商売をしていくにあたり、「支払い」は最も重要な行為のひとつです。ただお金を相手に渡すだけ、と思われるかもしれませんが、実際は受け渡しの方法やタイミングなどを決める必要があります。支払いについて何となく決めてしまっていると、「会社にお金がない」という事態を引き起こしかねません。特に企業間での支払いは個人レベルと比べて金額も大きく、きちんとコントロールできるかどうかは企業の財政に大きな影響を与えます。
この記事では、「支払いサイト」という言葉について、また実際の支払いについて解説いたします。具体的には下記内容を解説いたします。
- 支払いサイトとは何か?
- よくある支払いサイトの種類
- 支払いサイトが長いとどうなるか
- キャッシュフローについて
この記事を読むことで支払いサイトについて知り、キャッシュフローの改善につなげることができるでしょう。
支払いサイトとは?
支払いサイトとは、商取引で売上金が振り込まれるまでの期間を指します。例えば、「10日締め25日支払い」の場合、売上金の支払いサイトは15日となります。月末締めで翌月末に支払う場合は、月の日数が変わることもありますが、便宜上30日と表記します。
B to Cでの取引をしていると、商品やサービスの提供時に合わせて代金の受け渡しが都度行われることが多いですが、B to Bでの取引ではそのパターンはあまり多くありません。企業間で継続的に取引が行われる場合には、会計上の締め日とそれに連動する支払日をあらかじめ契約で決めておき、締め日から次の締め日までの取引分について支払日にまとめて代金受け渡しを行うという方法が一般的です。
企業間取引の経験が少ない方にとっては、支払いサイトは単なる振込手続き期間のように思えるかもしれませんが、実際は、お金の出入りのスケジュールを加味して決められています。
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支払いサイトを設定する理由
支払いサイトを適切に設定することは、企業の経営と財務において非常に重要な役割を果たします。以下の理由から、支払いサイトを明確に設定する必要があります。
- キャッシュフローの管理
支払いサイトを設定することで、企業はキャッシュフローを効率的に管理することができます。支払いサイトが長ければ、手元に資金を長期間残しておくことができ、短期的な資金運用や投資に活用できます。逆に、短い支払いサイトを設定することで、売り手は迅速に売上を現金化し、資金繰りを安定させることができます。 - 資金繰りの予測と計画
支払いサイトを明確にすることで、企業は資金繰りの予測と計画を立てやすくなります。特定の支払いサイトを基に、毎月の収支のバランスを取ることができ、突発的な資金不足を避けるための対策を講じることができます。 - 信用力の向上
企業が支払いサイトを適切に守ることで、取引先との信頼関係を築くことができます。特に、下請代金支払遅延等防止法に基づき、期限内に支払いを行うことは、信用力の向上につながり、今後の取引にも好影響を与えます。 - 取引条件の交渉材料
支払いサイトは取引条件の一部として重要な交渉材料になります。買い手と売り手はそれぞれの立場から有利な条件を求めるため、支払いサイトを交渉材料として活用することで、双方が納得できる取引条件を設定することが可能です。 - 法的リスクの回避
法律に基づく適切な支払いサイトを設定することは、法的リスクを回避するためにも重要です。特に、下請代金支払遅延等防止法などの法律に違反しないようにするためには、支払いサイトを厳守する必要があります。
支払いサイトの期間についての例
支払いサイトには下請法を除き法律上の決まりなどはなく、いつ締めていつ支払うかは双方の合意のみで自由に決めることができます。しかし実際には、締め日や支払い日は決まったパターンが多く、これに則って進めるのが一般的です。
月末締め翌月末払い
支払いサイトとして国内で一番多いのが、月末で締めたものを翌月末に支払うパターンです。この場合支払いサイトは30日とカウントされます。
月末締め翌々月末払い
月末締め翌々月末払いは、月末に締めたものをその翌々月末に支払うパターンです。この場合は60日サイトと呼びます。30日サイトの場合と比べて締め日から支払い日までに猶予があるので、支払う側の資金繰りは30日サイトと比べると良くなります。その分、入金を受ける側にとってはリスクも大きくなるので、業界の慣習でない限りは双方の信頼関係がより重要になってきます。
90日以上は手形を利用しての場合も
90日サイト、つまり月末締め後、3ヵ月後というケースでは取引は売掛金ではなく手形によるものが一般的です。これは手形取引だと支払い時に銀行という第三者が関与するため、信用性が高いからです。
また手形取引では、振出と呼ばれる手形の発行行為が行われるまでの期間と、手形が発行されてから実際に支払われるまでの期間を合わせて支払いサイトと称します。
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買い手側から見た支払いサイトが長い場合の特徴
支払いサイトが長いことは、買い手にとって利点があります。それは商品やサービスを受け取った後、代金を支払うまでの時間が長くなり、それだけ自社で保有できる資金の期間が伸びるからです。
したがって、買い手としては、支払いサイトを設定する際に、可能な限り長い期間に設定することを交渉することが有利といえます。しかし、自社の利益は相手方の損失となり得るので、一方的に自分たちの状況を押し付けることは適切ではありません。例えば、支払いサイトを長く設定する代わりに注文量を増やすなど、バランスの取れた交渉が求められるでしょう。
売り手側から見た支払いサイトが長い場合の特徴
売り手から見ると、支払いサイトが長いことは、以下の理由からあまり好ましくありません。
- 黒字倒産のリスクが上がる
- 売掛金が踏み倒される可能性が増える
支払いサイトが長いということは、商品やサービスを提供したのに、その対価を受け取るまでの期間が長くなるという意味です。商品やサービスの提供には、仕入れや人件費などの費用がかかりますが、それらの支払いは売上金で賄うもので売上金が回収できていないと支払いに困ることがあります。
さらに、支払いサイトが長いと取引相手からの支払いが得られないリスクが増します。相手方が、支払いに充てるべき資金を別の用途に使うことや、最悪の場合、取引相手が消えてしまう可能性もあるでしょう。取引は企業間の信用にもとづいて行われますが、支払いサイトが長ければ長いほど、リスクは高まります。
キャッシュフローとは
キャッシュフローは、一定期間における企業や個人の現金収入と支払いの流れを表します。これは企業やプロジェクトの財務健全性や収益性を評価するための重要な指標となります。
日本では売掛取引が一般的なため、売上を計上するタイミングと実際に代金を受け取るタイミングにズレが発生しやすいです。例えば、収支計算表上では売上が上がっているように見えても、実際には代金の入金が未だ先であるため、キャッシュフロー上は変動がない、または、仕入れ費用や経費の支払いでキャッシュフローがマイナスになることもあります。
支払いサイトが短い場合、売上とキャッシュフローのタイミングの差は少なくなります。一方、支払いサイトが長いと、売上の計上と実際の現金収入のタイミングに大きな差が生じます。
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まとめ
支払いサイトとは、取引の決済日から代金が入金されるまでの期間を指します。良好な資金繰りを維持するためには、基本的には入金は早く、出金は遅くすることが理想的です。買い手にとっては、支払いサイトが長ければ長いほど有利でしょう。一方で、売り手にとっては、支払いサイトが短いほど好ましいです。しかし、業界の慣習や取引相手との信頼関係も重要なので、全ての要素を考慮しつつ、売り手側はなるべく短い支払いサイトを目指して交渉することが重要です。
会社にとって、売上が上がることと同様に、手元にキャッシュがあることが極めて重要です。毎月の収支確認と同時に、キャッシュフローの状況も確認することが必要でしょう。キャッシュフローを改善するためには、支払いサイトの調整が重要な要素となります。したがって、取引相手との交渉においては、できるだけ有利な条件を引き出すように努力しましょう。
支払いサイトが長いと売掛金を回収できるか不安に思われるかもしれません。
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