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売掛金を使った資金調達の方法は?ファクタリングと売掛債権担保融資の違い

売掛金を使った資金調達の方法は?

事業を運営する中で、手元の資金が足りなくなる場面は頻繁に発生します。売掛金の支払いサイトが30日~60日に及ぶ業種も多く、入金を待つ間にも経費の支払いは次々と迫ってきます。


このようなケースで役立つのが、売掛金を現金化して資金を調達する手法です。


この記事では、売掛金で資金調達する2つの方法「ファクタリング」と「売掛債権担保融資(ABL)」を取り上げ、仕組みの違い、それぞれのメリットとデメリット、利用時のコツを詳しく解説します。

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売掛金で資金調達する2つの方法

売掛金で資金調達する主な方法は、「ファクタリング」と「売掛債権担保融資(ABL)」の2つです。どちらも売掛金を活用する点では同じですが、取引の性質は大きく異なります。


ここでは、それぞれの仕組みを詳しく解説し、両者を比較します。

ファクタリング

ファクタリングとは、保有している売掛金をファクタリング会社に売却して、支払期日より前に現金を受け取る方法です。


仕組みとしては「債権の売買」にあたるため、銀行からの借入とは性質が異なります。借入ではないので、貸借対照表に負債として載りません。


ファクタリングには、「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類があります。


形式仕組み特徴
2社間ファクタリング自社とファクタリング会社だけで契約する売掛先に知られずに利用できるが、手数料が高め
3社間ファクタリング自社・ファクタリング会社・売掛先の3者で契約する手数料は低めだが、売掛先の同意が必要

2社間の場合、売掛先に通知せずに資金調達できる点が大きなメリットです。ただし、ファクタリング会社が回収リスクを相対的に多く負うため、手数料は「8~18%」と高めに設定されています。また、契約時には債権譲渡登記が求められるのが一般的です。


3社間の場合は、売掛先も契約に加わるためリスクが分散され、手数料は「2~9%」に抑えられます。一方で、取引先に通知されるため、取引相手から「資金繰りが苦しいのではないか」と思われるおそれがある点は注意が必要です。


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売掛債権担保融資(ABL)

売掛債権担保融資(ABL:Asset Based Lending)は、売掛金を担保にして金融機関から融資を受ける方法です。


ファクタリングが「売掛金の売却」であるのに対し、ABLは「売掛金を担保にした借入」にあたります。つまり、ABLで得た資金は借入金として貸借対照表に計上されます。


ABLの特徴の一つは、担保にできる資産の幅が広い点です。売掛金だけでなく、在庫や機械設備も担保として活用できます。不動産を持たない中小企業でも手元にある動産を活用して融資を受けられるため、資金調達手段として活用が進んでいます。


ただし融資である以上、金融機関の審査を通過する必要があり、自社の経営状態や財務内容も評価の対象です。また、契約時には債権譲渡登記が求められるケースもあり、登記費用や手続きの手間が発生する場合もあります。


ABLを利用する際は、まず取引先金融機関にABLの相談を持ちかけるところから始めます。金融機関が売掛金や在庫の評価(担保評価)を実施し、融資可能額を決定する流れです。


審査に通れば、融資契約と担保設定の手続きに進み、入金となります。


融資実行後も、担保の状況を定期的に金融機関へ報告する義務があるのが一般的です。

「ファクタリング」と「売掛債権担保融資」の違い

両者の違いを、表で整理します。


比較項目ファクタリング売掛債権担保融資(ABL)
取引の性質債権の売買(譲渡)融資(借入)
負債計上されないされる
手数料・金利の相場売掛金額の2~18%程度年利1~10%程度
資金化までの日数最短即日~数日数週間~1カ月程度
審査の対象売掛先の信用力が中心自社の経営状態も含む
売掛先が倒産した場合原則ファクタリング会社が負担(ノンリコース)自社で返済する義務が残る
担保の範囲売掛金のみ売掛金・在庫・設備など

ファクタリングはスピード重視の短期的な資金調達に向いており、ABLはコストを抑えた中長期の資金確保に向いています。どちらが優れているかという話ではなく、状況に応じた使い分けが大切です。


なお、両方を併用する方法もあります。例えば、急ぎの支払いにはファクタリングで対応し、翌月以降の運転資金はABLで賄うという組み合わせです。


短期と中長期の資金需要を切り分けて管理すれば、コストを抑えながら資金ショートのリスクも減らせるでしょう。

ファクタリングのメリット・デメリット

ここでは、ファクタリングのメリットとデメリットをそれぞれ解説します。

メリット①:現金を準備できるまでの日数が短い

ファクタリングの最大のメリットは、資金化のスピードが速い点です。


2社間ファクタリングであれば、申し込みから最短即日で入金される場合もあります。必要書類も少なく、オンラインで手続きが完結するサービスも増えています。


銀行融資では審査から入金まで数週間以上かかるケースが大半です。ファクタリングであれば、待ち時間の間に発生する仕入れ代金や外注費の支払いに対して、先に手元資金を確保して備えられます。

メリット②:会社の負債を増やさず資金調達できる

ファクタリングは融資ではなく、売掛金の売却です。そのため、貸借対照表に借入金として計上されません。


金融機関や投資家は企業を評価する際、自己資本比率などの財務バランスを重視します。ファクタリングは借入ではないため財務諸表上の負債が増えず、自己資本比率を維持できるのが大きな強みです。


貸借対照表の負債を膨らませずに済むため、今後銀行融資を受けたいと考えている企業にとっては、ファクタリングで資金を確保しつつ融資枠を温存するという使い方も可能です。

メリット③:担保や保証人を用意する手間を省ける

ファクタリングでは、不動産の担保や連帯保証人は原則として不要です。売掛金そのものが取引の対象になるため、担保となる資産を持たない企業でも利用できます。


また、審査では自社の信用力よりも売掛先の支払い能力が重視されます。そのため、赤字決算や税金の滞納がある企業でも、売掛先の信用が高ければ利用できる可能性があります。

デメリット①:手数料が高く設定されている場合が多い

ファクタリングの手数料は、2社間ファクタリングで「8~18%」、3社間ファクタリングで「2~9%」が相場です。


2社間ファクタリングであれば、100万円の売掛金を売却した場合、手元に残るのは80~90万円程度になる計算です。銀行融資の年利と比べると、コスト負担はかなり大きくなります。


一度の利用であれば影響は限定的ですが、頻繁に利用すると手数料が積み重なり、利益を圧迫する原因になります。緊急時の一時的な手段として割り切って使うのが賢明です。


なお、同じ売掛金でも、売掛先の規模や信用度が高いほど手数料は低くなる傾向があります。複数のファクタリング会社から見積もりを取り、条件を比較してから契約先を決めましょう。

デメリット②:売掛先の信用力によっては利用できない

ファクタリングの審査では、自社よりも売掛先の支払い能力が重視されます。そのため、自社の経営が順調であっても、売掛先の経営状態が不安定だったり過去に支払い遅延があったりすれば、審査に通らないおそれがあります。


複数の取引先の売掛金を持っている場合は、信用力の高い取引先の債権を優先的に選びましょう。

デメリット③:売掛金の額面を超える資金は調達できない

ファクタリングで受け取れる金額は、売却する売掛金の額面が上限です。また、手数料が差し引かれるため、実際の入金額は額面を下回ります。


例えば、300万円の資金が必要な場面でも、手持ちの売掛金が200万円であれば、それ以上の金額は調達できません。さらにそこから手数料が引かれるため、実際に手元に届くのは180万円(手数料10%の場合)となり、不足分はさらに大きくなってしまいます。


銀行融資やABLであれば、審査次第で売掛金の額面以上の資金を借り入れられる場合もあります。必要な金額が売掛金の範囲内に収まるかどうかを事前に確認し、不足するようであれば融資との併用も検討しましょう。

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売掛債権担保融資(ABL)のメリット・デメリット

ここでは、売掛債権担保融資(ABL)のメリットとデメリットをそれぞれ解説します。

メリット①:ファクタリングよりも手数料を安く抑えられる

ABLは融資の一種であるため、適用される金利は年利1~10%程度が一般的です。ファクタリングの手数料(売掛金額の2~18%)と比べると、調達コストを抑えられます。


特にまとまった金額を調達する場合、金利差による負担の違いは顕著です。500万円を調達するケースで比較すると、ファクタリングでは1回(1~2カ月分)の売却で約10~90万円の手数料がかかります。一方、ABLであれば年間の利息が約5万~50万円に収まります。


コストを重視するなら、ABLが有利でしょう。


また、ABLは銀行や信用金庫が融資元となるため、手数料の透明性が高い点も安心材料になります。ファクタリング会社のように業者ごとに料金体系が大きく異なるといった心配が少なく、見積もり段階で総コストを把握できるのもメリットといえます。

メリット②:繰り返し資金調達に使える

ABLは、一度契約を結べば担保の範囲内で繰り返し融資を受けられる仕組みです。売掛金が継続的に発生する事業であれば、毎回新たに審査を受ける手間を省いて、安定した資金調達の手段として活用できます。


季節ごとに運転資金の波がある業種や、毎月一定の仕入れ資金が必要な企業にとっては、繰り返し利用できるABLの使い勝手のよさは大きな魅力です。

メリット③:売掛金以外も担保にできる

ABLでは、売掛金に加えて在庫や機械設備も担保として差し入れられます。売掛金だけでは融資額が不足する場合でも、ほかの資産と組み合わせて調達額を増やせるのが特徴です。


例えば、製造業であれば原材料の在庫や製造設備を、小売業であれば商品在庫を担保にできます。


不動産を持たない企業でも、動産を担保に融資を受けられます。

デメリット①:入金までに時間がかかる

ABLは金融機関の融資審査を通過する必要があるため、申し込みから入金まで数週間~1カ月程度かかるのが一般的です。担保となる資産の評価や、債権譲渡登記の手続きにも時間を要します。


そのため、「今すぐ現金が必要」という場面には向いていません。資金が必要になる時期を見越して、余裕を持ったスケジュールでの申し込みが求められます。


初回の契約では特に時間がかかるため、資金需要が見込まれる2~3カ月前から金融機関に相談しておくのが理想です。

デメリット②:会社の負債となる

ABLは借入であるため、貸借対照表に負債として計上されます。借入金が増えると自己資本比率が低下し、金融機関や取引先からの信用評価に影響を及ぼすおそれがあるでしょう。


すでに借入が多い企業の場合、ABLを追加で利用すると財務バランスがさらに悪化するリスクも生まれます。


現在の借入状況を把握した上で、ABLの利用が適切かどうかを判断してください。顧問税理士や会計士に相談し、負債比率の変化をあらかじめ試算しておくと安心です。

デメリット③:売掛金が支払われなかったときに自社で返済しなければならない

ABLでは、担保にした売掛金が回収できなくなった場合でも、融資の返済義務は残ります。売掛先が倒産すれば、担保の価値がなくなると同時に返済の負担だけが残る事態に陥るおそれがあります。


ノンリコース型のファクタリングでは、売掛先の倒産リスクをファクタリング会社が負担しますが、ABLにはそうした仕組みがありません。


担保にする売掛先の経営状態を事前によく調べ、回収不能リスクが低い債権を優先して選びましょう。

売掛金で資金調達を成功させるためのコツ

ここでは、売掛金を資金調達に活用するときのポイントを解説します。

売掛金の信用力をよく確かめる

ファクタリングでもABLでも、売掛先の信用力は審査の結果に直結します。取引先の財務状況、支払い履歴、業界の景況感を事前に確認しておきましょう。


信用力の高い売掛先の債権であれば、ファクタリングの手数料が下がったり、ABLの融資条件が有利になったりします。反対に、支払い遅延の実績がある取引先の売掛金は、審査で不利に扱われがちです。そのため、信用調査会社の情報を活用するなどして、客観的に判断することが重要です。


また、1社の売掛先に依存するのではなく、複数の取引先の売掛金を分散して活用するほうがリスクを抑えられます。特定の取引先の経営が悪化した場合に備え、日頃から売掛先の構成バランスを見直しておくのも有効な対策です。

資金調達後の資金繰り計画をしっかりと練る

売掛金を使った資金調達は、将来入ってくるはずの現金を前倒しで受け取る仕組みです。そのため、手数料や利息の分だけ手取り額は減ってしまいます。また、売却した売掛金については、本来の入金日に自社へ入金されません。


調達した資金をどの支払いに充てるのか、翌月以降の収支はどうなるのか、最低3カ月先までの資金繰り表を作成して確認しましょう。計画なしに利用を繰り返すと、手数料の負担が膨らんで資金繰りがかえって悪化する悪循環に陥ります。


例えば、月ごとの売上入金予定、仕入れや固定費の支払い予定、ファクタリング手数料やABLの利息返済額を一覧にまとめてください。


手元の現金残高が常にプラスで推移するかどうかを確認できれば、安心して利用に踏み切れます。

信頼できる業者を選ぶ

ファクタリング業界には、法外な手数料を請求する悪質な業者も存在します。「審査不要」「即日現金化」といった宣伝文句だけで判断せず、契約書の内容をよく読んでください。


手数料の内訳や支払い条件が明確に記載されている業者を選びましょう。


実質的に貸付にあたる取引をファクタリングと偽る「偽装ファクタリング」も報告されています。金融庁のウェブサイトでも注意喚起が出ているため、不審な点がある場合は、契約前に弁護士や行政機関へ相談することが望ましいでしょう。


参考:ファクタリングの利用に関する注意喚起|金融庁


ABLの場合は、銀行や信用金庫が主な窓口です。すでに取引のある金融機関にまず相談してみるのがよいでしょう。


日本政策金融公庫や信用保証協会でもABLに関する相談を受け付けているため、民間金融機関の審査が不安な場合は公的機関に問い合わせてみてください。


関連記事:審査なしのファクタリングとは 利用の危険性とファクタリングに審査が必要な理由

融資を受けるなら「でんさい」の準備を進める

「でんさい(電子記録債権)」とは、売掛金を電子的に記録・管理する仕組みです。全国銀行協会が設立した「でんさいネット」を通じて利用でき、売掛金の譲渡や割引がオンラインで完結します。


でんさいを導入すると、売掛金の存在や金額が電子記録で明確に証明されるため、ABLの審査がスムーズに進む効果が期待できます。手形のように紛失や盗難のリスクもなく、必要に応じて分割して譲渡できるため、資金調達の幅が広がるでしょう。


また、でんさいは支払期日に自動で資金が決済されるため、集金の手間が省けます。従来の手形のように取り立て手続きを踏む必要がなく、経理業務の効率化にもつながる仕組みです。政府の方針を受け、金融界全体で2026年度末を目標に紙の手形の廃止(全面的な電子化)が進められているため、今のうちにでんさいへの移行準備を整えておくと、将来の取引にもスムーズに対応できるでしょう。


ただし、でんさいは支払い側と受取側の双方が加入している必要があります。取引先がまだ未加入の場合は、導入の働きかけから始める必要があるでしょう。将来の資金調達を見据えて、早めに準備を進めておくと安心です。


関連記事:【案内文テンプレート付】2027年手形廃止の「不渡りリスク」をどう防ぐ?売り手企業が今すぐすべき自衛策

まとめ

現金の準備スピードを最優先するなら、ファクタリングが適しています。一方で、コストを安く抑えて高額な資金を用意したい場合は、売掛債権担保融資が向いているでしょう。


どちらを選ぶか迷ったときは「いつまでに」「いくら必要か」「コストはどこまで許容できるか」の3つの基準で比較し、自社の状況に合わせてより適切な手法を選びましょう。


また、資金繰りを根本から安定させるためには、売掛金を確実に回収する体制づくりも大切です。取引先の信用調査を定期的に実施し、支払い条件の見直しや回収ルールの整備を進めましょう。


未回収のリスクに備える具体策として、売掛保証サービス「URIHO(ウリホ)」が役立ちます。売掛金が回収できなかった場合に保証金が支払われる仕組みのため、ファクタリングやABLと組み合わせれば、資金調達と未回収対策の両面から会社の資金を守れます。


手元資金の確保と未回収リスクの対策を組み合わせて、安定した経営基盤を整えてください。

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売掛金の回収では、「債権」の差し押さえがもっともよく利用されます。売掛金や銀行預金などの金銭債権であれば、第三債務者(相手の取引先や銀行)から直接取り立てられるため、競売のような換価手続が不要です。ただし、相手がどのような債権を持っているかを事前に把握するのは簡単ではありません。 「不動産」は価値が高く隠しにくいため、差し押さえの対象としては有力です。競売にかければ一括で大きな金額を回収できる可能性があります。差し押さえた物件が賃貸として運用されていれば、売却せずに賃料収入を売掛金に充てる方法も選べます。一方で、競売には数十万~数百万円の予納金が必要な上、売却完了まで半年~1年以上かかるケースもあります。 「動産」は現金や貴金属であれば資金化しやすく、予納金も不動産ほどかかりません。しかし、商品や機械設備は価値が不安定で、買い手が見つからず売却できないリスクがあります。 なお、すべての財産を差し押さえられるわけではありません。生活に必要な衣類や家具、仕事に必要な道具、66万円までの現金などの「差押禁止財産」は、差し押さえ対象外です。給与については、原則として手取り額の4分の3が差し押さえ禁止とされています(手取り額が44万円を超える場合は、一律33万円が差し押さえ禁止額となります)。 差し押さえのメリット 差し押さえのメリットは、売掛金を回収できる可能性が高まる点です。裁判所が相手の財産を確保するため、財産を隠されたり勝手に売却されたりする心配がなくなります。 もう一つのメリットは、相手に強い心理的な圧力をかけられる点です。特に売掛金(債権)の差し押さえでは、相手の取引先(第三債務者)にも裁判所から通知が届きます。差し押さえの事実が取引先に知られると、信用問題に発展しかねないため、相手は早期に支払いに応じる場合があります。 相手の取引先が大企業であれば、圧力はさらに強まります。大企業の契約書には「取引相手が差し押さえを受けた場合、契約を解除できる」と定められているケースが多く、相手は主要な取引先を失いかねません。 取引先を失うおそれがあるため、差し押さえは売掛金の支払いを促す強い要因となります。 差し押さえの手順 差し押さえは、法律で定められた手順に沿って進める必要があります。 ここでは、仮差し押さえから強制執行までの流れを6つのステップに分けて紹介します。 ステップ1:相手の財産を特定する 裁判所が対象者の財産を自動的に探してくれるわけではないので、差し押さえを始める前に、相手がどのような財産を持っているか債権者が自力で調査しなければなりません。 売掛金を差し押さえたい場合は、相手がどの企業と取引しているのかを把握する必要があります。取引先の名称だけでなく、取引内容、売掛金の金額、支払期日まで分かっていると、差し押さえが無駄に終わるリスクを減らせます。 情報をもっとも集めやすいのは、長年にわたって取引を続けてきた債権者自身です。相手の事業内容や取引先の動向は、日頃のやり取りの中で自然に見えてくるものです。弁護士に調査を依頼する方法もありますが、普段の取引で得た情報と組み合わせると、より正確に財産を特定できるでしょう。 ステップ2:仮差し押さえを申し立てる 財産が特定できたら、裁判所へ仮差し押さえの申し立てを行います。 仮差し押さえは、訴訟の結果が出る前に相手の財産を一時的に凍結し、処分や隠匿を防ぐための手続きです。申し立て先は、相手や取引先の住所地、もしくは差し押さえの対象がある場所を管轄する裁判所です。 申し立て時には、売掛金の存在を裏づける契約書、請求書、取引履歴、陳述書を一緒に提出します。 仮差し押さえの申し立てには債務名義が不要で、裁判官が「確からしい」と判断できる程度の資料があれば認められます。早ければ申し立てから1~2週間で実施できるため、相手が財産を処分する前に手を打てる点がメリットです。 ステップ3:裁判所で審理を受ける 申し立て後は、裁判所で審理が始まります。例えば東京地裁の場合、申し立てから3日以内に裁判官との面談が設定されるのが通例です。 仮差し押さえの審理は、通常の裁判のように公開の法廷で両者が向き合う形式ではなく、債権者側だけが裁判官と非公開でやり取りする仕組みとなっています。相手に仮差し押さえを申し立てた事実を知られると、財産を隠されるおそれがあるからです。 審理の場では、裁判官から仮差し押さえの必要性について質問を受けたり、提出書類の訂正や補足を求められたりします。書類に不備があると裁判官から補正を求められ、その分だけ手続きに時間がかかります。申し立て前に、資料をしっかりと整理しておきましょう。 ステップ4:担保金を納付し、仮差し押さえを実施する 裁判所が仮差し押さえを認めると、債権者に担保金の供託を命じます。担保金の目安は、請求金額の10~30%程度です。例えば500万円の売掛金であれば、50万~150万円程度が目安になります。 仮差し押さえは、まだ裁判で結論が出ていない段階で相手の財産を凍結する措置です。後の裁判で「相手に支払い義務がなかった」と判断された場合、財産を凍結された相手は不当な損害を受けたことになります。担保金の納付は、そのような場合の賠償に備えるために必要とされます。 担保金の供託が完了すると、裁判所は仮差し押さえの決定を出します。売掛金を仮差し押さえした場合、まず第三債務者(相手の取引先)に「支払いを止めるように」という通知が届きます。 相手への通知は少し遅れて届く仕組みなので、先に売掛金が回収されてしまう事態を防げます。 ステップ5:債務名義を取得する 仮差し押さえだけでは、まだ売掛金を直接回収できません。仮差し押さえはあくまで「相手の財産を一時的に凍結する」措置であり、お金を受け取る権利を得たわけではないからです。 相手が仮差し押さえを受けて自主的に支払いに応じてくれれば解決しますが、そうでない場合は訴訟や支払督促、民事調停などの手続きを利用して債務名義を取得する必要があります。 注意したいのは、訴訟を起こさず放置していると、相手から仮差し押さえの取り消しを求められる可能性がある点です。相手は「起訴命令の申立て」によって、一定期間内に訴訟を起こすよう裁判所に請求できるからです。 仮差し押さえの完了後は、速やかに訴状や証拠書類の作成に取りかかり、訴訟の提起まで進めておきましょう。 ステップ6:強制執行を申し立てる 債務名義を取得したら、裁判所に強制執行を申し立てます。申し立てには、債務名義の正本、執行文、送達証明書などが必要です。執行文とは、債務名義に基づいて強制執行を許可する旨が記された文書で、裁判所の書記官や公証人に作成を依頼する必要があります。 強制執行が認められると、裁判所が相手の財産を差し押さえ、売却や取り立てによって換金し、未払いの売掛金に充てます。売掛金(債権)を差し押さえた場合は、第三債務者から直接取り立てる形になります。 仮差し押さえした財産についても引き続き強制執行に移行できるため、確実に回収を進められるでしょう。 差し押さえの注意点 差し押さえは強力な回収手段ですが、万能ではありません。費用や時間の負担が大きいため、手続きを始める前に知っておきたい注意点があります。 以下の4つのポイントを把握しておくと、手続きの見通しを立てやすくなるでしょう。 財産の特定が難しい 差し押さえでもっともハードルが高いのは、相手の財産を自力で特定しなければならない点です。相手の銀行口座がどこにあるのか、どの企業と取引しているのかは、外部からは簡単に把握できません。 2020年の民事執行法改正により「財産開示手続」が強化されるとともに、「第三者からの情報取得手続」が新設され、以前よりは調べやすくなりました。「第三者からの情報取得手続」では、銀行や証券会社、市区町村や年金事務所に対して、裁判所を通じて情報の開示を求められます。 しかし、手続きには時間がかかる上、必ずしも十分な情報を得られるとは限りません。日頃から取引先の経営状況や取引関係をしっかりと観察しておきましょう。 手間と時間がかかる 仮差し押さえの申し立てから強制執行が完了するまでには、相当な時間が必要です。仮差し押さえは早ければ1~2週間で実施できますが、その後の訴訟は判決まで数カ月~1年以上かかるケースもあります。 書類の準備や裁判所とのやり取りも多く、本業に割ける時間が減りがちです。弁護士に依頼する場合は着手金や報酬金も発生するため、回収したい金額と費用のバランスを事前に見積もっておきましょう。 少額の売掛金に対して多大な時間と費用をかけると、かえって損失が膨らむ場合もあります。 相手の財産状況によっては回収できない 差し押さえの手続きを最後まで進めても、相手に財産がなければ売掛金は回収できません。また、相手に対し裁判所から「破産手続開始決定」が出された場合には、個別の差し押さえの効力そのものが失われます。 破産手続きが始まると、裁判所が「破産管財人」を選任します。破産管財人とは、破産した相手に代わって財産の管理や処分を担当する人物で、通常は弁護士が就任します。 破産管財人が選任されると、相手の財産はすべて「破産財団」に組み込まれます。破産財団とは、破産した相手が持つ財産をひとまとめにしたもので、すべての債権者へ公平に分配するために管理されます。破産財団に組み込まれた財産には個別の差し押さえが及ばなくなるため、原則としてすでに差し押さえていた財産であっても回収できません。 また、ほかの債権者がすでに同じ財産を差し押さえている場合は、回収額が債権者の間で分配されるため、全額を取り戻すのは難しくなります。 相手の経営状態が悪化してから動き出すのでは遅い場合もあるため、異変を感じたら早めの対応を心がけましょう。 まとまった金額の担保金を用意する必要がある 仮差し押さえを利用する場合、請求金額の10~30%に相当する担保金を法務局に供託しなければなりません。 例えば1,000万円の売掛金であれば、100万~300万円の資金が必要です。 担保金の割合は一律ではなく、売掛金の証拠がどれだけそろっているか、相手が被る不利益の大きさなどを裁判所が総合的に判断して決定します。売掛金の存在を裏づける契約書や請求書がしっかりそろっている場合は10~15%程度に抑えられる傾向がありますが、証拠が不十分だと30%近くを求められる場合もあります。 訴訟が長引けば、その間は担保金が手元に戻りません。資金繰りに余裕がないときは、担保金の負担だけで経営を圧迫するおそれがあります。 仮差し押さえに踏み切るかどうかは、回収したい売掛金の金額と手元資金のバランスを見ながら、慎重に判断しましょう。 売掛金の未回収リスクを抑えるには? 差し押さえは手間も時間もかかる上、相手の財産状況次第では回収が困難になる場合があります。そもそも差し押さえが必要になる状況をつくらないことが理想です。最初から未回収を防ぐ仕組みを取り入れておけば、裁判にかかる費用や労力を丸ごと省けます。 未回収リスクを抑える方法として、「売掛保証サービス」の活用があります。売掛保証サービスとは、事前に保証会社と契約を結び、対象となる取引先の与信審査を通過しておくことで、取引先が売掛金を支払えなくなった場合に、保証会社が代わりに代金を支払ってくれる仕組みです。 取引先の倒産や支払い遅延が起きても売掛金を確実に受け取れるため、差し押さえのように長い時間と高い費用をかけて回収に動く必要がありません。本業に集中できるのが大きな利点です。 また、保証会社が取引先の信用力を審査してくれるため、新しい取引先との取引を始める際の判断材料としても役立ちます。与信管理の負担を軽減できるので、特に限られた人員で経営している中小企業にとっては心強い味方になるでしょう。 関連記事:売掛保証とはなにか メリットやデメリット、実際の利用事例をご紹介 まとめ 差し押さえは、売掛金を回収するための最終手段です。「債務名義」を取得し、裁判所に強制執行を申し立てれば、相手の財産から未払い分を回収できます。仮差し押さえを先に実施しておけば、訴訟中に財産を隠されるリスクも抑えられます。 一方で、財産の特定が難しい、手続きに時間がかかる、担保金が必要になるといった負担も伴います。相手が破産してしまえば回収の見込みが立たなくなる点も見逃せません。差し押さえに踏み切る前に、回収したい金額と手続きにかかる費用・時間を比較し、本当に採算が合うかを見極めましょう。 売掛金の未回収リスクをあらかじめ抑えたいなら、売掛保証サービスの活用がおすすめです。「URIHO(ウリホ)」は、月額の定額料金で利用できる売掛保証サービスです。取引先の支払いが遅れた場合や、倒産によって売掛金が回収できなくなった場合に、URIHOが代わりに代金を支払います。 未回収の不安を解消し、安定した経営を続けたい方は、ぜひURIHOの利用をご検討ください。 売掛金の差し押さえとは?回収の…
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