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ファクタリングは売掛先が個人でも利用できる?注意点や審査のコツ

ファクタリングは売掛先が個人でも利用できる?注意点や審査のコツ

ファクタリングは、売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらい、入金日より前にお金を受け取れるサービスです。


法人間の取引で使われるイメージが強いかもしれませんが、売掛先が個人事業主やフリーランスであっても利用できるケースがあります。


実際に、デザイナーやコンサルタントなどの個人事業主と取引している企業が、ファクタリングを通じて売掛金を早期に現金化した事例も報告されています。「個人相手だから無理だろう」と最初から諦める必要はありません。


ただし、売掛先が法人の場合と比べると、個人は信用情報が少ないため審査が厳しくなる傾向があります。手数料も高めに設定されるケースが多いため、申し込み前の準備と会社選びが大切です。


この記事では、取引相手が個人のときにファクタリングを利用しにくい理由や利用できるケース、注意点、審査に通るためのコツを解説します。


関連記事:ファクタリングとは?仕組みや種類・メリット・デメリットを解説

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売掛先が個人だとファクタリングを利用しにくい理由

ここでは、売掛先が個人の場合には利用が難しくなる理由を、3つに分けて解説します。


個人の売掛先に対するファクタリングを検討している方は、利用が難しくなる理由を理解しておくと、対策を立てやすくなるでしょう。

信用力が低いと評価されがち

ファクタリング会社が審査でもっとも重視するのは、売掛先にお金を支払う力があるかどうかです。


法人であれば登記情報や決算書がそろっており、経営状態や財務状況を客観的に判断できます。一方で、個人にはこうした公的な情報がほとんどありません。収入や資産の状況が外部から分かりにくいため、「期日どおりに支払われるか」の見極めが難しくなります。


そのため審査のハードルが上がり、ファクタリング会社によっては最初から個人の売掛先を受け付けていないケースもあります。


また、個人は法人に比べて事業の継続性や資金力が不安定とみなされがちです。突然の廃業や収入の減少といったリスクが法人より高いと考えられているため、慎重な対応を取られる場面が多くなります。


関連記事:ファクタリング審査は何を見る?主な基準や落ちる理由、対処法も解説

事業の実態を正確に確認しにくい

法人は商業登記や法人番号で実在を確認でき、決算公告もあるため事業内容を外部から把握できます。一方、個人事業主やフリーランスの場合、開業届の提出は義務ですが、外部から実態を確認する手段は限られています。


ファクタリング会社にとって、事業の規模や安定性がつかめない相手への売掛金は、買い取り対象としての評価が下がりがちです。売掛先が本当に事業を営んでいるのか裏づけが取れないと、審査には通りにくくなります。


法人であれば帝国データバンクや東京商工リサーチで信用情報を照会する方法がありますが、個人事業主に関しては情報の網羅性が限定的であるため、ファクタリング会社としても調査に手間がかかるのが実情です。


また、個人事業主のなかには事業用と個人用の口座を分けていないケースもあり、お金の流れが不透明になりがちな点もマイナス要因として見られています。

税金の支払いや確定申告に不安がある

個人事業主は自分で確定申告をするため、法人と比べて税務処理の信頼性に差が出る場合があります。


例えば、申告漏れや納税の遅延があると、売掛先としての信用度が下がってしまいます。


ファクタリング会社は、売掛先が税金をきちんと支払っているかどうかも判断材料の一つにしています。税金を滞納していると、差し押さえによって売掛金が回収できなくなるおそれがあるからです。


税務面の情報が外部から確認しにくい個人事業主は、審査で不利になるケースが多いです。売掛先が税務上の問題を抱えていないか確認したくても、法人のように官報で情報が公開されるわけではないため、ファクタリング会社としては慎重にならざるを得ません。


一方で、確定申告を税理士に依頼している個人事業主であれば、税務処理の正確性が担保されているとみなされ、審査でプラスに働く場合もあります。売掛先に税理士がついている旨を伝えられれば、ファクタリング会社の安心材料になるでしょう。

売掛先が個人でもファクタリングを利用しやすいケース

売掛先が個人だと審査が厳しくなりがちですが、条件次第で利用できるケースもあります。ファクタリング会社が「この売掛金なら回収できる」と判断できれば、審査を通過する可能性は十分にあります。


ここでは、審査に通る見込みが高まる代表的な4つのパターンを紹介します。以下の条件に当てはまるものが多いほど、審査に通る確率は上がります。

長期にわたる事業実績がある

売掛先の個人が長く事業を続けている場合、安定した収入がある証拠としてファクタリング会社に評価されます。開業から数年以上が経ち、廃業せずに継続しているという事実は信用力の裏づけになるからです。


特に4年以上の事業歴があると、審査でプラスに働く傾向があります。


確定申告書や納税証明書を用意しておくと、売掛先の安定性を証明しやすくなるでしょう。加えて、売掛先のWebサイトやSNSなど事業の活動実態が分かる情報も添えると、審査担当者に良い印象を与えられます。


開業届の控えも手元にあれば開業時期を正確に証明できるため、用意しておくと安心です。

継続した取引実績がある

売掛先との取引が一度きりではなく、繰り返し続いている場合も評価が高くなります。毎月の請求と入金が安定していれば、今後も問題なく支払われると判断されるためです。


例えば、半年以上にわたって毎月取引が発生しているケースでは、審査の通過率が上がります。過去の入金履歴を通帳のコピーで示せると説得力が増すでしょう。


反対に、初めて取引する相手の売掛金は審査のハードルが高くなります。


取引回数が多いほどファクタリング会社にとっての安心材料になるため、まずは取引を重ねてから申し込むのもよい方法です。


取引の証拠として請求書だけでなく、発注書や納品書も一緒に保管しておくと、ファクタリング会社への説明がスムーズになります。

社会的な知名度が高い

売掛先の個人が著名な人物であったり、業界内で広く知られていたりする場合は、審査で有利に働きます。知名度の高さは「社会的な信用がある」とみなされるためです。


例えば、有名なデザイナーやコンサルタントと継続的に取引がある場合、ファクタリング会社も安心して買い取りに応じやすくなります。


ただし、知名度だけで審査が通るわけではありません。取引内容の裏づけとして、契約書や請求書の提出も求められます。知名度と書類の両方をそろえて初めて、審査でのプラス評価につながると覚えておきましょう。


売掛先のメディア掲載実績や受賞歴があれば、補足資料として提出するのもよい方法です。

個人の売掛先に対応したファクタリング会社を選ぶ

すべてのファクタリング会社が個人への売掛金を買い取れるわけではありません。法人の売掛先のみに対応している会社も多く、そうした会社に申し込んでも審査の対象外として断られてしまいます。


個人の売掛先に対応している会社は、個人との取引でよくある書類不足や信用情報の少なさを踏まえた審査ノウハウを持っています。例えば、通帳の入金履歴やメールのやり取りなど、法人向けの審査では重視されない資料を評価に組み入れてくれる場合もあります。


まずはWebサイトや電話で対応の有無を確認してから申し込むとスムーズです。

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売掛先が個人の場合にファクタリングを利用する注意点


取引相手が個人の場合、法人の場合と比べて注意点がいくつかあります。知らずに申し込むと、想定外の手数料を支払ったり、買い取り自体を断られたりするおそれがあるため、あらかじめ把握しておきましょう。


ここでは主な注意点を4つ解説します。事前に把握しておけば、申し込み後に慌てずに済みます。

手数料が高めに設定される

売掛先が個人の場合、法人と比べて未回収になるリスクが高いと判断されるため、ファクタリング会社は手数料を高めに設定する傾向があります。


手数料の相場は契約形態によって異なります。以下の表に目安をまとめました。


契約形態売掛先が法人売掛先が個人
2社間ファクタリング8%~18%相場の上限に近くなる傾向
3社間ファクタリング2%~9%対応会社が少なく、法人より高めになる傾向

2社間ファクタリングは売掛先への通知が不要なため利用しやすい反面、手数料は高めです。売掛先が個人だと上限の18%に近い水準を提示されるケースも珍しくありません。


3社間ファクタリングであれば手数料を抑えられる可能性がありますが、売掛先に通知が届くため、取引関係への影響を考えて慎重に判断しましょう。


なお、同じ売掛金でも会社によって手数料に数%の差が出る場合があります。1社だけで決めず、少なくとも2~3社から見積もりを取って比較するのがおすすめです。


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すべての売掛金を買い取ってもらえるとは限らない

ファクタリング会社は売掛金の内容を個別に審査します。そのため、売掛先が個人だと一部の債権のみ買い取り対象になるケースがあります。特に、取引実績が浅い相手や、金額が大きすぎる売掛金は対象外になりがちです。


また、契約書や請求書の内容があいまいだと審査に落ちる可能性が高まります。売掛金がどのような仕事に対して発生したのか、はっきり分かる書類を整えておく必要があります。口頭だけで仕事を請け負っている場合は、メールのやり取りや業務完了報告書で取引の事実を裏づけられるようにしておきましょう。


書類の整備は手間がかかりますが、審査通過のためには適切な準備が欠かせません。

買取金額には上限・下限がある

ファクタリング会社ごとに買取金額の範囲が決まっています。売掛先が個人の場合は、買取可能な上限額が低く設定されていたり、少額すぎると受け付けてもらえなかったりするケースがあります。


例えば、1万円~100万円の範囲でのみ対応する会社もあれば、限度なしで柔軟に対応する会社もあります。


申し込む前に買取可能な金額の範囲を確認し、自分の売掛金額に合った会社を選びましょう。


なお、複数の売掛金をまとめて申し込める会社もあるので、少額の売掛金が複数ある場合は合算での買い取りが可能か確認してみてください。金額の合わない会社に申し込んでも時間の無駄になるため、最初の段階で調べておくのが賢明です。


Webサイトに記載がなければ、電話やメールで直接問い合わせましょう。

悪質な業者に注意する

ファクタリングは貸金業とは異なる取引のため、法律の規制が比較的緩やかです。そのため、ファクタリングを装った違法な貸付をする業者も存在します。


悪質な業者には、以下のような特徴があります。

  • 契約書を交わさずに取引を進めようとする
  • 手数料率が相場から大きくかけ離れている
  • 担保や保証人を求めてくる
  • 売掛金の「買い取り」ではなく「貸付」として契約を持ちかけてくる

正規のファクタリング会社であれば、売掛金の売買契約(債権譲渡契約)を書面で締結し、手数料も事前に明示します。不審な点を感じたら、契約を見送りましょう。


金融庁のWebサイトでもファクタリングを装った違法業者への注意喚起が掲載されているので、併せて確認してみてください。


参考:ファクタリングの利用に関する注意喚起|金融庁


契約前には会社の所在地や代表者名、設立年数もチェックし、信頼できる業者かどうか判断しましょう。口コミや利用者の評判を調べるのも有効です。


関連記事:審査なしのファクタリングとは 利用の危険性とファクタリングに審査が必要な理由

売掛先が個人の場合でもファクタリング審査に通るためのポイント

取引相手が個人であっても、工夫次第で審査の通過率を上げられます。しっかりとした準備をして、ファクタリング会社に安心感を持ってもらうのが大切です。


ここでは、審査に通る確率を上げる具体的な方法を4つ紹介します。どれもすぐに実践できる内容なので、申し込み前に確認しておきましょう。

必要書類を不備なく用意する

審査をスムーズに進めるために、必要書類を漏れなく準備しましょう。


一般的に必要とされる書類は以下のとおりです。

  • 請求書(売掛金の金額・支払期日が記載されたもの)
  • 契約書や発注書(取引内容が分かる書類)
  • 通帳のコピー(入金実績を証明できるもの)
  • 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード)
  • 確定申告書の控え(事業の継続性を示すため)
  • 開業届の控え(個人事業主としての実態証明のため)

書類に不備があると審査が遅れたり、再提出を求められたりします。提出前に記載内容の漏れや誤りがないか確認しておきましょう。


特に請求書は、金額と支払期日が明確に記載されているかどうかを必ずチェックしてください。通帳のコピーは直近3~6カ月分を用意するのが望ましいです。


書類がしっかりそろっていれば、審査にかかる時間も短くなります。

信用度の高い売掛金を提出する

複数の売掛金がある場合は、もっとも信用度が高いものを選んで提出するのが効果的です。取引期間が長い相手や、過去に支払い遅延がない相手の売掛金を優先しましょう。


支払期日が近い売掛金も審査では有利に働きます。支払期日までの期間が短いほど、未回収リスクが低いとファクタリング会社は判断するためです。一般的に、支払期日まで30日以内の売掛金が好まれます。


一方で、まだ一度も取引が完了していない新規の取引先や、過去に入金が遅れた実績がある相手の売掛金は避けたほうが無難です。


審査に出す売掛金の選び方一つで、通過率は変わります。どの売掛金を提出するか迷ったら、ファクタリング会社に相談してアドバイスを受けるのも一つの手段です。担当者が審査の観点から、どの売掛金が通りやすいか教えてくれる場合もあります。

ファクタリング会社からの信用を得る

ファクタリング会社は売掛先だけでなく、申込者の信用度も審査しています。過去にファクタリングを利用した実績があり、問題なく取引が完了していれば、次回以降の審査で有利になります。


初めてファクタリングを利用する場合は、小さい金額から始めるのも一つの方法です。少額の取引で実績を積んでおけば、ファクタリング会社との信頼関係を築けます。


また、申し込みの際に自分の事業内容や取引背景を丁寧に説明するのも効果的です。売掛先との関係性や取引の経緯を具体的に伝えれば、ファクタリング会社が安心できる材料になります。


面談の機会がある場合は、事業計画書や取引先一覧を持参するとより説得力が増すでしょう。自社のWebサイトを持っている場合は、URLを伝えておくと事業の実態を把握してもらいやすくなります。


情報の透明性を高めるほど、ファクタリング会社は安心して審査を進められます。

事業規模に合った無理のない金額で申し込む

売掛金の全額をファクタリングに出すのではなく、事業規模に見合った金額で申し込むと審査の印象がよくなります。無理のない金額であれば、ファクタリング会社も安心して買い取りに応じるためです。


例えば、月商が100万円の事業者が、月商の5倍にあたる500万円の売掛金をファクタリングに出すと、審査上やや無理のある印象を与える可能性があります。月商との整合性を意識して、適切な金額で申し込みましょう。初回は月商の範囲内にとどめ、取引を重ねながら徐々に金額を増やしていくのが理想的です。


ファクタリング会社によっては、利用回数が増えるほど手数料が下がる仕組みを採用しているところもあります。継続的な利用を視野に入れて、長い目でファクタリング会社との関係を築いていきましょう。

まとめ

売掛先が個人のファクタリングは、法人の場合と比べて審査が厳しくなります。信用力の証明が難しい点や、対応するファクタリング会社が限られる点がその主な理由です。


ただし、長期の事業実績や継続的な取引履歴がある場合には、審査に通る可能性は十分あります。必要書類を漏れなく準備し、信用度の高い売掛金を選んで提出するのがポイントです。ファクタリング会社を選ぶ際は、個人の売掛先に対応しているかどうかを事前に確認し、手数料率を複数社で比較してから申し込みましょう。


取引相手が個人だと、お金を予定どおりに回収できないリスクが高まります。ファクタリングで早期に資金化する方法もありますが、そもそも未払いが発生しないよう備えておく視点も大切です。


万が一の未払いに備えるなら、売掛保証サービス「URIHO」の活用がおすすめです。URIHOでは取引先の与信管理から売掛金の保証まで一括で対応しており、売掛先が個人事業主であっても、屋号をお持ちであれば保証の対象になります(海外法人や一般消費者は保証の対象外です)。取引先ごとに保証枠を設定できるため、個人との取引が多い事業者でも安心して売掛金を管理できます。


売掛先が個人の取引で不安を感じている方は、ぜひURIHOの利用を検討してみてください。


関連記事:売掛保証とはなにか メリットやデメリット、実際の利用事例をご紹介

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売掛金の回収では、「債権」の差し押さえがもっともよく利用されます。売掛金や銀行預金などの金銭債権であれば、第三債務者(相手の取引先や銀行)から直接取り立てられるため、競売のような換価手続が不要です。ただし、相手がどのような債権を持っているかを事前に把握するのは簡単ではありません。 「不動産」は価値が高く隠しにくいため、差し押さえの対象としては有力です。競売にかければ一括で大きな金額を回収できる可能性があります。差し押さえた物件が賃貸として運用されていれば、売却せずに賃料収入を売掛金に充てる方法も選べます。一方で、競売には数十万~数百万円の予納金が必要な上、売却完了まで半年~1年以上かかるケースもあります。 「動産」は現金や貴金属であれば資金化しやすく、予納金も不動産ほどかかりません。しかし、商品や機械設備は価値が不安定で、買い手が見つからず売却できないリスクがあります。 なお、すべての財産を差し押さえられるわけではありません。生活に必要な衣類や家具、仕事に必要な道具、66万円までの現金などの「差押禁止財産」は、差し押さえ対象外です。給与については、原則として手取り額の4分の3が差し押さえ禁止とされています(手取り額が44万円を超える場合は、一律33万円が差し押さえ禁止額となります)。 差し押さえのメリット 差し押さえのメリットは、売掛金を回収できる可能性が高まる点です。裁判所が相手の財産を確保するため、財産を隠されたり勝手に売却されたりする心配がなくなります。 もう一つのメリットは、相手に強い心理的な圧力をかけられる点です。特に売掛金(債権)の差し押さえでは、相手の取引先(第三債務者)にも裁判所から通知が届きます。差し押さえの事実が取引先に知られると、信用問題に発展しかねないため、相手は早期に支払いに応じる場合があります。 相手の取引先が大企業であれば、圧力はさらに強まります。大企業の契約書には「取引相手が差し押さえを受けた場合、契約を解除できる」と定められているケースが多く、相手は主要な取引先を失いかねません。 取引先を失うおそれがあるため、差し押さえは売掛金の支払いを促す強い要因となります。 差し押さえの手順 差し押さえは、法律で定められた手順に沿って進める必要があります。 ここでは、仮差し押さえから強制執行までの流れを6つのステップに分けて紹介します。 ステップ1:相手の財産を特定する 裁判所が対象者の財産を自動的に探してくれるわけではないので、差し押さえを始める前に、相手がどのような財産を持っているか債権者が自力で調査しなければなりません。 売掛金を差し押さえたい場合は、相手がどの企業と取引しているのかを把握する必要があります。取引先の名称だけでなく、取引内容、売掛金の金額、支払期日まで分かっていると、差し押さえが無駄に終わるリスクを減らせます。 情報をもっとも集めやすいのは、長年にわたって取引を続けてきた債権者自身です。相手の事業内容や取引先の動向は、日頃のやり取りの中で自然に見えてくるものです。弁護士に調査を依頼する方法もありますが、普段の取引で得た情報と組み合わせると、より正確に財産を特定できるでしょう。 ステップ2:仮差し押さえを申し立てる 財産が特定できたら、裁判所へ仮差し押さえの申し立てを行います。 仮差し押さえは、訴訟の結果が出る前に相手の財産を一時的に凍結し、処分や隠匿を防ぐための手続きです。申し立て先は、相手や取引先の住所地、もしくは差し押さえの対象がある場所を管轄する裁判所です。 申し立て時には、売掛金の存在を裏づける契約書、請求書、取引履歴、陳述書を一緒に提出します。 仮差し押さえの申し立てには債務名義が不要で、裁判官が「確からしい」と判断できる程度の資料があれば認められます。早ければ申し立てから1~2週間で実施できるため、相手が財産を処分する前に手を打てる点がメリットです。 ステップ3:裁判所で審理を受ける 申し立て後は、裁判所で審理が始まります。例えば東京地裁の場合、申し立てから3日以内に裁判官との面談が設定されるのが通例です。 仮差し押さえの審理は、通常の裁判のように公開の法廷で両者が向き合う形式ではなく、債権者側だけが裁判官と非公開でやり取りする仕組みとなっています。相手に仮差し押さえを申し立てた事実を知られると、財産を隠されるおそれがあるからです。 審理の場では、裁判官から仮差し押さえの必要性について質問を受けたり、提出書類の訂正や補足を求められたりします。書類に不備があると裁判官から補正を求められ、その分だけ手続きに時間がかかります。申し立て前に、資料をしっかりと整理しておきましょう。 ステップ4:担保金を納付し、仮差し押さえを実施する 裁判所が仮差し押さえを認めると、債権者に担保金の供託を命じます。担保金の目安は、請求金額の10~30%程度です。例えば500万円の売掛金であれば、50万~150万円程度が目安になります。 仮差し押さえは、まだ裁判で結論が出ていない段階で相手の財産を凍結する措置です。後の裁判で「相手に支払い義務がなかった」と判断された場合、財産を凍結された相手は不当な損害を受けたことになります。担保金の納付は、そのような場合の賠償に備えるために必要とされます。 担保金の供託が完了すると、裁判所は仮差し押さえの決定を出します。売掛金を仮差し押さえした場合、まず第三債務者(相手の取引先)に「支払いを止めるように」という通知が届きます。 相手への通知は少し遅れて届く仕組みなので、先に売掛金が回収されてしまう事態を防げます。 ステップ5:債務名義を取得する 仮差し押さえだけでは、まだ売掛金を直接回収できません。仮差し押さえはあくまで「相手の財産を一時的に凍結する」措置であり、お金を受け取る権利を得たわけではないからです。 相手が仮差し押さえを受けて自主的に支払いに応じてくれれば解決しますが、そうでない場合は訴訟や支払督促、民事調停などの手続きを利用して債務名義を取得する必要があります。 注意したいのは、訴訟を起こさず放置していると、相手から仮差し押さえの取り消しを求められる可能性がある点です。相手は「起訴命令の申立て」によって、一定期間内に訴訟を起こすよう裁判所に請求できるからです。 仮差し押さえの完了後は、速やかに訴状や証拠書類の作成に取りかかり、訴訟の提起まで進めておきましょう。 ステップ6:強制執行を申し立てる 債務名義を取得したら、裁判所に強制執行を申し立てます。申し立てには、債務名義の正本、執行文、送達証明書などが必要です。執行文とは、債務名義に基づいて強制執行を許可する旨が記された文書で、裁判所の書記官や公証人に作成を依頼する必要があります。 強制執行が認められると、裁判所が相手の財産を差し押さえ、売却や取り立てによって換金し、未払いの売掛金に充てます。売掛金(債権)を差し押さえた場合は、第三債務者から直接取り立てる形になります。 仮差し押さえした財産についても引き続き強制執行に移行できるため、確実に回収を進められるでしょう。 差し押さえの注意点 差し押さえは強力な回収手段ですが、万能ではありません。費用や時間の負担が大きいため、手続きを始める前に知っておきたい注意点があります。 以下の4つのポイントを把握しておくと、手続きの見通しを立てやすくなるでしょう。 財産の特定が難しい 差し押さえでもっともハードルが高いのは、相手の財産を自力で特定しなければならない点です。相手の銀行口座がどこにあるのか、どの企業と取引しているのかは、外部からは簡単に把握できません。 2020年の民事執行法改正により「財産開示手続」が強化されるとともに、「第三者からの情報取得手続」が新設され、以前よりは調べやすくなりました。「第三者からの情報取得手続」では、銀行や証券会社、市区町村や年金事務所に対して、裁判所を通じて情報の開示を求められます。 しかし、手続きには時間がかかる上、必ずしも十分な情報を得られるとは限りません。日頃から取引先の経営状況や取引関係をしっかりと観察しておきましょう。 手間と時間がかかる 仮差し押さえの申し立てから強制執行が完了するまでには、相当な時間が必要です。仮差し押さえは早ければ1~2週間で実施できますが、その後の訴訟は判決まで数カ月~1年以上かかるケースもあります。 書類の準備や裁判所とのやり取りも多く、本業に割ける時間が減りがちです。弁護士に依頼する場合は着手金や報酬金も発生するため、回収したい金額と費用のバランスを事前に見積もっておきましょう。 少額の売掛金に対して多大な時間と費用をかけると、かえって損失が膨らむ場合もあります。 相手の財産状況によっては回収できない 差し押さえの手続きを最後まで進めても、相手に財産がなければ売掛金は回収できません。また、相手に対し裁判所から「破産手続開始決定」が出された場合には、個別の差し押さえの効力そのものが失われます。 破産手続きが始まると、裁判所が「破産管財人」を選任します。破産管財人とは、破産した相手に代わって財産の管理や処分を担当する人物で、通常は弁護士が就任します。 破産管財人が選任されると、相手の財産はすべて「破産財団」に組み込まれます。破産財団とは、破産した相手が持つ財産をひとまとめにしたもので、すべての債権者へ公平に分配するために管理されます。破産財団に組み込まれた財産には個別の差し押さえが及ばなくなるため、原則としてすでに差し押さえていた財産であっても回収できません。 また、ほかの債権者がすでに同じ財産を差し押さえている場合は、回収額が債権者の間で分配されるため、全額を取り戻すのは難しくなります。 相手の経営状態が悪化してから動き出すのでは遅い場合もあるため、異変を感じたら早めの対応を心がけましょう。 まとまった金額の担保金を用意する必要がある 仮差し押さえを利用する場合、請求金額の10~30%に相当する担保金を法務局に供託しなければなりません。 例えば1,000万円の売掛金であれば、100万~300万円の資金が必要です。 担保金の割合は一律ではなく、売掛金の証拠がどれだけそろっているか、相手が被る不利益の大きさなどを裁判所が総合的に判断して決定します。売掛金の存在を裏づける契約書や請求書がしっかりそろっている場合は10~15%程度に抑えられる傾向がありますが、証拠が不十分だと30%近くを求められる場合もあります。 訴訟が長引けば、その間は担保金が手元に戻りません。資金繰りに余裕がないときは、担保金の負担だけで経営を圧迫するおそれがあります。 仮差し押さえに踏み切るかどうかは、回収したい売掛金の金額と手元資金のバランスを見ながら、慎重に判断しましょう。 売掛金の未回収リスクを抑えるには? 差し押さえは手間も時間もかかる上、相手の財産状況次第では回収が困難になる場合があります。そもそも差し押さえが必要になる状況をつくらないことが理想です。最初から未回収を防ぐ仕組みを取り入れておけば、裁判にかかる費用や労力を丸ごと省けます。 未回収リスクを抑える方法として、「売掛保証サービス」の活用があります。売掛保証サービスとは、事前に保証会社と契約を結び、対象となる取引先の与信審査を通過しておくことで、取引先が売掛金を支払えなくなった場合に、保証会社が代わりに代金を支払ってくれる仕組みです。 取引先の倒産や支払い遅延が起きても売掛金を確実に受け取れるため、差し押さえのように長い時間と高い費用をかけて回収に動く必要がありません。本業に集中できるのが大きな利点です。 また、保証会社が取引先の信用力を審査してくれるため、新しい取引先との取引を始める際の判断材料としても役立ちます。与信管理の負担を軽減できるので、特に限られた人員で経営している中小企業にとっては心強い味方になるでしょう。 関連記事:売掛保証とはなにか メリットやデメリット、実際の利用事例をご紹介 まとめ 差し押さえは、売掛金を回収するための最終手段です。「債務名義」を取得し、裁判所に強制執行を申し立てれば、相手の財産から未払い分を回収できます。仮差し押さえを先に実施しておけば、訴訟中に財産を隠されるリスクも抑えられます。 一方で、財産の特定が難しい、手続きに時間がかかる、担保金が必要になるといった負担も伴います。相手が破産してしまえば回収の見込みが立たなくなる点も見逃せません。差し押さえに踏み切る前に、回収したい金額と手続きにかかる費用・時間を比較し、本当に採算が合うかを見極めましょう。 売掛金の未回収リスクをあらかじめ抑えたいなら、売掛保証サービスの活用がおすすめです。「URIHO(ウリホ)」は、月額の定額料金で利用できる売掛保証サービスです。取引先の支払いが遅れた場合や、倒産によって売掛金が回収できなくなった場合に、URIHOが代わりに代金を支払います。 未回収の不安を解消し、安定した経営を続けたい方は、ぜひURIHOの利用をご検討ください。 売掛金の差し押さえとは?回収の…
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