企業を経営するうえで最も大きな目的は利益の追求です。利益を得るには売上をあげる必要があり、そのためには新規取引先をいかに獲得するかが重要になります。しかしながら安易な取引先の拡大は貸倒損失などのリスク増大につながるという懸念もあります。
そこでこの記事では、新規取引先の獲得にあたって気をつけるべきポイントについて解説します。
新規の取引先とやり取りするうえで気を付けたいこと
日本経済の停滞が長期化する中で新規取引先を獲得することは企業経営の戦略として最優先の課題といえます。一方で、新規契約の獲得はうれしいものの取引先の拡大は貸倒れや反社、詐欺被害などのリスクを伴うことに不安を感じる経営者も少なくありません。
新規の取引先と契約する際は、以下を参考にして信用調査をしっかりと行い、リスク回避につとめましょう。
信用調査とは?
信用調査とは、企業が他者との商取引を行う際に、取引の可否や与信限度などを決定するために相手方の経営状況や信用度など事前に調査することをいいます。信用調査は自社で行うほか、専門の調査会社や取引信用保険会社など外部の企業が行うケースがあります。
信用調査を自社で行う場合は、
- 自社の営業社員や経理担当者が職務で得た情報を共有する。
- 取引先企業の経営者や担当者に直接ヒアリングを行う。
- 取引先の登記簿や決算書などの関係書類を入手して分析する。
- インターネットで検索する。
などの方法があります。
中小企業の場合は自力での情報収集や信用調査が難しいケースも少なくありません。大口の新規取引契約が発生した場合は事前に信用調査会社に依頼するのが良いでしょう。
調査料金は3~5万円程度です。
また取引信用保険に加入を申し込むと保険会社が取引先を審査しますので、信用調査会社に依頼するのと同じ効果があります。
取引信用保険は貸倒リスクの回避と同時に与信管理の強化にも役立ちます。
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新規取引先を調査するうえで、特にチェックしなければならないこと
信用調査で特にチェックしなければならないポイントは取引先の信用度と倒産リスクです。たとえば取引先の住所や事業目的などが短期間で変更されていたり、社名は法人のようで実は個人事業者だったりする場合は、詐欺を目的とした架空企業の可能性もありま
相手企業の経営状況を見極める場合は売上高や利益のチェックだけでなく、主要取引先や金融機関の与信情報を入手することも大切です。取引先が株式会社の場合は、株主名簿を入手して議決権株式の過半数を持つ親会社や支配株主の有無を確認しましょう
取引先に親会社や支配会社が存在する場合は、そちらの信用調査も必要です。取引先の経営が健全でも、親会社や支配会社が経営破綻した場合は連鎖的に倒産する可能性があるからです。また信用取引の比重が特定の企業に偏っている場合も要注意です。
企業の基本情報はインターネットのホームページや口コミサイトでも確認できます。取引企業だけでなく代表者や役員、大株主なども検索して、批判的なレピュテーション(風評)の有無や、事業経営に関連したトラブルの履歴がないかどうかを確認しましょう。
新規取引先の信用調査をしないと考えられるリスク
信用調査は取引先の粗探しをするようで気が進まないという経営者も多いかもしれません。自分が同じことをされたら気分が悪いと思う方も多いでしょう。しかしながら新規取引先の信用調査を怠ると、以下に示す重大なリスクを背負う可能性が高いことも事実です。
詐欺リスク
近年、企業を標的にした取り込み詐欺などの信用詐欺が多発しています。取り込み詐欺とは、代金後払いで商品を詐取して逃走するという古典的な手口の詐欺です。信用詐欺の多くは最初に怪しまれないように小額の現金取引から始めて信頼関係を築きます。
その後、信用取引で大量の商品を発注し、代金を払わずに姿をくらませるか、計画倒産に持ち込みます。このような詐欺を未然に防ぐには、たとえ現金取引でも相手の信用状況に関する調査を怠らないことです。
詐欺集団はターゲットの企業が決算前に売上がほしいタイミングで大口の商取引を持ちかけるなど、相手の弱みにつけ込む手段を熟知しています。信用調査は詐欺リスクの回避に不可欠の作業です。新規の取引先を安易に信用しないように注意しましょう。
反社勢力とのかかわり
暴対法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)では、暴力団員による民事介入暴力や暴力団の威を借りた恐喝行為を禁止しています。しかしながら暴力団側も巧妙に正体を隠しており、取引相手が反社勢力かどうかを見極めるのは簡単ではありません。
暴力団の構成員や反社勢力が一般企業をターゲットにする場合、隠れ蓑のフロント企業を通じて経済取引を締結し、取引関係が成立すると徐々に正体を現して不当な要求やクレームをつけて寄付金やみかじめ料、下請参入などを脅し取ったり、経営に介入したりします。
最も注意すべきポイントは、暴対法が暴力団の不当行為のみならず暴力団に対する利益供与も禁じている、ということです。暴力団の恐喝に屈して利益供与を行った企業は、場合によっては被害者であっても法律違反に問われる可能性もあるわけです。
新規取引先の信用調査を怠って反社勢力と関係を持ってしまうと犯罪被害に巻き込まれるだけでなく、自社も反社に利益供与した共犯者とみなされ、他の取引先や金融機関、消費者などの信用を一気に失ってしまう恐れがあります。
それを防ぐためにも新規取引先の信用調査は不可欠です。
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倒産のリスク
取引相手が詐欺や反社勢力でなくても、新規の信用取引は貸倒損失のリスクが高くなります。企業の資金繰りは売上不振だけでなく売上の急上昇によっても悪化します。取引先の信用調査を怠ると、相手の財政状態を十分に把握することができません。
取引先の経営破綻によって売掛金が未収になると、自社の資金繰りも連鎖的に悪化して、最悪の場合、連鎖倒産に追い込まれる可能性があります。それを防ぐためにも信用調査は重要です。
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まとめ
信用調査とは、企業が取引先の経営状況や信用度などを取引の契約前に調査することをいいます。
信用調査で特に重要なチェックポイントは取引先の信用度と倒産リスクです。
信用調査の方法には自社の社員と情報共有する、取引先の経営者や担当社員にヒアリングする、取引先の決算書などを分析する、専門の調査会社に委託する、などの方法があります。
新規取引先の信用調査を怠ると、信用詐欺の被害に遭ったり、反社勢力と取引関係を持ってしまったり、取引先の倒産で貸倒損失が発生するなどのリスクに直面する可能性があります。
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