急な支払いが必要になり、ファクタリングの利用を考えている人は少なくありません。しかし、「審査で何を見られるのか」「赤字でも大丈夫か」と、不安を感じるでしょう。
ファクタリングの審査では、さまざまな観点からチェックが行われます。審査に通過するためには、審査基準を理解した上で、しっかりとした事前準備が欠かせません。
この記事では、ファクタリングの審査で重要視されるポイントや準備すべき書類、審査に落ちてしまう原因、対処法などを解説します。
ファクタリングの主な審査基準
ファクタリングでの主な審査項目は、「売掛先の信用力」「売掛債権の内容」「売掛先との取引履歴」「利用企業の信頼度」の4つです。一定の基準を満たしていれば、会社が赤字決算であったり、税金を滞納している場合でも、利用できる可能性があります。
それぞれの項目について、詳しく見ていきましょう。
関連記事:審査なしのファクタリングとは 利用の危険性とファクタリングに審査が必要な理由
売掛先の信用力
ファクタリングの審査で最も重視されるのは、「売掛先」の経営状態です。ファクタリング会社にとって、買い取った売掛金を回収できるかどうかが一番問われるからです。
銀行からお金を借りる審査では、借りる人の返済能力が見られます。そのため、税金を滞納していたり、借金が多すぎたりすると審査に通りません。
しかし、ファクタリングは「売掛金の売買」です。利用者の経営状態が芳しくない場合でも、売掛先が確実に支払いを行うと判断されれば、審査上は大きなマイナスになりにくいとされています。
中でも、以下のような企業に対する請求書は、回収できる見込みが高いと判断されます。
- 上場企業や大手企業:財務の内容が安定しており、倒産の心配が少ないため
- 公的機関:国や自治体に関連する組織も、支払いが確実だとみなされる
一方で、以下のようなケースでは、売掛先の信用力は慎重に審査されます。
- 個人事業主:法人に比べて経営の基盤が弱く、連絡が取れなくなるおそれがあるため
- 設立して間もない会社:実績が少なく、信用を測る材料が少ない
- 経営状態が悪い会社:過去に支払いの遅れがあったり、悪いうわさがあったりする企業は敬遠されやすい
売掛債権の内容
持ち込んだ請求書(売掛金)の中身が詳しく確認されます。架空の請求書を作って現金をだまし取ろうとする詐欺や、未回収リスクを防ぐためです。
提出する請求書は、内容が具体的でなければなりません。「〇月分作業代」とだけ書かれているような、中身がよく分からない請求書では評価が下がります。
審査では、以下の点が明確になっているかを見られます。
- どのような業務をしたのか
- 金額はいくらか
- いつ支払われるのか
これらを証明するために、請求書だけでなく、契約書や発注書、納品書、業務日報などの資料をそろえておく必要があります。資料同士の内容が一致していれば、架空の請求ではないと証明でき、審査に通りやすくなります。
特に、以下のような売掛金は買い取りを断られる場合が多いので、注意が必要です。
- 支払期日が遠すぎる
- 不良債権の疑いがある
- 二重譲渡の疑いがある
- 譲渡禁止特約がついている
関連記事:売掛債権とはなにか 管理・回収方法や未回収リスクを下げる対処法について解説
売掛先との取引履歴
その取引先と、過去に何度か取引をしているかどうかも重要です。「今回が初めての取引」なのか、「長年付き合いがある取引」なのかによって、信用度は大きく変わります。
過去に何度も請求し、そのたびに遅れず入金されている実績があれば、審査では有利になります。「いつもどおりに入金されるだろう」と判断できるからです。
取引履歴を証明するには、過去の通帳を提示するのが有効です。通帳に定期的な入金の記録があれば、嘘のない確かな証拠になります。
一方で、以下のようなケースは審査が厳しくなります。
- 新規の取引先:初めて発行した請求書であれば、本当に支払われるかどうかの信憑性が低い
- スポット契約:一度きりの仕事の場合も、継続性がないため未回収リスクが高いとみなされる
審査をスムーズに進めたいのであれば、できるだけ付き合いが長く、入金実績がはっきり分かる請求書を選ぶのがコツです。
利用企業の信頼度
売掛先の経営状態が重要とはいえ、利用者自身の信頼性も無視できません。
「2社間ファクタリング」という方法であれば、売掛先から入金されたお金を、利用者がファクタリング会社へ送金する必要があります。もし、利用者が入金された資金を本来の用途以外に充当した場合、ファクタリング会社に損失が発生します。
そのため、経営者の人柄や誠実さも判断基準となります。
例えば、以下のような要素は、審査に落ちる原因になります。
- 横柄な態度:担当者に対して高圧的であったり、乱暴な言葉を使ったりする
- 不誠実な対応:嘘をついたり、都合の悪いことを隠そうとしたりする
- 書類の不提出:求められた資料をなかなか提出しない
なお、利用者の会社が赤字であること自体は、直ちに審査不可となる要因ではありませんが、状況が悪すぎる場合は注意が必要です。例えば、自転車操業になっていて違法な金融業者から資金を調達しているような状態だと、「預かったお金を使い込んでしまうのではないか」と疑われます。
信頼できない相手だと判断されると、審査に落ちるか、契約できたとしても手数料が高くなるおそれがあるので、注意が必要です。
ファクタリング審査の流れ、必要書類
ファクタリングを利用して資金を調達するには、いくつかの手順を踏む必要があります。
相談から入金までは、早ければ即日で完了する場合もあります。しかし、途中で書類が足りなかったり、手続きに不備があったりすると、審査に時間がかかってしまいます。
急いでいるときに慌てないよう、審査の流れと用意すべき書類をあらかじめ理解しておきましょう。
ここでは、会社選びから入金までの一般的な手順を、4つのステップに分けて詳しく解説します。
1.会社選定
まずは、利用するファクタリング会社を選びます。
手数料の安さや、現金化までのスピード、買い取りの条件などは、会社によって大きく違います。複数の会社に見積もりを依頼し、自分の希望に合った条件を提示してくれるところを探しましょう。
問い合わせは、電話やWebフォーム、LINEなどで行われます。このとき、担当者の説明が分かりやすいか、対応が丁寧かどうかも、会社を選ぶときの判断材料にしてください。分からないことがあれば、遠慮せずに質問して疑問を解消しておくと安心です。
2.申し込み
利用する会社が決まったら、正式な申し込み手続きへ進みます。
申し込みの方法には、Webサイトからの入力、メール、対面での面談などがあります。
最近はオンラインで完結する会社も増えています。急いで資金が必要な場合は、即日対応ができるWeb申し込みなどを選ぶとよいでしょう。
なお、申し込みの段階で、会社の基本情報や売掛金の金額などを伝えます。
3.必要書類の提出・審査
申し込みと同時に、審査に必要な書類を提出します。
提出された書類をもとに、ファクタリング会社は「売掛先から確実に入金があるか」「利用者は信頼できるか」などを確認します。書類に不備や不足があると審査が止まってしまうため、事前によく確認しましょう。
一般的に必要となる主な書類は以下のとおりです。
- 履歴事項全部証明書(商業登記簿謄本)
- 身分証明書(運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなど)
- 決算書または確定申告書
- 預金通帳のコピー
- 売掛金を証明する資料(請求書・契約書など)
- 納税証明書
書類を提出すると、ファクタリング会社による審査が始まります。
ファクタリング会社は、提出された書類と照らし合わせながら、「売掛先が支払い期日にお金を払えるか」「架空の請求ではないか」などを慎重に確認します。
請求書の内容と通帳の入金記録にズレがあったり、取引の実績が少なかったりすると、審査に時間がかかる場合があります。事実を証明できる資料をしっかりとそろえておきましょう。
4.契約の締結
無事に審査を通過すると、買い取り手数料や入金日などの条件が提示されます。提示された金額や手数料に納得できれば、契約を結びます。
契約の方法は会社によって異なります。対面での署名が必要な場合もあれば、Web上で電子契約を結べる場合もあります。契約の手続きが完了すると、指定した銀行口座にお金が振り込まれます。
書類の準備や手続きが順調に進めば、申し込んだその日のうちに入金される場合もあります。

ファクタリング審査で落ちる主な理由

ファクタリングの審査では、主に「売掛先」「売掛債権」「利用者」の3つの観点から、リスクが判断されます。
いずれかに不安要素があると、「売掛金が回収できないかもしれない」とみなされ、審査に落ちてしまいます。
ここでは、それぞれの視点から審査落ちの原因となる具体的なケースを解説します。
1. 売掛先に関する理由
売掛先に関する理由としては、「経営状態が悪化している」「売掛先が個人事業主である」「ペーパーカンパニーの疑いがある」などが挙げられます。
経営状態が悪化している
売掛先の経営状態が悪いと、倒産や支払い遅延が起きる可能性が高くなります。
ファクタリング会社は、信用調査会社(帝国データバンクなど)のデータや独自のデータベースを使って、売掛先の経営状況を詳しく調べます。過去に不渡りを出していたり、税金を滞納していたりしていれば、マイナス評価となります。
また、業績が赤字続きであったり、業界全体の景気が悪かったりする場合も、リスクが高いと判断され、審査に落ちやすくなります。
売掛先が個人事業主である
売掛先が法人ではなく個人事業主の場合、審査は厳しくなります。
個人事業主は法人に比べて事業規模が小さく、社会的な信用も低い傾向があります。
また、法人のように商業登記簿で詳細を確認することが難しいため、事業の実態や支払い能力を正確に把握できません。連絡が取れなくなる、といったリスクも法人より高いです。
実際、売掛先が個人の債権を買い取り対象外としているファクタリング会社も存在します。
ペーパーカンパニーの疑いがある
「ペーパーカンパニー」とは、登記上は会社として存在していても、実際には事業活動を行っていない会社のことです。
ファクタリングを利用した詐欺の手口として、ペーパーカンパニーを使って架空の請求書を作成し、現金を不正に取得する事例があります。
そのため、オフィスの実態がない、電話がつながらない、事業内容が不明確といった会社に対する請求書は、「架空請求ではないか」と疑われ、審査に通りません。
2. 売掛債権の内容に関する理由
売掛債権の内容に関する理由としては、「支払いサイトが長い」「額面金額が低い」「不良債権の疑いがある」などが挙げられます。
支払いサイトが長い
「支払いサイト」とは、請求書を発行してから実際に入金されるまでの期間のことです。この期間が長ければ長いほど、その間に売掛先が倒産したり、経営が悪化したりするリスクが高まります。
一般的に、支払いサイトは1カ月から2カ月程度が目安です。業界によっても異なりますが、入金予定日が3カ月以上先の場合、回収までのリスクが高いと判断され、審査が厳しくなる傾向にあります。
関連記事:支払いサイトとは 支払いサイトの種類とキャッシュフローについてもあわせて解説
額面金額が低い
請求書の金額が極端に低い場合も、断られることがあります。
ファクタリング会社にとって、審査や契約にかかる手間は、金額が大きくても小さくても変わりません。そのため、数万円~数十万円といった少額の債権では、手数料収入がコストを下回ってしまい、採算が合わないのです。
会社によっては「買い取りは◯◯万円以上から」と下限を設けている場合もあるので、申し込み前に確認が必要です。
不良債権の疑いがある
「不良債権」とは、すでに支払期日を過ぎているのに入金されていない売掛金のことです。
期日に遅れているということは、売掛先の資金繰りがすでに破綻している可能性があります。回収できる見込みが極めて低い債権を買い取る会社はありません。
また、過去に何度も支払いが遅れている請求書も同様に扱われます。
3. 利用者に関する理由
利用者に関する理由としては、「不誠実な対応」「売掛先との取引実績が浅い」「社会的信用度が低い」「提出書類に不備がある」などが挙げられます。
不誠実な対応
審査では、提出資料の正確性や説明の一貫性などを通じて、契約を適切に履行できる相手かどうかも確認されます。その過程で、横柄な態度を取ったり嘘をついたりするような不誠実な対応や説明の矛盾、質問に対してのあいまいな回答などが見られる場合、リスクが高いと判断されることがあります。
他社の利用状況や税金の滞納などを隠しても、調査を行えば事実関係は把握されます。隠し事が発覚した時点で、審査通過は困難になる可能性が高くなります。
売掛先との取引実績が浅い
その売掛先との取引が「今回初めて」または「数回程度」しかない場合、審査は慎重になります。継続的な取引実績がないと、「本当に仕事が行われたのか」「今後も安定して入金されるのか」が判断できないからです。
逆に、何年も毎月取引があるような関係であれば、信用度は大きく上がります。
社会的信用度が低い
利用者が個人事業主である場合、法人に比べて社会的信用度が低く見られがちです。
また、利用者の会社自体の経営があまりにも悪化している場合も注意が必要です。特に「税金を悪質に滞納して差し押さえ寸前である」「違法な金融業者を利用している」といった状況では、「入金された売掛金を使い込まれるリスクが高い」と判断され、審査に落ちる原因となります。
提出書類に不備がある
審査に必要な書類がそろっていない、記載内容に矛盾があるといった不備も、審査落ちの典型的な理由です。
「請求書の日付がおかしい」「通帳の入出金記録と計算が合わない」といったミスは、単なる間違いであっても「改ざんや偽造ではないか」と疑われます。
普段から書類を整理し、正確な情報を提出できるようにしておくことが重要です。
ファクタリングの審査に落ちたときの対処法
もし審査に落ちてしまっても、すぐに諦める必要はありません。適切に対処して再度申請すれば、審査に通過する可能性があります。
ここで紹介する対処法を実践してみてください。
ほかのファクタリング会社に申し込む
ファクタリング会社によって審査の基準は大きく異なります。1社に断られたからといって、すべての会社で利用できないわけではありません。
会社によって重視するポイント(売掛先の信用、スピード、手数料など)は異なります。1社だけで判断せず、別の会社にも相談してみましょう。
別の請求書で申し込む
審査に落ちた原因が「取引先の信用不足」や「売掛金の内容」にあるなら、別の請求書に変えることで解決する場合があります。
売掛先が個人事業主や設立直後の会社だった場合、より規模が大きく、経営が安定している会社の請求書を選んでください。上場企業や公的機関など、社会的信用が高い相手への請求書であれば、審査に通る確率は高くなります。
また、支払いサイトが短い請求書を選ぶのも有効です。入金までが2カ月以内のものを選ぶと、未回収リスクが低いと判断されやすくなります。
さらに、取引先との契約書に「譲渡禁止特約」がついていない請求書を選ぶのもポイントです。特約がない請求書のほうが、ファクタリング会社にとってのリスクが低くなるためです。
「3社間ファクタリング」に切り替える
通常の「2社間ファクタリング」で断られた場合、「3社間ファクタリング」へ変更すると審査に通る場合があります。
3社間ファクタリングは、利用者・ファクタリング会社・売掛先の3社で契約を結ぶ方法です。この方法では、売掛先から直接ファクタリング会社へ代金が支払われます。そのため、未回収リスクが低くなり、審査が比較的緩やかになります。
取引先にファクタリングの利用を知られてしまうというデメリットはありますが、どうしても資金が必要なときは検討する価値があります。
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丁寧な対応を心がける
意外に見落としがちなのが、担当者への対応です。審査では、利用者の「人柄」や「誠実さ」もチェックされています。特に2社間ファクタリングでは、利用者が売掛金を回収して送金する必要があるため、信頼関係が重要になります。
担当者とのやり取りでは、嘘をつかず、矛盾のない回答を心がけましょう。質問には正直に答え、横柄な態度は避けるべきです。「この人なら安心して契約できる」と思ってもらえれば、審査結果がよい方向に向かうこともあります。
書類の不備を修正して再提出する
単なる書類の不足や記入ミスで落ちている場合もあります。担当者に理由を聞けるなら確認し、資料を完璧にそろえて出し直してみましょう。
請求書だけでなく、契約書、発注書、納品書など、取引の実態を証明できる書類をできるだけ多く用意してください。資料が不足していると、架空の請求ではないかと疑われたり、管理能力が低いとみなされたりします。逆に、書類がきちんと整っていれば、「しっかりした会社だ」という印象を与え、審査にプラスに働きます。
税金や社会保険料の滞納がある場合でも、隠さずに正直に伝え、現状を説明する資料(分割納付の計画書など)を提出することで、考慮してもらえる場合があります。
まとめ
この記事では、ファクタリングの審査について解説しました。最後に、重要なポイントを振り返りましょう。
- 審査で重視されるのは「売掛先の信用力」「売掛債権の内容」「売掛先との取引履歴」「利用企業の信頼度」
- 請求書や通帳などの必要書類は、不備がないように準備する
- 審査に落ちたときは、別の会社への相談や「3社間」への変更を検討する
- 担当者には嘘をつかず、誠実に対応することが大切
ファクタリングは、急いで資金を調達したいときに役立つ手段です。しかし、審査で「取引先の信用」が重視されるということは、裏を返せば「取引先の経営が傾くと、資金調達ができなくなるリスクがある」ということです。
もし取引先が倒産してしまえば、ファクタリングによる資金調達ができないだけでなく、売掛金そのものが入ってこなくなります。そのため、万が一の事態に備えて「売掛金を確実に受け取る準備」をしておくことも、会社を守るためには欠かせません。
関連記事:売掛金の回収と回収が滞った場合の対応方法について解説
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