が基本です。具体的には、新規取引先との契約締結前や、新規パートナーシップの構築時に実施することが推奨されます。また、従業員の採用時にも、このチェックが必要です。さらに、業務提携やM&Aのような重要なビジネス判断の際にも、相手企業が反社会的勢力と関わりがないかの確認が求められます。これにより、企業は不測のリスクを回避し、法的トラブルを未然に防ぐことができます。
また、反社チェックは、単発で終わらせるべきではなく、継続的に行う必要があります。反社会的勢力との関わりは、時間の経過とともに変化する可能性があり、一度問題がなかった取引先やパートナーでも、将来的に反社との関与が疑われるケースもあります。定期的なチェックを行うことで、長期的な取引関係を安全に維持でき、企業リスクを最小限に抑えることが可能です。定期的な確認は、特に長期契約を伴う取引や重要なパートナーシップにおいて不可欠です。
反社チェックをやる理由とやらなかった場合のリスク
反社チェックをやる理由はシンプルで、取引先や顧客など関わりのある相手が反社会的勢力でないかを確認するためです。暴力団をはじめとする反社会的勢力は一見、普通の組織であるかのように振る舞っていますが、どこかで態度を翻してきます。
実際に取引関係がスタートしてから相手が反社であることが判明した場合、そこから関係を絶つにはかなりの労力やコストがかかります。さらに反社とつながりがある、取引があるということが他のステークホルダーに伝われば、契約を解除されてしまったり業界を干されてしまったりといったことが起こりかねません。反社とのつながりを持つことを避けるため、反社チェックは必須です。
反社チェックの方法
反社チェックの具体的な手法としては、主に次の3つがあります。調査会社を利用する場合は調査費用がかかりますが、警察や暴追センターを利用する場合とインターネットを活用する場合はコストの負担なくチェックを実施することができます。チェック対象と自社の関わりの程度に応じて、チェック方法を使い分けるとよいでしょう。
警察・暴追センターへの問い合わせ
警察や暴追センターには、反社会的勢力による被害の相談が日々寄せられています。こちらへ問合せを行い、過去の相談事例などから情報収集をはかることが反社チェックのひとつの方法です。
全国暴力追放運動推進センター(暴追センター)および各都道府県の暴力追放推進センターは、反社会的勢力からの不当な要求による被害を防止するための講習を実施したり、弁護士や少年指導委員などの専門知識を有する暴力追放相談員による暴力相談を実施したりしている組織です。暴力追放運動の一貫として冊子やDVD、ポスターなどを作成したり不当要求防止責任者育成のための講習会を実施したりといった活動が行われており、反社対応の基本的な考え方や対処方法など学ぶこともできます。
参考
全国暴力追放運動推進センター (zenboutsui.jp)
調査会社への依頼
警察や暴追センターなどからの情報入手が難しい場合には、調査会社を頼るのもひとつの手です。素人では手が出せない領域の情報を入手できたり、噂レベルの情報でも裏付け調査を行い、正確性を担保してくれたりと、専門機関ならではのクオリティの高いチェック結果が期待できます。調査費用はかかりますが、重要な取引先であればコストをかけてでも正確な情報を求めるとよいでしょう。
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インターネット調査
警察や暴追センター、調査会社など第三者の手を借りなくても、インターネットである程度の調査は実施可能です。具体的には新聞や業界紙などで情報を入手したり、登記情報提供サービスで商業登記情報を確認したりといったことができます。中には真偽が不確かな情報や出所が不明な情報もありますので、信頼できる機関の情報であるかどうか、根拠のある情報かどうかなど注意深く確認する姿勢が求められます。また時と共に状況が変化することもありますので、インターネットから収集した情報はそれがいつ時点の情報であるかを合わせて記録しておくとよいでしょう。
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反社チェックと与信管理の関係
反社チェックと与信管理は、企業が取引先や顧客との安全かつ健全な取引関係を維持するための重要なプロセスですが、それぞれ異なる目的を持っています。
反社チェックは、前述したとおり取引先や顧客が反社会的勢力と関わりがあるかどうかを確認するための手続きです。企業が反社会的勢力と関係を持ってしまうと、社会的信用の低下や法的リスクを抱えることになり、場合によっては制裁を受ける可能性もあります。
一方、与信管理は、取引先の財務状況や信用力を評価し、取引に伴う支払いや貸付金が回収不能になるリスクを回避するための手段です。与信管理は主に取引相手が債務を適切に履行できるかどうか、財務的に健全かどうかを評価することに焦点を当てています。これにより、未回収リスクを最小限に抑え、企業のキャッシュフローや財務健全性を保つことが可能となります。
両者には違いがあるものの、反社チェックと与信管理は補完的な関係にあります。反社チェックが法的・社会的リスクを防ぐ役割を果たし、与信管理が経済的なリスクを軽減する役割を担っています。
例えば、与信が優れている取引先でも、反社会的勢力と関わりがあれば企業全体に深刻な影響を与えるため、両方のチェックをしっかりと行うことが、リスク管理において不可欠です。企業が安定した取引関係を築き、長期的に成長するためには、反社チェックと与信管理の両方をバランス良く実施することが求められます。
まとめ
反社チェックとは、取引先や顧客など何かしらの形でつながりを持つ相手方が反社会的勢力でないかをチェックすることをいいます。反社会的勢力とはときに暴力や詐欺といった行為を行いながら経済的利益を求める組織のことで、一度つながりを持ってしまうと関係を絶つのが困難です。
反社チェックの具体的なやりかたとしては、警察や暴追センターへ問合せを行う、調査会社に依頼する、インターネットで情報収集を行うといったことがあります。一見普通の企業に見えたが実は反社だった、というように情報がアップデートされたり、以前は何もなかった人がある時期から反社とのつながりを持つようになったりと、状況が途中で変わったりすることもあります。反社チェック時に用いた情報はいつ時点のものかを記録確認するとともに、新規取引開始前だけでなく定期的に反社チェックを行うのが望ましいでしょう。
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