30年以上も前に大ヒットした漫画「ナニワ金融道」は、法律の世界を知る「参考書」として今でも愛読する経営者も多いようです。怪しいイメージが残る「債権回収業者」ですが、実際にはどのような仕組みで運営されているのか、意外と知られていません。
この記事では、債権回収会社の仕組みや弁護士との違い、依頼時の費用相場、業務の流れ、そして2020年の民事執行法改正による変化などを解説します。
債権回収会社(サービサー)とは?
債権回収会社とは、法務大臣の許可を得た、民間の債権管理回収専門業者です。金融機関から委託を受け、または債権を譲り受けて、「特定金銭債権」の管理・回収を担っています。
国内での債権回収の仕事は、弁護士法によって弁護士または弁護士法人以外が手がけることは禁じられていました。しかし、1999年に施行された「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」により、民間会社も債権回収の業務に参入できるようになりました。
バブル崩壊後に大量に発生した不良債権の処理を促すために設けられた法律で、暴力団などの反社会的勢力の参入を排除する仕組みと、許可業者に対する規制・監督を通じて、回収過程の適正を保つ許可制が採用されています。
法律で認められた業者しかできない
債権回収業者は、法務大臣が認めた業者しかなることができません。
法務省のホームページによると、以下の条件を満たす必要があると定めています。
・最低資本金が5億円
・暴力団員等の関与がない
・常務に従事する取締役の1名以上に弁護士が含まれている
取締役となる弁護士の適格性は、法務大臣が日本弁護士連合会に意見を聴取して判断します。暴力団員等の排除については、法務大臣が警察庁長官に意見聴取する仕組みが設けられています。
金融機関との関係
債権回収会社は、銀行や保証会社などの金融機関が抱える債権を回収する役割を担っています。
多くの債権回収会社は、銀行や消費者金融、投資ファンド、不動産会社などの子会社として設立されています。そのため、依頼先も親会社やそのグループ企業に限定されるケースが多い傾向があります。
大手の債権回収会社一覧
法務省のホームページには、法務大臣から許可された債権回収会社の一覧が掲載されています。2026年4月1日時点で74社が許可を受けて営業しています。
主な大手債権回収会社は、以下のとおりです。
・日本債権回収株式会社
・アビリオ債権回収株式会社
・ニッテレ債権回収株式会社
・SMBC債権回収株式会社
・オリックス債権回収株式会社
・ジャックス債権回収サービス株式会社
・あおぞら債権回収株式会社
・エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社
・セゾン債権回収株式会社
・中央債権回収株式会社
・オリンポス債権回収株式会社
・九州債権回収株式会社
・アイ・アール債権回収株式会社
・アウロラ債権回収株式会社
・株式会社住宅債権管理回収機構
・株式会社エムアールアイ債権回収
・ジャパントラスト債権回収株式会社
・パルティール債権回収株式会社
※法務大臣による許可順(一部抜粋)
許可業者の最新の一覧は、法務省のホームページで確認できます。債権回収会社と類似の名称をかたった詐欺業者による架空請求も報告されているため、依頼前に法務省の一覧で許可の有無を確認しましょう。
債権回収会社と弁護士の違い

債権回収業務はもともと、弁護士にしか認められていませんでしたが、サービサー法の施行により、債権回収会社も一定の範囲で回収業務を担えるようになりました。
両者の主な違いを、以下の表にまとめました。
| 比較項目 | 弁護士 | 債権回収会社 |
| 扱える債権 | すべての債権 | 特定金銭債権のみ |
| 個人からの依頼 | 対応可能 | 原則として対応不可 |
| 訴訟における立場 | すべての裁判所で代理人として対応可能 | 簡易裁判所で扱う訴額140万円以下の案件は自社で対応できるが、それ以外の裁判手続きは弁護士に追行させる必要がある |
弁護士はすべての債権を扱えるのに対し、債権回収会社は「特定金銭債権」(金融機関の貸付債権やリース・クレジット債権など)に限定されます。また、債権回収会社は特定の事業者を除き、個人が保有する債権を取り扱えません。
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債権回収会社の費用・手数料の目安
債権回収を外部に依頼する場合、費用の仕組みは依頼先によって大きく異なります。債権回収会社は「債権の買い取り」が基本で、弁護士は「着手金+成功報酬」の体系が一般的です。ここでは、それぞれの費用構造を整理し、判断のポイントを紹介します。
債権回収会社に依頼した場合の費用
債権回収会社(サービサー)に依頼する方法は、主に「債権譲渡(買い取り)」と「回収の委託」の2つに分かれます。
債権譲渡の場合、サービサーが債権を買い取るため、依頼する側に手数料は原則として発生しません。ただし、買取価格は債権の額面より低くなります。不良債権の買取相場は案件ごとに異なりますが、簿価の数%~10%程度が目安とされています。
回収の委託を受ける形では、成功報酬型を採用するケースもあります。この場合は回収額の一定割合が手数料として差し引かれます。
弁護士に依頼した場合の費用
弁護士に債権回収を依頼した場合は、「相談料+着手金+成功報酬+実費」の構成が一般的です。費用の目安を以下にまとめます。
| 費用の種類 | 相場の目安 |
| 相談料 | 1時間あたり5,000円~1万円(初回無料の事務所もある) |
| 着手金 | 10万~30万円程度(債権額や回収方法によって変動) |
| 成功報酬 | 回収額の10~20%程度 |
| 実費 | 内容証明郵便代・印紙代・交通費など |
内容証明の送付のみであれば3万~5万円程度で済むケースもありますが、訴訟や強制執行に進むと費用は加算されます。少額の債権では、回収額よりも弁護士費用が上回る「費用倒れ」になるリスクがある点にも注意しましょう。
費用を比較する際のポイント
依頼先を決める際は、費用の安さだけでなく、以下の観点を総合的に比較して選ぶのがおすすめです。
| 比較の観点 | 確認すべき内容 |
| 回収の見込み額 | 回収できそうな金額と費用を比べて、手元に残る金額を試算する |
| 債権の種類 | 回収対象が特定金銭債権であれば、債権回収会社も依頼先の候補になる |
| 自社の人員・時間 | 自社での対応にかかる手間を考慮し、外部委託のメリットと比較する |
| 回収の確度 | 費用が安くても回収できなければ意味がない。方法ごとの回収率も検討する |
債権回収会社の業務の流れ

債権回収業者の業務の流れは、以下のとおりです。
1.電話や郵便を使った連絡
2.内容証明郵便の送付
3.裁判所に支払督促を申し立てる
4.強制執行を行い相手の財産を差し押さえる
電話や郵便を使った連絡
まず債務者に対して電話で支払いの催促を実施します。電話番号が不明な場合や、料金未納で電話がつながらない場合は、請求書を郵送して連絡を取ります。
内容証明郵便の送付
電話や郵便で連絡が取れなかった場合は、内容証明郵便を送ります。内容証明郵便とは、いつ・どのような内容の書面を・誰から誰宛てに送ったかを日本郵便が証明するものです。裁判の証拠としても利用できます。
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裁判所に支払督促を申し立てる
内容証明郵便を送っても支払いに応じない場合、裁判所に支払督促を申し立てます。支払督促とは、金銭の支払いを求める債権について、迅速に債務名義を取得するための特別な裁判手続きです。数ある裁判手続きの中でも、もっとも早く債務名義を得られる手段として活用されています。
強制執行により相手の財産を差し押さえる
裁判で「債務名義」を取得し、執行文などの書類がそろえば、裁判所に強制執行の申立てをします。強制執行とは、債務者の財産から強制的に支払いを受けるための手続きです。
例えば、債務者が価値のある不動産を保有していれば、強制競売の申立てをするのが一般的です。
2020年の民事執行法改正で変わった財産調査

債権回収では、債務者がどこにどのような財産を持っているかを把握する作業が重要な課題です。2020年4月施行の改正民事執行法では、債務者の財産情報を得るための制度が強化されました。
ここでは、改正のポイントを2つ解説します。
財産開示手続の罰則強化
財産開示手続とは、裁判所が債務者を呼び出し、保有する財産について報告させる手続きです。
改正前は、呼び出しに応じなくても「30万円以下の過料」という軽い制裁にとどまっていたため、実効性に課題がありました。実際、申立件数の約40%が債務者の不出頭で終了していたとされています。また、財産開示手続を申し立てるために確定判決や調停調書などが必要でした。つまり、裁判で勝訴するか調停を成立させなければ、この手続きは使えませんでした。
こうした課題を受けて、改正法では2つの見直しが実施されました。
1つ目は罰則の強化で、不出頭や虚偽報告に対する制裁が「6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金」という刑事罰に引き上げられています。過料は行政上の制裁にすぎませんが、懲役・罰金は前科がつく刑事罰であり、債務者への抑止力が格段に高まりました。
2つ目は申立て要件の緩和です。改正後は、公正証書や仮執行宣言付支払督促も財産開示手続申立ての根拠書類として認められたため、判決の確定を待たずに申立てができるようになりました。
第三者からの情報取得手続の新設
改正民事執行法では、債務者本人ではなく第三者から財産情報を取得する制度も新設されました。裁判所を通じて、以下の機関に対して照会が可能です。
| 照会先 | 取得できる情報 |
| 銀行・証券会社 | 預貯金口座・有価証券の情報 |
| 市区町村・日本年金機構 | 給与(勤務先)の情報 |
| 登記所 | 不動産の情報 |
※給与(勤務先)情報の取得は、養育費等の特定の債権に限られており、一般的な商取引の債権回収では利用できません。
なお、照会の種類によって手続きの条件や債務者に知られるタイミングが異なります。
預貯金・有価証券については、財産開示手続を事前に実施していなくても申立てが可能です。債務者への通知は情報提供の約1カ月後に届くため、その間に差し押さえの手続きを進められます。
不動産・給与については、3年以内に財産開示手続を実施済みであることが申立ての要件です。また、裁判所の決定が債務者に送達されるため、債務者に事前に知られる点も押さえておきましょう。
債権回収会社に依頼したほうがよいケース
債権回収会社に依頼したほうがよいケースとして、主に以下の2つが挙げられます。
・自社での回収の見込みがない
・自社に債権回収のノウハウがない
自社での回収の見込みがない場合
取引先の支払い能力が認められない場合や、取引先が意図的に支払いを拒んでいる場合は、債権回収会社への依頼を検討しましょう。電話や郵便で催促を繰り返すだけでは解決が難しいケースでも、回収のプロに任せれば時間と手間を減らしながら、未回収分を取り戻せる可能性が高まります。
自社に債権回収のノウハウがない場合
債権回収の経験がない場合、無駄な調査や手続きが重なり、想定以上に費用がかさむおそれがあります。費用を抑えようとして回収に失敗してしまっては本末転倒です。
特に企業に対する債権回収は金額が大きくなるケースが多く、回収の失敗が連鎖倒産のリスクにつながるおそれもあります。ノウハウがない場合は、債権回収のプロに依頼するのが得策です。
債権回収会社に依頼するメリット・デメリット

法務大臣の許可を得た債権回収会社は、債権回収の専門家です。依頼するメリットとデメリットを整理しました。
<メリット>
1. 回収にかかる業務負担がなくなる
自社で債権を回収するには法律の知識が必要になります。手紙一通とっても書式や記載内容が決まっており、調べながら対応していると時効が成立してしまうおそれもあります。プロに任せれば、迅速で的確な対応が期待できます。
2. 債務者が破産しても損失を避けられる
債権をサービサーに譲渡済みであれば、その後に債務者が破産した場合でも、譲渡した側に未回収分の損失は発生しません。
3. 顧客とのトラブルを回避できる
顧客への債権回収は慎重に進めなければならず、精神的な負担も大きくなります。回収のプロに任せれば、取引先と直接かかわる場面を減らせるため、トラブルの予防につながります。
<デメリット>
1. 対応可能な債権が限定される
債権回収会社が取り扱えるのは「特定金銭債権」に限られます。特定金銭債権とは、金融機関の貸付債権やリース・クレジット債権、ファクタリング業者の金銭債権、倒産手続中の者が保有する金銭債権などです。一般的な売掛金は対象外となるケースがあります。
2. 債権額面より安値での売却になる
債権を債権回収会社に譲渡する場合、買取価格は債権の額面より低く設定されます。満額の回収は期待できません。
3. 違法な悪徳業者も存在する
法務大臣の許可を受けた業者以外にも、違法に営業する悪質な業者が存在します。法外な手数料を要求されるケースもあるため、法務省のホームページで許可業者の一覧を必ず確認しましょう。
4. 手数料が発生する
回収の委託を受ける方式では、回収額に応じた手数料が差し引かれます。回収できた金額がそのまま手元に入るわけではない点に注意が必要です。
売掛保証を活用すれば回収業者への依頼を避けられる
未入金になった取引代金は、自社で回収するにしても、社外に委託するにしても、全額を取り戻せる保証はありません。支払猶予を求められれば、入金がさらに遅れてしまいます。
こうしたリスクをあらかじめ抑えられるのが、売掛保証サービスです。売掛保証サービスとは、取引先が売掛金を支払えなくなった場合に、保証会社が代わりに代金を支払う仕組みを指します。倒産や支払い遅延が起きても売掛金を受け取れるため、差し押さえや訴訟にかかる費用・時間を丸ごと省けます。
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まとめ
債権回収会社(サービサー)は、法務大臣の許可を受けた債権回収のプロです。弁護士との違い、費用の仕組み、業務の流れを理解した上で、自社で対応するか外部に依頼するかを判断しましょう。
2020年の民事執行法改正により、財産開示手続の罰則が強化され、第三者からの情報取得手続も新設されました。回収手段は広がっていますが、債権回収には依然として時間や労力がかかります。
未回収リスクをあらかじめ抑えたい場合は、売掛保証サービス「URIHO(ウリホ)」の活用もご検討ください。取引先の倒産や支払い遅延に備えながら、安定した経営基盤を整えられるでしょう。