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掛け払いとは?仕組みやメリット・デメリットを解説

掛け払いとは?仕組みやメリット・デメリットを解説

普段の買い物ではその場でお金を払いますが、会社同士の取引では、商品を受け取った後に代金をまとめて支払う「掛け払い」が一般的です。


支払いは後日となりますが、会社のお金の流れをスムーズにし、毎日の支払いに伴う無駄な手間を減らすという目的があります。


この記事では、掛け払いの仕組みや、売り手と買い手それぞれのメリット・デメリットを分かりやすく解説します。

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掛け払いとは

掛け払いとは、商品やサービスを先に提供してもらい、その代金を後日まとめて支払う決済方法です。概念としては、昔ながらの商店の「ツケ払い」に似ていますが、企業間取引では信用管理や契約が厳密に行われます。


企業同士の取引は、個人の買い物とは規模が違います。例えば、自動車メーカーが部品工場からネジを買う場面を想像してください。毎日何万本ものネジが届くたびに、トラックの運転手さんに現金を渡すのは現実的ではありません。数える時間もかかりますし、大金を持ち歩くのは危険だからです。


そこで、「1カ月分の代金をまとめて、翌月に支払う」というルールが作られました。これにより、毎日お金を支払う手間がなくなり、商品の受け渡しだけに集中できるため、取引がスムーズに進みます。


この仕組みの土台にあるのは、相手への「信用」です。売り手は、代金を受け取る前に商品を渡さなければなりません。もし代金が支払われなければ、商品を失うだけでなく、大きな損をしてしまいます。


このように、「信用」を担保にして取引をするため、掛け払いは「信用取引」とも呼ばれます。

取引が完了するまでの具体的な流れ

掛け払いの特徴は、商品が届くタイミングと、お金が動くタイミングがずれる点です。


一般的な企業のルールである「月末締め、翌月末払い」というケースを例にして、掛け払いで取引が完了するまでの具体的な流れを確認しましょう。



1.注文と商品到着

まずは、必要な商品を注文します。電話やメール、専用のシステムなどを使って「この商品を100個ください」と伝えます。数日後、商品が手元に届きます。


このとき、必ず「納品書」という書類が一緒に入っています。注文したとおりの商品が届いたかを確認したら、商品は受け取ります。


この時点では、代金を支払う必要はありません。



2.請求書の受け取り(締め日)

1カ月の間、何度注文しても支払いはしません。


そして、月の終わり(例えば4月30日)を迎えると、売り手側で1カ月分の計算をします。これを「締め」といいます。


売り手は「4月1日から4月30日までに、合計で100万円分の商品を届けました」という内容の請求書を作成し、買い手に送ります。



3.内容の確認

翌月(例えば5月初旬)に請求書が届いたら、買い手がチェック作業に入ります。


手元にある納品書と、届いた請求書を照らし合わせます。「注文していない商品が含まれていないか」「金額に間違いはないか」を細かく確認します。


もし間違いがあれば、すぐに相手に連絡をして修正してもらいます。



4.代金の支払い(支払日)

内容に問題がなければ、支払いの準備をします。あらかじめ契約で決めておいた日(例えば5月31日)までに、指定された銀行口座へ代金を振り込みます。


これで、4月に注文した分の取引がすべて完了します。

掛け払いの代表例

掛け払いには、大きく分けて2つの種類があります。誰と誰が取引するかによって、使われる方法が異なります。



請求書払い(企業 対 企業)

会社同士(BtoB)の取引で、もっとも広く使われている方法です。


先ほど説明したように、1カ月分の取引をまとめた「請求書」を発行し、銀行振込などで支払います。


この方法の特徴は、扱う金額の上限が高いことです。会社の規模や信用力によっては、数千万円、数億円という単位の取引も、請求書一枚で処理されます。


また、支払うまでの期間(支払いサイト)を企業同士の話し合いで決められる点も特徴です。「月末締め、翌々月末払い」のように、支払いをさらに先延ばしにするケースもあります。


関連記事:

請求書払いとは 支払方法の種類メリット・デメリットを解説

月末締め翌々月払いとは?支払いサイトや法律上の扱いについて解説



クレジットカード払い(企業 対 消費者)

クレジットカードも、構造上は「商品先、代金後払い」という点で掛け払いに似ています。


お店でカードを使って買い物をすると、商品は受け取れますが、その場で現金が減ることはありません。その代わり、カード会社がお店に代金を立て替えて支払ってくれます。そして約1カ月後に、カード会社から私たちに請求が来て、銀行口座から引き落とされます。


「商品が先、お金は後」という構造は、企業の請求書払いとまったく同じです。カード会社が消費者の信用を審査し、その信用に基づいて後払いをさせてくれているのです。

掛け払いを始める方法

企業が掛け払いを導入するには、2つのやり方があります。自分たちですべて管理するか、プロに任せるかです。それぞれの特徴を解説します。



自社で行う

自分たちの会社の社員が、掛け払いのルール作りから日々の作業までをすべて担当する方法です。外部の会社に頼まないので、手数料がかからない点がメリットです。


しかし、その分だけ多くの手間と責任が発生します。


自社で管理する場合は、以下の手順で進めます。


  • 与信管理

取引を始める前に、相手に支払い能力があるかを見極めなければなりません。「経営状態は悪くないか」「悪いうわさはないか」を調べます。これを「与信管理」と呼びます。もし調査が甘いと、商品を渡したのにお金が返ってこないトラブルになります。


  • 請求書の作成と発送

毎月決まった日に、間違いのない請求書を作成し、相手に送らなければなりません。取引先が増えれば増えるほど、この作業は大変になります。


  • 入金確認と督促

約束の日に入金があったかを通帳で確認します。もし入金がなければ、すぐに電話やメールで「支払われていませんよ」と連絡しなければなりません。これが「督促」です。


お金を催促するのは精神的に負担のかかる仕事ですが、自分たちで管理する以上、避けては通れません。


関連記事:督促とはなにか 催促との違いと支払督促のやり方をあわせて解説



掛け払いのサービスを利用する

手間やリスクを減らすために、専門の会社に任せる方法です。主に「掛け払い代行サービス」や「売掛保証サービス」と呼ばれるものがこれにあたります。


手数料はかかりますが、自社で管理する場合のデメリットを解消できるため、多くの企業が利用し始めています。


最大の特徴は「代金の保証」です。もし取引先が倒産したり、夜逃げしたりして代金が支払われない事態になっても、代行会社がその分のお金を立て替えて支払ってくれるケースが大半です。


「商品を売ったのにお金が入らない」という最悪の事態を防げるので、安心して新しい取引先を増やせます。


また、掛け払い代行サービスであれば、相手の信用調査や、毎月の請求書発行、入金確認などの細かい事務作業を、すべて代行会社がやってくれます。自社の社員は、商品を売るための営業活動などに集中できるようになります。

後払いとの違い

「掛け払い」とよく似た言葉に「後払い」があります。どちらも代金を後で支払う仕組みですが、使われる場面やルールに違いがあります。



取引の相手が違う

掛け払いは、主に「企業と企業」の間で使われます(BtoB)。お互いがプロの事業者であるため、契約書を交わしたり、厳しい信用調査をしたりします。


後払いは、主に「企業と個人(一般消費者)」の間で使われます(BtoC)。ネット通販で服や本を買うときに選ぶ「後払い決済」などがこれです。個人客が使いやすいように、審査はそこまで厳しくありません。



支払いのタイミングが違う

掛け払いでは、1カ月分の代金を「まとめて」支払います。これが企業間取引の基本ルールです。


後払いは、買い物をする「たびに」支払います。商品と一緒に届く払込票(バーコード付きの用紙)を使って、その都度コンビニなどで支払うのが一般的です。



利用できる金額が違う

掛け払いは、会社の信用に基づくため、限度額が大きく設定されます。数百万円から、場合によっては数千万円という取引も可能です。


後払いは、主に個人向けのサービスであるため、上限額は低めに設定されています。一般的には「20万円まで」といった制限がある場合がほとんどです。

掛け払いのメリット

企業同士の取引で掛け払いが普及している理由は、単なる慣習ではありません。売り手と買い手の双方にとってメリットがあるからです。


ここでは、掛け払いを導入することで得られる具体的なメリットについて、実例を交えながら詳しく解説します。

決済業務の効率化(売り手・買い手)

一番のメリットは、お金をやり取りする事務作業が圧倒的に楽になる点です。


もし掛け払いがなく、取引のたびに支払いをしていると、毎日注文が入るたびに、請求書を作成して振込手続きをしなければなりません。これでは、仕事の大半が支払いの作業で終わってしまいます。


掛け払いを導入すれば、このような事務作業は月に1回で済みます。



売り手のメリット

1カ月分の注文を1枚の請求書にまとめるだけで完了します。毎日入金確認をする手間がなくなり、別の仕事に時間を割けるようになります。



買い手のメリット

支払い手続きが月1回になるため、銀行に支払う「振込手数料」を大幅に節約できます。1件数百円の手数料も、回数が減れば年間で大きな金額になります。


このように、お互いの無駄な時間を減らし、本来やるべき仕事に集中できる環境をつくれるのが大きな魅力です。

取引の柔軟性(売り手)

商品を売る側にとって、掛け払いは取引先を増やすための武器になります。特に、規模の大きな会社と取引をするときに効果を発揮します。


大企業では、お金の管理ルールが厳しく決まっており、その場での現金払いができないケースがほとんどです。「うちは現金しか受け付けません」と言ってしまうと、それだけで契約を断られるおそれがあります。


逆に、「掛け払いで大丈夫ですよ」と伝えるだけで、相手は安心して注文を出せます。相手の支払いルールに合わせることで、取引のハードルを下げ、契約のチャンスを広げられます。また、「手元の現金が不足しているため、購入できない」という機会損失を防ぐ役割も果たします。

予算管理がスムーズ(買い手)

商品を買う側にとっては、お金の計画が立てやすくなるというメリットがあります。


ビジネスでは、商品を仕入れてから販売し、売上という形で現金が入ってくるまでに時間がかかります。もし仕入れのたびに現金を払っていると、売上が入る前に手元のお金が尽きてしまい、次の仕入れができなくなるおそれがあります。


掛け払いを活用することで、支払いまでの間に商品を売り、手に入れた売上金を使って支払いができます。手元に資金が少ない時期でも、安心して商品を仕入れられるため、ビジネスを止めずに続けられます。


また、毎月の支払日が決まっているため、「いつ、いくら必要なのか」が明確になり、お金の準備がしやすくなります。

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掛け払いのデメリット

掛け払いは、売り手と買い手の双方にとって多くのメリットがある一方で、現金取引にはないリスクや負担もあるので、注意が必要です。


ここでは、掛け払いを導入する際に必ず知っておかなければならない「2つの大きなデメリット」について解説します。

与信管理の必要性

掛け払いを安全に進めるためには、与信管理が重要です。


商品を先に渡す以上、相手の会社に支払い能力があるかを事前に調べる必要があります。「経営状態は悪くないか」「過去に支払いのトラブルはないか」といった情報を集めなければなりません。


これらを正確に知るには、専門の調査会社に依頼したり、有料のデータを購入したりする必要があります。取引先が数社であれば負担は少ないですが、数十社に増えれば調査にかかる時間や費用は膨大なものになります。


調査結果をもとに、「この会社には月50万円までなら後払いで売ってもよい」という与信枠を決めます。この判断は非常に困難です。


基準を厳しくしすぎると、注文を断ることになり、売上のチャンスを逃します。逆に甘くしすぎると、万が一のときに大きな損害を受けます。また、会社の経営状態は常に変化するため、一度決めた後も定期的な見直しが欠かせません。


こうした管理業務は、多くの企業にとって重い負担となっています。


関連記事:

与信枠とは?設定をするメリットとポイントの解説

【初心者必見】与信判断のポイントと与信管理の方法を解説

代金未回収リスク

掛け払いの最大のリスクは、商品を渡したのに代金が支払われない「未回収」のトラブルです。


代金が回収できないと、単に儲けがゼロになるだけでは済みません。会社は大きな「赤字」を背負います。なぜなら、商品を売るためにかけた「仕入れ費用」や「送料」、社員の「人件費」はすでに支払われているからです。売上金が入ってこなければ、これらはすべて損失に変わります。


たった1社の未回収が起きるだけで、ほかの取引で積み上げた利益がすべて吹き飛んでしまうケースも少なくありません。


会計上は「売上」になっていても、手元に現金が入らなければ、会社は支払いができません。自分の会社も、仕入れ先への支払いや従業員の給料を払う必要があります。もし大口の取引先からの入金が遅れると、手元の現金が足りなくなり、最悪の場合は会社が黒字倒産するおそれがあります。


そして、支払いが遅れた場合、電話や手紙でお金を催促する業務が発生します。相手に支払いを強く求めるのは、精神的に大きなストレスがかかります。また、督促に時間を取られると、本来やるべき営業活動や商品開発などの仕事がストップしてしまいます。


お金が回収できないだけでなく、社員の貴重な時間が奪われてしまう点は、企業にとって見過ごせないデメリットです。


関連記事:取引先の未入金が発生したら?回収方法から予防策まで徹底解説

掛け払いのデメリットを解消するサービス

掛け払いは便利な仕組みですが、どうしても代金の未回収リスクがつきまといます。取引先が増えるにつれて、毎月の請求書発行や入金確認などの事務作業も重い負担となるでしょう。


こうした悩みを解決するために活用されているサービスが、「掛け払い代行サービス」と「売掛保証サービス」です。いずれも未回収リスク対策や与信管理の効率化を実現するサービスですが、主な目的やサービス範囲は異なります。


会社の状況に合わせて、より使いやすいほうを選びましょう。


ここでは、それぞれのサービスの特徴を詳しく解説します。

掛け払い代行サービス

掛け払い代行サービスとは、掛け払いにまつわるほぼすべての作業を代行してくれるサービスです。請求書の発行から、代金の回収、そして入金の確認まで、面倒な仕事を丸ごと任せられます。


掛け払い代行サービスを利用するメリットは、主に以下の3つです。



1.請求業務がほぼゼロになる

経理担当者にとって一番のメリットは、事務作業の負担が劇的に減ることです。


自社でやる場合、月末になると何十通、何百通もの請求書を作り、封筒に入れて送らなければなりません。そして翌月には、通帳を見ながら「A社からは入金済み、B社はまだ……」と一件ずつチェックする作業が発生します。


代行サービスを使えば、取引データを送るだけで、後の作業はすべて代行会社がやってくれます。請求書の発行も、入金の確認も、もし支払いが遅れたときの連絡も、すべて一任できます。



2.プロの目利きで「信用性」を判断してくれる

取引を始めるときに一番難しいのが、「この会社と取引しても大丈夫か?」という判断です。


知識がないまま判断すると、支払い能力のない会社と契約してしまい、後でトラブルになるおそれがあります。しかし、慎重になりすぎて審査に時間をかけすぎると、せっかくのビジネスチャンスを逃してしまいます。


代行サービスには、膨大な企業データと審査のノウハウがあります。「この会社なら大丈夫」「この会社は少しリスクがある」といった判断を、スピーディかつ正確に下してくれます。



3.経理のプロがいなくても利用できる

通常、掛け払いをミスなく管理するには、知識のある経理担当者が必要です。しかし、スタートアップ企業や少人数の会社では、専任の担当者を雇う余裕がないこともあります。


代行サービスを使えば、難しい管理はすべてプロに任せられるため、専門知識を持つ社員がいなくても、すぐに安全な取引を始められます。


関連記事:売掛金回収代行の解説 代行を利用するメリットと一般的な未回収が発生した時の流れ

売掛保証サービス

売掛保証サービスとは、主に「代金の未回収リスク」に特化した保険のようなサービスです。請求書の発行や入金確認などの事務作業は今までどおり自分たちでやりますが、もし取引先が倒産して代金が支払われなくなったときに、保証会社からお金が支払われます。


売掛保証サービスを利用するメリットは、主に以下の3つです。



1.取引先の倒産に備えられる

このサービスの最大の特徴は、リスク対策に徹している点です。普段の取引は、今までどおり自分たちで進めます。請求書も自分たちで送りますし、お客様とのやり取りも直接できます。


「事務作業は自分たちでできるけれど、万が一の倒産が怖い」という企業に向いています。取引先が倒産したり、経営が悪化して支払えなくなったりしたときだけ、損害をカバーしてくれます。



2.社内ルールを変えなくて済む

掛け払い代行サービスを使うと、相手にお金を振り込んでもらう口座が変わるため、社内のルールや案内方法を大きく変えなければなりません。


一方、保証サービスは「リスク対策」だけを追加する仕組みです。請求書の書式も、振込先の銀行口座も、今までどおりのものを使い続けられます。今の業務フローを崩さずに、安心だけをプラスできる手軽さが魅力です。



3.取引先に知られずに使える

掛け払い代行サービスを使うと、請求書を作成するのが代行会社に変わるため、取引先に「代行サービスを使っているな」と分かってしまいます。


一方、売掛保証サービスは、あくまで自分たちと保証会社との契約です。取引先には一切通知されません。


今までの関係をそのまま保ちたいと考える企業にとって、相手に知られずに利用できる点は大きなメリットです。


関連記事:売掛保証とはなにか ファクタリングとの違いと実際の利用事例をご紹介

まとめ

掛け払いとは、商品やサービスを先に受け取り、代金は後でまとめて支払う、ビジネスにおける基本的な「後払い」の仕組みです。この方法は、企業同士の「信用」によって成り立っています。


掛け払いをうまく活用すれば、毎回の支払いをなくして月1回にまとめることで「事務作業の削減」ができたり、手元の資金を使わずに仕入れができるため「ビジネスの拡大」につなげられたりと、多くのメリットを得られます。


しかし一方で、商品を渡したのに代金が支払われない「未回収」のリスクや、相手に本当に支払い能力があるかを調べる「与信管理」の手間といった、避けては通れない課題も抱えています。


こうした掛け払いのリスクを解決するために役立つのが、売掛金保証サービス「URIHO(ウリホ)」です。


URIHOは、取引先の倒産や未入金時に取引代金を代わりにお支払いするサービスです。事前に取引先に保証をかけておくことで、与信管理をしなくても安心して取引を行うことができます。また、督促業務に時間や労力を割く必要がなくなり、営業活動に集中することが可能です。


また、URIHOはすべての手続きがWeb上で完結し、スピーディに利用開始することが可能です。売掛金の回収にご不安がある場合は一度導入をご検討ください。

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売掛金の回収では、「債権」の差し押さえがもっともよく利用されます。売掛金や銀行預金などの金銭債権であれば、第三債務者(相手の取引先や銀行)から直接取り立てられるため、競売のような換価手続が不要です。ただし、相手がどのような債権を持っているかを事前に把握するのは簡単ではありません。 「不動産」は価値が高く隠しにくいため、差し押さえの対象としては有力です。競売にかければ一括で大きな金額を回収できる可能性があります。差し押さえた物件が賃貸として運用されていれば、売却せずに賃料収入を売掛金に充てる方法も選べます。一方で、競売には数十万~数百万円の予納金が必要な上、売却完了まで半年~1年以上かかるケースもあります。 「動産」は現金や貴金属であれば資金化しやすく、予納金も不動産ほどかかりません。しかし、商品や機械設備は価値が不安定で、買い手が見つからず売却できないリスクがあります。 なお、すべての財産を差し押さえられるわけではありません。生活に必要な衣類や家具、仕事に必要な道具、66万円までの現金などの「差押禁止財産」は、差し押さえ対象外です。給与については、原則として手取り額の4分の3が差し押さえ禁止とされています(手取り額が44万円を超える場合は、一律33万円が差し押さえ禁止額となります)。 差し押さえのメリット 差し押さえのメリットは、売掛金を回収できる可能性が高まる点です。裁判所が相手の財産を確保するため、財産を隠されたり勝手に売却されたりする心配がなくなります。 もう一つのメリットは、相手に強い心理的な圧力をかけられる点です。特に売掛金(債権)の差し押さえでは、相手の取引先(第三債務者)にも裁判所から通知が届きます。差し押さえの事実が取引先に知られると、信用問題に発展しかねないため、相手は早期に支払いに応じる場合があります。 相手の取引先が大企業であれば、圧力はさらに強まります。大企業の契約書には「取引相手が差し押さえを受けた場合、契約を解除できる」と定められているケースが多く、相手は主要な取引先を失いかねません。 取引先を失うおそれがあるため、差し押さえは売掛金の支払いを促す強い要因となります。 差し押さえの手順 差し押さえは、法律で定められた手順に沿って進める必要があります。 ここでは、仮差し押さえから強制執行までの流れを6つのステップに分けて紹介します。 ステップ1:相手の財産を特定する 裁判所が対象者の財産を自動的に探してくれるわけではないので、差し押さえを始める前に、相手がどのような財産を持っているか債権者が自力で調査しなければなりません。 売掛金を差し押さえたい場合は、相手がどの企業と取引しているのかを把握する必要があります。取引先の名称だけでなく、取引内容、売掛金の金額、支払期日まで分かっていると、差し押さえが無駄に終わるリスクを減らせます。 情報をもっとも集めやすいのは、長年にわたって取引を続けてきた債権者自身です。相手の事業内容や取引先の動向は、日頃のやり取りの中で自然に見えてくるものです。弁護士に調査を依頼する方法もありますが、普段の取引で得た情報と組み合わせると、より正確に財産を特定できるでしょう。 ステップ2:仮差し押さえを申し立てる 財産が特定できたら、裁判所へ仮差し押さえの申し立てを行います。 仮差し押さえは、訴訟の結果が出る前に相手の財産を一時的に凍結し、処分や隠匿を防ぐための手続きです。申し立て先は、相手や取引先の住所地、もしくは差し押さえの対象がある場所を管轄する裁判所です。 申し立て時には、売掛金の存在を裏づける契約書、請求書、取引履歴、陳述書を一緒に提出します。 仮差し押さえの申し立てには債務名義が不要で、裁判官が「確からしい」と判断できる程度の資料があれば認められます。早ければ申し立てから1~2週間で実施できるため、相手が財産を処分する前に手を打てる点がメリットです。 ステップ3:裁判所で審理を受ける 申し立て後は、裁判所で審理が始まります。例えば東京地裁の場合、申し立てから3日以内に裁判官との面談が設定されるのが通例です。 仮差し押さえの審理は、通常の裁判のように公開の法廷で両者が向き合う形式ではなく、債権者側だけが裁判官と非公開でやり取りする仕組みとなっています。相手に仮差し押さえを申し立てた事実を知られると、財産を隠されるおそれがあるからです。 審理の場では、裁判官から仮差し押さえの必要性について質問を受けたり、提出書類の訂正や補足を求められたりします。書類に不備があると裁判官から補正を求められ、その分だけ手続きに時間がかかります。申し立て前に、資料をしっかりと整理しておきましょう。 ステップ4:担保金を納付し、仮差し押さえを実施する 裁判所が仮差し押さえを認めると、債権者に担保金の供託を命じます。担保金の目安は、請求金額の10~30%程度です。例えば500万円の売掛金であれば、50万~150万円程度が目安になります。 仮差し押さえは、まだ裁判で結論が出ていない段階で相手の財産を凍結する措置です。後の裁判で「相手に支払い義務がなかった」と判断された場合、財産を凍結された相手は不当な損害を受けたことになります。担保金の納付は、そのような場合の賠償に備えるために必要とされます。 担保金の供託が完了すると、裁判所は仮差し押さえの決定を出します。売掛金を仮差し押さえした場合、まず第三債務者(相手の取引先)に「支払いを止めるように」という通知が届きます。 相手への通知は少し遅れて届く仕組みなので、先に売掛金が回収されてしまう事態を防げます。 ステップ5:債務名義を取得する 仮差し押さえだけでは、まだ売掛金を直接回収できません。仮差し押さえはあくまで「相手の財産を一時的に凍結する」措置であり、お金を受け取る権利を得たわけではないからです。 相手が仮差し押さえを受けて自主的に支払いに応じてくれれば解決しますが、そうでない場合は訴訟や支払督促、民事調停などの手続きを利用して債務名義を取得する必要があります。 注意したいのは、訴訟を起こさず放置していると、相手から仮差し押さえの取り消しを求められる可能性がある点です。相手は「起訴命令の申立て」によって、一定期間内に訴訟を起こすよう裁判所に請求できるからです。 仮差し押さえの完了後は、速やかに訴状や証拠書類の作成に取りかかり、訴訟の提起まで進めておきましょう。 ステップ6:強制執行を申し立てる 債務名義を取得したら、裁判所に強制執行を申し立てます。申し立てには、債務名義の正本、執行文、送達証明書などが必要です。執行文とは、債務名義に基づいて強制執行を許可する旨が記された文書で、裁判所の書記官や公証人に作成を依頼する必要があります。 強制執行が認められると、裁判所が相手の財産を差し押さえ、売却や取り立てによって換金し、未払いの売掛金に充てます。売掛金(債権)を差し押さえた場合は、第三債務者から直接取り立てる形になります。 仮差し押さえした財産についても引き続き強制執行に移行できるため、確実に回収を進められるでしょう。 差し押さえの注意点 差し押さえは強力な回収手段ですが、万能ではありません。費用や時間の負担が大きいため、手続きを始める前に知っておきたい注意点があります。 以下の4つのポイントを把握しておくと、手続きの見通しを立てやすくなるでしょう。 財産の特定が難しい 差し押さえでもっともハードルが高いのは、相手の財産を自力で特定しなければならない点です。相手の銀行口座がどこにあるのか、どの企業と取引しているのかは、外部からは簡単に把握できません。 2020年の民事執行法改正により「財産開示手続」が強化されるとともに、「第三者からの情報取得手続」が新設され、以前よりは調べやすくなりました。「第三者からの情報取得手続」では、銀行や証券会社、市区町村や年金事務所に対して、裁判所を通じて情報の開示を求められます。 しかし、手続きには時間がかかる上、必ずしも十分な情報を得られるとは限りません。日頃から取引先の経営状況や取引関係をしっかりと観察しておきましょう。 手間と時間がかかる 仮差し押さえの申し立てから強制執行が完了するまでには、相当な時間が必要です。仮差し押さえは早ければ1~2週間で実施できますが、その後の訴訟は判決まで数カ月~1年以上かかるケースもあります。 書類の準備や裁判所とのやり取りも多く、本業に割ける時間が減りがちです。弁護士に依頼する場合は着手金や報酬金も発生するため、回収したい金額と費用のバランスを事前に見積もっておきましょう。 少額の売掛金に対して多大な時間と費用をかけると、かえって損失が膨らむ場合もあります。 相手の財産状況によっては回収できない 差し押さえの手続きを最後まで進めても、相手に財産がなければ売掛金は回収できません。また、相手に対し裁判所から「破産手続開始決定」が出された場合には、個別の差し押さえの効力そのものが失われます。 破産手続きが始まると、裁判所が「破産管財人」を選任します。破産管財人とは、破産した相手に代わって財産の管理や処分を担当する人物で、通常は弁護士が就任します。 破産管財人が選任されると、相手の財産はすべて「破産財団」に組み込まれます。破産財団とは、破産した相手が持つ財産をひとまとめにしたもので、すべての債権者へ公平に分配するために管理されます。破産財団に組み込まれた財産には個別の差し押さえが及ばなくなるため、原則としてすでに差し押さえていた財産であっても回収できません。 また、ほかの債権者がすでに同じ財産を差し押さえている場合は、回収額が債権者の間で分配されるため、全額を取り戻すのは難しくなります。 相手の経営状態が悪化してから動き出すのでは遅い場合もあるため、異変を感じたら早めの対応を心がけましょう。 まとまった金額の担保金を用意する必要がある 仮差し押さえを利用する場合、請求金額の10~30%に相当する担保金を法務局に供託しなければなりません。 例えば1,000万円の売掛金であれば、100万~300万円の資金が必要です。 担保金の割合は一律ではなく、売掛金の証拠がどれだけそろっているか、相手が被る不利益の大きさなどを裁判所が総合的に判断して決定します。売掛金の存在を裏づける契約書や請求書がしっかりそろっている場合は10~15%程度に抑えられる傾向がありますが、証拠が不十分だと30%近くを求められる場合もあります。 訴訟が長引けば、その間は担保金が手元に戻りません。資金繰りに余裕がないときは、担保金の負担だけで経営を圧迫するおそれがあります。 仮差し押さえに踏み切るかどうかは、回収したい売掛金の金額と手元資金のバランスを見ながら、慎重に判断しましょう。 売掛金の未回収リスクを抑えるには? 差し押さえは手間も時間もかかる上、相手の財産状況次第では回収が困難になる場合があります。そもそも差し押さえが必要になる状況をつくらないことが理想です。最初から未回収を防ぐ仕組みを取り入れておけば、裁判にかかる費用や労力を丸ごと省けます。 未回収リスクを抑える方法として、「売掛保証サービス」の活用があります。売掛保証サービスとは、事前に保証会社と契約を結び、対象となる取引先の与信審査を通過しておくことで、取引先が売掛金を支払えなくなった場合に、保証会社が代わりに代金を支払ってくれる仕組みです。 取引先の倒産や支払い遅延が起きても売掛金を確実に受け取れるため、差し押さえのように長い時間と高い費用をかけて回収に動く必要がありません。本業に集中できるのが大きな利点です。 また、保証会社が取引先の信用力を審査してくれるため、新しい取引先との取引を始める際の判断材料としても役立ちます。与信管理の負担を軽減できるので、特に限られた人員で経営している中小企業にとっては心強い味方になるでしょう。 関連記事:売掛保証とはなにか メリットやデメリット、実際の利用事例をご紹介 まとめ 差し押さえは、売掛金を回収するための最終手段です。「債務名義」を取得し、裁判所に強制執行を申し立てれば、相手の財産から未払い分を回収できます。仮差し押さえを先に実施しておけば、訴訟中に財産を隠されるリスクも抑えられます。 一方で、財産の特定が難しい、手続きに時間がかかる、担保金が必要になるといった負担も伴います。相手が破産してしまえば回収の見込みが立たなくなる点も見逃せません。差し押さえに踏み切る前に、回収したい金額と手続きにかかる費用・時間を比較し、本当に採算が合うかを見極めましょう。 売掛金の未回収リスクをあらかじめ抑えたいなら、売掛保証サービスの活用がおすすめです。「URIHO(ウリホ)」は、月額の定額料金で利用できる売掛保証サービスです。取引先の支払いが遅れた場合や、倒産によって売掛金が回収できなくなった場合に、URIHOが代わりに代金を支払います。 未回収の不安を解消し、安定した経営を続けたい方は、ぜひURIHOの利用をご検討ください。 売掛金の差し押さえとは?回収の…

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