債権は不動産や商品などの売買契約を締結する際に合意内容に必ず明記される事項です。特に企業間の信用取引契約では債権回収に関する条項が最も重視されます。債権の概念を理解することは公私を問わず非常に重要といえるでしょう。
そこでこの記事では債権とはなにかという基礎知識から、債権と債券の違いや債権と債務の関係性をはじめ、おもな債権として5種の債権の内容について解説いたします。
債権とは?
債権とは、特定の人に対して金銭の支払い、物品の付与、労力の提供などの特定の行為を要求できる権利です。債権を有する人を債権者、債権者に対して特定の行為を提供する義務を負う人を債務者といいます。債権は、労力の提供や金銭の給付など、一定の行為を請求することができる権利であり、この権利や義務の帰属主体は、個人だけでなく法人も含まれます。
法定債権と約定債権とは
法定債権は、契約以外の理由、法律によって成立する債権です。これには事務管理、不当利得、および不法行為にもとづく債権が含まれ、事務管理は他人のために善意で行われる行為で特定の条件下で債権を発生させ、不当利得は契約や合意がない状況で本来得るべきでない利益を受けること、不法行為は故意や過失により他者に損害を与える行為を指します。これらの行為による損失は法定債権により損害賠償を請求できます。
対して、約定債権は、当事者同士の合意にもとづいた契約から生じる債権で、特定の義務や権利が当事者間の自由な意思決定と合意によって確立されます。法定債権と異なり、約定債権は契約や合意の存在に依存し、事務管理、不当利得、不法行為などの法律によって自動的に発生する法定債権とは区別されます。
不当利得と不法行為について
不当利得は、当事者間に契約や合意が存在しない状況で、一方が本来利益を得るべきでないにもかかわらず利益を受けることを指します。これにより利益を受けた者は、本来その利益を得るべきであった者に対して、受けた利益を返還する義務を負います。
一方で、不法行為は、故意または過失により他人に損害を与えた行為を指します。不法行為によって損害を受けた者は、損害を与えた者に対して損害賠償を請求することが可能です。この損害賠償請求権も法定債権の一形態とされます。
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債権と債券の違い
債権と債券の違いは、債権は金銭や行為の支払いを求める権利であり、債券は元本と利息の返済を約束する文書(証券)です。
債券とは、国や地方公共団体、企業などが投資家から資金を借り入れるために発行する有価証券のことです。債券には利率、利払い日、および満期の償還日が明記されています。利払い日には投資家に利子が支払われ、償還日には額面金額が払い戻される仕組みとなっています。
債券は株券(株式)とも混同されがちですが、株式は株式会社が経営資金の出資者に対して発行する証券のことです。株式は金融商品として証券取引所を通じて売買されます。株式を購入した株主は、株式会社の所有者となり、業績に応じて配当金を受け取ることができます。
また、株式には基本的に満期がなく、特殊なケースを除いてはいつでも売却できることも、債券との違いです。株券を購入することは株式会社に出資することであり、債券を購入することは、国や企業などの債券発行者に資金を貸すことといえます。
債権と債券は共に「債」という漢字を含むため、変換ミスなどで混同される例が後を絶ちません。また、債券と株券も有価証券という意味では同じですが、前述のように性質は全く違いますので、間違えないように注意しましょう。
債権と債務の関係性
先に述べたように、債権とは特定の人に対して一定の行為や給付を請求することができる権利です。一方で、債務は債権とは逆に、特定の人に対して一定の行為や給付を提供する義務のことを指します。債権を持つ者を債権者、債務を負う者を債務者といいます。
例えば、AさんがBさんにお金を貸した場合、AさんはBさんに対して貸したお金を返すよう請求できる債権者となります。一方で、BさんはAさんに対して借りたお金を返す義務を持つ債務者となります。
このように、債権と債務は相対的な概念であり、債権と債権者が発生すれば、それと同時に債務と債務者も発生します。
債権と債務の関係性は、片務契約と双務契約に分類されます。片務契約は、先のAさんとBさんのようなケースで、一方が債権者で、他方が債務者となるタイプの契約です。
対して、双務契約は契約を結んだ当事者双方が債権者であり、同時に債務者でもあるケースです。例えば、商品の購入者は販売者に対して商品を請求する債権を得ると同時に、対価としての代金を支払う義務、すなわち債務を負います。このようなケースが双務契約に該当します。
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債権の種類
債権には多くの種類が存在します。先に述べた約定債権と法定債権は、債権の発生原因にもとづいて分類されるものです。また、債権を目的別に分類する場合、選択債権、金銭債権、利息債権、特定物債権、種類債権などといった種別があります。
「債権の目的」とは、債権者が債務者に対して請求できる特定の行為や給付を指します。例えば、AさんがBさんにお金を貸した場合、AさんはBさんに対して貸したお金の返却を請求できる権利、すなわち債権を持っています。この場合、お金の返還が債権の目的となります。
選択債権
選択債権とは、債権が複数の目的の中から選べる形態の債権です。例えば、債権者が販売店にA社製の商品を発注した際、納品が不能になったケースで代替品としてB社製かC社製の商品のいずれかを受け取ることができるといった契約があります。
注意すべきは、選択債権における選択権は原則として債務者が持つものです。契約時に選択権を明示しない限り、債権者には選択権はありません。また、選択債権は種類債権とも関連があり、契約によっては種類債権として履行される場合もあります。
金銭債権
金銭債権とは、特定の相手に対して一定量の金銭の支払いを求める権利です。このタイプの債権は、その目的や性質によって4つのカテゴリーに分けられます:金額債権、相対的金種債権、絶対的金種債権、そして特定金銭債権です。
金額債権
一定の金額を支払うことを求める最も基本的な債権です。
相対的金種債権
特定の種類の通貨での支払いを要求する債権。例えば、国際商取引での対価をアメリカドルで支払う約束や、1万円を新札の千円札で提供するといったケースがこれに該当します。
絶対的金種債権
特定の種類や年代の金銭を提供することが要求される債権。例えば、昭和32年製造の10円玉5枚というような具体的な指定があります。
特定金銭債権
特定の金銭、例えば指定された銀行口座に存在する預金からの支払いなど、具体的な特定物としての金銭の支払いを求める債権です。債権管理回収業に関する特別措置法にもとづく「特定金銭債権」とは、主に銀行や貸金業者が持つ、回収可能な不良債権を指す場合もあります。
企業における債権管理の担当者や、民法に関する学習をしている方にとって、特定金銭債権の意味合いには特に注意が必要です。しかし、一般的な文脈でこれらの区分が問題になるケースは少ないと言えます。
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利息債権
利息債権とは、金銭の貸借において利息の支払いを求めることができる権利のことです。別名で利息請求権ともいいます。例えば、AさんがBさんに資金を提供した状況を考えると、Bさんは元金(本体となる貸し出し金額)とその使用期間に応じた利息をAさんに対して支払う義務があります。
この場合、AさんがBさんから元金の返済を求める権利を「元本債権」といい、利息の支払いを求める権利は「利息債権」といいます。
利息債権には、大まかに2 つのタイプが存在します。1つは「基本権としての利息債権」で、これは元本債権が存在する限りにおいて、定期的に発生する利息に関する権利です。もう1つは「支分権としての利息債権」で、これは元本債権とは別に、特定の期日ごとに発生する利息に関する独立した権利です。前者は元本債権に依存する形で存在し、元本債権がなくなると一緒に消滅します。後者は、元本債権が消滅しても存続する特性があります。
民法においては、債権者の権利を保護する観点から、元本債権に対する担保がある場合、その担保は支分権としての利息債権にも適用されると規定されています。
特定物債権
特定物債権とは、土地や中古品といった特定物を贈与や売買、交換などの契約によって引き渡すことを目的とする債権のことです。民法では、特定物債権の債務者はその物を引渡すまで善良な管理者の注意をもって保管することと、引き渡しは現状で行うことを規定しています。
したがって、保管者の瑕疵によって目的物を破損したとしても、その物を現状で引き渡せば法律的には債務は消滅します。ただし、実際に債務者が目的物を破損した場合は、社会通念上、損害賠償責任を問われることが多いです。
種類債権
種類債権とは、例えば牛乳(生乳)2000リットルというように目的物を種類や数量で示した債権のこと。またA牧場の牛乳(生乳)というように種類の範囲を制限した種類債権を制限種類債権といいます。
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まとめ
債権とは、ある人が特定の人に対して労力の提供や金銭の給付といった一定の行為を請求する権利のことをいいます。
債権には契約によって発生する約定債権と、法律によって成立する法定債権があります。
法定債権の発生原因には事務管理、不当利得および不法行為の4種があります。
- 債券は企業などが投資家から資金を借り入れるために発行する有価証券です。
- 債権と債務の関係性は片務契約と双務契約に分類されます。
- 債権を持つ者を債権者、債務を負う者を債務者といいます。
- 債権は目的別に選択債権、金銭債権、利息債権、特定物債権、種類債権に種別されます。
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