経営不振はどの企業でも訪れる可能性があるリスクです。この記事では、経営不振の原因からその具体的な対策、財務諸表について解説をいたします。経営者はもちろん、起業を目指す方にとっても、企業経営の基盤を強固にするためのガイダンスとして、役立つでしょう。
経営不振とは?
経営不振とは、企業が安定した経営を維持できず、さまざまな財務指標で問題が顕在化している状態を指します。具体的には、売上の減少や利益の低迷、収益性の悪化、そしてキャッシュフローの圧迫などが見られる状況を意味します。
経営不振の要因は一つに絞ることはできません。短期間で解消可能な一時的な要因もあれば、長期的な構造的問題に起因するものもあります。例えば、市場環境の急激な変化や、新たな競合の出現による競争激化、さらには内部での経営判断の誤りや戦略の不備などが原因としてあげられます。また、外部環境の変動、例えば経済の低迷や規制の強化、天災などの不可抗力も、企業を経営不振に追い込む要因となり得ます。
さらに、経営不振が長期化すると、企業の存続そのものが危機にさらされるリスクが高まります。経営不振の状態が続くと、資金調達が困難になり、設備投資や新規事業への展開が制限され、さらには人材の流出など悪循環に陥ることがあります。そのため、経営不振が兆候として現れた際には、速やかに原因を分析し、適切な改善策を講じることが重要です。こうした対応を早期に行うことで、企業は経営不振からの脱却を図り、再び成長軌道に乗る可能性を高めることができます。
経営不振になる原因
経営不振になる原因は単純で1つに決まるものではありません。様々な要因や環境が重なり、起こることが多いですが、いくつかの原因について解説いたします。
資金繰りの悪化
取引先の倒産は、自社の資金繰りを悪化させるだけでなく、経営全体に深刻な打撃を与える可能性があります。特に主要な取引先が倒産した場合、その影響で自社も共倒れに陥る連鎖倒産のリスクがあります。
主要取引先は、自社のビジネスにとって不可欠なパートナーですが、どれだけ安定しているように見えても、相手の経営状況を完全に予測することは困難です。そのため複数の取引先とバランスの取れた取引関係を築くことが重要です。これにより、1つの取引先が倒産しても、他の取引先からの売上でカバーすることが可能となり、経営の安定性が高まります。
また、取引先の信用リスクを事前に把握するための信用調査を定期的に実施することも有効です。万が一の事態に備えて、売掛保証や保険を利用することも検討するとよいでしょう。
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取引先の倒産
取引先の倒産は、資金繰りの悪化のみならず、自社の経営に深刻な影響を及ぼす場面があります。特に主要な取引先の倒産は、極端な場合共倒れのリスクをもたらすことが考えられます。その取引先が売掛金の大部分を占めていた場合、支払いが滞ることで資金の流入が途絶える恐れが生じ、結果として自社の支払い能力にも影響が出ることが懸念されるでしょう。
主要取引先は自社にとってありがたい存在ですが、どれだけ大きな企業であってもその経営状況は予測が難しいものです。このようなリスクを緩和するためには、1つの大口取引先に依存するのではなく、複数の取引先との関係を築いておくことが、経営の安定に資するといえるでしょう。
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新事業などへ投資をして回収できない
経営が順調である状況下でも、自社の経営が危機に瀕することは少なくありません。特に、既存の収益源から得た利益を新事業の展開にあてた場合、そのリスクは高まります。新事業の立ち上げには、新設備の導入、人材の確保、研究開発、製造、マーケティングなど、多岐にわたる初期投資が必要です。
新事業が順調に成長するまでの間、支出が増加し、一時的に業績が悪化することは珍しくありません。十分な資金繰りが保たれ、業績が黒字に戻るのであれば問題は生じませんが、予期せぬ赤字が長引くと経営危機が迫ることも考えられるでしょう。
新事業への投資を検討する際、成功への道筋や見通しを策定することは必須ですが、その事業が予期せぬ困難に直面した時のリスク対策や撤退戦略を事前に計画しておくことも、経営の安定性を保つ上で欠かせません。
経営不振にならない為の対策
自社は経営不振にならないだろうと思っていても、どの会社がいつどのような形で経営が悪化し、経営不振になるかはわかりません。経営不振になる原因を取り除いて、日頃から対策を取っておくことは大変重要です。これを行えば絶対経営不振にならない、という必勝法はありませんが、リスクヘッジしておくことは企業にとって必須でしょう。
資金繰りの見直し
資金繰りの見直しは、経営不振を未然に防ぐために最も優先すべき重要な対策です。資金繰りが悪化する主な原因は、業績の低下によるものが大部分を占めています。売上の減少や利益率の低下が続くと、企業は日々の運転資金の確保が難しくなり、資金繰りに大きな支障をきたすことになります。しかし、業績悪化以外にも、後述する予算管理の不備や過度な借入金依存、急激な投資拡大などが資金繰りの悪化を招く要因となり得ます。
そのため、経営が順調に見えている時であっても、定期的に資金繰りを見直し、問題がないかを確認することが不可欠です。これには、売上予測の精度向上や支出の厳密な管理、さらにはキャッシュフローの健全性を維持するための長期的な資金計画の策定が含まれます。資金繰りの見直しを適切に行うことで、経営の安定性を高め、予期せぬ経営危機を防ぐことが可能となります。
予算管理や計画の甘さ
健全な資金繰りを維持するためには、綿密な計画立案と予算管理が不可欠です。企業の支払いタイミングを取引先からの売掛金回収に依存している状況は、リスク要因として特に注意が必要です。売掛金が期日通りに回収できないと支払いが滞り、結果として自社の信用が損なわれる可能性があります。これは、取引先との関係に悪影響を与え、将来的なビジネスチャンスを失うリスクも伴います。
リスクを軽減するためには、債務管理を徹底し、売掛金回収の遅れに備えた資金計画を策定することが必要でしょう。売掛金年齢表の活用などにより、回収期間を正確に把握し、リスクを視覚化することで、資金計画の精度を高めることが可能です。
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為替や金利などのリスク
輸出入を行っている企業にとって、為替や金利の動向は売上に直結する重要な要素です。円の価値や原材料のコスト変動は、製品の価格設定や輸出入戦略に大きな影響を与えるため、常に市場の動向を監視し、適切な対策を講じることが必要です。さらに、融資の条件によっては金利変動リスクを負うこともあり、金利上昇時に返済負担が増加するリスクに備える必要があります。
売掛金の回収時期と買掛金の支払い時期の管理
経営上の収益が確保されているにも関わらず、キャッシュフローの問題から経営危機を迎える事態も存在します。これは、買掛金の支払いタイミングが売掛金の回収タイミングよりも早い場面で特に起こりやすいリスクです。急激に事業が拡大する中、投資が増える一方でその資金調達を取引先からの売掛金に依存している場合、このリスクが高まります。従って、キャッシュフローの適切な管理とバランスが不可欠となります。
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売掛金の回収や保証
資金繰りの見直しのところでも触れましたが、売掛金の回収は自社にとって重要なことです。回収時期が遅れることが自社の売上だけでなく、投資や買掛金の支払いにも影響があるためです。『売掛金が回収できない=自社のサービスや商品だけを提供し、代金が支払われない』ということなので、自社の大損失となってしまいます。
売掛金の回収時期を管理し、回収できていない場合は取引先に催促をしましょう。また、売掛金を自社で回収するのは催促を含めて手間のかかる業務です。この部分を一手に引き受けてくれるのが代金回収代行サービスの会社です。自社で時間が取れない、人員不足で売掛金関連に人員を回せない場合などは利用すると良いでしょう。
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業務効率化や顧客からのフィードバックを受け、サービスの見直しをする
資金が不足している場合は経営不振に直結します。様々な要因はありますが、自社の業務の効率化をはかる、自社製品やサービスを見直し、顧客のニーズに答える、といったことを日頃から行うことで、売上は向上し、適時な売掛金の回収が可能となります。これにより、健全な資金繰りが確保され、経営の安定が期待できます。
商品の開発や顧客の期待に応えるサービスの提供、そして業務の効率化は、理論上ではシンプルに聞こえるかもしれませんが、日常業務と並行しての取り組みは容易ではありません。企業の規模や文化によりますが、専門の部署を設ける、あるいは社員全員の意見や提案を収集・活用することで、各員の負担を軽減しながら、共同での売上向上への取り組みが実現できます。
財務諸表とは?
財務諸表は、企業の財務的な状況や業績を示す公式な記録のことを指します。特に、紹介する損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書を読み解くことで、会社の経営状況も読み解くことができるでしょう。
- 損益計算書
企業の一定期間(例: 1年や四半期)の収益と支出を示し、最終的な利益や損失を明らかにします。売上高、販売費及び一般管理費、営業利益、経常利益、純利益などの主要な項目が含まれます。 - 貸借対照表(バランスシート)
ある時点での企業の資産、負債、そして資本の状態を示します。流動資産、固定資産、流動負債、固定負債、株主資本といった要点があげられます。 - キャッシュフロー計算書
一定期間のキャッシュの収入と支出を詳しく表し、営業、投資、財務の各活動からのキャッシュフローの変化を追っています。
これらの財務諸表は、他社の経営の健全性や競争力を評価する際の鍵となる情報を提供します。特に、公開企業ではこれらの情報は定期的に開示され、投資家や業界関係者がその経営状況を分析するために活用されます。
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まとめ
経営不振は様々な原因で訪れ、その対策は多岐にわたります。資金繰りの見直し、業務効率化、そして顧客のニーズへの的確な応答が必要です。さらに、「財務諸表」を適切に読み解くことで、企業の健全性を判断し、経営の方向性を再確認することが重要です。日々の経営活動において、これらの要点を意識し継続的に取り組むことが、経営の安定と成長への道となるでしょう。
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