不良債権とは、企業の経営破綻や業績不振により回収が困難となった金融機関の貸出債権です。売掛債権、未収入金、立替金など、様々な形態の不良債権が存在し、これらは企業にとって重大な財務上のリスクをもたらします。この記事では、不良債権の種類とその回収方法について詳細に解説します。
不良債権とは?
不良債権とは、銀行や金融機関が企業や個人に貸し出した資金に対する債権のうち、経営破綻や業績不振などの理由で回収が困難、または不可能になったものを指します。これは、借り手の財務状況が著しく悪化し、事実上破綻している場合や、今後破綻する可能性が高い場合の債権も含まれます。
不良債権の存在は、貸し手である金融機関の健全性に重大な影響を与え、場合によっては金融システム全体の安定性を脅かすことさえあります。 そのため、不良債権の管理は金融機関にとって重要な課題であり、早期のリスク察知と適切な対策が求められます。
不良債権の種類
売掛債権
売掛債権とは受取手形や売掛金など取引先との信用取引から生じる債権のことです。商品やサービスを提供後、後日代金を回収する形式を取りますが、取引先が突然業績不振に陥ったり、倒産したりする場合、売掛債権の回収が困難になるリスクが高まります。 このリスクが顕在化した売掛債権は、回収見込みの低い「不良債権」として分類されます。不良債権化した売掛債権は、企業の財務状況に直接的な悪影響を及ぼし、収益性の低下やキャッシュフローの悪化を招くことがあります。
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未収入金
未収入金は、企業の通常の営業活動以外で発生する債権です。未収入金には、不動産の賃貸や有価証券の売却から得られる収入が含まれます。これらの収入は、契約で定められた期日までに支払われることが期待されますが、支払いの遅延や未払いが発生するリスクも存在します。特に、契約先の財務状況が悪化している場合や、景気の後退期には未収入金の回収が困難になる可能性が高まります。このように、未収入金が回収不能の状態に陥ると、「不良債権」として認識され、企業の財務報告にも影響を与えます。
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立替金
立替金とは、企業が取引先や従業員に代わって一時的に支払った費用のことを指します。この立替金が回収不能になる場合、不良債権として扱われます。例えば、取引先に代わって支払った発送費や、業務に関連する費用が回収されない場合、これらは企業にとって経済的損失となります。一方で、従業員に対して立て替えた出張旅費や交通費は、最終的には企業が負担する経費として処理されるため、不良債権には分類されません。 しかし、取引先との間で発生する立替金が未回収のままであると、企業の資金繰りに悪影響を及ぼす可能性があるため、適切な対応が求められます。
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不良債権の時効とは
不良債権には時効があり、一定の期間が経過することで、債権者が債権の請求権を失う仕組みです。これにより、長期間にわたって放置された債権は、法的に回収できなくなる可能性が高まります。不良債権の時効は、債権の種類や性質、債務者との契約内容によって異なりますが、一般的には5年または10年とされています。
例えば、企業間の取引で発生する売掛金などの債権については、通常5年で時効が成立します。一方、個人間の貸し借りにもとづく金銭債権は、時効期間が10年とされることが一般的です。さらに、場合によっては時効期間がより短く設定されることもあり、契約書や法的なルールにもとづいて確認する必要があります。
時効期間が経過すると、債務者は「時効の援用」を行うことで、債権者の請求を法的に拒否することが可能になります。これにより、債権者は回収の手段を失い、債権は事実上無価値となってしまいます。このため、債権者は時効が成立する前に、債権の回収を図るための措置を講じることが極めて重要です。
債権の時効を防ぐためには、定期的な督促や、債務者との合意に基づく支払い計画の見直しが有効です。また、時効の成立を回避するために、裁判所を通じた法的手続きを取ることも一つの方法です。これらの督促や請求をすることで、時効期間がリセットされ、債権者はさらに一定期間、債権の回収を試みることが可能になります。
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不良債権の回収方法・手順
不良債権には時効が存在し、放置すると回収が不可能になる可能性があります。早期の対応が重要であり、以下の方法と手順に従って回収を図ることが望ましいです。
メール・電話での催促
支払期日を過ぎても入金が確認できない場合、まずは相手方にメールや電話で催促を行います。適切なタイミングとしては、支払期日から3日~1週間程度が経過した頃がよいでしょう。
メールでは、支払期日を過ぎていることを簡潔に伝え、未払いの理由を確認する形で構成します。例えば、「お支払いの件について確認させていただきたいのですが…」といった柔らかい表現が効果的です。電話での催促は、メールに反応がない場合や、迅速な対応が必要な場合に有効です。この際も、相手方に圧力をかけず、状況確認を主体とした丁寧な対応を心がけます。
催促の目的は、支払いを促すだけでなく、相手方との信頼関係を維持することです。柔軟な対応策を提案しつつ、最初の催促は軽い確認に留めることで、円滑な問題解決を図ります。
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支払いがない場合の督促状送付
メールや電話での催促にもかかわらず、支払いが行われない場合、次のステップとして督促状の送付が必要です。督促状は、相手方に対して支払いの遅延が続いていることを正式に通知する重要な手段であり、相手に支払いの重要性を再認識させる効果があります。
最初の督促状は、普通郵便で送付することが一般的です。この段階では、あくまで友好的なトーンを維持しつつ、支払期限が過ぎていることを丁寧に伝え、早急な支払いを求めます。督促状には、具体的な支払期限や未払い金額を明記し、今後の対応についても簡潔に記載します。 それでも支払いが行われない場合は、内容証明郵便による催告書の送付が推奨されます。内容証明郵便は、送付した文書の内容と送付日時を法的に証明できるため、相手方に対する圧力が強まり、支払いの確実性が高まります。このステップでは、支払いが行われない場合に取るべき法的手段についても明示し、相手方にさらなる遅延が法的問題を引き起こす可能性があることを知らせます。
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最終手段としての裁判所手続き
督促状を送り、それでも支払いがない場合は、予告通り法的手段を取ります。裁判所を介した方法には主に3つあります。
支払督促
裁判所を通じて支払いを促す方法です。文書で事実確認を行い、裁判よりも簡便に実施できます。相手が2週間以内に異議申し立てをしない場合、裁判と同等の効力が発生します。裁判所が仮執行宣言を出せば、強制的な支払い措置がとれます。
調停
裁判にまでは至らないが、民事調停も法的手段です。裁判官、当事者、代理人弁護士(または第三者の調停委員)が話し合いを行います。第三者が介在することで、より円滑に解決できます。意見が合えば、裁判での和解と同等の効力を持つ調停調書が作成されます。内密に処理したい事項があれば、外部に漏らさずに進めることができます。裁判よりも費用が少なく、より円満な解決方法です。
ただし、話し合いが決裂すると裁判へと発展する可能性があります。
裁判
裁判は最後の手段です。双方に時間と費用、労力がかかりますが、支払いに応じない場合には、裁判を通じて不良債権を回収できます。
民事訴訟を想起させますが、60万円以下の金銭支払いを求める場合は「少額訴訟」が可能です。相手が異議を申し立てた場合、民事訴訟へと発展します。裁判で債権者の主張が認められると、法的効力のある命令が下され、不良債権の回収が進みます。
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債権回収会社への債権譲渡
裁判所を介さずに不良債権を回収する方法として、債権回収会社への債権譲渡があります。訴訟は時間がかかるため、企業にとっては負担が大きくなることがあります。そうした場合、債権回収会社へ依頼するのが適切です。
債権回収会社は「サービサー」とも呼ばれ、法務省の許可を受けた民間の債権管理・回収専門業者です。不良債権を買い取ってもらうことで、回収作業を行う前に現金化できるのが大きな利点です。しかし、全ての不良債権を譲渡できるわけではなく、サービサー法にもとづいて規定されたもののみが対象となります。
<サービサー法で規定されている金銭債務>
- 金融機関等が有する貸付債権
- リース・クレジット債権
- 資産の流動化に関する金銭債権
- ファクタリング業者が有する金銭債権
- 法的倒産手続中の者が有する金銭債権
- 保証契約に基づく債権
- その他政令で定める債権
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まとめ
不良債権は、企業の経済的困難により回収が難しい貸出債権であり、売掛債権、未収入金、立替金などがあります。これらの債権は企業の財務に重大な影響を及ぼし、効果的な管理と回収が必要です。回収方法は、催促から督促状の送付、裁判所手続き、さらには債権回収会社への譲渡などがあります。これらの手法を適切に利用することで、企業は財務リスクを最小限に抑え、経済的安定を図ることが可能です。
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