建設業界は、工事が終わってから代金が入ってくるまでの期間が長く、資金繰りが苦しくなりがちです。材料費や外注費の支払いは先にやってくるため、「売上はあるのに手元の現金が足りない」というジレンマは、多くの経営者様が抱える悩みです。
このような場面で役に立つのが、お手持ちの請求書を活用して現金を準備する「ファクタリング」です。借金を増やさずに資金調達ができるため、建設業での利用が増えています。
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この記事では、建設業でファクタリングが適している理由やメリット、注意点、失敗しないファクタリング会社の選び方について解説します。
ファクタリングが建設業に適している理由
建設業には、ほかの業界とは異なる資金繰りの問題があります。そのため、早期に資金を確保できるファクタリングが積極的に活用されるケースが多いです。
ここでは、建設業界でファクタリングがよく活用される理由を解説します。
請負契約が多い
建設業の仕事の多くは「請負契約」で成り立っています。これは、「工事を完成させること」を条件に報酬が支払われる契約です。
請負契約には、以下のような特徴があります。
- 着工から完成まで数カ月~数年かかる
- 工事が終わるまで、売上が確定しない
- 完成後も請求から入金までタイムラグがある
小売業のように商品を渡してその場で現金を受け取る商売とは異なり、建設業は「働き始めてからお金をもらうまで」に長い時間がかかります。この契約形態が、資金繰りを厳しくする主な要因の一つとなっています。
支払いサイトが長い
工事が無事に終わり、請求書を出しても、すぐにお金が入ってくるわけではありません。 建設業界には「支払いサイト」と呼ばれる商習慣があり、請求から実際の振込までに長い期間が空くことが普通です。
建設業界の支払いサイトは、「2カ月」「3カ月」「4カ月」などに設定されることが多いです。特に、元請け企業が大手であればあるほど、支払いサイトは長くなる傾向があります。
「帳簿上は黒字で売上も立っているのに、銀行口座には現金がない」という状態は、この入金の遅さが原因で起こります。
関連記事:支払いサイトとは 支払いサイトの種類とキャッシュフローについてもあわせて解説
材料や外注費などの立て替えが必要
入金を待っている間も、現場は動いています。工事を進めるためには、多くの費用を先出ししなければなりません。
主な費用は、以下のとおりです。
- 材料費:木材、コンクリート、鉄筋などの資材購入費
- 外注費:鳶、内装、電気など、協力会社への支払い
- 人件費:職人の日当や給料
- 経費:重機のリース代や燃料費
これらは、元請けからお金が入ってくる前に支払い期限が来ます。つまり、数カ月分の運転資金を自社で立て替えなければなりません。手元の資金に余裕がないと、次の現場の資材が買えなくなったり、外注先への支払いが遅れたりするおそれがあります。
建設業におけるファクタリングのメリット
建設業ならではの資金問題を解決する手段として、ファクタリングが選ばれています。
銀行融資とは異なる特徴を持つファクタリングには、建設業にとって多くのメリットがあります。
ここでは、主なメリットを5つ紹介します。
すぐに資金調達ができる
ファクタリング最大の強みは、現金を手にするまでのスピードです。
銀行融資の場合、審査から実行までに数週間から1カ月ほどかかります。しかし、材料費や来週の給料日が迫っているとき、長期間待つことはできないでしょう。
ファクタリングであれば、申し込みから最短即日で現金を調達できる場合があります。
急な機械の故障や、天候不順による工期の遅れで資金が必要になったときでも、すぐに手元の現金を増やせるので、現場を止めずに済みます。
関連記事:資金調達の種類を解説 経営難に陥る前にできる対策もあわせて紹介
負債にならない
ファクタリングは「借金」ではありません。あくまで、会社が持っている売掛金(請求書)を売却して、予定より早く現金化する取引です。
そのため、通常は決算書の「負債」の項目が増えることはありません。ただし、契約条件によっては償還請求権が設定される場合があり、その場合は例外となります。
「これ以上借金を増やしたくない」「決算書の見栄えをよくしておきたい」という経営者にとって、大きなメリットといえます。
審査に通りやすい
銀行融資の審査では、自社の経営状態が厳しくチェックされます。一方でファクタリングの審査では、「売掛先(元請け企業)の信用力」がもっとも重視されます。
例えば以下の条件がそろっていれば、たとえ自社が赤字決算や税金滞納中であっても、審査に通る見込みは十分にあります。
- 元請け企業が大手や公的機関である
- 売掛金の支払いが遅れずに続いている
- 工事が完了しており、請求額が確定している
建設業は元請けが信用力のある企業であることが多いため、他業種に比べて審査に通りやすいといえます。
大型案件を受注しやすい
大きな工事を受注すると、そのぶん事前の材料費や外注費なども大きくなります。「仕事は受けたいけれど、先立つお金がないから断ろうか…」と悩む経営者は少なくありません。
ファクタリングを活用すれば、手持ちの請求書を現金化して、新しい現場の着手金や資材購入費に充てることができます。資金不足を理由にビジネスチャンスを逃すことなく、積極的に大きな案件に挑戦できます。
元請け会社の倒産リスクを軽減できる
建設業界では、元請け企業の倒産による「連鎖倒産」が後を絶ちません。工事をしたのに、元請けが潰れてしまえば、代金は回収できなくなります。
多くのファクタリング契約には、「償還請求権なし」という条件がついています。これは、「万が一、売掛先が倒産して代金が回収できなくなっても、利用者が責任を負わなくてよい」というものです。
ファクタリングを利用することは、単なる資金調達だけでなく、未回収リスクをファクタリング会社に移転する「保険」のような役割も果たします。特に経営が不安定な元請けとの取引では、自分の会社を守るための有効な手段となります。
関連記事:連鎖倒産とは? 連鎖倒産の起こる原因と回避方法の解説

建設業におけるファクタリング会社の選び方

ファクタリング会社は数多く存在します。しかし、どこでも同じサービスを提供しているわけではありません。建設業は、扱う金額が大きく、入金までの期間も特殊です。
そのため、自社の状況に合わない会社を選んでしまうと、手数料で大きく損をしたり、必要なときに現金が間に合わなかったりするおそれがあります。
ここでは、建設業の経営者が会社を選ぶときに見るべき6つのポイントを整理します。
手数料の高さ
ファクタリングを利用する際、もっとも注意すべきなのが手数料です。
手数料は、受け取る現金の額に直結します。手数料が高すぎると、せっかく資金調達をしても手元に残るお金が減り、かえって資金繰りを悪化させる原因になります。
手数料の相場は、契約の方法によって大きく2つに分かれます。
2社間ファクタリング(相場:8~18%)
利用者とファクタリング会社の2社だけで契約する方法です。手数料は高めですが、スピーディーに現金化できます。
3社間ファクタリング(相場:2~9%)
売掛先(元請けなど)を含めた3社で契約する方法です。売掛先の承諾が必要ですが、手数料は安く抑えられます。
「とにかく急ぎだから」といって、手数料が相場よりも高い業者を選んでしまうと、その工事が赤字になるおそれがあります。事前に見積もりを出してもらい、手数料が適正かどうかを確認してください。
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買取限度額の高さ
建設業では、一つの現場の請求額が数千万円から億単位になることも珍しくありません。 そのため、ファクタリング会社が「いくらまで買い取れるか(買取限度額)」を確認することが大切です。
小規模なファクタリング会社の場合、資本金が少なく、買取限度額を「1,000万円まで」や「500万円まで」と低めに設定していることがあります。一方で、銀行系や大手資本のファクタリング会社であれば、数億円規模の買取に対応しているところもあります。
大きな工事を受注する予定がある場合は、上限金額に余裕のある会社を選んでおくと安心です。
審査の通りやすさ
銀行融資の審査に落ちてしまった場合でも、ファクタリングなら利用できるケースは多々あります。ファクタリングの審査で重視されるのは、「利用者の経営状態」よりも「売掛先(元請け企業)の信用力」だからです。
売掛先が大手ゼネコンや公共機関の場合だと、回収できる確実性が高いため、審査に通りやすいです。一方で、売掛先が小規模で経営が不安定な場合は、回収リスクが高いと判断され、審査が厳しくなる場合があります。
建設業は、元請け企業の信用力が高い傾向にあるため、基本的には審査に有利な業界です。ただし、会社によって審査基準は異なります。「赤字決算でもOK」「税金滞納があっても相談可」と明記している会社であれば、より柔軟に対応してくれるでしょう。自社の状況に合わせて、相談しやすい会社を選ぶことが重要です。
関連記事:審査なしのファクタリングとは 利用の危険性とファクタリングに審査が必要な理由
資金化までの速さ
「明日の材料費の支払いに間に合わせたい」「職人への給料支払日まであと2日しかない」
建設業の資金繰りは、時間との勝負になる場面がよくあります。そのため、申し込みから入金までのスピードは非常に重要です。
入金スピードは、契約の種類によっても異なります。
- 2社間ファクタリング:即日~3日程度
- 3社間ファクタリング: 1~2週間程度
最近では、申し込みから契約までをすべてインターネット上で完結できるサービスが増えています。これなら、書類を郵送したり、店舗へ出向いたりする手間が省けるため、数時間で現金化できる場合もあります。
現場を空けられない場合には、オンライン対応の会社がおすすめです。
取引先に知られるか
取引先に知られずに利用したい場合は、「2社間ファクタリング」に対応している会社を選んでください。この方法なら、ファクタリング会社と自社のやり取りだけで完結するため、元請け企業に通知が行くことはありません。
一方で、「3社間ファクタリング」を選ぶと、元請け企業に対して「売掛金を譲渡します」という通知をし、承諾をもらう必要があります。手数料は安くなりますが、取引先に知られるという点は避けられません。
今後の関係性を守ることを優先するなら、多少手数料がかかっても2社間ファクタリングを選ぶのが無難です。
建設業での導入実績の多さ
ファクタリング会社にも「得意な業界」と「不慣れな業界」があります。建設業での実績が豊富な会社を選ぶことを強くおすすめします。
建設業界は、「支払いサイトが長い」「天候によって工期が延びることがある」といった特徴があります。建設業に詳しくない担当者だと、こうした事情を理解してもらえず、「入金日が確定していないなら買い取れません」と断られたり、審査に時間がかかったりすることがあります。
一方で、建設業専門のプランがある会社や、実績が豊富な会社であれば、話がスムーズに通じます。「注文書だけの段階で相談に乗ってくれる」「工期の遅れを考慮してくれる」といった柔軟な対応も期待できます。
ホームページなどで建設業での取り扱い事例があるかを確認してみてください。
建設業におけるファクタリングの注意点
便利なファクタリングですが、メリットばかりではありません。仕組みを正しく理解せずに利用すると、かえって資金繰りが苦しくなったり、トラブルに巻き込まれたりするおそれがあります。
自社を守るために、以下の5つのポイントを必ず押さえておいてください。
手数料が発生する
ファクタリングは、売掛金を買い取ってもらうサービスです。そのため、利用には必ず手数料がかかります。本来であれば、入金日まで待てば満額受け取れるはずのお金が、手数料の分だけ減ってしまうということです。
もし、利益率が低い現場で手数料の高いファクタリングを使ってしまうと、利益がすべて吹き飛び、場合によっては赤字になってしまうおそれがあります。
「手数料を引かれた後、いくら手元に残るのか」を計算し、採算が合うかどうかを慎重に判断する必要があります。
売掛金の未回収リスクが発生する
契約内容によっては、売掛先(元請け企業)が倒産した場合に、利用者がその代金をファクタリング会社へ返さなければならないケースがあります。これを「償還請求権」といいます。
建設業界は連鎖倒産のリスクがつきものです。「手数料が安いから」という理由だけで「償還請求権あり」を選んでしまうと、万が一のときに借金を背負うことになりかねません。
契約書がどのような条件になっているか、必ず確認してください。
継続的に使うと、利益が減少する
ファクタリングは、あくまで「急な資金不足」を補うための一時的な手段です。毎月のように利用していると、そのたびに手数料が引かれ続け、会社の体力が削られていきます。
例えば、100万円の売掛金を手数料15%で現金化すると、手元に入るのは85万円です。 これを毎月繰り返すと、年間で180万円もの手数料を支払うことになります。これは、本来得られるはずだった大切な利益を捨てているのと同じです。
常にお金が足りない状態が続いているのであれば、ファクタリングに頼り続けるのは危険です。
悪質業者に注意する
残念ながら、ファクタリング会社を装った悪質な業者も存在します。「誰でも即日現金化」といった甘い言葉で勧誘し、法外な手数料を請求してくる手口があります。
以下のような特徴がある業者には注意が必要です。
- 手数料が相場を大きく超えている
- 契約書の控えを渡してくれない
- 担保や保証人を求めてくる
- 「今すぐ契約しないと間に合わない」とせかしてくる
こうした業者と関わると、高金利の貸しつけと同じ状態になり、経営が破綻してしまいます。
会社概要や実績、口コミなどをくまなく確認し、信頼できる業者を選ぶようにしてください。
根本的な課題解決につながらない
ファクタリングは、いまある請求書を「早めに受け取る」だけのサービスです。売上そのものが増えるわけでもなければ、経費が減るわけでもありません。
赤字が続いている場合や、支払いサイトの長さが原因で資金繰りが苦しい場合、ファクタリングを使ってもそれは「一時しのぎ」にしかなりません。翌月にはまた同じように資金不足に陥るおそれがあります。
本当に経営を立て直すためには、以下のような取り組みが必要です。
- 元請けとの交渉で支払いサイトを短くしてもらう
- 無駄な経費を削減して利益率を上げる
- 長期的な銀行融資を受けて運転資金を確保する
ファクタリングは「緊急時の切り札」として使い、依存しすぎないように心がけましょう。
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URIHOの『建設企業様向け保証プラン』について
弊社では、建設業界特有の事情に合わせた専用プランを用意しています。本プランは、取引先の倒産等による「代金の未払い」を保証するサービスです。
契約書がそろいにくい段階でも審査ができたり、現場ごとの利用ができたりと、柔軟な対応が特徴です。
ここでは、具体的な利用手順や費用について紹介します。
プランの概要
一般的な保証サービスは、年単位の契約が必要だったり、すべての取引先を保証対象にする必要があったりします。しかし、本プランは建設業の使いやすさを第一に考え、以下のような特徴があります。
現場ごとのスポット利用ができる
年間契約は不要です。「この現場だけ保証をかけたい」「初めて取引する元請けだけ心配だ」といった場合に、現場単位で無駄なく利用できます。
保証限度額が出やすい
弊社のほかのプランと比べて、高い保証限度額が出やすい傾向があります。材料費や外注費が高額になりがちな建設業の工事でも、十分な保証を受けられるよう配慮しています。
柔軟な審査基準
従来のサービスと比較して、必要書類を簡素化しています。また、弊社の他プランと比べても保証限度額が出やすい傾向にあるため、金額の大きな工事でも安心してご相談ください。
お申し込みに必要な書類一覧
本プランでは、契約書などの書類作成が遅れがちな業界の慣習を考慮し、手元にある資料で審査ができるようにしています。
以下のいずれかの書類(押印済み)をご用意ください。
- 契約書
- 注文書
- 注文請書
- 発注書
もし上記の書類をご用意できない場合は、以下の資料で代替可能です。
- LINEのトーク履歴
- メールのやり取り
※「やり取りの相手」「いつ」「誰が」「何の工事をするか」が明確に分かるものに限ります。
お手続きと保証の流れ
申し込みから保証開始までの手順を解説します。
1.審査の申し込み
まずは、取引先の審査を申し込みます。必ず「着工日まで」に審査の申し込みを済ませてください。審査には通常2営業日ほどかかります。
2.保証の申し込み
審査に通ったら、実際に保証を申し込みます。期限は「着工日から5営業日以内」です。この期間内に申し込みを完了させることで、着工日から入金日までの保証がスタートします。保証期間は、最大で240日です。
なお、審査結果の有効期限は3カ月です。期限内に保証申し込みがない場合、1,500円の審査料が発生しますので、ご注意ください。工事の不備などで紛争が起きた場合も、3カ月以内に解決しないと保証対象外となります。
ご利用料金
本プランの手数料率は、保証が必要な期間(着工から支払いまでの日数)によって決まります。
| 保証期間 | 料率 |
| ~60日 | 1.9% |
| ~90日 | 2.9% |
| ~120日 | 3.9% |
| 以降30日ごと | +1.0% |
建設業特有の長い支払いサイトにも、柔軟に対応できる料金設定です。
なお、工期が延長になる場合は再審査を行い、延長期間に応じた追加料金で対応可能です。中間金や出来高払いをご希望の場合も、別途ご相談ください。
まとめ
建設業の経営において、資金繰りの安定は事業を続けるための土台です。入金までの期間が長く、先行投資が多い建設業界では、「黒字なのに現金がない」という事態が珍しくありません。
本記事で紹介したファクタリングは、そんなときに役立つ資金調達の方法です。銀行融資より審査が早く、負債を増やさずに現金を確保できるため、急な支払いに対応できます。ただし、利用には手数料がかかるため、コストと効果のバランスを見極め、計画的に活用することが大切です。
また、お金の悩みには「今すぐ現金が足りない」場合と、「将来の入金が予定どおりあるか不安」な場合があります。前者を解決するのが一般的な「買取型ファクタリング」であり、後者のリスクに備えるのが「売掛金保証サービス」です。資金調達が必要なら買取型ファクタリングを、取引先の倒産リスクに備えるなら売掛金保証サービスを、というように、目的に合わせて使い分けることをおすすめします。
弊社URIHO(ウリホ)は、後者の「未入金リスク」に特化した『売掛金保証サービス』を提供しています。事前に保証をかけておくことで、万が一取引先が倒産しても代金を受け取れます。建設業向けプランなら、現場ごとのスポット利用ができ、手続きもWebで完結します。
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