企業間取引(BtoB)において、ビジネスを拡大する上で重要な決済方法が「掛取引(かけとりひき)」です。多くの企業が当たり前のように導入している掛取引ですが、仕組みや正しい運用方法を理解していないと、深刻な経営危機を招くおそれがあります。
この記事では、掛取引の基本的な仕組みやメリット・デメリット、具体的な取引の流れ、掛取引で避けては通れない「未回収リスク」への備え方について解説します。
掛取引とは?基本的な仕組みや関連用語
掛取引とは、商品やサービスの提供を先に済ませ、代金は後日(月末締め・翌月末払いなど)まとめて請求・支払いする取引形態です。
ここでは、基本の仕組みや、混同しがちな関連用語との違いを整理します。
掛取引の基本的な仕組み
掛取引では、売り手と買い手の間であらかじめ「締め日」と「支払期日」を取り決めます。例えば「月末締め・翌月末払い」であれば、4月1日~30日に発生した取引の合計額を、5月末にまとめて精算する流れです。
売り手側は代金を受け取る権利として「売掛金」を帳簿に計上し、買い手側は支払い義務として「買掛金」を計上します。
締め日から支払期日までの期間は「支払いサイト」と呼ばれ、業種にもよりますが30~60日に設定されるケースが多いでしょう。中には「月末締め・翌々月末払い」のように支払いサイトが60日を超える取引もあります。
ただし、下請法の対象となる取引では、「給付の内容を検査するかどうかを問わず、物品等を受領した日(役務提供日)から起算して60日以内」に支払期日を定める義務があります。これを超える設定は法違反となるため、厳格な注意が必要です。また、サイトが長いほど売り手側の資金が拘束される期間も延びる点にも注意しなければなりません。
個人の買い物に置き換えると、クレジットカードの仕組みに近いイメージです。買い物のたびに現金を渡すのではなく、1カ月分をまとめて翌月に引き落とす点が共通しています。
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現金取引との違い
現金取引は、商品やサービスを提供するたびに代金をその場で受け取る方法です。
掛取引との主な違いは以下のとおりです。
| 項目 | 掛取引 | 現金取引 |
| 支払いタイミング | 後日まとめて | 取引ごとに即時 |
| 請求書の発行 | 月1回 | 毎回 |
| 未回収リスク | あり | なし |
| 事務作業の手間 | 少ない | 多い |
企業間では月に何度も取引が発生するため、毎回精算する手間を省ける掛取引が標準的な決済方法として定着しています。
前払いとの違い
前払いは、商品やサービスを提供する前に代金を受け取る方法です。売り手にとっては代金を確実に回収できる反面、買い手は納品前に資金を用意しなければなりません。
掛取引は前払いと正反対の性質を持ちます。買い手の資金負担が軽くなる代わりに、売り手が未回収のリスクを負う構造です。
取引関係を始める際に、どちらの決済方法を選ぶかは、取引先との信頼関係や取引金額によって判断する必要があるでしょう。
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掛取引を導入する際の流れ・手順
掛取引を安全かつスムーズに開始するためには、正しい手順を踏む必要があります。
ここでは、一般的な取引の流れを5段階に分けて解説します。
1.与信審査の実施と取引条件の決定
取引先の財務状況や経営体制を調査し、与信限度額(売掛金の上限額)と支払いサイトを決定します。信用調査会社のレポートや取引先の決算書を参考にするのが一般的です。
与信審査を疎かにすると、支払い能力のない取引先との掛取引を始めてしまい、代金を回収できなくなるおそれがあります。審査の段階で不安がある場合は、取引限度額を低めに設定するか、前払いでの取引を検討しましょう。
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2.契約の締結
契約書の取り交わしを省略すると、支払いトラブルが起きた際に対応が難しくなるため、必ず書面で合意を残しておきましょう。
契約書には、締め日・支払期日・取引限度額・支払い方法などを記載します。支払いが遅れた場合の遅延損害金や、契約解除の条件についても明記しておくと、未払いの抑止力になるでしょう。
3.商品・サービスの提供
納品を済ませたら、帳簿に売上と売掛金を計上します。
納品書や受領書を取引先から受け取り、記録として保管しておきましょう。取引先ごとに売掛金の残高が分かるよう、補助元帳を整備しておくと残高の見落としを防げます。
4.請求
締め日で取引金額を集計し、請求書を作成して送付します。請求書には取引内容・金額・支払期日を漏れなく記載しましょう。
5.支払い
支払期日までに入金されたか確認します。未入金があれば、速やかに取引先へ連絡して対応しましょう。
入金額と請求額に差異がないか、売掛金の残高と突き合わせての確認も忘れないでください。

掛取引を導入するメリット・デメリット

ここでは、掛取引を導入するメリットとデメリットをそれぞれ解説します。
メリット①:経理業務・請求業務が効率化する
現金取引の場合、取引が発生するたびに請求書を発行し、入金を確認しなければなりません。月に10回の取引があれば、請求書も10枚必要です。
掛取引なら、月1回のまとめ処理で完了します。請求書は1枚で、入金確認も月に1度で済むので、経理担当者の負担は大幅に軽減されるでしょう。
メリット②:売上拡大のチャンスが広がる
「今月は手元資金が足りないが、来月なら支払える」という買い手とも取引を始められます。
現金取引だけに限定していると逃してしまう商談も取り込めるため、売上を伸ばす余地が広がるのは大きなメリットです。
メリット③:取引先の範囲が広がる
買い手にとって、掛取引に対応している企業は仕入れ先として魅力的に映ります。仕入れのたびに現金を用意する必要がないからです。
結果として、売り手は新規取引先を獲得する機会が増えていきます。
デメリット①:未回収リスクが発生する
掛取引では、商品を納品してから代金を受け取るまでにタイムラグが生じるのが特徴です。その間に取引先が倒産したり資金難に陥ったりすると、売掛金を回収できなくなります。
金額が大きければ自社のキャッシュフローに致命的な打撃を与え、最悪の場合は連鎖倒産につながる危険もあるでしょう。
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デメリット②:督促業務の負担が大きい
支払いが遅れた取引先に対しては、電話やメール、内容証明郵便での催促が必要です。それでも回収できなければ法的手続きに進む場合もあり、時間・費用の両面で経営を圧迫します。
督促に追われれば、本来の営業活動に集中する時間も削られるでしょう。少額の売掛金であっても、督促にかかる労力を考えると回収を断念せざるを得ないケースもあります。
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デメリット③:与信管理をしなければならない
取引先の信用状態は常に変化するため、定期的な調査と与信限度額の見直しが求められます。取引先が増えるほど管理にかかる工数も膨らみ、人手の限られた中小企業にとっては大きな負担です。
与信管理の体制が不十分なまま掛取引の件数だけ増やしてしまうと、リスクが見えないまま売掛金が膨らむおそれがあります。
「掛取引の適正割合」と「与信管理」の重要性と限界
掛取引を安全に運用する上で企業として取り組むべき事項が、「掛取引の適正割合のコントロール」と「与信管理」です。
ここでは、それぞれの考え方と、運用上の限界を解説します。
掛取引の適正割合という考え方
掛取引の適正割合に、明確な業界基準や数値目安はありません。ただし、特定の企業への売掛金が集中している状態は危険です。仮にその1社が倒産すれば、自社も連鎖的に資金繰りが悪化し、共倒れになるリスクが跳ね上がります。
例えば、売上の80%を1社からの掛取引に依存していた場合、その1社が支払い不能になった時点で自社の資金繰りは一気に行き詰まるでしょう。
適正割合を意識する上で、以下のポイントを定期的にチェックしましょう。
- 売上の大半を1社に依存していないか
- 売掛金の合計額が自社の月商を大幅に超えていないか
- 特定の取引先だけ回収サイトが長期化していないか
取引先や決済方法を分散させ、リスクの偏りを防ぐ姿勢が経営の安定につながります。
与信管理の設定と限界
掛取引では、取引先ごとに与信限度額を設定し、売掛金が一定額を超えないよう管理します。与信審査の際は、取引先の決算書や信用調査レポートを確認し、格付けに応じた限度額を設定するのが一般的です。
しかし、与信管理を徹底していても、未回収リスクを完全に防ぐのは困難です。審査の仕組みに以下のような限界があるからです。
- 取引先の経営悪化は突然起きる場合があり、決算書だけでは事前に察知しきれない
- 中小企業では審査の専門部署を置く余裕がなく、チェックが形式的になりがち
- 長年の付き合いがある取引先ほど、審査が甘くなる傾向がある
与信管理はリスクを減らす手段であって、リスクをゼロにする手段ではありません。与信管理の限界を認識した上で、万が一に備える仕組みを別途用意しておく必要があるでしょう。
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まとめ
掛取引は、BtoBビジネスを拡大するために必要な決済手段です。しかし同時に、「未回収リスク」を常に抱えています。与信管理や適正割合のコントロールはリスクを減らす有効な手段ですが、自社だけの取り組みには限界があり、リスクを完全に排除するのは困難です。
だからこそ、未回収リスクへの備えを外部に任せるという考え方が重要になります。
売掛保証サービス「URIHO(ウリホ)」は、月額定額制で未回収リスクに備えられるネット完結型のサービスです。URIHOが事前に取引先の与信審査を行うことで、倒産や1カ月以上の支払い遅延が発生した際に代金を保証します。未回収の不安や督促のストレスから解放され、営業担当者は売上を伸ばす業務だけに集中できるでしょう。
掛取引のリスクを軽減し、安定的にビジネスを拡大したい方は、ぜひ一度URIHOの導入を検討してみてください。
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